予定通り帰還する事が出来た宗介は、しかし、日本の上に脚を降ろせたと言うのにさっぱり気分がすぐれなかった。
当然である。昨晩、自分の大切な大切な…何かを失ってしまった。
(出来ればかなめに捧げたかった、初めての…いや、本質的に奪われた訳ではないが、しかしあのような…)
とぼとぼとセーフハウスへ戻る宗介の首筋にさわさわとした感覚があり、振り返る。
「やっぱり!ソースケ」
そこには、夕日の中、買い物袋を提げて微笑む私服姿のかなめが居た。
「姿勢悪いから別の人かと思っちゃった」
「…あ、いや」
「?」
何か言いかけ、宗介は口ごもる。
「なんでもない」
「?変なソースケ」
「そうか」
かなめに対して、どういった態度を取ればいいのか判らない。
出発前まで、自分はどうやって彼女と喋っていたのか思い出せなかった。
まるで、呼吸の仕方を忘れてしまったようだ…宗介は息苦しさを覚えて、無意識に上着の一番上のボタンを外した。
かなめはその様子を横目に収めて、少し頬を赤らめる。
「あ、ねえ…ゴハンって食べた?」
「…いつの食事の事だ?」
「…」
予想通りと言えば予想通りの答えだった。
かなめはこめかみにコツンと拳をあててちょっとため息をついてから、パッと顔を上げる。
「訂正!前にゴハン食べたの、いつ?」
「本日正午頃、携帯食料と水を摂取した。昨晩も食事を取った」
いつもよりはマシ、かな。かなめは今度はふーっと大きく息を吐き、それからとても落ち着いた表情で
「じゃあ、今、お腹減ってる?」
そう聞いてきた。
「そう、だな…肯定だ」
「よし、じゃあ、おいで!」
朗らかな彼女はとても眩しくて、余計に胸が痛んだ。
夕飯はとても旨かった。
いつもながらにほぼ無言の宗介は、それでも箸と口をひたすら動かし目の前にある物を全て平らげてしまった。
(良かった。ちゃんと食べてる)
かなめは先ほど外で宗介を見かけた時、彼が何かとても気落ちしている様に見えてしまい、胸騒ぎを覚えた。
もしかして仕事で何かあったんだろうか。
辛い目に遭ったの?それとも痛い事?悲しい事?
彼は自分に弱音なんて吐かないだろうけれど、それでも何とか癒したい、それを許して欲しい、と強く願った。
(出来る事は、まー、食べ物位だけど)
人間の三大欲求の一つである食欲を満たす、というのは、大事な事に違いない。かなめはつとめてそう思うようにする。
(そー言えば三大欲求って食欲と何と何だっけ…睡眠と…尿意?いや、違うか…でもガマン出来ないもんね)
考え事を始めてしまったかなめは目の前の事がおろそかになり、ふと気がつくと宗介は食事を終えて食器を片付け
ようとしていた。
「あ、いいわよ置いといて。やるから」
「いや、世話になりっぱなしでは申し訳ない。俺がやろう」
「んーでも」
茶碗を運ぼうとする宗介の手から茶碗を取り上げようと、触れる。
「疲れてるみたいだし、ソースケ。お茶入れるから…」
ね?と念を押そうと彼の顔を見上げると、彼は、目を見開き…読めない表情で、かなめを見ていた。
「…ソースケ?」
「いや」
す、とかなめの手を避けて、再び宗介は茶碗を持ち上げる。
「片付けは、やらせてくれ」
「ん…」
しぶしぶ、といった感じで承諾し、仕方ないのでかなめはお茶でも入れることにする。
(やっぱりソースケ、何かあったのかな)
普段ならば「あたしがやるってんだからあんたは大人しく座っときなさい!」とでも言うところだったが、どうにも
調子が出ない。
食器洗いを終えた宗介にほうじ茶と煎餅を出したが、彼は三口ほどお茶をすすっただけだった。
何か言おうか、何て切り出そうか…かなめが逡巡していると、宗介が喋ろうと一拍呼気を吸い込み、ちどり、と言う。
「な、なに?」
務めて明るく顔を上げると、そこには読めない表情をした宗介。
「そろそろ失礼する」
「え?」
「とてもうまい食事だった。…ありがとう」
お礼を言われたはずなのに、
(あたしなんでこんなに悲しいんだろう)
喋らないと、何か。かなめは思ったままを口にする。
「ねえソースケ、…何かあったんでしょ?」
「!」
「言いにくい事なのかもしれないけど、そんな…そんな顔されたら、あたし、心配しちゃうよ。…メーワク…?」
「い、いや…」
ももの上に置いた両の握りこぶしの内側は汗びっしょりで、俯き、宗介は言葉を搾り出す。
「君には、関係のない事だ。気にしないでくれ。俺の、個人的な…」
「ソースケ」
呼ばれてびくりと肩を震わせた彼は、やっぱり酷く傷ついた様に見える。
「あのね、ソースケ。…心配だよ…」
「千鳥…」
顔を上げた彼女に真っ直ぐ見つめられて、宗介はもうどこにも逃げ場が無い事を悟った。
ここで話を打ち切って辞去すれば、きっとかなめは怒るだろう。
それはいつものハリセンを振りかざして、又は複雑な関節技ではなくて―もっと、心の奥から。
かと言って、自分の胸のつっかえを、どう彼女に話せばいいというのか。
あまりに困難だ。だが、少しでも説明をしなくては彼女との信頼関係が根底から崩れてしまいそうで。
意を決して、宗介はかなめをまっすぐ見据えた。
「言葉にするのは、とても難しいのだが」
「うん…」
「その…昨晩」
思い出すのもおぞましい。
(俺は…俺はもう…)
「マッサージ屋の女に、cockを…」
「?」
突然日本語に英語が混じったのは宗介がそれに関するふさわしい語彙を持たないからで、かなめは「コック、何の栓?
…ASのレバーか何か?」等と思ったのだが、宗介のあまりに陰鬱な表情にまさか、と思い当たる。
「…弄ばれ…俺は…」
「え、ちょっと…それって…」
項垂れ、握り締めた拳を振るわせる宗介はみじめなもので、そんな彼を見てかなめは何故だか酷くイラついた。
cock、日本語でいう隠語の様なものだが、ペニスの事だ。
つまり、宗介は、任務中に…?
「何よ…そ、それって、フーゾク…とかに行ったって事…!?」
語り口からすれば、それは任意ではないのかもしれない。
だが、現実に「弄ばれた」などと言うのならば。
「部屋に呼びつけたのだ…そしたら…」
「呼っ…ソースケ、仕事に行ってたんじゃなかったの?」
「無論そうだ。だが、任務も終了し、宿で…部屋まで来て施術するというので…そうしたら…」
あんなことされるとおもわなかった。搾り出すように告白した宗介に、かなめの胸中は揺さぶられる。
(そんなのって、ないよ…)
「…なんで…?」
(あたし以外の人間に…)
「千鳥…」
(何をされたって言うのよ、アンタは…)
何故か、は、はっきり説明できない。でもかなめは確実に、怒りを感じていた。
どんな形であれ他人に体を許した、宗介に。
「ねえ、なんで…?だって、ソースケがホントに嫌なら、そういう事になる前に逃げられたでしょ?」
「それは、勿論そうだが…」
かなめの事を考えて勃起したのを目ざとく見つけられ弄り倒された、とは、言ってしまって良い物か。
「ソースケ、…何されたの…?」
「む?」
恐る恐る、といったふうに宗介が顔を上げると、かなめは…眉間にしわを寄せ、苛々とした表情をしていた。
彼女を見ていると喉の奥が絞まって呼吸がし辛くなり、背筋をひやりと冷たい汗が伝う。
「いや、その…女性が…」
「女の人だったんだね。いくつくらい?どんな感じの人?」
かなめは、自分の冷たい声と質問をなぜか他人の物のように遠く感じながら、宗介への尋問を開始した。
「年の頃は…解らんが、30代半ばから40代半ばではないかと思う。容姿は…その、失礼に当るかもしれないが、
西太平洋艦隊軍医のゴールドベリ大尉、彼女に少し、似ていた。もっとも髪はドレッドではなく、後ろで一つ
くくりにしていたが」
「そう。どうして呼んだの?」
「…最初は俺の部屋でクルツ、ヤンの三人と食事をしていたのだ。クルツがふざけるので、ヤンが連れて部屋を
出て行った。その時、宿のルームサービスを取るといいと、助言があったのだ」
「誰から?」
「…ヤン伍長からだ」
ヤン、と聞いてもかなめの頭にはハッキリした像は浮かばなかった。ただ、まあ会えば解るかな、とは思う。
「ルームサービスってどの位種類があったの?」
「わ、解らん。目に付いたのがマッサージだったのだ。電話で依頼した」
かなめは何も言わない。沈黙に耐えかねた宗介の言葉は、徐々に言い訳じみてくる。
「その…本当に、そんな事をするのだとは思わなかったのだ。信じてくれ」
「でもイロイロされちゃったんでしょ?」
「色々…いや、そ…」
頬杖をついて、ずい、とかなめは前のめりになる。目は全くの無表情だ。
「まずどんな事をされたの?」
「…最初は、うつ伏せに寝転び…ごく普通の背中のマッサージだったのではないかと思う。だが、俺の股間の
隆起を目ざとく見つけ…おそらく柔術か何かではないかと思うのだが…仰向けにされ、股間に触られた。あとは、
一瞬でズ、ズボンを脱がされ…」
ただ単にひっくり返されただけだったのだが、被害者意識からか宗介は少しづつ話を大きくしてしまう。
「隆起?」
「ぼ、…勃起していたのだ」
「その人に興奮したの?」
「違う!…その、生理現象、だ」
「ふーん?」
それ以上聞かれていないのだから、答える必要はない。
でも、先ほどからかなめに冷たい視線で見つめられるとどうにも調子が狂ってしまう。
「き、君の…」
言わない方が良いのだろう。全て告白すれば、きっとかなめに軽蔑される…なのに、口が止まらない。
「君の事を考えていたら、勃起した。それで…治めたかったのだが、触られるとどうしても余計に考えてしまって
…その、抵抗を…きちんとすべきだったとは思う。だが、不可抗力だったのだ」
「随分言い訳するのね」
両腕で体を抱くようにしてかなめは宗介をじっと見つめる。
少し怒りが収まった。
(あたしなんだ…)
目も、冷たさは消えていつもの生気が戻っている。
怒りは収まったが…今度は苛々が爆発しそうになる。
(なによ、じゃあなおさら…そんな事されるんじゃないわよ!)
「結局、…どこまでされたの?」
「…言うのか?」
「言いなさいよっ。…も、もしかして最後まで?」
「いや!…最後、と言うのは膣内射精の事だな?…そこまでは、ない…だが、その…口唇愛撫を受けた」
「こうしん?」
「俗に言うフェラチオと言う奴だ。君の事を考えていろと言われた物で、もうその後は…と、止まらなかった。
二度射精したのだ。それで終了した」
少々都合よく改変はしたが、事実は一通り話した。
宗介はどうにか呼吸を落ち着け、あらためてかなめを見る。…驚いた。かなめはもじもじと気恥ずかしそうに、
頬を赤らめていた。
たしかさっきまともに見た時は恐ろしく冷たい表情で自分を不快な物でも見るような…それこそ「洗ってない
犬の臭いがする」と罵られそうな位、冷たい目をしていたのだが。
(俺の記憶と勘が間違っていなければ、彼女のこの態度は…)
「千鳥?」
「そ、ソースケ…ねえ、それって…ソースケにとってショックな事だったんだよ、ね?」
「あ、ああ!そうだ。…軽々しくする行為ではないし、その、とっておきたかったのだが」
誰に、とは言わない。かなめも聞かない。
「ね、ソースケ」
かなめは立ち上がり、ソファを指差す。
「あっちに座って…な、…慰めて、あげる」
既にかなめは顔を赤らめ息も絶え絶えで、有り体に言ってその様子は宗介の興奮を掻き立てるものだった。
「ふっ…ん、…んぅ」
「ちど…んっ…」
二人並んでソファに座り、宗介はかなめにされるがままのキスを受ける。
耳を撫でながらキスされて、かなめの右手は宗介の股間をズボンの上から撫で回す。
時折押したり強く擦ったり太ももをつーっと撫でたりするので、既に宗介はがちがちに勃ち上がっている。
宗介はかなめを抱きしめる事も、止める事も出来ず、ひたすら甘くて無理矢理なキスに耐えた。
かなめの舌は宗介の口の中で好きなように動いて、緊張して突き返す事も出来ない宗介の舌に優しく絡む。
下唇を甘噛みされて吸われると、反射的にかなめの上唇を同じ様に吸い返してしまう。
かなめに笑われた気がして羞恥に気がおかしくなりそうで、どうにでもなれという思いで宗介はかなめを
強く抱きしめた。
「は…んんっ…」
覆いかぶさるようにソファに押し倒し、真上からかなめの口を貪る。
唾液が溢れてだらだら垂れてかなめの髪や首筋を汚したが構わない。
かなめの手は、依然宗介の股間を揉んだり弄ったりしていた。
「ちどり、ちどりっ」
「ん…そーすけ、元気…出た?」
唾液でぽってりと濡れた唇に名前を呼ばれると背中の芯が震えた。
「ま、まだだ…まだ出ない…」
「そ。じゃあ…どうしよっか?」
何したい?と聞かれて、宗介は目線で訴えてしまう。
二人の体の間でつぶれてひしゃげてそれでも尚とても柔らかい、乳房に触れたい。
「どこ見てるの」
「君の乳房を」
「ばーか…」
笑いながらかなめは、自分の両肩を掴む強張った宗介の手をとって自分の胸に誘導する。
手のひらで触れるととんでもなく柔らかくて、宗介はめまいを覚えた。
「直に触りたい」
「…良いよ」
もうかなめの手は宗介を導いてはくれない。恐る恐る衣類の下に手を差し込み、持ち上げる。
かなめの胸はなだらかな三角形の布に包まれていた。
中心に止め具がついていて、あてずっぽうにいじるとぽろんと外れる。
乳首は自分の体にもついているはずなのだが…なぜかかなめの乳首は、見た瞬間頭の芯が沸騰したような衝撃をもたらした。
そうして次の瞬間から半時ほど、宗介は一心不乱にかなめの乳を吸い続けた。
「ソースケ、…そんなに吸っても何も出ないよ…?」
「んっ…ふ…はあっ…」
「…おいちい?」
「うん…ん、む」
口の中で上下の歯が硬く勃った乳頭を挟み込み、ざらついた舌に先端を擦られる。
外気にさらされた方も指先で弄ったり、腋の下から頂点へ、手のひらをぴったり当てられ何度も何度も撫でられ、
かなめの息も宗介の息も荒れて乱れて行くばかりだった。
ようやく満足した宗介はかなめの谷間に顔を埋めて、汗の臭いをかぎながらきつく目を閉じる。
(何をしているのだ、俺は…)
薄目をあける。かなめの乳首が視界に入る。指先でいじると、すっかり脚を開かされていたかなめの両足が、宗介に
ぐっと絡みついた。
「…ね、しよっか…」
「千鳥…」
宗介は夢見心地だったのが、一気に現実に引き戻された。
「その…俺がされたのは、口唇愛…撫…で」
「そーすけ、…したくないの?」
「そういう訳ではない。しかし…い、いいのか?」
「ダメなの?」
「いや、俺の方は問題ない…だが、その…まだ君の口からはっきり聞いていないのでな」
「?何が?」
「君は俺の妻になるつもりはあるのか?」
向かい合わせに抱き合って、興奮の度合いが解り切っている体勢で―それで、聞く事か。
「ば、ばかっ」
「馬鹿ではない。重要な事だ。いいや、千鳥。君が俺の妻となるつもりでないのなら…俺の精子はやれんぞ」
「そ、そんな事言って、知らない人にびゅ〜ってしちゃったくせに!」
「あれは俺の本意ではない。良いか千鳥、俺はこれから君を孕ませる事になるだろう。しかし君がきちんと俺の
庇護下に入り、ともに家庭を築いてゆく覚悟がないならば」
「は、孕ませるってアンタ…」
避妊など毛頭無いという事か。
「もう、うるさい!ぐちゃぐちゃ言わないで…」
既見感が宗介の意識を襲った。
「あたしに…されちゃいなさい!」
狭いソファでごろんと仰向けにされた宗介の下から、かなめは素早く抜け出した。
「こ、こうされたんでしょ!?」
ズボンを膝まで一気に脱がされ、既にそびえ立っていた熱い棒をぱくん、と咥えられ、口の中で弄ばれる。
昨晩の悪夢と今の天国―か地獄かは判らない、その情景が重なってはブレて、幻覚のようにぐにゃぐにゃと揺らめいた。
暖かい、狭い、ぬるぬるとしたかなめの口腔内で、宗介は―
「あっ…」
「んふ…っ」
暴発したかの様な射精はかなめの喉の奥まで飛び込み、飲みきれなくてドロドロと口から溢れ顎を伝い、胸まで零れ落ちた。
その様子に心底興奮を覚えた宗介は、同時に浅ましいおのれの欲望に絶望もした。
濃い精液にむせるかなめの背をさすってやりたいのに、きっと手を伸ばせばそんな事ではなく…荒々しくまさぐり、
残っている衣服を破ってでも彼女の体を裸にしてしまうだろう。
「…千鳥、大丈夫か」
「ん…ヘーキ。うぇー、変な味」
「変な味なのか」
うえ、げほ。とむせて顔を拭うかなめの手を取り、ぱく、と口に運ぶ。
「…確かに変な味だ」
「な、何舐めてるのよ!…自分のでしょ!」
かなめが怒るので、宗介はそれ以上舐めるのをやめた。
ティッシュで顔の飛沫を拭き取り胸元を拭うかなめに、宗介はそっと近づく。
「千鳥」
「わっ!何!?」
「もう一回射精したぞ」
「え、何が?」
「昨日だ。先ほどの君の推測、こういう事をされた、というのには、あと一回足りない」
「…ソースケ」
「何だ?」
ずるずるとくるぶしまでずり落ちたズボンで股間を放り出したまま、ちょっと常識では考え難い格好で至極マジメに
そういう事を言う人が、かなめの好きになった人。
あんまりなので面白くなってしまって、かなめはとても甘い気持ちになった。
「あと一回だけで、いいの?」
「む?いや、そ…」
「ね、いいの…?」
「よ、くは…ない、のだが。あ、ちど…ううっ」
理性的に、順序立てて。そうは思うものの、かなめの手のひらが恥ずかしげもなく宗介の股間に押し当てられて、
思わず呻いてしまう。
棒立ちのままかなめにされるがままになり、宗介はいちもつを手で擦られ、顎や頬、唇にキスを受けて程なく再び
射精してしまった。
二人の視線は床に飛散した精液に注がれる。
「おしまい?」
「む?」
かなめを見ると…彼女はトロン、と見たことがないようなうっとりとした表情だった。
「ねえ、2回ピュッってしたよ?…おしまい?ソースケぇ…」
「お、おしまいでは…ない」
床の掃除をしなければいけないのに、そう思いながら宗介は吸い寄せられるようにかなめを腕の中に抱え込むと
しっかりと唇を重ね合わせた。
身を任せるかなめは両手で宗介の尻を撫でて、真似する様に宗介もかなめの尻を撫でる。
柔らかくてむちむちしていて、指先がどこまでも沈んでいく様な心地だ。
「ふうー…ん、むっ」
ちゅっちゅと吸い合いながら、股間を相手に擦り付ける。
かなめはスカートをたくし上げると下着越しに宗介の肉棒に擦り酔った。
「…なんか、あたし…だめかも…」
「だめ、とは?」
「そーすけ、あたしの事…変な子だって思わないでね?」
「何」
質問は遮られ、かなめは宗介のくちびるを奪ったまま自分のパンツをずり下ろした。
「ん、んんっ」
宗介のペニスを掴んで自分の方に向かせると、膣口に宛がう。
「千鳥…!」
「い、入れたら…痛いのかな…」
すり、と擦れるたびに激しい衝撃が全身を遅い、宗介はもう立っていられない。
かなめを半ば抱え上げるようにしてダイニングテーブルへもつれ込み、彼女をその上に仰向けに寝そべらせる
と大きく脚を開かせた。
濡れて慎ましく揃った黒い毛と、傷も穢れも無い桃色の性器にめまいがした。
「い、挿れるぞ…!」
「あ、待って…そっ」
ずんっ、と突き立てられた瞬間の衝撃はハンパではなかった。
自分の上に覆いかぶさるようにしてのろのろと腰を動かし始めた宗介は、かなめの出血にも落涙にも
気付かない様子だ。
「あーっ、ち、ちどりっ!うあ、あ、あ」
気遣いのない宗介のふるまいにかなめは必死に耐える。
もうちょっと、ちょっと位は気持ち良いかと思った。なのに。
(い、痛いし…苦しいし…ソースケムカつくし…!)
かわいらしさのかけらもなく、只かなめの股を使って自慰するような宗介にかなめはムカムカとした
気持ちを抑えきれない。
やがて射精して退いた宗介は、この時やっと、異変に気付いた。
かなめの膣から溢れる液が、ピンク色にあわ立っていた。
「…?」
いぶかしんで顔を極限まで近づけ臭いを嗅ぐ。…血と精液の臭い。
「いたたた…っしょ、と」
テーブルから起き上がり宗介を支えに立つかなめの股からコポリ、と血混じりの精液が流れ出た。
「ち、千鳥…俺のペニスは出血したのか…?」
「…違うわよ、ばーか」
「では、その血、は…」
青ざめてかなめを見つめる宗介の視線は今更で、いじわるしたくてかなめはぷいとそっぽをむく。
「初めてだったんだもん!」
「し、止血を…いや、どうやって止めるのだ!?ともかく千鳥、傷口を心臓より高く…」
「キャー!!」
ごろん、とひっくりかえされたかなめは俗に言うまんぐり返しの体勢で、かかとで宗介の頭をなぎ払う。
「ぐっ…なかなか痛…」
「へ、変な格好させないでよ!」
「いや!そうではな…うっ…」
「また大きくなった!ヘンタイ!」
「違うぞ千鳥、これは決してそ、う…うっ…」
結局ひとしきり怒ったかなめは宗介に担がれてベッドに連れて行かれ、朝まで二人とも部屋から出てこなかった。