七月…夏休みが近づくにつれ日差しが日に日に強くなる頃少年は教室の窓から空を見上げていた…  
「って聞いてるのか海斗!」  
海斗と呼ばれた少年は友人川田を見返す。  
「悪い聞いてなかった…で、何の話?」  
川田は呆れた顔をしながら。  
「だ〜か〜ら!今日転校生が来るって話!」  
川田が言っている転校生とは2、3日前からクラスの話題になっている。  
「興味ない」  
海斗はいつもの調子で答える。  
「か〜っ、ホントおもしろくね〜奴だなお前は!」  
「勝手に言ってろ」  
友人の話を適当に聞き流している少年の名は「涼宮 海斗」  
「何でお前はいつも…」  
ガラッ  
「は〜いみんな席に着いて」  
このクラスの担任の「桃井 舞」(独身)が声をかける。  
 
「やべっ、先生来たからまたあとでな」  
と言うと海斗の友人「川田 祐介」は席に戻った、まあ彼は余りこの話に絡まないので忘れてもらって構わない。オイオイ…  
「起立っ!」  
「礼っ!」  
「着席っ!」  
委員長の声が教室に響き渡る。  
先生は教卓の前に立つと、バンッ!と教卓を叩き。  
「喜べ男子!今日は転校生を紹介する!二人とも入っといで〜!」  
ガラッ  
先生が合図するとドアが開いた。  
ドアが開くと「おぉ〜」っと声歓の声が上がった、それもその筈入ってきたのはとびっきりの美少女であり、見かけが全くそっくりの双子だったからだ。  
「まさか…」  
みんなが珍しいものを見るような中で一人海斗だけはこの双子に見覚えがあった。  
先生は黒板に二人の名前を書き。  
「はいじゃあ二人とも自己紹介して」  
二人は少し照れた様子で黒板に書かれた名前を名乗った。  
「一条 薫子です」  
「一条 菫子です」  
「「皆さん、よろしくお願いします」」  
 
先生が教室を見渡す。  
「じゃあ二人の席は…涼宮君の両隣が空いてるわね」(都合が良すぎる何ていう突っ込み無用)  
二人は海斗の両隣の席に着くと。  
「「久しぶりだね、海斗君!」」  
『やっぱり!この二人は…』  
海斗の頭の中で過去の古い記憶が蘇ってきた。  
・  
・  
・  
・  
・  
泣きじゃくる双子の少女…  
『う、えぐっ』  
『ひ、ひぐっ』  
それを宥めている少年…  
『二人とももう泣かないでよ』  
『だ、だって…』  
『海斗君にもう会えないって思うと…』  
少年は二人を抱き締めながら言う。  
『そんなことない!絶対また会えるから!』  
少年の目に涙が浮かび始めめた。  
『ぜ、ぜったい、ひぐっ会えるから…』 『『『うわあぁぁぁん!!!』』』  
三人は声を上げて泣いた、声が枯れるまで泣いた。  
泣き疲れしばらくし、最初に薫子が口を開いた。  
『ねえ約束してくれる?』  
『約束?』  
今度は菫子が言う。  
『そう、三人だけの約束…』  
『ダメ?』  
海斗は首を横に振りながら言った。  
『そんなことない!何でも約束するよ!』  
二人は先程まで泣いていたのが嘘のように微笑むと。  
『『じゃあ次に出会えた時は…』』  
『出会えたら?』  
『『私たちと……』』  
 
・  
・  
・  
・  
・  
『私たちと…なんだったけ?』  
「ねえ、聞いてる?」  
菫子が不満そうな顔で問い掛ける。  
「もしかして私たちのこと忘れちゃった?」  
薫子は悲しそうな顔で問い掛ける。  
二人にこう問われ海斗はあわてて否定する。  
「そんな!薫子ちゃんと菫子ちゃんのこと忘れるわけないだろ!」  
それを聞くと二人はうれしそうに微笑む。  
「本当!」  
「良かったね!菫子!」  
その時…  
ゴホン!!!  
先生がこちらを睨みながら咳払いをした。  
「涼宮君ナンパもいいけど、それは休み時間にね。」  
「え、そんなつもりは…」  
海斗が否定する頃にはクラス中の視線が集まっており大勢の前で恥をかいてしまった。  
 
海斗がクラスの笑い者になってすぐ一時間目の授業が始まり時は流れた…  
『キーンコーンカーンコーン…』  
チャイムが鳴り授業の終了を告げ休み時間になる。  
「おい!海斗!」  
海斗に話し掛けてきたのは、もう登場しないと思われていた友人川田であった。  
「お前!一条さん達とどうゆう関係なんだ!」  
川田は嫉妬のオーラを海斗に向け言い放った。  
「お前には関係ないだろ」  
 
海斗が無愛想に言い返すと隣の席の薫子が困ったように言う。  
「海斗君そんな言い方しなくても…」  
今度は菫子が言う。  
「そうだよ!川田君?だっけ?私たちと彼は幼馴染みなの」  
それを聞くと川田は目を丸くし海斗に詰め寄る。  
「何!それは本当か海斗!」  
「本当だよ、いちいち五月蝿奴だな」  
海斗は今度はため息を吐きながら答える。 「くっーー…羨ましい奴め…」  
川田が恨めしそうにしているのを無視し海斗は一条姉妹に話し掛ける。  
「そういえば何で急に戻ってこれたの?お父さんの仕事の都合とかで遠くに引っ越したはずだろ?」  
二人は少し顔を赤らめながら。  
「私たち」  
「あなたに会いたくって」  
「「戻ってきちゃいました!」」  
 
『はっ?』あまりに恥ずかしい言葉に海斗は思わず吹き出しそうになった。  
「ま、まあ冗談でもそう言ってくれと嬉しいよ…」  
冗談半分だろうと思い海斗は生返事をした。  
「違うもん!本当に海斗君に会いたくて戻ってきたんだもん!」  
「そうだよ!冗談なんかじゃないよ!」  
二人は強い口調で言った。  
「お〜お〜幸せ者だね海斗君」  
横から川田が口を挟んできた。  
「お前、まだ居たのか…」  
「なっ!お前それが親友に対する態度か!」  
 
「お前は親友なんかじゃなくてただの顔見知りだ」  
海斗は川田にキツイ一言を浴びせる。  
「あ〜いいですよ〜だ、お前なんかもう知らないもんね」  
川田は海斗の席から離れて行く。  
「本当に行っちゃうぞ」  
海斗は野良犬でも払うかのように手を振った。  
とぼとぼと川田は自分の席に戻る。  
「いいの?落ち込んでたみたいだけど」  
薫子が心配そうに聞いてくる。  
「いいんだよ、明日になれば忘れてる」  
「それより!私たちの話信じてくれた?」  
菫子がグイッと顔を近付け問い掛けてくる。  
「まあ信じたって事にしておくよ」  
「あ〜真面目に聞いてないでしょ!」  
「ちゃんと聞いてよ〜!」  
問い詰めてくる二人を宥めながら休み時間は終わりを告げた。  
 
・  
・  
・  
数時間後…  
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・  
・  
キーンコーンカーンコーン…  
チャイムが今日の授業の終わりを告げる、部活に向かうもの、帰り支度をするものでがやがやと教室が騒ぎはじめる。  
「か〜いと君!」  
「一緒に帰ろ!」  
両隣の席の二人が話し掛けてきた。  
「別にいいよ、今日はたいした用事もないし」  
「本当!」  
「やった!」  
海斗が机から立ち上がると二人が腕を組んできた。  
「ちょ、ちょっと!」  
「「なに?」」  
二人が声をそろえて聞いてくる。  
「いや、何じゃなくて…腕…」  
「いいじゃん!このまま帰ろうよ!」  
「それとも私たちと腕組むの嫌?」  
二人にこう言われ海斗は否定できるわけもなく、多くの男子生徒(特に川田)の嫉妬の視線を浴びながら学校をあとにする羽目になった。  
 
双子に挟まれ帰るいつもと違う帰り道。  
「…でねその時菫子ったら」  
「か、薫子そんなこと話さないでよ!」  
「へ〜そんなことがあったんだ」  
久しぶりに話す二人との会話に海斗の顔からも自然と笑みが零れる。  
「そうえば、おじさんとおばさん、元気にしてる?」  
「そうだ!おじさんとおばさんにも挨拶しなくちゃ!」  
その時海斗の顔が突然曇る。  
「どうしたの?難しい顔して」  
「私たち気に何か障る事、言った?」  
海斗は一息置くと口を開いた。  
「死んだ…」  
 
「「えっ!」」  
二人には最初海斗が何を言っているかわからなかった。  
「父さんも母さんも二人が引っ越してすぐ、俺が中学に上がる少し前に事故にあって…」  
「ご、ごめんなさい…」  
「わ、私たち全然知らなくて…」  
二人は涙目になりながら海斗に言う。  
「そんな、二人が謝る事じゃないよ…」  
「で、でも…」  
「し、死んじゃったなんて…」  
二人は昔可愛がってくれた海斗の両親の死に涙が溢れてくる。  
「う、ひぐっ…」  
「ぐ、ぐすっ…」  
二人の目から涙がポロポロと流れてくる。  
海斗は二人を抱き締め。  
「俺は二人の泣いてる顔なんて見たくない…だから泣かないで…」  
海斗に抱き締められ二人は落ち着いたのか次第に泣き止みはじめた。  
「ごめんね、海斗君…」  
「海斗君が一番辛いはずなのに…」  
二人は再び海斗に謝る。  
「だから、二人が謝る必要はないよ、それに父さんも母さんも二人に思ってもらって喜んでると思うよ」  
「海斗君…」  
「ありがとう…」  
二人の顔に笑顔が戻りはじめた。  
 
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「そういえば二人はどこに引っ越してきたの?」  
二人が落ち着きを取り戻ししばらくしてから、海斗は尋ねた。  
「もうすぐわかるよ♪」  
「ほら見えてきた!」  
「えっ!ここって…」  
そこは二人が昔住んでいた海斗の家の隣の家であった。  
「これでまた!」  
「いつでも会えるね!」  
 

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