「お兄さ〜ん!」  
花屋でバイトをしている僕のところに女の子がかけてくる…白鐘双樹…僕の恋人だ。そしてもう一人、  
「元気か…?」  
少しそっぽを向いてそう言うのは、白鐘沙羅…やはり、僕の恋人…  
「こんにちは、沙羅ちゃん、双樹ちゃん。」  
紫藤 尊(しどう みこと)、それが僕の名。双子の恋人なんて変わってるけど…同級生にもそう言う人いるし、街でも、眼鏡をかけた双子と一緒にいる人も見かけた。  
この辺りって、そういうの多いのかな…?  
「早くお兄さんに会いたくて…双樹走ってきちゃいました。」  
「…」  
黙っている、沙羅ちゃんの顔を見る…すると  
「…私も…会いたかったんだからな…」  
それを聞いて、思わず頬を緩めてしまう…。ここの所忙しくてあまり会えなかった。  
「じゃあ、今日はお昼までだから、その後、どこかに行こうか?」  
「はい!」  
「……」  
沙羅ちゃんは黙って、首を縦に振った。  
「いつもみたいに、そこで待ってて。」  
二人はいつものように店の前のテーブルについた。  
双樹ちゃんは、ストレートに気持ちを伝えてくれるし、沙羅ちゃんもちょっと突っぱねる感じだが、自分の思ってる事を言ってくれるようになった…。  
それも、あの出来事のせいだ…。  
 
―数ヶ月前―  
「昨日、お兄さんと一緒にいる夢を見たんです、私と沙羅ちゃんとお兄さん…」  
「へぇ…。どんな事してたの?」  
「えっと…ピクニックに行ってました。三人で作ったお弁当をもって…。」  
「はは、お弁当を三人で作ったことまで分かるんだ…。沙羅ちゃんは?」  
「…何で私がお前に夢の事を話さないといけないんだ…。」  
沙羅はそっぽを向いて答えた。  
「いいじゃない、沙羅ちゃん。沙羅ちゃんもお兄さんの夢を見たんでしょ?」  
「いいや、私がこいつの夢なんて見るわけがない。」  
そして、スッとこっちを向いて、  
「私は、別にこいつの事を好きな訳じゃないんだ、双樹がお前といるから、私も一緒にいるだけだ。」  
「もう沙羅ちゃんたら…。」  
「はは、それで、沙羅ちゃんはどんな夢を?」  
「…お前…人の話聞いてたか?だから、何で私がお前に…。」  
はぁ…沙羅が溜息をつく…。  
「…双樹と二人であの場所にいる夢だ。以上、それだけ。」  
「本とは、お兄さんも居たんだよね…?」  
「違う!」  
沙羅が顔を紅くしながら否定する、多分、三人だったのだろう。でも、素直にそれを認めたりしない…。  
 
―白鐘邸―  
「沙羅ちゃん、あんまりきつく言うとお兄さんに嫌われちゃうよ?」  
「別に…私は嫌われても…。」  
ベッドの上で二人が話していた。  
「沙羅ちゃんも、お兄さんのこと好きなんでしょ?だったら、もっと優しく話さないと…。」  
「だから…私は別に…。」  
「もう…意地っ張りなんだから…。」  
それが沙羅の性格だからと双樹も思っていたし、それも沙羅の可愛いところだ。でも、こうまで意地を張られるとちょっと面白くない。  
「私は、双樹がアイツと付き合うって言ったから…。でも、あいつ一人には双樹を任せられないから一緒にいるだけだ…。」  
「じゃあ、私がお兄さんと一緒にいなかったら、沙羅ちゃんもそうするの?」  
「あたりまえだ。私があいつの側にいる理由がない。」  
その言葉に、双樹はちょっとだけカチンときた。  
「じゃあ、双樹がお兄さんと別れたら、沙羅ちゃんもそうするの?」  
「…そうだ…。」  
双樹はぷぅっと頬を膨らませて、  
「沙羅ちゃんの嘘つき…おやすみ!」  
そう言って、沙羅と反対の方向に顔を向けて、ベッドに潜った。  
「…ん…」  
ちょっと気まずくなった沙羅は、仕方なく自分もベッドに潜った。  
次の朝起きると、双樹は何事もなかったかのようだったので、沙羅も安心した。  
しかし、双樹は昨晩の出来事を忘れたわけではなかった…。  
 
尊がバイトが終わって三人で帰っていた月曜の事。  
「そうだ、ちょっと遠いけど新しく出来た水族館があってさ、今度の土曜に一緒に行かない?その日、休みをもらってるから。」  
「本当ですか?もちろん、喜んで…ね、沙羅ちゃん。」  
「双樹がそう言うのなら、私も行く。水族館は嫌いじゃないし…。」  
「大きな水槽に、イルカもいるらしいよ?」  
「イルカ!?」  
その言葉にいち早くしたのは沙羅だった。  
「あはは、沙羅ちゃん本とにイルカ好きなんだね?」  
「…いいだろ別に…双樹だって好きだろ?イルカ。」  
「うん!楽しみにしておきますね、お兄さん!」  
「良かったな、双樹。」  
「二人が喜んでくれて、僕も嬉しいよ。」  
そう言うことを、話しているうちに白鐘邸についた。  
「じゃあ、また明日ね…。」  
「あ…お…お兄さん…。」  
「何…?」  
「少しだけ…目をつぶっててください…。」  
夕は言われた通りに目を閉じた。  
「あっ!」  
双樹は、そっとキスをしてすぐに離れた。  
「えへへ…」  
「…双樹ちゃん…?」  
「…」  
沙羅は口をあけたまま固まっていた。  
「お兄さん、また明日!」  
そう言って、双樹は沙羅を引っ張って家の中に入った。  
 
「双樹一体何を…」  
「えへ…。いいでしょ…?それに…」  
苦い顔をする沙羅と対照的に微笑む双樹、しかし、じつはこの時既に双樹から小悪魔のしっぽが出てた事に気付かなかった。  
 
そして、それからちょっと気まずいような空気が流れることもあったが特に問題もなく土曜。  
月曜の事は、沙羅も双樹もそれほど気にしていなかった…しかし…。  
「…アイツと…別れた?」  
「うん…」  
沙羅を目の前に、双樹は下を向いていた。  
「ごめんね…沙羅ちゃん…昨日電話でお兄さんに…。」  
「本当なのか…?」  
「うん…だから、今日の水族館も無しだから…。」  
「アイツが、双樹の事嫌いだって言ったのか?」  
「ううん、違うの…私から、お兄さんに別れてって…。」  
「どうして…急に、あんなに、アイツの事を好きだったのに…」  
沙羅は納得できなかった。あれほど強い思いを寄せていたのに…あれだけ、アイツの事を話していたのに…  
「人って…不思議だね…。」  
そう言って、双樹は苦笑をもらした、  
「一日で気持ちがなくなることもあるんだもん…。」  
…本当にこんな事あるのだろうか…  
「…双樹が、そう言うなら。」  
「だから、沙羅ちゃんも、お兄さんに合わなくていいんだよ…?ごめんね、今まで無理させちゃって…。」  
その言葉に、沙羅ははっとなった…。そう…自分が尊の側にいる理由がなくなったのだ  
「…そうか…それなら楽だな…」  
沙羅は、はははと笑いながら言った。  
「あんなやつ、双樹には似合わないから…。」  
 
その後、双樹はどこかに出かけて部屋には沙羅だけがいた。  
「…なんで、双樹は…」  
ふと、机の上に置いてあるイルカのキーホルダーに目が行った。最初のデートの時もらった物だ。  
「………」  
私は、双樹がいるからアイツと一緒にいただけで、別にどうって事はない…。  
「………」  
アイツと会えなくなったからって、寂しいわけじゃない…。  
「………」  
私は…アイツの事を…  
「…好きな…訳…」  
沙羅の目から涙が流れた…  
「…私は…私は…」  
 
アイツは、双樹にも、自分にも優しくしてくれた  
いつも頼りなさそうにしてるけど…いざっていうときはそうじゃなくて…  
どんなときでも笑っていて…  
けれど、自分は冷たい態度しかとる事が出来なくて…でもそれは…嫌いだからじゃなくて…  
ただ…素直になれないだけで…本当は…  
 
沙羅は、キーホルダーを握り締めると走って部屋を飛び出し外に出た。  
 
ピンポーン  
「は〜い…。」  
尊がドアを開けるとそこに立っていたのは  
「沙羅…ちゃん?」  
「……」  
「どうしたの…?」  
「なんで…何で双樹と別れたんだ…もう、双樹の事嫌いなのか!?」  
沙羅は叫ぶぐらいの声量でそう聞いた…  
「双樹ちゃんのことを嫌いになったわけじゃないよ…もちろん…沙羅ちゃんのこともね…。でも、双樹ちゃんに言われたから…。」  
「………」  
沙羅は、下を向いて体を震わせていた…そして…  
「…じゃあ…」  
沙羅は尊をまっすぐに見て言った  
 
「私と…私と付き合え!!」  
 
今までの沙羅からは想像できない台詞…。さらに言葉を続けた…  
「私は…お前に嫌な事ばかり言ってきたし…一緒にいるのも双樹がいるからだって言ってきた。  
 でも、双樹が別れるって言って、お前と一緒にいられないことになって…それが、とても悲しくて…  
 だけど…双樹がそう言ったなら…私は…いられないし…」  
沙羅の声が段々と涙混じりになってくる  
「グス…けど、私は…本当は…お前と一緒にいたい…離れたくないんだ…。  
 今日の水族館だって楽しみにしてた…お前と一緒にイルカを見られるのが…楽しみだった…。  
 それが、だめになって…ヒクッ…」  
「沙羅ちゃん…」  
「ヒック…今まで…いろいろ言ったけど…本当は…グス…お前の事が…好きなんだ…!。  
 双樹に負けないくらいに…!。双樹を…裏切るような気もするけど…私は、一人でもお前の側にいたい…。」  
そこまで言うと、沙羅は尊に抱きついた。  
「双樹と…二人で居られないなら…私だけでも…側にいさせて欲しい…お前の彼女として。一緒に…水族館にも行きたい。だから…」  
 
「尊…私を…恋人にして欲しい…側に…側にいたい!」  
 
沙羅は、尊の胸に顔を埋めて泣いた…。  
「沙羅ちゃん…何、言ってるの…?沙羅ちゃんは僕の恋人だよ…?」  
「…いいのか…?」  
「うん。」  
沙羅は涙でくしゃくしゃの顔を上げた…  
「…ありがとう…」  
ふと数日前の、双樹が尊にキスをしたのを思い出した…自分はまだしていない…。  
手を尊の首のところに持っていくと、ぐっと引き寄せてキスをした。  
「……」  
口を離すと沙羅はそっとつぶやいた。  
「…うれしい…」  
沙羅は、再び顔を埋めた、暫くそうした後…  
「でも、やっぱり双樹がいないと…なんか…」  
「大丈夫だよ…」  
 
「沙羅ちゃ〜ん!」  
 
声がしたかと思うと、誰かが尊の後ろに抱きついた、沙羅がまさか…と思いながら横からのぞくと…  
「…そ…双樹!?なんで…ここに?」  
「あれ…?私、出かけてきますってちゃんと言ったよ?」  
沙羅が尊を見ると申し訳なさそうに頬をかいていた…  
「…まさか…?」  
「えへへ…別れたって言ったのは、う…そ!」  
「なにいいいいいいいいいいいいいい!!」  
沙羅は口をパクパクさせていた。そう、話は一時間ほど前にさかのぼる。  
 
「あれ、双樹ちゃん、どうしたの?まだ時間じゃないよね。それに沙羅ちゃんは…?」  
「こんにちは…沙羅ちゃんはきっと後で来ます。でも、その時ちょっと沙羅ちゃんらしくないかも知れないけど…。」  
双樹は、まじめな顔で続けた。  
「ちゃんと、合わせてくださいね?」  
「…え…いったいなに…?」  
 
そしてその数十分後に沙羅が来たと言うわけだ。ちなみに昨日、双樹と尊は電話で話していたが時間の打ち合わせだけだった。  
「…だって、沙羅ちゃん、素直にお兄さんの事好きだっていわないんだもん…。」  
「あ…」  
「双樹は…沙羅ちゃんにもお兄さんにちゃんと気持ちを伝えて欲しかったの…。  
 もちろん、沙羅ちゃんがお兄さんをすきなのは分かってたし、それを素直に伝えられないのも…。  
 けど…一度は、ちゃんと伝えないとダメだよ…。」  
「だからって…こんなこと…。これじゃ…私が馬鹿みたいじゃないか…。」  
沙羅は不機嫌と言うかなんだか言い表しがたい表情をしてた…  
「でも、ちゃんと言えたんだね、お兄さんに…好きだって。」  
沙羅がまた、尊に視線を移すと、さっきと違う、笑みを浮かべていた。  
「ありがと…沙羅ちゃん。うれしかったよ?」  
「ん…。」  
「でも、沙羅ちゃん…大胆だったね…お兄さんに…キ…」  
「わあーーーー!!双樹、それ以上言うな!!わ…私だって…思い出すだけで…」  
その後、何を言いたかったのか分かるぐらいに顔を紅くした。  
「お兄さん…!」  
双樹は飛び跳ねるようにして、沙羅の隣に行った。  
「私たち、二人でお兄さんの恋人になってもいいですか?」  
尊はふふっと笑って  
「もちろんだよ…双樹ちゃん、沙羅ちゃん。」  
双樹はアハッと笑い、沙羅もうつむきながらも嬉しそうだった。  
「さ、早くしないと遅くなるよ?三人で…水族館に行こ?」  
「はい!」  
「…」  
沙羅は、いつものように黙って頷いた。  
「お兄さん、手繋いでもいいですか…?」  
「いいよ…。」  
双樹が左手を握ると、右手の方にも同じ感触があった…  
「…私も…いいか…」  
「うん…。」  
それから、三人で水族館に行った。最初は少し沙羅の機嫌が悪かったが、水族館に着くとすぐに戻った。  
 
「おい…聞こえてるか?」  
「お兄さん…?」  
目の前に、沙羅と双樹がいる…。自分の手には花が握られている…。  
「ごめん、大丈夫だよ。」  
どうやらもの思いにふけってしまったようだ…そんなに、分かりやすかっただろうか?  
「まったく…呼んでも返事しないなんて…立ったまま寝てるのかと思ったぞ。」  
「いや…さすがにそれはないって。もうちょっとで終わるから待ってて?」  
そう言うと、二人とも元のテーブルに戻った。  
 
「お待たせ、二人とも。」  
尊がバイトが終わって出てきた。  
「はい、二人とも」  
尊が差し出したのは、可愛くラッピング(?)された黄色い小さな花。  
「わぁ…ありがとうございます!」  
「…あ…ありがとう…。スターチス…か?」  
「うん。よく知ってるね。」  
沙羅が馬鹿にするなと、怒ったが、笑顔で軽く流した…そして  
「二人とも…」  
 
―大好きだよ。  
 
スターチス…花言葉は「変わらぬ想い」  
 
 

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