あれからもう何回も宗介とセックスして、その都度、膣で射精された。生理が来ないのではないかと心配していたかなめだったが、今日、なんとか来てほっとする。
今は生理中だから宗介とはできないが、生理が終われば我慢させていた分、猿のように体を求めてくるのは想像に難くない。
かなめは手帳とにらめっこをする。日付の横に小さく書いた正の字。最初は痛かったり妊娠のことを考えていたために回数は少なかったが、痛みが薄れるにつれて回数が増えてしまっている。
このところはほぼ毎日のペースだ。これはさすがに多すぎるとも思うし、一日の回数も明らかに右肩上がりに増えている。
そりゃぁ、まぁ、気持ちいいし。
かなめは顔を赤らめる。ほぼ例外なく宗介から求められてのものだったが、あれから毎日夜ご飯を作りに宗介のマンションを訪れているのだから、かなめも下心がないとは言い切れない。
避妊して欲しいのだが、宗介はその素振りを見せない。このまま宗介とし続ければ、年頃の男女なのだから、妊娠するのは時間の問題だろう。
できる限り早く手を打たなければ破滅だ。かなめは生理が来たことで次こそは後悔しないために行動に移る。
薬局でコンドームを買うのはやはり恥ずかしい。瑞樹に頼んでもよかったが、数を考えれば自分で買うのが正解だろう。
宗介のことを瑞樹や恭子に知られるのも、まだ少し恥ずかしかった。いつかは話さなければならないのだろうが、もう少し時間が欲しい。
店員さんにどう思われただろうか。今時の娘ならこれくらい当たり前なのだろうか。自動販売機もあるにはあるが、こんなものを買っているところを外で見られる方が余計に恥ずかしいではないか。
どちらにしても、慣れの問題なのかもしれない。大人は普通に買っているはずなのだから。それに、妊娠検査薬を買うはめになることを考えれば、百万倍はマシだ。以前、あの馬鹿に買わされた薬局には未だに足を向けられないでいる。
「ねぇ、ソースケ。これ使って」
さっそくその日の夕方、宗介にコンドームを手渡す。なんだかえっちをせがんでいるみたいで気恥ずかしい。はしたない女だと思われないだろうか。心配ではあったが、宗介はいつものむっつり顔で箱を受け取る。
「ありがたい。大事に使わせてもらおう」
さっそく、その日の夜も宗介が求めてくる。キスをしているうちに胸に手が伸びてきて、愛撫されてぐっしょりと濡れたら「ねぇ、続きはベッドでして」と耳元で囁く。
お姫様だっこをされて移動するのもいつもの決まりだった。薄暗い寝室でことに及ぶ。
生の方が気持ちいいっていうけれど、どうなのだろう。今まで、生でしかしたことがないから、期待と不安が合い交じっている。もし、痛かったり、よくなかったりしたら、これから先、ずっと生でやることになるのだろうか。
そうなったら、今みたいにセックスするのは無理だ。安全日だけということになる。それは嫌だった。
宗介が入ってくる。いつもの宗介。安心する。コンドームを付けていても宗介を感じられる。一番薄いとかいうやつを買ってよかった。
宗介にお腹の中をかき回されるにつれて意識が薄れていく。気持ちいいということ以外に何も感じられなくなっていく。快楽に溺れる。宗介に突かれながら、何回も達してしまった。
宗介も何度も何度も体を震わせた。最後に力尽きて、ぐったりと倒れ込む。
おぼろげな意識の中で宗介の顔だけが見える。自分のか宗介のか区別がつかない荒い息だけが断続的に耳の中に入ってくる。宗介の体重を感じながら、キスを重ねる。少しずつ、こっちの世界に戻ってくる。
薄暗いいつもの寝室。宗介が幸せそうにまどろんでいる。股間からどろりと零れ落ちる液体。液体、液体……。
慌てて掬い取る。感触といい、臭いといい、これは宗介の。
半勃ち状態の宗介のものに手を触れる。ゴムは装着されていない。このぬらぬらとした濡れ具合を見ればそんなもの付けていなかったのは一発でわかる。しっかり使うといったのに、宗介は嘘をついた。そう考えるとふつふつと怒りが込みあがってくる。
「ねぇ、ソースケ。あたしがあげたコンドームはどうしたのよ」
返答次第ではこのままペニスを握りつぶす勢いで尋ねる。
「ああ、あれか。あれはジャングルで水筒をなくしたときに使うんだ。水が一リットルも入ってなかなか便利なんだぞ。って、痛いじゃないか千鳥」
ぎゅーっとほっぺをつねられている宗介。
「あ、ん、た、ねぇ。そんな軍人さんのトリビアなんてどうだっていいの。ちゃんと正しい使い方をしなさい」
「そんなこと言われても、他の使い方なんぞ知らん」
開き直る宗介にかなめはくどくどと説教する。ただ、それでもいまいち理解できていないようだった。
「ねぇ、あたしのこと大事でしょ? それなら、ちゃんとこういうのは使わないとだめだよ」
「むぅ。しかし、なぜいけないのかわからん。千鳥、俺の子供が欲しいのではなかったのか」
あまりもの直球にかなめはどぎまぎする。欲しいか欲しくないかと言われれば欲しいにきまっているが、今かと言われればそれは間違いなく否定できる。
「そりゃ、欲しいけどさぁ。でもまだあたしたち高校生なんだよ。赤ちゃんなんてできたら困るよ」
「なぜだ。千鳥と子供を養うくらいの貯金はあるぞ。ミスリルの賃金も、なかなかのものだ。一生続けられるものでもなかろうが、傭兵の働き口なんて、世界中に転がっている。
危険だというのなら、まっとうで安全な仕事を友人に斡旋してもらうつもりだから、千鳥は何も心配しなくていい」
言い方を変えればそれはプロポーズととれるわけで、かなめは素直に嬉しいが、だからといってここは譲れるわけではない。きちんと卒業したいのだから。結婚と子供はそのあとでいい。
「これは子供を作るための行為ではないのか」
「そうだけど……、好きっていう気持ちを確かめるためのものでもあるんだよ。お互いの愛を深め合うっていうか……」
単に気持ちいいから最近は癖になって、とは口が裂けても言えない。
「だいたい、ソースケだって気持ちいいんじゃないの?」
「うむ、確かに気持ちいいが、千鳥と子作りをしているからこそだぞ。単に快楽に溺れるというのはよくないことだ」
正論ばっかり吐きやがって。かなめは心の中でだけつぶやいて拳を握りしめる。
「とにかく、今度からコンドームはちゃんと付けてよね。あんたが嫌だっていっても、あたしがつけてあげるから。そうじゃないと、嫌だからね」
「了解した。千鳥がそう言うのなら、俺も異論はない」
ふふん、あたしの魅力とテクニックで宗介を快楽に溺れさせてやる。そして、宗介こそが子作りよりも快楽を優先させているのだと認めさせてやるのだ。かなめはそう決意をした。