ある日の昼下がり、街中で陽はふと視線を感じた。  
 視線の主を探すとそれは自分と同じぐらいの年恰好の少女達だった。  
 髪形以外に違いの見受けられないほど瓜二つの双子の少女達。  
(?!…… )  
 彼女達の顔を見た瞬間何か頭の奥底が疼く様な感覚に襲われる。  
 口を開こうとするが寸前で言葉が出てこない。  
 
 そんな陽よりも先に少女達が口を開く。  
「蔵崎……」  
「陽……クン?」  
 陽は黙ってコクリと頷く。  
「やっぱりダーリンだー!」  
「すっごい久しぶりー。私たちのこと覚えてる?!」  
「……もしかして、薫子ちゃんと菫子ちゃん?!」  
「そうだよー!」  
「やっと思い出してくれたー?」  
 二人は嬉しそうに声を上げた。  
 
「はは……まぁ、ね。 ダーリンなんて呼んでたの君達だけだったからね……」  
 何もかもが変わってしまったと想ってたこの町で、昔の面影を色濃く残していた双子との再会はとても感慨深い想い抱かせた。  
 懐かしさが込み上げてくる。  
「エヘヘ……まぁね」  
「だって、そう呼んだほうがカッコいいもん」  
 陽自身は正直ダーリンと呼ばれるのは恥かしかったのだが、だがココでそう言うのも野暮であろう。  
 照れくさそうに笑って返した。  
 
「はは……。 でも本当に久しぶりだな」  
「うんうん。 ところでこの街へは何かの用事で来たの?」  
「それとも、若しかして引越てきたの?」  
 少女たちはどこか期待に満ちたような眼差しで見つめた。  
「ああ、つい先日引っ越してきたばかりなんだ」  
「「やったー!! って事はこれから毎日でも会えるんだー!!」」  
 二人は手に手をとって喜んだ。  
 
「ハハ……、学校も違うんだし毎日はどうだろう……。 それより二人共相変わらず仲良しで、昔っから変わってないんだね。 この町は随分変わっちゃったけど」  
「そう? でも言われてみればそうかも」  
「住んでると案外実感わかないものね」  
 二人は顔を見合わせて言った。 そして何かを思いついたように続ける。  
「じゃぁさ、今からこの町を案内してあげよっか?」  
「あ、それいいね。どう? ダーリン」  
「そうだね。折角だからお願いしようかな」  
「よーし」  
「それじゃあ……」  
 そう言うと二人は陽の手を掴み  
「「しゅっぱーつ!!」」  
そして三人は駆け出した。  
 
 
 
 一通り町を散策した3人はカフェテリアでお茶とケーキを楽しんでいた。  
「本当は昔みたいにデパートの屋上でアイスクリームが良かったんだけどね」  
「あそこのデパートすっかり変わっちゃって屋上もなくなっちゃったからね」  
(屋上……か。 そう言えば昔母さんに連れて行ってもらったっけ……)  
 
「でもココのケーキもおいしいでしょ?」  
「この前なんか雑誌にも紹介されてたんだよ」  
 感慨に浸りかけた陽は二人の声に引き戻された。  
「ああ、そうだね。 こんなおいしい店が出来てたなんてね」  
 そう言ってケーキを口に運んだ後、紅茶に口をつけた。  
(今は折角薫子ちゃん菫子ちゃんと一緒なんだから母さんの事考えるのはよそう……)  
 そしてその後も暫らく思い出話などで花を咲かせていた。  
 気付けば日もとっぷりと暮れてあたりは暗くなっていた。  
 
「大分暗くなってきたし今日はこの辺でお開きにしようか?」  
「うん、そうだね。あ、そう言えばさ」  
「ダーリンの今度引っ越してきた家ってドコ?」  
「えっとね、今度引っ越してきた家はね……」  
 陽はかいつまんで住所を説明した。  
 
「あらら……残念。 結構ウチとは放れてるね〜」  
「若しかしてまた昔みたいにお隣かもと期待したんだけどな〜」  
「そうだね。 もしそうだったらもっと早く再会できてたかもね。 二人の家は昔と同じ?」  
「うん。 昔と一緒。」  
「そうだ。 今度家においでよ」  
「え……?」  
 陽は戸惑った。 薫子と菫子の家。  
 それはかって陽が住んでた家の隣に建っており、蔵崎家と一条家が家族ぐるみで付き合っていた為思い出もまた沢山詰まっている場所。  
 そう若しかしたら、いやおそらくこの変わりきってしまった町で唯一思い出を色濃く残してる場所。  
 当然亡き母の思い出も……。  
 
「どうしたの? ダーリン」  
「若しかしてイヤ……?」  
 陽は二人の心配そうな声にハッとした。  
「い、いや。 そんな事無いよ。 久しぶりだし懐かしいし是非今度お邪魔させてもらうよ。」  
(折角のお誘い断わるのも申し訳ないよな。 それに……、何時までも母さんの事でクヨクヨしてたってしょうがない……)  
「よーし! けって〜い!」  
「じゃあ詳しい日にち決まったらコッチから連絡するね」  
「うん。 楽しみに待ってるよ。」  
 そうしてその日は別れたのだった。  
 

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