「夢……か」
少年はそう呟いて目を覚ました。
枕が涙で濡れてる。 懐かしくて…そして悲しい夢。
「一体何年ぶりだろ。 死んだ母さんの夢を見るなんて。
それもこの町に戻ってきたせいかな……」
少年は窓を開け外を眺めた。
少年の名は蔵崎 陽。
かって幼い頃この町に住んでいた。
そして今再び、今年の春にこの町に戻ってきたのである。
そして数日が流れた。
新しい学校ではかっての自分を知るものとは会えず、だが新しい友達も出来新しい生活に馴染み始めていた。
友達だけでない。 町もすっかり幼い頃とは様相を変えていた。
幼い頃あった駄菓子屋や雑貨屋はつぶれてしまったりコンビニに変わってしまっていた。
よく遊んだ公園も安全基準の変更や老朽化などにより、遊具は全く別のものに置きかわってた。
幼い頃登って遊んだ樹も無くなっていた。
町自体も都市開発で大きくなっており、かっての懐かしい面影はすっかり無くなっていた。
かって住んだ町と言うよりまるで始めて来る町のようであった。
そのせいか母親の夢もあの日以来見ていない。
だがコレでいいと思った。
懐かしさの残る町であったなら……、懐かしさと共に寂しさと悲しさも思い出してしまいそうだったから。