―2週間後のテスト後  
 
成績順位発表  
1.片桐 紅   500点  
2.桜月 ユラ  498点  
2.桜月 キラ  498点  
4.片桐 蒼 475点  
 
「よし!今回も満点。」  
「ユラちゃん、今回も一緒だったね。」  
「うん、でも紅君すごい…全教科満点だなんて…。」  
「二人はどうしたの?2点って?」  
キラとユラは顔を見合わせて。  
「私は、英語でつづりを間違えちゃって…」  
「私は、漢字が…。棒が一本多かったの…残念…。」  
紅は、蒼をじとっとにらんだ。  
「それで、お前は全教科狙っての95点か?」  
「当りです、今回結構大変だったのですが…」  
「狙って?どういうこと?」  
「こいつ、全教科満点取れるのに、それだと面白くないからって、いつも95点を狙うんだよ…  
 おかげで、こちらはぜんぜん勝った気がしない…。」  
「それって、予め点数を予測してわざと間違えるってこと?」  
「…全教科満点より難しいことだよ…?」  
「それを、やってのけるのが蒼のすごい所、おかげで教員連中は頭を抱えてるけど…。」  
「「すごぉい…」」  
ユラとキラは蒼を尊敬の眼差しで見てた…  
「ユラさんとキラさんも充分すごいですよ…減点一つだけなんですから。」  
「そう言ってくれると…。」  
「うれしい…。」  
「さて、そろそろ戻らないと…周りからすごい視線を浴びてる…」  
 
「えー、今日は50Mのタイムを計ります。」  
その日の午後は体育があり、二クラス合同なので4人は一緒だ。  
「ユラちゃん、がんばろうね!」  
「うん、あの人達にいいとこ見せなくちゃ…!」  
『それでは、位置について…よーい…ドン!!』  
キラとユラ、それと3人の生徒が一斉にスタートをきった。  
「これはまた…」  
二人はほかの生徒よりも断然早かった。  
「タイムは…すごいぞ!二人とも7秒4!!」  
「やったね!ユラちゃん」  
「今までで一番いいタイムだね…!」  
そんな二人を紅と蒼は驚いた表情でみてた。  
「スポーツもばっちりか…」  
「負けてられませんね…」  
男子の番になり、紅と蒼がスタート位置についた。  
『それでは、位置について…よーい…ドン!!』  
「「がんばってー!」」  
声援の中二人は他を引き離してゴールした  
「タイムは…片桐 蒼…6秒2 片桐 紅…!ご…5秒9!? お前ら…我が陸上部に是非ともほしい逸材だ…」  
「へへっ…俺の勝ち!」  
「運動じゃかないませんね…貴方には…」  
 
授業が終わると、キラとユラが紅と蒼の元へ駆け寄ってきた。  
「二人とも、とってもかっこよかったよ!!」  
「とっても、素敵だった…!」  
「ありがと。でも、二人も充分早かったじゃない、女子で7秒台なんてほとんどいないよ?」  
「えへへ…そうかなぁ?」  
「キラちゃんがいれば、体育祭のリレーは確実に勝てるよ。」  
そんな話の最中、ユラはふと蒼を見て、  
「とっても…、素敵でした…。」  
 
その放課後  
「あのね…お願いがあるの。」  
「いいかな…?」  
紅はその言葉を聞いてくすりと笑った。  
「釣り?」  
「えっ?」  
「どうして、わかったの…?」  
二人は驚いた顔で聞いてきた。  
「なんとなく、そうなるんじゃないかと思って、な?」  
「はい、二人のことですから。」  
「じゃあ…」  
「俺たちでよければ喜んで。次の連休でいいかな?」  
「あ…ありがとう!」  
キラとユラは笑ったが、  
「あ…あのね実はそのことパパに話したら…。」  
「えっと、貴方達のことを話してて、釣りが趣味だって言っただけなんだけど…。」  
「「パパも…一緒にくるそうです。」」  
「「…」」  
紅と蒼の表情が固まった。  
 
目的地の川の上流につくと(移動手段は無視)  
「いやぁ、いい天気だねぇ!」  
そう言ったのは、紅でも蒼でもなく、  
「すまないねぇ、私までついて来てしまって。」  
キラとユラの父親だった。Tシャツにジーパンサングラスに帽子、とても父親には見えなかった。  
「パパ、もう少しちゃんとした格好をしてきてよ!」  
「片桐さん達の、いる前なのに…恥ずかしい…」  
「何を言っている、釣りと言ったらこういう格好じゃないと。私から見ればお前達のほうがおかしいぞ?」  
キラとユラは、色違いのノースリーブのワンピースの上から、薄いシャツを羽織っていた。  
「私も、若いころはよく釣りをしたものだ…。」  
「あの…桜月さん…失礼ですがお歳は?」  
「歳?今年で31だが?」  
「「31!?」」  
紅と蒼は顔を見合わせた。  
どう見ても、31歳の人の格好ではない…どう見ても10代後半から20代前半の格好だ  
と、言うよりも  
「キラちゃんとユラちゃん…今年で15だよね?」  
「そうだけど…?」  
「(と言うことは…キラさんとユラさんが生まれたときは…16歳!?)」  
ちょっと待て、と思いながら蒼は恐る恐る聞いてみた。  
「桜月さん…お仕事は…。」  
「ん?訳あって、名前は出せんが、会社を経営しているが?」  
「…………」  
話によると、高校を卒業して就職、一年で退社して親の遺産を元に会社を設立。それが波に乗って今に至る。  
と言うことだった。  
「(ありえない…絶対にありえない…)」  
「何を固まってる?」  
「いえ…」  
 
「釣りなんて何年ぶりだろうね…」  
そう言った、桜月父は蒼と並んで釣り糸をたらしていた。  
「ええと、これをこうするんだけど…。」  
紅はキラとユラに餌のつけ方を教えていた。  
ちなみに、本当は虫がいいのだが、二人にそれは酷なので練り餌だ。  
「で、あとは糸を水の中に投げて…」  
「うんうん。」  
3人がじっと浮きを見つめていると、急に浮きが沈んだ。  
「よっと!」  
紅が竿を上げると、糸の先に18センチぐらいの魚がついていた。  
「「すごぉい!!」」  
「さ、二人ともやってみて。」  
 
「ううん、仲良くやってるじゃないか。うちの娘達と紅い少年は。」  
「名前が、紅だと言うだけですよ…」  
「君はいいのかな?蒼い少年?」  
「なんですか…その、後に“彗星”やら“鷹”とか付きそうな名前は…」  
そこまで言って、蒼はハッとした。いくら見た目が若いと言っても(実際に若いのだが)大会社の社長で、二人の父親だ。  
「す、すみません!思わず…」  
「いや、そのくらい言ってくれたほうがこちらとしても面白いのでな。気にしないでくれたまえ。」  
そう言いながら、桜月父は竿を上げて魚を釣り上げた。  
「そうですか…」  
蒼も、負けじと魚を釣り上げた。  
「それで、君は行かなくてもいいのかな?」  
「ああいうのは、紅の方が得意ですから…それに、普通なら可愛い娘に妙な虫がつかないように見てるものではないのですか?」  
「ふうむ…普通ならそうなのだが、私はそれほど過保護にはしたくないし。それに、あの子達も君達が気に入っているのでね。」  
 だいたい、えらく意見できるほど、何かしてあげられてるわけではないしな…。」  
「…そんなこと無いと思います。」  
蒼は遠慮がちに言葉を続けた。  
「あの二人を見れば、分かります…。ちゃんと、桜月さんがあの二人を大切に思ってることが…。  
 だから、あの二人は…あんなふうに笑えるんでしょう?」  
「そうか…すまないな、少年。」  
 
「あ…」  
キラとユラは二人で一本の竿を見ていた。  
「ユラちゃん…浮き…動いてるね。」  
「うん…あっ!沈んだ!!いまだよ、キラちゃん!」  
「えい!」  
竿を上げると、その手に確かな手ごたえが感じられた。しかし  
「なにこれ…全然あがらない…きゃあ!!」  
上がらないどころか、竿が激しく動いていた。  
「キラちゃん!私も…!」  
ユラはキラの手を握って加勢したが、ド素人二人ではどうにかなるはずも無く。  
「「きゃぁあああああ!!」」  
そのまま、川の中へ…  
「危ない!!」  
落ちようとしたところを、紅が後ろから支えた。  
「ほら、落ち着いて、俺も手伝うから。」  
「あ…」  
紅が二人にいろいろアドバイスをしながら、そして…  
「「やったぁ!!」」  
二人が釣り上げたのは、40センチは軽く超えるだろう大きな魚だった。  
「おお!我が娘は何か大物を釣り上げたようだぞ?」  
「…本とですね。」  
 
「わぁ…」  
「本とに私達が?」  
「そうだよ、おめでとう。すごいじゃないか!」  
紅が誉めると二人は手を取り合って喜んだ。  
そんな3人の様子を、蒼と桜月父は穏やかに眺めていた。  
 
「紅くん、今日は本当にありがとう。」  
「蒼くんも…とっても楽しかった…。」  
「いやぁ、いい息抜きになった、本当に感謝してるよ。」  
「いえ、こちらこそ…夕食までご馳走になって。」  
一同は、片桐の家の前にいた、桜月家は車の中からだ。  
「桜月さん、よろしかったら、またいつかご一緒しましょう。」  
「おお!その時はぜひ頼むよ、蒼い少年!」  
「ボソボソ…何?蒼い少年って?」  
「ボソボソ…気にしないでください…。」  
「それじゃあ、」  
「また、学校で。」  
「またね、キラちゃんユラちゃん。」  
「今後も、我が娘達をよろしく頼むぞ。そのかわり、付き合いは健全でないと…」  
「え、ええ…。」  
 
 
「お前達に聞いた以上のいい少年達だな。」  
「でしょ?」  
「きっと、パパも気に入ると思ったの…。」  
「それで、お前達はどちらの少年が好きなんだ?やはり、紅とか言う少年のほうか?」  
「「え!?」」  
キラとユラは顔を真っ赤にして  
「そんな、どっちかだなんて…ねぇ、ユラちゃん。」  
「そうよね…キラちゃん。」  
「はははは!まあ、今から知っていけばいいさ。ん〜父さんもお前達の母さんとであったときは…」  
以後、暫くのろけ話を聞かされた。  
 
 
四人はそれからも、仲良く過ごしていたのだが…  
四人で遊園地に行った帰りだった、時間も早かったので歩いて帰ろうと言うことにったのだが  
「いつかは、こうなる気はしたけどな…」  
ガラの悪い不良が四人ほど前に立っていた。  
「可愛い子、つれてるじゃねえか…」  
「こんな、弱々しいやつじゃなくてさ、俺たちと一緒に遊ぼうぜ…?」  
「は、はなして!!」  
不良たちが、キラの腕をつかんできたしかし  
「離せ…」  
その腕を、紅がつかんでいた。  
「なんだぁ…やる気か!?」  
「彼女達の前で…ボコボコにするってのもありだな…。幸い、人もほとんどいねぇし」  
「…やってみろよ…蒼」  
「わかってますよ。」  
蒼はユラとキラの手を握って、  
「さ、逃げますよ?」  
「「え…?」」  
「俺たちがここにいても足手まといになります、紅、家の前でいいですね?」  
紅は無言で頷き、」蒼は、二人を連れて走っていった。  
「さて…ここから先は、俺を倒してからってことで。」  
 
「蒼くん!紅くんが!!」  
「大丈夫ですよ…むしろ俺たちは足手まといです…言ったでしょう?」  
「でも…心配じゃないの?」  
「こういう事は、結構あったので…その度に、紅に任せてます…俺は、暴力沙汰は苦手なのですよ。」  
蒼は、スピードを落とし始めて、  
「さて、ここ辺りで言いでしょう、流石に、家まではちょっと遠いので。」  
蒼は、キラとユラの様子を見た、  
「心配ですか?」  
「それは…。」  
「大丈夫、あの人のことだから…多分無傷でしょう。」  
「そんなに…強いの?」  
「そりゃあ、もう。」  
 
蒼の言ったとおり、紅はまったくの無傷だった。  
「紅くん、大丈夫!?」  
「紅くん、怪我は…?」  
キラとユラは、紅の元に駆け寄った。  
「大丈夫、心配してくれたんだね、ありがとう。」  
「すこしは、手加減してやったのか?」  
「ばーか…流石に4対1じゃ手加減できないって…。」  
紅はキラとユラに視線を向けた。  
「ありがとう、助けてくれて。」  
「いや、当然のことだけど?」  
「でも…紅くんが戦ってるところ…見てみたかったかも…。」  
「お嬢様方には、刺激が強すぎるって…」  
キラは、紅の姿をしげしげとみた。  
「本とに怪我してないの?」  
「大丈夫。かすり傷一つないから。」  
「よかったぁ…。」  
「かっこよく出てやられたら洒落にならないし、まあ、その時は蒼がどうにかしてくれるから。」  
「よしてください…王子様は、1人で充分ですよ。」  
 
その時からだろうか…少しだけ、蒼の態度が変わったのは…  
 
キラとユラは、紅といるときはとても楽しそうに話す。  
しかし、蒼といるときは少し緊張しているようで、紅がいるとどうしてもそちらに言ってしまう。  
蒼よりも紅が好きなのか、それとも他の理由なのか…それは、本人達にもわかっていなかった。  
しかし、それを決定付ける事件が起こった、少なくともユラには…  
 
雨の日だった、  
「あのね、今日キラちゃんったら…。」  
「もう!ユラちゃん…それはいっちゃだめ!」  
「何があったの?」  
キラとユラと紅が話している横を蒼が歩く、蒼は3人の会話を聞いていた。  
「あれ…?」  
蒼がふと立ち止まって3人と逆の向きに体を向けた。  
「…」  
「どうしたの…?」  
蒼は何も言わずに走っていった。  
「おい!どこに行くんだ!?」  
3人が慌てて後を追うと、  
「…」  
「子猫?」  
木陰の下に置かれたダンボール、その中に小猫が二匹うずくまっていた。  
 
「今朝はいなかったのに…」  
「可愛そう…でも、私達の家は動物はだめって…」  
「…飼い主を探す?」  
「いえ…そんな事してもしょうがないです…結局捨てられるかもしれません…中途半端な情けは逆に酷です。」  
蒼は冷たくそう言った。  
「そんな…可愛そうよ…。」  
「誰かが拾ってくれれば、死にませんし、このままなら死にます…それが、ルールです。」  
「ひどいよ!そんなの。」  
キラとユラは、非難の目で蒼を見た、しかし  
「…だから…この子達は死にません…。」  
蒼は小猫を二匹とも抱きかかえた。  
「おい、蒼…」  
「文句ないでしょう?世話をするのは私ですし…それに、うちのミケはおとなしいですし…。」  
そう言って、蒼は、今までに見せたことのない笑顔を小猫に向けた。  
「もう、大丈夫…よく頑張りましたね。」  
「よかったぁ…ね、ユラちゃん。」  
「…」  
「ユラちゃん?」  
キラの声が聞こえていないのか、ユラは返事をしなかった。  
 
自分は、この笑顔を前に見たことがある…  
キラちゃんも知らない…笑顔を…。  
私はその笑顔があまりに素敵だったから…その人を、忘れることが出来なかった。  
 
そして、また月日は過ぎていった。  
 
日に日に寒くなり、いよいよ年も後少しとなり、クリスマスシーズンとなった。  
そんなとき、桜月邸ではそれに向けての会話が交わされていた。  
「何を上げたら喜んでくれるかなぁ?」  
「…」  
「ユラちゃん?どうしたの?」  
ユラは何か考え事をしているようだったが、やがてポツリと呟いた。  
「やっぱり…二人とも同じ物がいいのかな…?」  
「それって、どういうこと?」  
「キラちゃん…キラちゃんは…紅君と蒼君…どっちが好きなの?」  
ユラの意外な発言に目を丸くしたキラは  
「そう言われても、そんなの決められない…というより…よく分からない…。もしかして…」  
キラがユラをじっと見るとユラはこくんと小さく頷いた。  
「…紅君?」  
ユラは首を横に振った  
「…そうなんだ…。」  
「あのね…私達二回あの人を見たでしょ?でも、本当は私は…あの人を三回見てるの…。」  
「えっ?」  
「まえ、蒼君が猫を拾ったとき…あれを見て分かったの…!私が…私が好きな人は…好きになった人はこの人だって…!」  
 
 
まだ、転校する一ヶ月ほど前、この辺りがどのようなものなのかと見て回ったときだ。  
二人が、学校のからの道を歩いていると、小さな小猫が捨てられていた。  
「ユラちゃん…捨て猫だよ?」  
「どうしようか…お家じゃ猫は飼えないし…。」  
すると、その時執事の車がやってきた。  
「お嬢様方、車にお乗りください。おや…」  
車から出てきた、割と若い執事はその猫を見て訝しげな顔をした。  
「この子、どうしたらいいのかしら…?」  
「ユラお嬢様、お屋敷では猫は飼えません…残念ですが…。しかし、ここは学校の前ですからきっとどなたかが拾ってあげるかもしれません…」  
「…そうだね。ユラちゃん、行きましょう…」  
「…うん」  
ユラは名残惜しそうに車に入ろうとしたが、その寸前  
「みゃぁ…」  
悲しそうに小猫が鳴いた、  
 
その夜、ユラはどうしても小猫が気になって眠れなかった、  
時計を見ると、まだ10時半…学校までは遠いが、あそこなら大丈夫だろうと思い、ユラはこっそりと抜け出した。  
「(ごめんね…キラちゃん)」  
本当なら、侵入者が入らないようにかなりのセキュリティが張り巡らされているのだが、昔から育った家だ、抜けあなぐらいはしってる。  
ユラは、小猫が捨ててあったところへと急いだ。  
「誰かしら…こんな時間に…。」  
その場所につくと、夜にもかかわらずどうしてかそこには人がいた。暗くてよく分からないが男性のようだ。  
「…誰?」  
向こうも、ユラの存在に気づいた。  
「あの…小猫…」  
「…君が飼い主?」  
「いえっ…違うんですけど。」  
少し近づくと、どうやら少年のようだ。歳もあまり自分と変わらないように見える。  
「…昼間、見たんだけど気になって…。」  
「君が拾ってくれるんですか?」  
「そうしたいけど…無理なの…。」  
「見に来てどうするつもりだったんですか?拾えもしないのに…」  
「それは…。」  
少年の冷たい物言いに、すこし不満なユラだったが、  
「でも、この猫はラッキーです…俺に見つけてもらえたのだから…。」  
そう言うと少年は猫をひょいと抱き上げた。  
「…安心してください…大丈夫ですから。」  
それが、ユラへの言葉なのか小猫への言葉なのか分からなかったが、そう言って笑った顔を見て胸が高鳴った。  
「こんな時間に見に来るなんて…家の人は心配しないんですか?」  
こんどは、確実にユラへの問いかけだ。その声で、ユラは我に返った。  
「あ…あの…抜け出してきたから…」  
「じゃあ、見つからないうちに帰ったほうがいいですよ?この辺り、治安は文句なしにいいですけど、何があるか分かりませんからね…それでは。」  
身を翻して、少年は暗い景色に消えていった。  
「…」  
ユラは自分の頬が火照っていくのが分かった…  
「あの人だ…うん、絶対あの人だった…とっても素敵な笑顔…とっても、優しい人…」  
 
「そうだったんだ…ユラちゃん。そんなことがあったなんて…。」  
「だから…私。」  
そこまで、言ってユラははっとした、  
「でも、紅君のことはなんとも思ってないって訳じゃなくて…やっぱり、紅君もいないと寂しいと思う…。  
「うん…」  
「それでも…私の“好き”な人は…蒼君なの…。」  
ユラは真っ赤な顔を手で覆った。  
「偉いな…ユラちゃんは…」  
キラは少し下を向いて言った  
「私…まだどっちが好きなのかはっきりしなくて…いい加減なのかな?」  
「ううん!そんなことない!!片桐君たち二人ともとっても素敵だもん!ただ、私は…」  
「ねぇ…ユラちゃん…もし私が蒼君のことを好きになってもいいの?」  
「えっ?」  
ユラはきょとんとしたが、すぐに笑顔になって。  
「いいよ。そのときは二人で蒼君に恋人にしてくださいって言えばいいよ…。蒼君優しいからきっと“いいよ”って言ってくれると思うから…。」  
「でも、それだと、紅君に悪いよね…」  
「…そうだね…だけど、私達だって逆の立場になるかもしれないから…それは…しょうがないかもね…。」  
「でも、今はまだ…四人でいたいね?」  
「うん…。」  
 
 

Gポイントポイ活 Amazon Yahoo 楽天

無料ホームページ 楽天モバイル[UNLIMITが今なら1円] 海外格安航空券 海外旅行保険が無料!