「いやーよかったわねぇ、ソースケ」  
 
「……なんの話だ?」  
 
「またまた〜とぼけちゃって〜。クルツに聞いたわよ?あんたとうとうカナメと寝たんだって?」  
 
「クルツめ……」  
 
*  
 
メリダ島の自室に戻ってからマオは荒れた。  
ベッドに飛び込んで、抱き枕を締め殺さんばかりに抱き締める。腕を回して抱き枕の上部をホールドし、仰け反ってベッドの下にバックドロップを極めた。  
 
「ぬかったわ」  
 
彼女はベッドから上半身をずり落としながら、ポツリと呟く。  
まさかとは思った。だが時間の問題かとも思い直した。日頃の彼らを見ていれば、いずれこうなるだろうと予見できた──しかし、鈍すぎる彼を知っているだけに、もっと先のことではないかなんて──自分はバカだ。  
 
ソースケがカナメと寝た──つまりカナメは、処女を喪失したということだ。  
 
「……まさかカナメに先を越されるなんて」  
 
泣く子も殺すメリッサ・マオ鬼曹長(26)は、彼女の外面や内面とは裏腹に、未だ男を知らぬ生娘であった。  
 
*  
 
どいつもこいつもチンコがデカすぎた。  
 
小さい頃からよくもてた。  
黒く艶やかな髪に豊かな肢体。白く透き通るようでありながら、肌理の細かい肌と、猫のように釣り上がった大きな眼。  
欧米人とアジア人の良いとこどりをしたようなスタイルの彼女は、男女問わず人気があった。  
 
13歳のときに初めての彼氏が出来た。彼は銀行で働く黒い肌をしたロリコンだった。  
知り合ったその日に付き合って、付き合ったその日に襲われた。  
場所は彼の自宅のトイレだった。下半身を露出して迫る彼に、マオは父親の部屋から持ち出した銃を向けると「クソの海に沈め」と言っておもむろに発砲した。偶然にも当たらなかった。  
恐怖のあまり失禁し、その場にヘタリこむ彼を見て、マオは大笑いした。涙が出るほど笑った。しかしその涙は石のように冷えきって、頬を伝う感触で自分が恐怖したのだと悟った。  
その男は巨根だった。あんなモノを入れられたら死ぬと思った。だから撃った。  
齢13歳。心の傷になった。  
 
その後数多の男と付き合った。年上もいれば年下もいた。良い奴もいればクソ野郎もいた。だがどの男とも関係はもてなかった。  
入れる寸前までは何度もいった。挿入とアナル、スカトロを除くあらゆるプレイをした。だがいざ挿入するという段になると、激しい吐き気と目眩を覚えて、全身で相手を拒絶してしまった。  
 
どいつもこいつもチンコがデカすぎた。  
中国系アメリカ人のマオにとって、異国のそれはあまりに巨大だった──いや、入れる気になれば入るのだろう。だが心理的外圧が頭をもたげて、最後の一歩を踏み出せなかった。  
 
その一歩を踏み出せないままに彼女は学校を卒業し、父親の意向でハーバード出のボンボンと結婚する運びとなった。  
いかにもチンコのデカそうな男だった。入れたことがなくとも何本もの性器を拝んできた彼女は、相手の外見だけで巨根かそうでないかを判断することができた。  
だから逃げた。結婚式当日に、ウェディングドレスのままで駆け出した。その勢いで海兵隊に入った。入ってみたら巨根の巣窟だった。  
 
結局マオは誰とも寝なかった。  
訓練は辛かったし、女性ゆえに不当な扱いも受けたが、持ち前の負けん気ではねのけた。一時期日系の隊員と付き合っていたが、酒の席の喧嘩が原因で別れてしまった。その時飲んでいたのはバーボンだった。以来バーボンは飲んでいない。  
 
その後、紆余曲折を得てミスリルに入隊した。白人の小娘を艦長に置いたその部隊は、マオにとって過ごしやすかった。  
最新のM9の開発にも関わることが出来たし、どこの国にも属さないスタンスも気に入っていた。  
そのうち彼女は最精鋭部隊の曹長、ウルズ2という地位にいたった。  
仕事は更に忙しくなったがそれでも面白かったし、仲間との関係も良好だった。特に金髪のエロバカと黒髪根暗のガキは、良い戦友であるとともに可愛い弟達のようでもあった。  
 
彼女は既に男など必要としていなかった。  
その辺の男になど興味はないし、部隊の同僚とは良い戦友でありたかった。  
 
「マオ」  
 
「姐さん」  
 
この呼ばれ方も気に入っていた。メリッサと呼ばれるのは何か違うと思った。  
 
気が付けば彼女は、齢26歳にして未だ処女だった。  
 
*  
 
「本当のことだよ。なにせソースケ本人から聞いたんだからな」  
 
クルツのその報告を聞いて、マオの中で眠っていた雌が疼きだした。  
もうこのまま処女のまま死んでもいいかなー、などと思っていた。  
だがしかし、自分の弟のような彼と妹のような彼女に先を越されて、マオの中で死んだはずのものがむくりと起き上がった。  
鉛玉を撃ちこまれたことはある。ASの破片が脇腹を貫通したこともある。恐らくそれらは、破瓜の上をいく激痛だったはずだ──なのにいつまでもいつまでも──夢見るティーンエイジャーか!あたしは!?  
 
「……誰にしようかな」  
 
またしてもポツリと呟く。  
とりあえず処女を失うことが先決だと思った。特定の相手がいるわけではないが、誰でもいいわけでもない。これでも女だ。ある程度好意がなければ、抱かれようなどとは思わない。  
 
マオは考えた。抱かれるに値する条件を考えた。  
 
・自分(マオ)がある程度好意を持っている男  
・処女だと知っても馬鹿にしない男  
・処女だということを黙っていてくれる男  
・自分を抱いても後悔しなさそうな男  
・あっさり抱いてくれそうな男  
・チンコがデカくない男←超重要!  
 
マオは最初の条件から、とりあえず三人に絞り込んだ。  
 
付き合いの長いベルファンガン・クルーゾー中尉と、SRTでも特に親しいクルツ・ウェーバー、相良宗介両軍曹だ。  
マオは三人のことを、男としても人間としても認めていた。年少の宗介はまだ未熟な部分もあったが、童貞を捨てたということを評価して三人の男に残した。  
 
マオは悩んだ。  
誰にしようか?三人とも強引に迫ればどうにかなる気がする。  
ベンはなんだかんだでむっつりスケベだ。隠れた趣味もあるし、脅しをかければ嫌々ながらも(本当はウキウキだろうが)相手してくれそうな気がする。  
クルツはあの通りだし、宗介は階級にうるさい。  
 
(サガラ軍曹、あたしのコールサインと階級を言ってみなさい)  
 
(……ウルズ2、メリッサ・マオ曹長であります)  
 
(よろしい……ならばズボンを脱ぎなさい)  
 
(サー!イエッサー!)  
 
(オーイェイ!クゥモン!アーハン!)  
 
これはこれで悪くない気がする。  
 
「でもベンはチンコデカそうよね……」  
 
宗介のナニを想像してマオは、やっとそのことに気付いた。  
別に宗介が小さいわけではない。多分普通の大きさだと思うし、人種的にクルツはもう少し大きそうだが、驚くほどではないと思う。  
だが、だがしかし、ベンはデカいだろ。イメージ的に。逆に小さかったら困る。  
 
「クルツとソースケかぁ……」  
 
ベンを除外して考える。  
クルツと宗介どちらがいいか──普通に考えればクルツだと思う。宗介にはかなめがいるし、なんとなく弟っぽくて男女の中という感じはしない。  
だがただ一本のチンコと考えると話は別だ。彼は誰にも言わないだろう。そういう人間ではない。後から執拗に迫ることもないだろうし、こういってはなんだが都合がいい。  
逆にクルツはその辺がダメだ。口止めすれば言わないかもしれないが、後から「またさせてくれ」とせがむだろう。  
そもそも、彼には処女だということをバラしたくない──しかし男としてみれば、宗介よりも近しい。誰にも気兼ねがないし。  
 
「どっちにしようかな……」  
 
彼女がそう呟やいた瞬間、ドアがコツコツとノックされた。  
 
*  
 
五時間後、マオのベッドには最終選考に残った二人が寝ていた。  
クルツ・ウェーバーと相良宗介。二人ともアルコールの影響でぐっすりと眠っている。  
 
「やってしまったわ……」  
 
穏やかに眠る二人を見下ろして、マオは後悔したように呟いた。  
 
ドアをノックしたのはクルツだった。後ろに宗介が控えてきた。  
なんの用かと思ったら、宗介とかなめのことを肴に一杯やりたいらしい。楽しげなクルツとは対照的に、欝屈した顔の宗介。  
マオは気を遣って言った。  
 
「いいの、ソースケ?さっきはあんな怒ってたけど」  
 
「……かまわん。もともと二人には今回のことをちゃんと伝えておこうと思っていたのだ。あの時腹を立てたのは、クルツが誰彼構わず吹聴していると思ったからだ」  
 
だがクルツはマオ以外誰にも言っていなかった。  
 
「この心優しいクルツくんが、好き勝手に惚れた腫れたと言い触らすわけないだろっての。だからこそバーじゃなくて、わざわざ姐さんのとこで飲もうって言ったんだぜ?」  
 
「俺は飲まんぞ」  
 
「まぁ、そう言うなって。めでたいんだから。飲まないとバッカスのおっさんに悪ぃだろうが」  
 
そういうことか──マオは全てを理解すると、二人を自室へと招き入れた。  
あんなことを考えていたのが少し後ろめたいが、そういう話なら大歓迎である。  
 
*  
 
そして酔い潰れた。  
最初の内はアルコールを拒んでいた宗介だが、面白がって無理矢理飲ませてしまった。脳細胞が云々と言っていたが、多少耐性をつけといた方が今後のためだろう。  
 
飲みだして五時間後には、結局マオしか残っていなかった。  
宗介は飲みだしてほどなく倒れた。クルツも四時間後に倒れた。マオはザルだった。身体が火照るような気がするが、酔い潰れるようなことはなかった。  
ベッドに横たわる二人を見下ろし、マオはまたしても呟いた。  
 
「まったく……迂濶ね、あたしも」  
 
マオは頭をガシガシと掻いて溜息を吐いた。  
果たしてどうしたらいいか。肩を揺すってみても起きる様子はない。まさに泥酔。  
明日は三人とも午後からだから特に問題はないが、このままここで寝させるのはどうか──任務で同じ部屋で寝たことはあるが、これはプライベートだ。何がどうなるか──いや、どうにかなって構わない気もする。  
 
ぶっちゃけこれは──  
 
「チャンス、よね……」  
 
泥酔。起きる様子はない。最悪途中で起きたとしても、夢だということにすれば誤魔化せる気がする──アルコールによって正しい判断能力を失ったメリッサ・マオは、おもむろに軍服のチャックに手を掛けた。  
 
*  
 
黒いレースの下着姿になったマオは、泥酔してベッドに川の字になったクルツと宗介、二人の股間のチャックに手を掛けると「うんふっふっふ」と笑いながらチャックを下ろし始めた。  
 
「どれどれどれ〜♪」  
 
と言いつつ、二人のチャックの中へと両手を突っ込む。トランクスの中へと指を忍ばせ、まだ柔らかい肉棒を掴むと、二人ともビクッと身体を硬くした。  
マオは一瞬ヤバイと思ったが、二人が起きた様子はない。どうやら条件反射らしい。だがまだ柔らかい。取り出した後で、愛撫せねばならんだろう。  
 
「ごたいめ〜ん」  
 
マオは二本同時にズボンから取り出した。  
「きゃーっ」と言いながら目を閉じる。久しぶりのことだから少し恥ずかしかった。徐々に目蓋を開けつつ二本を見やる。  
 
「……二人ともやるじゃない」  
 
マオは目を皿のようにして二本を見つめた。  
掌の感触から薄々わかっていたが、二人ともなかなかだ。中の上といったところか──特に宗介は小さいと思っていただけに、ちょっとした衝撃だった。  
宗介のイチモツをマジマジと見やるマオ。  
 
「ほ〜やるじゃない。このチンコでカナメをひぃひぃ言わせたというわけねー」  
 
皮を引っ張ってみたり玉をコロコロしてみたり。陰毛が濃いがなかなか清潔な肉棒で好感が持てる。カリ首がデカく良い感じに中を掻き毟りそうだが、マオ的にはマイナスだった。  
でもまぁ──  
 
「悪くないわね。うん、ソースケっぽいっちゃソースケっぽいチンコで……よし、クルツの方はっと」  
 
「いい子いい子」と言いながら宗介Jr.の頭を撫で、クルツJr.の方を見やる。  
彼の肉棒は宗介よりも長かった。しかし宗介よりも細く、入れやすそうではある。だが決して小さいわけではない。むしろ宗介が太い。更に言えば全体的に白く、毛が生えていなかった。性器特有のグロさはないが、多少物足りないと言えば物足りない。  
でもまぁ──  
 
「これはこれでクルツらしいわよねー。あんたみたいな男のチンコがグロかったら引くっつーの。まだソースケの方がグロくても許せるわね」  
 
クルツJr.にいい加減なことを語り掛けるマオ。  
 
「まっ、あたしが見込んだチンコだけあるわね」  
 
と言いつつ二人の先端にキスをした。その瞬間またしても二人の身体がビクッと硬くなったが、今回は無視した。どうせ起きない──しかしある部分は起きてもらわないと。  
 
「どっちからにしようかな〜……う〜ん、脱童貞記念ってことでソースケかな?ソースケして欲しい?」  
 
マオが宗介Jr.に問い掛けた瞬間、偶然にもJr.がピクリと頷いた。  
 
「はいじゃーソースケね。いただきま〜す」  
 
マオは大きく口を開くと、一息に宗介Jr.にしゃぶりついた。  
とりあえず勃起しなければ話にならない。酒のせいで立ちが悪いが、股間以外は玄人のメリッサ・マオである。童貞に毛が生えた程度の宗介など相手にならない。  
 
ぶぢゅりぶぢゅりとえげつない音を立てながら、肉棒をねぶるマオ。  
口の中に唾液をためて、それとペニスを捏ね合わせるように舌を絡み付かせる。柔らかい肉棒を唇で噛んで、引っ張ってみると、餅のように伸びて中々卑猥だった。  
 
「ぅあぅ…ふぅ…くぁっ」  
 
呻き声とともに肉棒が硬くなる。玉を掌で揉みつつ、剛直の濡れた裏筋をべろんべろんと舐めると、ほどなくギンギンになってしまった。  
 
「このあたしの手にかかればこんなもんよ〜。このエロガキ。ビンビンじゃな〜い」  
 
鼻から下を唾液で濡らして、満面の笑みで彼女はそう言った。  
そもそもこのあたしにチンコ握られといて、ふにゃふにゃのままってのがありえないのよ。こんな良い女が近くにいたら、触られる前にビンビンになるのが普通じゃないの?──  
そんな勝手なことを考えながら「次はクルツね」と、クルツの方へ移動しようとしたとき、偶然にも宗介の手に豊かな乳房が触れて──  
 
「……ちろり?」  
 
宗介の手が不意に動いて、マオの乳房を鷲掴んだ。  
 
「えっ、えぇ?そ、ソースケ?あ、あのこれはね?」  
 
急に覚醒した宗介に慌てて弁明するマオ。  
その間も宗介は縦横無尽に彼女の豊乳を揉みしだいている。黒い挑発的なブラがずりあがり、生乳を尋常でない勢いで揉み倒す。目が虚ろだ──ヤバイ。なんか知らんがとにかくヤバイ。  
 
「ソースケ、そ、そのね、これは違うのよ?そう!夢、夢なの!」  
 
「ちろり……ぅん、ちろり……?夢?あぁ、そうらな……ちろり、本物のちろりとは、感触が、違うな……」  
 
「うん?ちろり?それってもしかしてカナメのこと?」  
 
「なにを言ってのら?ちろり……ちろりはちろりに決まっているだろう?」  
 
と言いながら宗介はマオを揉み倒した(乳を揉みながら押し倒すこと)。  
倒れた衝撃でマオの巨乳がブリンッ!と揺れる。その揺れを見て宗介が「揺れ方も違うな」と呟いた。かなめはプリンッ!、もしくはたゆんっ!であった。  
それても揉みたくる。マオの上に馬乗りになって、情熱的に、それでも痛くないように優しく揉みしだいた。無理な力をかけず、それでもいやらしく乳房を変形させてしまう。  
い、いつの間にこんなテクニックを!?──マオは今の状況よりも、その乳房から這い上がる快感に狼狽した。  
 
「あっ、ソースケやめ、ふぁっあぁ…ちょっとぉ……もぉっ!」  
 
素人の乳揉みなど寧ろ痛いくらいが当たり前だ。その癖この男ときたら──ただ者ではない。どんだけかなめの乳を揉みしだいたと言うのだろうか?  
息を荒げテクニックに感嘆するマオに、宗介が余計なことを問い掛けた。  
 
「やはりいつもと違うら……いつもの君の乳房はもう少し小さいが、もっと柔らかい……今回は少し硬いような気がする。もしかしてどこかに乳房を打つけぁおぅふっ!」  
 
「うっさいわよ!!」  
 
失礼千万な宗介の顎に、マオはアッパーカットを食らわした。体勢は悪いが左肩をベッドに固定した右の拳骨は、宗介の体を軽々吹っ飛ばしてしまう。  
別にマオの乳房が硬いわけではない。かなめのが柔らかいというのもあるが、今回は生理不順で少し張っていただけである──張った乳房は揉まれると痛いはずなのに、特に不快ではなかった。  
宗介の揉みテクに改めて驚嘆する。彼がかなめと寝たのはここ最近のはずだ。彼はこの短期間にどれほどかなめの乳を揉んだというのか。  
 
「なによ。硬くなんかないじゃない」  
 
マオは自分の乳房を揉みつつ呟いた。  
全く硬くなんかない。もにゅもにゅだ。というか宗介に揉まれて、張りが少しなくなっている──明日になればまた張ってくるだろうが、なんたる揉みテクか。  
感心するマオの死角で、人影がムクリと起き上がる。  
 
「ん……あれ?姐さん……とソースケ!?どうした?大丈夫か?」  
 
「げぇっ!クルツ!?」  
 
今の騒ぎで起きたクルツが、KOされた宗介にのっそりと歩み寄った。マオが驚愕の声を上げる。クルツはマオの方を見やった。  
ヤバイ。ヤバすぎる──いや、こうなることは覚悟の上か?だから夢だってことに──いや、無理じゃないの?これはもうクルツもKOしてしまうしか──あたふたとそんなことを考えるマオ。  
クルツがそんなマオを見て呟く。  
 
「いいおっぱいだ」  
 
「どこ見てんのよ!!」  
 
と言ってマオは乳房を両手で抱き締めた。だがクルツから言わせれば、どこ見せてんのよ、という話だろう。  
 
「いや、というか姐さん。なんでそんないい格好をして……ってかソースケはどうしたんだ?ぶっ倒れてるのもそうだけど、ちんこ丸出しじゃねーかこいつ」  
 
あんたも丸出しよ!──とマオは突っ込みたかったが、あえてスルーした。  
クルツは酒で溶けだした脳ミソをフル回転させて、今の状況を整理しはじめた。そしてある仮説を導きだした。  
 
「もしかして姐さんとソースケって、そういう関係?」  
 
「ち、違うわよ!!」  
 
慌てて否定するマオ。  
その結論は一番マズイと彼女は思った。自分にとってもマズイが、巻き込まれた宗介には最悪の話だ。もしかなめの耳に入ればエライ事になる。  
何を今更──と自分でも思う。だけど可愛い二人の関係を壊したくて、こんなことをしたんじゃないんだ。  
ただ少し貸してほしくて。しかも本人にも無断で借りようとして──宗介は二股かけるような男じゃないって、彼女もわかっているだろうけど──  
 
マオは観念する。もともと自分の責任だ。このまま在らぬ疑いを宗介にかけるくらいなら、潔く自首してしまおう──マオは自分の乳房を更に強く抱き締める。  
 
「だよなー、ソースケと姐さんがそんな関係なんてありえねーよな。だってソースケにはかなめがいるし、姐さんはソースケには手にあまるしよ」  
 
マオが覚悟を決めた瞬間、クルツがそう言った。  
マオは拍子抜けする。あれ?少し物分かりが良すぎないか?──と彼女は思ったが、アルコールのせいだろうと納得した。  
これならあわよくば、白状せずにすむかも──夢ってことに出来るかもしれないわね──とそんな煮え切らないことを考えるマオ。  
マオは調子よく言う。  
 
「そうなの!あたしとソースケは単なる同僚でそんな関係じゃないわよ!そりゃちょっとは可愛いとこもあるし、一発くらいはってとこもあるけどこれは全部夢で──」  
 
「う〜ん……ってことは、このソースケっぽい奴は俺ってことか?」  
 
マオの発言聞く耳持たず、クルツはいきなりそんなことを口走った。  
あまりの意味わからん発言に、マオは「はぇ?」と情けない声を上げてしまう。  
このソースケっぽい奴は俺──駄目だ。全く意味がわからない──マオは恐る恐るクルツに問い掛ける。  
 
「……どういうこと?」  
 
「うん?だからこの失神してる奴は、俺ってことでしょって言ってんの」  
 
マオの頭にクエスチョンマークが浮かび上がる。彼女は困惑した。どうやらクルツの酔いは予想の斜め上を行っているらしい。  
釈然としないマオを見て、クルツが説明を付け加える。  
 
「だから、姐さんとソースケはあやしい関係じゃない。てことは、このソースケっぽい奴も実はソースケじゃない。  
そしてこの隊の中で姐さんと寝れるような奴は、俺とソースケくらい……まぁ、ソースケはかなーり確率が低いけど。あいつそういう柄じゃねーし。カナメ一筋じゃん?で、こいつがソースケじゃないってんなら、消去法で俺しかいないだろ?ってこと」  
 
これでわかったでしょ?と言わんばかりのクルツだが、マオには話の半分ほどしか理解できなかった。  
クルツの説明も酷いものだが、マオの思考力もまた急激に低下していた──つまりあたしと寝るのはクルツだけ。だから失神してるこの男はクルツ──なるほど。全く理解できない。  
ちょっとしたパニックに陥ったマオをよそに、クルツは「おーい俺ー、起きろー、死ぬなー」と言いながら、失神した宗介の頬をペチペチと叩いた。  
 
「……むっ、クルツか?」  
 
ほどなく目を覚ます宗介。  
 
「おー起きたか。死んだかと思ったぞ」  
 
「死ぬわけがないらろう。俺はただ寝てただけだ……なぜか顎が痛いがな」  
 
記憶のとんだ宗介。  
流石に強すぎたか──とマオが、クルツの肩越しに宗介の顔を覗き込んだ。  
宗介がマオに気付く。  
 
「ちろり?君もいたのか……どうしたんら?」  
 
未だ妄想と現実の間をフラフラしている宗介。  
クルツが怪訝な声を上げる。  
 
「なに言ってんだソースケ……じゃなくて俺。カナメじゃねぇ。マオだろうが」  
 
「うん?そっちこそなにを言っている?マオなどおらんぞ。彼女はちろりだ。それに俺とはなんら?」  
 
「なんだーお前酔ってんのか?我が事ながら情けねーぞ。俺とはなんだって、お前は俺だろうが」  
 
「俺は俺だぞ。お前は俺ではない」  
 
「うん?いや、だから俺は俺だろ?で、お前は俺だろ?ってことは俺はお前でお前は俺じゃねーか」  
 
「……なんらかよくわからんが、とりあえず俺は俺だ。それでいいか?」  
 
「ま、それでいいか。とりあえずお前は俺だ」  
 
酔っぱらい特有の新機軸トークが、マオをさらなるパニックの渦へと陥れる。目眩がする。マオは眉間を揉んだ。  
 
「どうした、ちろり?疲れたのか?」  
 
「だからカナメじゃねぇつーの。マオ姐さん。怖い怖ーいメリッサ・マオ曹長だっつってんだろうが」  
 
「そんなわけがないらろう?ちろり。君からも言ってやってくれ」  
 
「あぁそうだ。本人に聞けば確かだよな。姐さん、こいつにビシッと言ってやってくれよ」  
 
「えっ?あ、うん……」  
 
マオは悩んだ。  
当然自分はクルツの言うとおりメリッサ・マオだが、今本当のことを言って良いものかと悩む。  
もし自分がメリッサ・マオだと主張したら、宗介はどんな反応を見せるだろうか?納得してくれればいいが、宗介はかなめに過保護すぎる。  
もし彼が変に訝しんで、  
 
「ちろり、なにを言っているんだ?君はどこからどう見てもちろりかなめらろう?……もしやウィスパードの混乱が起きているのか!?」  
 
とか言いだしたら困る。  
彼はかなめのこととなると後先を考えない。こんな格好で医務室にでも運ばれたらエライ事になる──いや、下手をするとウィスパード繋がりでテッサのとこに連れてかれたり……。  
かと言って千鳥かなめだと言ったらクルツが面倒だ──悩むマオ。快活な彼女に珍しく「あの……その……」と口籠もってしまう。  
 
「どうしたんだよ姐さん?自分の名前を言うだけだぜ?いつもおっさんとかテッサの部屋に行くときみたいに、メリッサ・マオ曹長であります!なんてよ」  
 
「クルツ、貴様が余計なことを言うから、ちろりが困惑してしまうのら。ちろり、こんな奴はほっといて本当のことを言ってくれ」  
 
「なんだお前、お前は俺の癖に、俺の言うことが信じられねーってのか?カナメじゃねーから。マオだっつーの」  
 
「俺をお前だなどと言う奴を信じられると思うか?」  
 
「なんだと?こいつソースケみてぇなこと言いやがって」  
 
「みたいではない。俺は相良宗介だ」  
 
「だからそれも違ぇっての。お前は俺!俺はお前でお前は俺でって本知らねーのか?」  
 
意味わからん方向に白熱しだしたクルツと宗介。  
それを尻目にマオは、酒で煮えた頭で考える。  
──千鳥かなめ。メリッサ・マオ。千鳥。メリッサ──もしかして全く関係ない第三者──例えばテッサの方が──良いわけないわね──千鳥──メリッサ──いったいどうすれば。  
口の中で二つの名前を呟いて、ゆるんだ唇から偶然にも言葉が霞め出る。  
 
「ちろりっさ」  
 
「なに?」  
 
「え?ちろりっさ?」  
 
白熱した討論を繰り広げていた二人が、マオの呟きに反応する。  
響きが面白くて無意識に呟いてしまっただけ。特に意味はない。マオはそう伝えようとしたが、酷く納得した様子の二人に気付いて、口をつぐんだ。  
 
「なるほろ……ちろりっさか」  
 
「あーちろりっさね。そう言われてみればそんな気もするな。こいつがカナメカナメ言うのも納得できっかも」  
 
腕を組み納得の頷きを繰り返す宗介とクルツ。二人はマオの手の届かないところで通じ合った。  
ちろりっさってなによ──とマオは思う。その言葉を口にしたのは自分だが、彼らの中では言葉以上の存在が想像されているらしい。  
 
「てことは、お前本当にソースケか!?」  
 
「当然だろう。俺は相良宗介だ。そもそもお前が二人いる時点でおかしい」  
 
「いやー、姐さんとソースケがそんな格好してからよ、誤解しちまったのよ。それにしてもお前なんで下半身丸出しなんだ?」  
 
「知らん。気付いたらこうなっていた。だいたいお前も丸出しらぞ」  
 
「あっ本当だ。やん!見ないでー、えっちー」  
 
両手で股間を押さえるクルツ。  
宗介とマオはげんなりとした表情で、二人同時に言う。  
 
「「気色悪い」」  
 
「うわっひっでー、なんだよ二人とも。みんな似たような格好じゃねーか……それにしても姐さんは本当いいおっぱぉいっ!」  
 
「見んなっつーの!」  
 
クルツを悶絶させるマオのボディブロー。クルツは身体をくの字に折り曲げた。  
乳房から両手が外れて、たわわに実った乳房が上下に激しく揺れた。先端の色素の濃い部分が、中空に桃色の線を描く。宗介はその様に見惚れた。  
宗介は再び乳房を鷲掴む。そして揉む。  
 
「ちょ、ちょっと!またぁ?なんなのよ、もぉ!」  
 
「いや、いつものちろりと違うが……これも悪くないな、と思ってな」  
 
ちろりっさが一体なにを指すのかわからないが、とりあえず宗介の中ではかなめとそう変わらない存在らしい。  
慈しむように肌を撫でると、その突端をコリコリと弄ぶ。程なく勃起した乳首を唇ではむと、赤ん坊のように吸い始めた。乳輪をなぞるように舐め、先端を舌先で弄ぶ。  
性衝動と恋慕を同時に感じ、宗介の股間が今までにないくらいいきり立つ。  
その奮い立ちはきっと、海の向こうの彼女に向けられているのだろう──そう考えると酷く後ろめたい。  
しかしマオは吸い付いた宗介を今更振りほどくこともできず、ただ貪られるだけの身体になって、そっと彼の頭に手を置いた。  
男女というより姉弟の倒錯した情愛を感じる。興奮と安心が同居したような気がして、真綿に包まれたように眠くなった。  
 
「ソースケばっかずりぃぞ。メリッサー、俺の相手もしてくれよー」  
 
宗介が姉に甘える倒錯的な弟だとするなら、クルツはどうだろう?──マオは声のした方を見やる。  
するとそこには、宗介より色素の薄いツルンとした肉棒が熱くそそり立っていた。腹へのダメージなどなんのその、桃色に充血し天を突かんばかりにビンビンになっている。  
マオはそれを見て赤面した。宗介のペニスとは何か違うような気がした。  
宗介のモノを口に含んだとき、それは可愛い弟にイタズラをするような──加害者的思考が脳を席巻したのに、今は──被害者だろう。  
 
今から犯される。仮に宗介としたなら、自分は犯す側だろうとマオは思った。  
だがクルツの前なら、自分はただの牝として抱かれるだろう。  
 
*  
 
飽きもせず乳房を弄ぶ宗介をよそに、クルツとマオは濃厚なキスをした。  
キスの邪魔だからとクルツは宗介を退かそうとしたが、マオがそれを阻む。今離したらなんとなく可哀相だと思った。  
きっと彼はかなめの乳首を吸っているつもりなのだろう──お似合いの二人の間を裂くなんて、姉代わりの自分がすることではない──いや、今の状況は置いといて。  
 
「メリッサ、くわえてくれ」  
 
唇が離れたかと思うと、余韻の残るそこに熱く蒸れたモノが押し当てられた。  
マオのむっちりとした唇に、クルツの肉棒が押しつけられている。押し当てただけで我慢汁が滲み、彼女の唇をグロスを塗ったかのように光らせてしまう。  
マオは彼の形を確かめるように、ゆっくりと唇で亀頭を包んだ。濡れた粘膜を粘膜に密着させる。唇をカリ首に引っ掛けて頭を前後に揺する。  
さきっぽだけをいやらしくしゃぶられて、クルツは焦れた。  
 
「んむぉっ!」  
 
焦れたクルツはマオの黒髪を引っ掴むと、彼女の口内にペニスを根元までねじ込んでしまう。  
クルツの長いペニスがマオの喉元を叩く。彼女はたまらず咳き込んだ。  
クルツはしまったと思い肉棒を引き抜こうとしたが、マオの口がすぼまって引き抜くことか出来なかった。  
強烈なバキューム。ズゾゾゾッという音が聞こえそうなほど頬を凹ませて、その裏側の桃色の粘膜をペニス全体に吸い付かせている。これはマオの得意技だった。  
そのまま頭を前後に揺する。ぢゅっぱぢゅっぱと卑猥な音があがる。抜け出た竿が唾液でテラテラと光る。その竿が再び飲み込まれ、すぼまった唇が竿から唾液をこ削げ落とす。  
三往復に一度、肉棒がマオの口内から完全に抜け出る。抜け出る際に、蒸れた唇の裏側が充血したカリをこれでもかと掻き毟った。  
その快感がクルツの背を電流のように駆け上がる。頭のピストンが十二回に差し掛かり、マオの唇がカリ首をジュポンと手放したとき、彼は我慢の限界に達した。  
 
「あっふぅ……メリッサ……ぁあ……」  
 
マオの鼻の下で肉棒が暴発した。肉棒が激しく脈動し、精の発露を撒き散らす。  
その雫がマオの鼻の穴に入って、鼻の奥に仙痛を感じた。涙目で顔をそらせるマオ。  
その視線の先に宗介の頭があった。ざっくばらんな黒髪が、僅かに精液で汚れてしまっている。マオは少し引いた。自分の顔に精液がかかるより、男の頭にかかるほうが問題な気がした。  
 
「らめっ……ちょっと出ししゅぎよ……!」  
 
未だ暴れ続ける先端を唇で蓋をする。  
亀頭を唇で包み込んで、精液を搾り取ろうとちゅーちゅー吸った。  
口内が彼の味で満たされる。美味しくない。どちらかというと不味い──なんかハミガキ粉のチューブ吸ってるみたいね──とハミガキ粉など吸ったことないくせに、マオは思った。  
竿の中まで吸い付くして、やっとこ唇を放す。  
 
「もぉ……ホント出しすぎ……ためすぎは身体に良くないのよ?定期的にオナニーしなさいよね」  
 
「メリッサが手伝ってくれよ」  
 
「……気が向いたらね」  
 
マオは掌で顔を拭った。うわっベトベト……とティッシュで掌を拭く。  
自分の顔を綺麗にした彼女は、未だに乳をもにゅっている宗介の、汚れた頭を拭き始めた。黒髪に白い染みが点々とついている。なんだかいろいろとマズイ。  
掌とティッシュで精液を掬いとり、それでも残った場合は、髪の束を唇でついばんで舐め取った。  
それを見てクルツが「猿の毛繕いみたいだな」と言った。  
 
「あんたの方がある意味猿じゃないの」  
 
性的な意味で。  
 
「んー。まぁそうかもしれねーな……そういやメリッサ、知ってるか?猿の雌ってのは尻でセックスアピールをするんだぜ?だから赤い」  
 
「知ってるわよ。それがどうしたって──やっ、クルツ!?」  
 
マオの言葉を遮るように、クルツが彼女に襲い掛かった。  
バランスを崩すマオ。宗介を下敷きにしてベッドへと倒れこむ。それでも宗介は豊満な乳房を揉み続ける。何があっても放さん!といった風情だ。  
うつ伏せになったマオの尻をクルツが鷲掴みにした。黒いレースのパンティが乱れて尻の谷間が露になる。そして一気にずり下ろす。  
丸々として肉感的、それでいてきゅっと引き締まったエロスの塊のような尻が張り出される。  
 
「俺は猿だからよ、女の尻に目がないんだ……特にメリッサのは」  
 
わしわしと尻肉を揉みたくるクルツ。上と下を同時に揉みたくられるというあんまりな行為に、股間から愛液を滲ませてしまう。  
更に尻を揉む度に下半身の皮が引っ張られて、肛門や性器の形がにちゃにちゃと変形するのだ。尻肉を左右に引っ張られた時など、肛門が外気に触れてぞっとした。  
そして濡れそぼるヴァギナに圧力を感じて、更にぞっとする──この感触は──間違いない。  
 
「ダメよ、クルツ!入れるのはやめて!!」  
 
「うん?安心しなって。ちゃんとコンドームは付けてっからさ」  
 
クルツの先端がマオの入り口にぬちゅぬちゅと擦りつけられている。いつの間にかゴムまで被っていた──流石クルツ。いついかなる時もコンドームは手放さない。  
 
「コンドームつけててもダメだってのよ!」  
 
「なんでよ?ここまでやっといて入れるのはナシってか?そりゃないってメリッサ」  
 
「まだダメだってこと!心の準備がまだなの!!」  
 
今までずっと攻めていただけに、まだ攻められる準備が出来ていなかった。  
それにもっとイジってもらわないと多分痛いし──鬼曹長とはいえ、ベッドの上ではただの女だ。  
スナイパーとはいえ、ベッドの上ではただの男のクルツが焦れる。  
 
「なんだそりゃ。心の準備って……なんか姐さんっぽくねーぞ。あたしこんなの初めてなの、だからもっと優しくして!っていうバージンでもあるまいし」  
 
バージンという言葉に、マオの身体が硬くなる。  
偶然にも核心を突いたクルツの言葉が胸に染み入って、マオはとうとう観念した。  
決心する。そして叫ぶ。  
 
「あたしまだバージンなの!だからもっと優しくして!!」  
 
クルツは肉体的にも精神的にも一歩引いた。  
おっぱい星人の宗介でさえ乳揉みを止めた。  
 
*  
 
三人とも無言で動いた。  
宗介が無言でマオの下から抜け出る。クルツが股間にゴムを被せたまま、無言で床に座り込む。宗介とマオもそれにならい、床に座り込んだ。  
三人の裸の男女(宗介のみ上着だけ着用)が輪になって向かい合う。  
奇妙な沈黙が部屋を満たす。  
 
「処女なはずがないらろう」  
 
沈黙を破ったのは宗介だった。彼は憮然とした顔で言った。  
その顔を見てマオは思う──そうよね。こんなキャラのあたしが処女とか、本気でありえないわよね。  
 
「ちろりの処女は俺がいただいた。一昨日も一緒に寝たばかりだ。処女のはずがない」  
 
そういうことじゃない──拍子抜けしたマオをよそに、クルツが反論する。  
 
「そうとも限んねーだろうが。カナメがお前に抱かれてようとちろりっさは別……ちろりっさはカナメとメリッサがフュージョンした姿なんだから、カナメの特徴を完全に受け継いでるとは限らない。現におっぱいの感触が違うわけだろ?」  
 
これもなんか違う──というかそういう認識だったのか──とマオは今更悟る。  
 
「そうらな。本物のちろりの胸はもっと柔らかい……指で触れると溶けだしそうで、掌が埋まってしまいそうになる。しかし顔を埋めてみると程よい弾力があって、天にも昇るような──いや、クルツ、貴様にはこの情報に触れる資格が無い。  
……それよりフュージョンとはなんだ?」  
 
宗介はひとしきり惚気たあとに質問をした。彼の手がわきわきと動いている──想像のかなめ乳を揉んでいるらしい。  
 
「なんだお前、ドラゴンボールを知らねーのか?簡単に言えば合体だ、合体。ちろりっさはカナメとメリッサが合体した姿だ」  
 
「合体?」  
 
「そう。フュージョンがわからなきゃパイルダーオンだ。見ろ、ちろりっさのおっぱいミサイルを。俺はこの乳になら吹き飛ばされてもいい……ってそれは関係ねーな」  
 
「クルツ、お前の言うことはよくわからん……つまりどういうことら?」  
 
「つまりちろりっさはカナメとメリッサがファイナルフュージョンしたもので、ある部分はカナメ、ある部分はメリッサ……そしてカナメが処女じゃないのにちろりっさが処女だってことは、股間のとこはカナメじゃねーってことだ。つまり下半身はメリッサ。メリッサは処女」  
 
「なるほろ。理解した」  
 
マオの手の届かないところで納得した様子の二人。腕を組み、うんうんと頷き合っている。  
マオはツッコミたい部分がいろいろとあったが、話が拗れそうなので黙って見ていた──酔っぱらいの考えはよくわかんないわね──と酒焼けした頭で考える。彼女は深く溜息をついた。  
その瞬間宗介とクルツが、同時にマオを見やった。  
いきなり振り向かれてマオの身が竦む。  
ねめつけるような眼差し。二人の視線が自分の乳房と陰毛に注がれていることに気付いて、マオは「な、なによ……」と言って、自分の身体を抱き締めた。  
そんな彼女をよそに、二人は相談する。  
 
「メリッサの相手は俺がするから、カナメはソースケが相手してやれ」  
 
「言われなくてもそうする。ちろりの相手は俺だけら」  
 
なんの話かわからないが、とにかく事は動きだした。  
 
*  
 
宗介にキスされそうになって、マオは慌てて顔をそらした。  
 
「ちろり……?」  
 
彼に縁ある者だけにわかる悲しげな声色で、宗介が恋慕の相手の名を呼ぶ。言葉が振れて、今にも泣き出しそうに聞こえた。  
その震える吐息を止めてしまいたくて、マオはふと唇を彼のそれに寄せ掛けたが、またしても寸でのところでそらす──キスはいけないと思った。  
恋人以外とセックスすることはあっても、恋人以外とキスすることはないだろう──ここが最後の一線だ。  
もししてしまったら、彼に恋をしてしまうかもしれない。  
 
「キスよりも、もっといいことしてあげる」  
 
寂しそうな顔をする宗介に、マオが笑いかける。彼は笑顔を向けられたのが恥ずかしくて、頬をポリポリと掻いた。  
そんな宗介をよそに、マオは自分の豊満な乳房を両手で持ち上げると、彼の胡坐をかいた膝の上に落とした。  
ボスンッと乳房とは思えんような音が上がる。宗介のギンギンの股間が谷間に飲み込まれる。柔らかく暖かい肉に包まれて、宗介は情けない声を上げる。  
 
「はぉあっ!」  
 
「ソースケこういうの好きでしょ?」  
 
宗介がおっぱい星人だというのは、今までの乳揉みから確認済みだ。  
キスは出来ないけど、このくらいならしてあげる──とマオは、宗介の肉棒をくわえた乳房を激しく上下に揺すった。  
柔肌の間でペニスが更に大きくなるのがわかる。触れた部分が溶けだすように熱い。マオの汗と宗介から滲む汁が混じり合い、潤滑液の役割を果たす。  
肉棒をまるごと飲み込んでしまいそうなほど巨大なマオの乳房だが、宗介の腰に双球を強く押し付けてみると谷間から彼のさきっぽがにょきっと突き出た。  
モグラが土から頭を出すようで少しかわいい。マオはその頭にキスをした──唇はダメだけど、これくらいはいいわよね?  
本当に食べちゃいたいくらいかわいいわ──マオは噛み付かんばかりの勢いで乳房を揺すった。一心不乱。無我夢中で揺する。  
そうしないと腰から這い上がる快感に、意識を持っていかれてしまいそうだった。  
 
「処女のわりにちゃんと濡れるじゃねーかよ」  
 
四つん這いになってパイズリをするマオのヴァギナを、クルツがその器用な指先で愛撫していた。  
役割分担。先程の酔いどれトークの末、宗介とクルツはある共通認識を得た──下半身がマオだということは、上半身がかなめなのだろう──二人はその認識の通りに動く。上半身は宗介、下半身はクルツの担当だった。  
 
「もうトロトロだぞ」  
 
「そういうこと言うんじゃないわよ!」  
 
処女だと聞いていただけに、クルツの指先はより丁寧にマオの股間を這いずった。濡れが不足しているようなら唾液を垂らし、時には肛門にまで指先を伸ばす。  
マオはそれが恥ずかしくて、気を紛らわそうと宗介のペニスを更に激しく弄んでしまう。  
パジュッパジュッと膣に挿入したかのような音があがる。あまりに激しく揺すったため、谷間からペニスがにゅるんと抜け出てしまった。  
肉棒が這いずった部分がローションを塗ったかのように濡れている。そこから雄臭い匂いが立ち上ったが、マオはそんな嫌でもなかった。  
 
「やだっ」  
 
マオは抜け出た肉棒が惜しくて、いきり立つモノを強く引っ掴んでしまう。  
引けた腰ごとペニスを引き寄せて勃起した乳頭に押し当てる。裏筋に立ち上がった乳首を擦りつける。ゴシゴシと亀頭で乳房を磨くように摩擦する。  
亀頭が豊満な乳房にムニュッと挿入されたかと思うと、裏筋を程よい硬さの乳首で舐めるようにしごかれてしまった。  
宗介の玉袋がギュッとしまる。それに気付いてマオは、肉棒を再び胸の谷間に挟み込むと、むっちりとした唇で亀頭を包み込んだ。  
宗介はたまらず射精する。  
 
「ふっ……ちろり……あっ、ぁあぁぁぁ……っ!」  
 
宗介はマオの黒髪を鷲掴むと、乳房を太ももで押し上げて、ペニスを根元まで口内にねじ込んでしまった。  
上体を仰け反らせて濃い精液を吐き出す。歳のせいかクルツのよりも更に濃い気がしたが、マオはカリ首に舌を這わし頬を凹ませると、最後の一滴まで絞りだしてしまった。  
絡み付く精液をごっくんと飲み干して、マオが言う。  
 
「むぅ、むぁっ……ちょぉ……もぉ。ソースケもためしゅぎよ。ちゃんとオナニーしにゃさい」  
 
舌に彼の汁が残っているのと、絶えずヴァギナを愛撫されているのが重なって、マオの発音が不鮮明になってしまう。  
実のところ宗介は一昨日かなめと寝ていたので、ためすぎという程でもなかった。これが彼の平均である。  
 
「……ちろりはしてくれないのか?」  
 
「してあげるけど、自分でもある程度出さないとダメよ。かといって出しすぎるのもダメ……東京に戻ったらあたしが満足するまで抱くのよ?」  
 
変な気を回すマオ。  
 
「安心しろ。俺は君のそばにいると元気が出るんだ」  
 
自信満々の顔で宗介はそう言った。  
顔だけでなく股間も自信満々である。  
今出したばっかなのに──マオは少し引いた。  
 
「なにやってんだよソースケ。俺がメリッサをイかせるまでは我慢しろよ」  
 
包皮を向き、蒸れた萌芽を摘みながらクルツが言った。  
張り出した真珠をよじるように刺激する。背を仰け反らして身悶えるマオ。挿入はされずとも、性感帯は開発されきっている。彼女は外イキだった。  
 
「しかたがなかろう……乳房で刺激されるのは初めてだったのだ」  
 
どうやらマオは、宗介のパイズリ童貞を奪ってしまったらしい。  
もしかしたらフェラチオさえしていないかもしれない──迂濶だったわ。彼らはこういう関係になってから、日が浅い──そもそもフェラチオなどしない女はしない。  
カナメに男の喜ばせ方を、教えた方が良いだろうか?──そんなことを考えるマオ(処女)。  
 
「ったくよ。しゃーねぇ。姐さんにもとっととイッてもらうか」  
 
「何よその言いきゃにゃっ!」  
 
言い掛けたマオの唇が、自身の嬌声で塞がれた。  
ヴァギナが熱い。今までとは違った熱く湿ったものが、敏感な部分を這いずっている──すぐ様それが、クルツの舌だと気付く。  
クルツは口を半開きにして、性器全体を唇で覆った。そこに吸い付くように顔を寄せると、口内で舌を弄ぶようにして、にちゃにちゃと性器を愛撫する。  
唇のドームの下で器用な舌が卑猥に蠢いて、マオの性器を強烈に舐めたくる。下唇を萌芽に押し当てて、ねぶるように刺激する。  
まるで下の唇にディープキスをされてるみたい──マオはそう思うと、昂ぶる自分を押さえ切れなくなってしまって──腰を震わせて、卑劣から愛液を滲みださせてしまった。それがクルツの口内にたまる。彼はそれを飲み干してしまった。  
 
「最悪……」  
 
クンニでイかされるとなんでこんなに恥ずかしいのか?もしかして自分だけ?それとも変な汁を飲まれてしまったから?  
マオの全身から力が抜ける。四つん這いからヘタリ込んで、彼女は拠り所を求めて目の前の宗介の腰にしがみついた。  
はからずもぶら下がった乳房が宗介の股間に乗る。肉棒全体に乳房が押しつけられて、彼は無意識にカクカクと腰を振ってしまった。  
 
「最悪?最高の間違いでしょ」  
 
クルツが意地悪を言う。  
マオは否定出来なかった。今の快感は、26年の人生でも三本の指に入る快感だと思った。挿入はまだでも、女王様の素養のある彼女は、幾人もの男(or女)にヴァギナを舐めさせてきた──だからこそ今のは最高だったとわかってしまう。  
何も言わないマオをクルツは後ろから抱き締めた。彼の一番雄臭い部分が、彼女の一番雌臭い部分に押し当てられる。彼は彼女の耳元で囁いた。  
 
「いや、最高の体験はこれからか……安心しろ、メリッサ。このクルツくんが最高の初体験を演出してやるからよ」  
 
「うるさいわよ」  
 
恥ずかしげにそう言った彼女が可愛くて、クルツは彼女の耳を甘く噛んだ。  
 
「メリッサ、愛してるよ」  
 
クルツの言葉が耳を犯したのと同時に、マオの全身から力が抜ける──こんなことは初めてだった。いつも性器に性器が押し当てられるたびに、身体を硬くして吐き気をもよおしてしまったと言うに。  
年下の男の本心かどうかもわからない言葉に、文字通り骨抜きになってしまった自分が、情けないのと同時に嬉しくもあって。  
 
「入れるよ」  
 
「うん」  
 
脱力したマオを股間で感じて、好機と判断したクルツが、ゆっくりと肉棒を中に突き入れる。  
ゴムを付けっ放しだったためローションが少し乾いていたが、マオの愛液で濡らしたため問題無い。  
ずぬぬぬ……と徐々に愛棒を柔肉に埋める。柔らかいのに押し返すくらいに硬いという矛盾を孕んだマオのヴァギナ。  
軟骨を溶けだすような柔肉で覆ったそれは、先端の粘膜をこれでもかと締め付ける。  
 
「ふーっふーっふーっ」  
 
身体から力を抜こうと、変な呼吸をするマオ。呼吸の効果は定かでないが、今のところ挿入は順調である。  
彼の先端が自身の今まで閉じられていた部分を強引にこじ開けていくのを、マオは腹で感じた──それが怖くて彼女は、宗介の腰をさらに強く抱いた。  
そして抱き返される。自分より十も若い男に励まされるように抱かれたのに、それが嫌でない自分に困惑した──マオは今になって、宗介を高く評価している自分に気付いた。  
 
「がんばれ……半分まで入ってるぞ。もう少しだ」  
 
「なによそれ」  
 
宗介のズレた励ましに思わず笑ってしまう。  
思ったほどじゃないけれど、股間が焼けるようにジンジンと痛くて、それなのに微笑んでしまう自分が嫌いじゃなくて──笑った拍子に彼女の下っ腹からすっと力が抜け、クルツの愛棒がズッと根本まで挿入されてしまった。  
挿入したままの姿勢でクルツが言う。  
 
「メリッサ……奥まで入ったぞ」  
 
「……うん」  
 
苦し気な様子のマオに宗介が問い掛ける。  
 
「痛くないか?」  
 
「……少しだけ」  
 
その言葉を聞いて、クルツが彼らしくないことを言う。  
 
「やめるか?」  
 
「ううん。最後までして」  
 
「クルツ、痛くないようにゆっくり動け」  
 
「んなこたわかってるよ。俺を誰だと思ってんだ?……でもメリッサ。もし痛かったらすぐに言うんだぞ?」  
 
「……うん」  
 
妙に優しい二人の言葉に、痛み以外の理由から目を潤ませてしまう。  
初体験で泣くなんて、その辺のティーンエイジャーみたいで自分らしくない。そう思うのに、嬉しいのか悲しいのかわかんなくなって──目尻に涙をためる彼女に気付いて、宗介が声をかける。  
 
「どうした?……泣くほど痛いのか?」  
 
「……違うわよ」  
 
「メリッサ、痛いなら本当に無理しなくていいんだぞ?俺でよければいつでも相手してやっからよ」  
 
「本当に平気だから……これは、その、違うの……」  
 
馬鹿で空気の読めないあんたたちが、変にあたしのことを優しくするから。  
気遣いなんて言葉すら知らなかった宗介が、いつの間にかこんなことを言えるようになったのが──そして、それが自分に向けられるのが嬉しくて。  
いつも不埒なことばかりしてるクルツが、あたしのことをこんな宝物みたいに大事に扱ってくれるのが嬉しくて──だから泣いてしまう──でもこんなのは、あたしらしくないんだ。  
 
「なにが違うんだ?とりあえずは入ったんだ……これから徐々に慣らせばいい。痛いのは精神衛生上あまりよくない」  
 
「そうだ。俺はメリッサの初めての男になれて、それだけで満足なんだぜ?俺に気を遣う必要なんかねーぞ?」  
 
心配そうな声と視線が投げ掛けられて、マオはそれから逃げるように宗介の胸に顔を埋めた──この行動すらも自分らしくない、と彼女は思う。  
わかっている。自分はただの女だ──鉄の人形に守られた中の柔肌は、ニューヨークで「いい不良」をやってた頃となんら変わりがなくて、隊の野郎達に見せるメリッサ・マオ曹長なんて、サベージよりも分厚い装甲で覆った虚勢の造形。  
その虚勢の塊もやっと肌に馴染んで着心地も悪くないなんて、そんなこの頃で──だのに、今、装甲をひっぺがして生身で彼らに甘えられたらどんなにいいだろうって──しかし今装甲をひっぺがせば、もう二度と今までのようには振る舞えないような気がして。  
 
「ふっ」  
 
結局、生身とサベージの間で揺れ動いた天秤は、保守的な方へと傾いてしまい。  
 
「ふっざけんじゃないわよー!!なに!?この鉛弾の雨に曝されて、幾千の野郎どもをファックしてきたこのあたしにむかって、言うにことかいて無理すんなってどういうことよ!!?  
舐めてんじゃないわよ!このメリッサ・マオを!!あんたら、あたしの階級を忘れてんじゃないでしょうね?あたしはバリバリの精鋭部隊の曹長殿よ!あんたらみたいなドヘタレ軍曹の粗チンなんかで痛いとか、そんなわけないっつーの!!!」  
 
宗介の背に爪を立てて、マオは涙声でそう叫んだ。  
 
*  
 
クルツと宗介は、マオの真意を半ばまで理解していたが、それを口に出すほど愚かではなかった。  
宗介は目線でクルツに合図を送る。クルツはそれに頷くと、奥深く埋められた肉棒を抜ける寸前まで引き出して、内臓を持ち上げんばかりの勢いで腰を叩きつけた。  
 
「かふっ……!」  
 
肺が潰れて情けない声をあげるマオ。  
不意に最奥を叩かれて焼け付くように痛かった。デリケートな粘膜を這いずる欲望は、まるでヤスリのようにざらついて感じられる。  
「やめて」という二枚舌は押さえられても、目尻を伝う滴はとめどなく流れる。  
流れるそれを宗介の胸元に隠したが、きっと当の彼はそんなことお見通しなのだろう。  
クルツだってそうだ。震える肩に置かれた掌に励ますような温かみが宿って、結局、どちらに転ぼうと自分は彼らに甘えるだけの存在だと気付かされる。  
 
「すげぇ……すげぇよメリッサ。もの凄く絞まる。股間が千切れそうだ……」  
 
クルツは思ったままのことを言った。  
マオの割れ目は長年の過酷な運動(格闘やASの操縦)によって半ばまで剥がれてしまっていたが、鍛えぬかれた彼女の下半身は膣を強烈に締めあげてしまう。  
性器周辺はもちろん、太ももや尻の筋肉までが蠢いて、クルツの股間を搾乳するようにしゃぶりあげる。  
 
「当たり前よ……こ、この、あたしの処女な、んだか、ら……つまんない感想だったら、承知しないわ、よ……!」  
 
マオは強がりを言った。  
本当は不安だった。この歳になって未だ処女だなんて、どんな不都合が起きるかわからない。  
力の入れ方だってわからないし、腰の振りだっていまいちだ。だからクルツが苦し気な喘ぎを漏らすたび、自分の下半身は男を満足させるのに足るのだと、酷く安堵してしまう。  
安心が痛みを包み込んで、彼が喘ぐ度に股間の痛みが薄れていくような気さえした。  
 
「あぁ、最高だ、メリッサ……ふっ……もっと長く楽しみたいのによ……気を抜いたら暴発しちまいそうだ」  
 
腰で尻を叩くように、肉棒を膣の中で激しく前後させる。  
ズリュッズリュッとあからさまな音があがる。彼女の粘膜と触れ合った部分が溶けだしそうに感じられて、クルツの意識は一突きの度に霞の向こうへと消えかける。彼は自身の意識を繋ぎ止めるように、思いっきり歯を食い縛った。  
一際張り詰めた股間を無理矢理押し止めて、それでも苛烈に彼女を貪る。  
 
「当た、り前よ……あた、しの身体、なん、だから……あんたなんか…ぅうっ…すぐ、に……イかせ、ら、られる…んだから……ぁっ!」  
 
痛みはある。しかしそれ以上に内臓が熱い。  
溶けた鉄を性器に流し込まれたような心持ちになる。  
身体中が火照って異常に汗をかく。喉が渇く。しかし今は水分よりも彼が欲しい──この火照りの原因の一つには、股間から這い上がる激痛が含まれていることは知れている。だが、だからなんだというのだろう?  
乱れてしまえ。五感が消し飛ぶほど乱れてしまえば、痛みなど霧のように散るだろう。  
 
「もっと激しくするのよ!……あたしが音を上げるくらいに!泣いて止めてと言うまでやりなさい!!」  
 
マオは宗介の身体をさらに強く抱き締めると、狂ったようにそう叫んだ。  
叫びとともに痛みが発散される。股間に残る異物感すら快感の余韻で、マオは既にこの行為に夢中になりだした自分を察した。  
宗介の身体を這いずるように、上体を艶めかしく蠢かせる。彼女の全身から雌の匂いが立ち上ぼり、アルコールと疲労(作戦行動と射精)でボンヤリしていた宗介の鼻先をくすぐった。  
彼はハッとして、身悶える彼女を反射的に抱き締めた。  
その反応を見咎めて、マオが宗介を睨み付ける。  
 
「なにボンヤリしてんのよ」  
 
「いや、すまん、ちろり……その、少し疲れてしまって……」  
 
「否定はしないわけ?このあたしの裸を目の当たりにして上の空。気に入らないわね〜」  
 
ま、こっちの方は全然ボンヤリしてないけど──マオは宗介の張り詰めた股間を見下ろした。  
豊満な乳房の下敷きになっていたソレは、既に破裂寸前である──いや、乳房の濡れ方を見るに、多少出てしまったか?──マオは嬉しいような気持ち悪いような複雑な気分になる。  
 
「あんたくっついてるだけで出ちゃったわけ?……んぁ!」  
 
宗介に向いたマオの注意を、自分の方へと引き戻そうとして、クルツがゴッスンゴッスンと股間を叩きつけた。  
痛いんだか気持ちいいのかわからない。痒い部分を過度に掻かれるような感覚が、マオの背筋を駆け上る。  
奥歯をガチガチ鳴らして身悶える彼女を尻目に、意気消沈してしまう宗介。  
 
「……出たといっても少しだけだぞ。君があんまり擦りつけるから……それに、さっきも言ったが乳房による愛撫は初めてなんだ」  
 
「あっそ……ぅん!じゃ、じゃあ……東京にもどっ……たら…ほ、本物のか、カナメにしてもら、いなぁ…さぃ?……きっと、あ、あたしのより、も、もっといぃからぁ……やん!」  
 
マオは自分で言って悲しくなった。  
女としての勝ち負けなど関係ない。かなめより自分の方が乳房が大きいとか、逆にかなめの方が肌が綺麗だとか、そんなことは一切関係ない──極論を言えば宗介にとっては「女=かなめ」であり、それ以外は等しく「その他」なのだ。  
 
『もし人間を二種類に分けるなら、どう分ける?』  
 
そんな問があったら、彼は『千鳥と彼女以外』と答えるのではないだろうか?──漠然とマオはそう感じた。  
嗚呼、かわいそうなテッサ。こんなんじゃ勝ち目がない──だけど。  
 
「なんかムカつくわね〜」  
 
マオはそう呟くと、目の前の肉棒を噛み付くような勢いでくわえた。  
張り詰めた竿に歯が立てられて、宗介は「はぉあ!」と不可思議な叫びをあげる。  
 
「うっせーぞソースケ。メリッサの可愛い声が聞こえね……ってお前なにメリッサの口に蓋してんだよ」  
 
「ぉ……俺がしたので、はな、い……うっ…ちろりが勝手にくわえたのだ」  
 
「しょーひょ。こいちゅにゃきゃみゃいきにゃこちょいぅやら」  
 
「くわえたままで喋るな……!」  
 
マオの口内で舌が蠢いて、宗介の先端をチロチロと刺激する。ツルツルとしてほどよい弾力がある粘膜は、舐めてみると一際大きく張り詰めて、マオの上顎を持ち上げてしまう。  
少し息が苦しいが悪い気はしない。もとよりこうなることを望んでくわえたのだ──だって悔しいでしょう?あたしのことが眼中にないなんてさ。  
お似合いの二人の間を裂く気なんて無い。それでも一人の女として認めさせたいなんて、そんな自分勝手な思いから、彼のモノに噛み付いてしまう。  
マオは両手を宗介の股間に添えると、哺乳瓶を吸うようにして愛撫しはじめた。  
 
宗介の身体があらゆる意味で盛り上がる。彼は無意識にマオの髪を鷲掴んだ。  
宗介の両手がマオの頭を小刻みに揺する。マオもそれに合わせて頭を振り、蒸れたペニスをジュパジュパとしゃぶった。  
その様を見て、クルツが腰振りを再開する。マオを上下から攻め立てるように、二人の若く屈強な男が、本能のおもむくままに腰を振った。  
 
「あっあっ、やだ…ふぅあむぅ……ダメ…ぅんひゃあぁぁあぁあぁぁ……」  
 
肉棒をくわえたままで不鮮明に喘ぐマオ。  
喘ぎをもたらす舌先が淫らに肉棒にまとわりついて、宗介を射精の縁へと追い込んでいく。  
それとは逆に下の口では、熱く硬い本能が一心不乱に出し入れされて、宗介を追い込むマオを快楽の縁へと追い立てるのだ。  
ジンとくる鈍い痛みはある。しかし、彼の欲望が与える快感と興奮に些かの不都合など消し飛んでしまって、彼女のしなやかで肉感的な肢体は、処女とは思えない妖艶さで二本の男性器をこれ以上なく喜ばせてしまう。  
パンッパンッと肉と肉が衝突し、汗と愛液が激しく弾ける。まるで火花だ。もとから一対の鋼鉄の機械が、激しく合致して熱い火花を散らすが如く。  
 
「ふっ……はぁ…ぁあ……」  
 
誰とも知れない吐息が部屋を席巻する。  
三人が三人とも能動的に身体を蠢かす。マオは上下から激しく攻め立てられているのにも関わらず、犯されているようには感じなかった。  
寧ろ犯しているのだ。自身の艶めかしい肉体が彼らの脳を焼いて、腰を振る以外の行動を彼らにさせまいとしている。  
 
「はっ、はぁ……メリッサ……も、もう出ちまいそうだ……」  
 
「俺も……まずい」  
 
マオの肉体を性具のように扱っていた二人が、泣き言のように限界を告げる。  
犯し犯され犯ささせ。上下の穴に卑猥な肉棒を突っ込まれて、まるで肉の詰まった筒のような扱い。しかしその筒は人並み以上の我を備えていて、ただ腰振るしか能のない男など容易く手玉にとってしまう。  
男達の腰振りがさらに淫らになる。雄臭い竿が粘液にまみれて、波打つ柔肉に擦り付けられる。二人はマオの身体を使い、自分の本能を追い込んでいく。  
既に呵責などない。少し前まであった躊躇いや優しさなど、快楽の波に飲み込まれた。マオはこれでいいと思った──だって相手に遠慮した関係だなんて、あたしたちらしくないでしょう?  
 
「ぅくっ……ちろり……っ!」  
 
「メリッサ……愛してるよ」  
 
二人はそう呟くと、マオの開口部に自身の種を注ぎこんだ。  
上下の穴で性器が一際大きくなる。破裂寸前のそれは限界を越えて、その中身で彼女の肢体を汚してしまった。  
宗介の先から流れ出た粘液が、マオの口の容量を越えて、唇の端から流れ出る。ドロリ…と垂れ下がるそれを拭うことすら面倒で、彼女はただ伏し目がちにそれを眺めるだけ。  
 
その間も彼女の下半身に埋没したクルツの先端は、脈々と精を吐き出している。  
クルツは股間を中心に捩るように腰を揺すると、マオの最奥の壁をこじ開けるようにペニスを押し入れた。彼の先端がより深くを求める度に接合部から破瓜の血が滲み、床を汚してしまう。鮮烈な赤が床に咲いた。  
やがて果てる。出し切ったクルツは腰を引き、自分の欲望をマオの身体から抜き出した。  
その時になって彼は、自分がコンドームを着けていたことを思い出す──孕ませる気で出してしまったのだが──安堵とも落胆ともとれないものが、彼の心中を満たし、気が抜けたように眠くなる。  
血と愛液に濡れたコンドームを着けたままだというのに、それをとる気力さえない。  
 
クルツと宗介は事切れた。  
過度の射精とアルコール、心地よいマオの肢体の影響で、気絶するように眠りに堕ちた。  
横たわるマオを枕にして眠りこける二人を退かすのがかわいそうで、マオもまた、そのままの格好で眠りに堕ちる。  
 
*  
 
夢ということにしてしまえばいい──。  
 
次の日の朝、シャワーを浴びつつマオは、今更になってその作戦の無理っぷりに気付いた。  
時刻は朝の7時。クルツと宗介はまだ寝ている──二人より早く起きれたのは良かったが、だからどうしたというのだろう?  
状況があんまりすぎる。裸で体液に濡れたクルツと宗介が、マオの部屋で寝ている──仮に記憶がとんでいたとしても、現状を見れば、彼らなら容易く真実に辿り着くはずだ。  
 
酔っ払って3Pをした──。  
 
当たり前の答えだ。どうしようもない──もし全てを夢にしたいなら、無理にでも彼らを帰すべきだったのだ。  
眠りこけた彼らを無理矢理着替えさせて部屋から追い出す。その後は知ったことか。無事彼らの自室に辿り着いたなら良し。もし部屋に辿り着かずにその返で寝たとしても、酒を飲んだことはバレてもセックスまではバレない。  
 
「もう……ヤバすぎるって〜……」  
 
マオはいつもの野戦服に着替えつつそう呟いた。  
今更どうしようもない。もう既に彼らの酔いは醒めてしまっただろうし、彼らを起こさずに着替えさせるなど不可能だ。  
彼女は覚悟を決める。もう本当に白状するしかない──彼女がそう思った瞬間、寝室から悲痛な雄叫びが聞こえた。  
 
*  
 
どこかからシャワーの音が聞こえる。  
頬には平たくて硬い感触。鼻には生臭さが残り、下半身はこれ以上ないくらいに怠い──嗚呼これは、酔った勢いでやっちまったな──床に横たわるクルツは、眼で状況を確認する前にそう悟った。  
しまったとは思う。だが後悔はない──彼女と寝れば何かと不都合が発生するかもしれないが、寝てしまった今になれば、そんな不都合など枯れ枝の蜘蛛の巣のように子細なことだと知れた。  
記憶がないのがいただけないが、もうこれっきりということもないだろう。記憶などこれから作ればいい──クルツはそう思いつつ眼を開け──そして絶望の声をあげた。  
 
*  
 
雄叫びを聞いて、マオはシャワー室から寝室に駆け込んだ。  
なんだ?なにに驚いた?あたしと寝たこと?──いや違う。もっと絶望的な何かに気付いたというような、心臓を握り潰すような雄叫び──数多くの断末魔の声を聞いてきたマオでさえ、こんな悲痛な叫びは記憶になかった。  
 
「どうしたの!?……クルツ?」  
 
部屋に飛び込んでみると、部屋の壁に背を預け、歯をガチガチと鳴らして顔を引きつらせるクルツが視界に入った。  
尋常ならざる怯え──クルツとは何度も死線を潜ってきた。だがしかし、これほど怯えた彼は見たことがない──マオはクルツの肩を掴んで問い掛ける。  
 
「どうしたの!?しっかりしなさい。なにがあったの?」  
 
「あ……あ……」  
 
マオの問い掛けも虚しく、クルツはただ呻き声をあげるだけ。  
その時彼女は、彼の視線がある一点に注がれていることに気付いた。視線の先を見やる──そこには尻を丸出しにした宗介が寝ていた。  
 
「ソースケがどうかしたの?」  
 
マオの問い掛けに、クルツの身体が硬くなる。  
彼女はまた宗介を見やった。彼はまだ寝ている。これだけの騒ぎの中眠り続けるなんて、なんて鈍い男だろう──いや、待てよ。もしかして寝ているのではなくて。  
 
「……ソースケがおかしいの?アルコールの影響で……うそ……本当に脳細胞が破壊されて……もしかして死んで──」  
 
「違うよ姐さん……ソースケは生きてるよ……」  
 
ヤバイ方向に勘違いしたマオをクルツが引き止めた。  
その瞬間宗介が寝返りをうつ──よかった。生きてる──マオは安堵した。  
 
「じゃあどうしたってのよ?あんな大声出してさ。あんた普通じゃないわよ?」  
 
「そうさ……俺は普通じゃねーんだよ!」  
 
クルツが唐突に立ち上がる。  
その瞬間マオの頬に温かい雫が降り掛かった──これは、涙?──クルツは泣いていた。  
 
「なんせ俺は……」  
 
尻丸出しの宗介と、血に濡れたコンドームを着けた自身の股間──それらからクルツは、恐ろしいことを推論してしまう。  
彼は涙ながらに呟く。  
 
「ソースケのケツを掘っちまうようなカマ野郎なんだからよぉ……」  
 
こうして真実は闇に葬られた。  
 

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