送れて寝室にやってきた宗介の表情が暗い。  
かなめは体力的にキツイながらもさすがに心配になって、ベッドに潜り込んで  
きた宗介の頭をそっと撫でた。  
「そーすけ」  
「…」  
思えば、こんなふうに彼に触れるのは久しぶりだ。  
子供が産まれる前から色々どたばたしてしまって、産まれたら産まれたでまた  
どたばたして…  
そういえば朦朧とした頭で、けっこうあたりちらしちゃったなあ、などと今更  
ながらに思い返す。  
いとしの我が子が眠るベッドを夫の肩の向うにみながら、今は、彼だけに集中  
しようと思う。  
「ソースケ、ママがいいこいいこしてあげようか〜?」  
「…その様な…、いや、いい」  
疲れているとか機嫌が悪いというよりは、どこか拗ねたような風情で宗介は  
答える。  
「んー…ねえ、ソースケ」  
「なんだ」  
「おっぱい?」  
「っ」  
小さく、しかし確実に宗介の体が跳ねる。  
「…ほしいんでしょー?」  
「なに、をっ」  
 
相手の確実な焦りをみて、かなめはうれしくなる。  
宗介は、子供が産まれてからというもの…授乳の度に、何だか凄まじい葛藤を  
かかえて恐ろしい形相をしていたのだ。  
十中八九、「あのおっぱいは俺のもの」と考えていたのだろう。  
発音さえままならぬまま、否定しようと躍起になる宗介の横でかなめは普段の  
1.5倍はありそうな  
乳房を両方取り出した。ふがっ、と宗介が息を呑む。  
「ちょっと張って来ちゃったかも…ね、どっちがいい?」  
「な、な、なっ…」  
ちなみに宗介に、授乳の際以外におっぱいを見せるのは随分久しぶりだ。  
妊娠中もセックス出来るよと何度言ってもしようとしなかった宗介のせい、  
なのだが。  
そのおかげもあって、宗介が一瞬でアクセル全開状態まで興奮した。  
が、それでも必死に隠そうとする。  
「…俺は、疲れているのだ。…寝る!」  
「なんかね、左の方が出がいいらしいのよね」  
「…」  
 
かなめに背を向けた宗介の頭のなかはおっぱいおっぱいという言葉でいっぱい  
で、本音ではすぐさま振り向いてむしゃぶりついて、まず左をすって、右を  
吸って、それからまた左…そして「なるほど、確かに左の方が素晴らしい  
勢いだ」とか言いたくて仕方ない。  
しかしそれではかなめの挑発に乗ってしまったようで面白くないし、股間が  
ガチガチなのも多分疲れているからに違いなく、だらか自分は今から睡眠を。  
 
ピュッ。  
 
頬に飛んできたしずくに、意識が現実に引き戻される。  
「ねえ、ちょっとだけでいいの…ちゅっちゅってして…」  
唇に懐かしいぷりぷりしたものが押し当てられる。  
良く見知った物よりも、若干色が赤く濃く、大きいような…乳房もパツパツで、  
これはまさしくかなめの  
「おっぱいだ…」  
「そーよ、あたしのおっぱい。あん…」  
意地をはるのはやめて、宗介は無言で吸いついた。  
 

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