季節は秋。昨日よりも身長を伸ばした影法師が、陣代高校からの帰り道を歩く、二人組の男女―――ザンバラ頭の少年と、三つ編みの小柄な少女―――を追随している。  
 
「常磐。愛とはなんだ?」  
 
ザンバラ頭の少年―――相良宗介の質問は、いつも突飛で唐突だ。そして不必要なまでに真剣な眼差しで語られる。  
秋口の陽光に赤く染まる真摯な瞳に見入られて、三つ編みの少女―――常磐恭子は、恥ずかしそうに目を伏せて、どうにか  
 
「……相良くん……いきなりどうしたの?」  
 
とだけ言葉を返した。  
 
「いや……昼休みのときに千鳥に、お前は愛が無いと言われたのでな……」  
 
宗介は、本日の昼休みのことについて回想する。  
 
いつもどおりの授業を終え、いつもどおりの昼休みが始まる。  
いつもどおりに四時間目終了と同時に教室を飛び出した、黒髪ロングの快活そうな少女  
―――千鳥かなめが、戦利品の焼そばパンを片手に、豪快な足取りで自分の席に戻ってきた。  
 
彼女の席の後ろで怪しげな干し肉を噛る宗介を見るなり、かなめは一息に言った。  
 
『……あんたまたそんな得体の知れない干し肉食べてるの?たまにはもう少しまともなもん食べないと、体壊しちゃうよ?  
……他に食べたい物とかさー、なんかない?……もし作る時間がないんだったら、あ、あたしのお弁当を作るついでに』  
 
あんたのお弁当も作ってきてあげようか?という嬉しい申し出を不幸にも遮るように、宗介は話しだす。  
 
『これは得体の知れない干し肉などではないぞ、千鳥。先日ドイツの知り合いから送られてきたジャーマンジャイアントグレイという食用ウサギを自ら捌いて加工したものだ。  
けっして得体の知れない物ではない……また、俺は体調管理にも気を使っている。確かに味は淡白だが、ウサギは脂肪分が……』  
 
宗介が話を終えるよりも先に、かなめのハリセンが彼のこめかみに炸裂する。  
宗介の体はヘソのあたりを支点に回転しながら宙を舞い、教室の扉を突き破り廊下に飛び出した。  
 
リノリウムの床に横たわる彼の体めがけ、かなめの鋭いスタンピングが降り注ぐ。  
 
『この前、生でウサギを見たばかりの癖に!良くそんなもん食べられるわね!』  
 
『痛い。痛い。痛い』  
 
『あんたには愛が無い!だから食える!』  
 
『痛い。痛い。痛い』  
 
『だからあんな鼻がピスピスしてて可愛い動物を、こーんな愛の無い持ち方で持てるのよ!』  
 
かなめは宗介の両足を小脇に抱えると、ハンマー投げの選手よろしく回転し、廊下の窓から宗介を放り投げ……―――宗介気絶により、回想終了。  
 
「……さすがに死ぬかと思った」  
 
深く溜め息をつく宗介を見て、惨劇の一部始終を見ていた恭子は、幾分青ざめた顔で苦笑した。  
 
彼の頬に、ピンクの水玉模様の絆創膏が貼られている。恭子が貼ったものだ。その絆創膏を指先で慈しむように撫でながら、彼女は言う。  
 
「でも……死ななかったんだから多分カナちゃん、手加減してくれたんだよ」  
 
まったくしていない。  
 
「そうだな。彼女はいつも親切だからな」  
 
特に関係がない。  
 
因みに件のかなめは、生徒会の用事で未だ学校に居残り中である。  
宗介は彼女の用事が終わるまで生徒会室で待っているつもりだったが、体の節々が痛そうな彼―――さすがの宗介といえど、扉を突き破り表に放り出されれば、ギャグ漫画程度の怪我はするのだ―――を見兼ねたかなめに、  
 
「早く帰らないと、今後一切晩ご飯作ってあげないからね!」  
 
と無理矢理帰宅させられたのだ。恭子は宗介のお守り役である。  
 
「それはまぁいいとして……愛とはなんだ?愛が無いと言われても、愛が何かわからなければ話にならない……」  
 
「……うーん……辞書に載ってるような意味ならわかるけど、多分そういうことじゃないよね?……難しいなー……なんだろ?わたしも良くわかんないなー」  
 
天使のような笑顔で、それでも幾分申し分なさそうな顔をする恭子を見て、宗介はさも意外そうに、  
 
「そうか。常磐にもわからんことがあるのだな」  
 
と呟いた。  
 
「ふふっ、そりゃそうだよ。なんで?」  
 
「いや……ただなんとなく君は、こういう心理的なある種の象徴的なことに詳しいような気がしてな……君はよく千鳥の考えていることについて、俺にアドバイスをくれるだろう?だから常磐なら千鳥の言う『愛』とはなんなのか、知っているような気がしたのだ」  
 
他の何気ない単語と同じ愛想の無い声で、『愛』という単語を発する彼の唇が妙に滑稽で、恭子は宗介にばれないように小さく忍び笑いをした。  
 
「カナちゃんの考えはわかりやすいからねー。でも愛については……うーん、やっぱりわかんないかな」  
 
一瞬の間。  
天使の笑顔はそのままに瞳だけが潤んで、なにか惚けたような色に変化した。恭子は、  
 
「……多分本当の愛っていうのは、誰かを本気で愛したり愛されたりしなきゃわかんないんじゃないかな?」  
 
と、いつもと変わらない調子で言った。  
 
「なるほど」  
 
今のは気のせいか?―――既に恭子の瞳は普段と同じ色に戻っていて、宗介は、今の彼女の変化は、秋の陽光が見せた幻であると結論付けた。  
恭子は前を向き、宗介に問い掛ける。  
 
「……相良くんは誰かに愛してるって言ったり、言われたりしたことある?」  
 
ほんの僅かな俊巡のすえ。  
 
「……言った記憶はないが……言われたことならあるぞ」  
 
「そのときどんな気持ちになった……?」  
 
天使の笑顔なのに、宗介が気付くか気付かないかの、ほんの一瞬だけ泣き出しそうな顔をして―――恭子は考える―――誰だろう?カナちゃんは……素直じゃないから言うわけないし……もしかして佐伯さん?いや。最近仲良さげな東海林さんという可能性も……?  
 
『愛してるぜぇーカァシムゥー』  
 
残念。正解はガウルンである。  
 
「最低最悪の気分になった。反吐が出そうだった」  
 
「そ、そう」  
 
予想外の反応に、恭子は苦笑して、少し転びそうになってしまった。苦笑いのなかに、なぜか少しホッとしたような造作がかい間見える。  
 
宗介は考える―――あの馴れ馴れしい糞野郎たるガウルンでさえ、人を愛することができたのだから、俺にもやってできないことではないのではないだろうか……?とりあえず愛し方さえわかれば―――。  
 
「……愛がなんなのかはわからんが、とにかく俺も、人を愛することが出来れば、愛のある人間になれるのだろうか……?」  
 
そんな単純な話じゃない気もするけど?―――と思いつつも、恭子は消極的に賛成する。  
 
「そうだね。かもしれないねー」  
 
「だが俺にはそもそも、どうすることが愛するという行為になるのか……人の愛し方というのがわからん……」  
 
宗介は自分の無知を恥じ入るように、視線を伏せがちにして言った。そんな彼の様子がとても、とても可愛くて。  
 
「……じゃあさ、わたしが人の……女の子の愛し方、教えてあげようか?」  
 
もういい。奪ってしまおう。たとえ彼の心が彼女にあるとしても―――こと、戦争と恋愛に関しては、あらゆる手段が肯定されるのだから―――。  
 
「……うん、今日はカナちゃん家に泊まってくから……心配しないで……うん……それじゃ、うん……」  
 
恭子は携帯電話をきり、ポケットにそれをしまい込んだ。後ろに立つ宗介に向き直り、いたずらっ子のような顔で、  
 
「えへへ……お母さんに嘘、ついちゃった……」  
 
と言った。  
いつもとは違う、少しだけ高揚したような、背徳感を孕んだ彼女の笑顔が酷く妖艶に見えて、宗介は彼女から視線を逸らし絆創膏が貼られた頬をポリポリとかいた。  
 
今二人は、宗介のセーフハウスの中。リビングへと続く廊下に立っている。時刻は夜の七時。  
まだ電気を付けていない室内は、お互いの表情を見るだけで限界といった調子で、室温もなぜか外より低いように感じられる。  
黙って照明のスイッチを入れる宗介に恭子が声をかける。  
 
「……少し寒いね」  
 
「今、暖房をつけ……」  
 
エアコンのリモコンを探る彼の背中に、儚いくらいの重さがのしかかる。  
体の前に恭子の腕が回されて、我知らず高鳴る心音を誤魔化すように、  
 
「……常磐?」  
 
憮然とした声で宗介は言った。  
前に回された恭子の腕が、僅かに震えている。  
 
「……今からわたし達がなにをするのか……相良くん、わかってる?」  
 
「なにとは?人の愛し方について、君が教えてくれるのではないのか?」  
 
彼はなにもわかっていない、そんなことはわかってる。  
だから愛とはなにか、何ていうことを異性に簡単に聞けるのだ。  
だからわたしの誘いにのって、今もわたしの腕に、抱かれたままでいてくれるのだ―――わたしは彼の無知につけこんで、思いを遂げようとする卑怯者だ―――。  
 
「今からすることは、みんなには内緒だよ?……特にカナちゃんには、絶対言っちゃダメ」  
 
「なぜだ?」  
 
「なんでもだよ……とにかくこれはわたしと相良くんだけの秘密ね。いい?」  
 
「……了解した」  
 
有無を言わさぬ勢いで言葉をつむぐと、宗介はしぶしぶながらも了解した―――特にカナちゃんには、絶対言っちゃダメ―――ごめんね、カナちゃん。でも、いつまでも煮え切らないカナちゃんも悪いんだよ?  
……相良くんがカナちゃんのこと大好きだから、あんなに応援してあげたのに……相良くんがカナちゃんのこと大好きだから……。  
 
「……常磐?」  
 
背後から忍ぶような嗚咽が聞こえてきて、宗介は恭子に向き直った。  
 
彼女は天使のような顔をくしゃしゃにして、大粒の涙を流している。  
両手の甲で滴る涙を必死に拭うが、それでもなお涙は流れ出て。  
 
宗介はまったく意味がわからず、脂汗を流しながら反射的に謝った。  
 
「すまん常磐……俺はまた、君に酷いことをしてしまったようだ……」  
 
崩れおちた恭子の高さに合わせて、宗介が屈みこむ。  
 
「ご、ごめん……違うのこれは……その……むしろ謝るのはわたしの方で……もう……自分でもよくわかんないよぉ……」  
 
「なぜ謝る?君はなにも悪くない。頼む、泣き止んでくれ……いつも笑っている君が……泣いていると、俺は……」  
 
「本当は相良くん……愛とか……そういうことわかってるはず……  
そ、そうじゃなきゃあんなにカナちゃんのこと大事に思えない……ごめんカナちゃん……ごめんね相良く……」  
 
「……もういい。やめろ」  
 
言葉の意味はよくわからない。だが、自分の言葉で自分の身を切り刻むような彼女が見ていられなくて。どうにか力ずくにでも黙らせてしまいたくなって。  
 
宗介は恭子の両肩を抱いて、常よりもほのかに赤く、滴る涙でてらてらと光る彼女の唇に、自分の唇を重ねた。  
人工呼吸とは違う。そんなことはもうわかっている。できるだけ優しく、それでいて力強く。  
 
「ふっ…くぅ……」  
 
恭子の半開きの口の端から、艶っぽい息が漏れる。  
 
彼女の唇についた涙を舐めとると、涙には塩分が含まれているにも関わらず、それは仄かに甘いような気がした。  
唇で唇を噛み、彼女の前歯を僅かに舐め、そこからどうしたら良いものか―――不意に自分の下っ腹に生まれた熱い衝動を、細くか弱い彼女にぶつけて良いものか―――と俊巡した瞬間、恭子の腕が宗介の後頭部に回された。  
 
恭子の舌が宗介の歯の間に強引にねじ込まれる。彼女の繊細だが力強い舌が、隈無く宗介の口内を蹂躙する。舌と唾液がぐちゅぐちゅといやらしい音をたてる。  
宗介の股間は痛々しいまでに硬くなり、恭子の股間もまた、僅かに湿り気を帯びてきた。  
恭子は宗介の性器の感触を太股に感じ、また、自分が欲情しているのが彼にばれてしまうような気がして、そっと宗介から体を、唇を離した。  
 
互いの唇の間に、互いの唾液によって橋ができる。宗介は名残惜しそうに恭子の唇を見つめると、口内に残った彼女の唾液をごくりと飲み込んだ。恭子も口元を拭うこともせず宗介の唾液を飲み込むと、天使の笑顔―――それでいて淫靡な表情で言う。  
 
「……これが女の子の愛し方、レッスンワンだよ……なんちゃって」  
 
そしてまた、いたずらっ子っぽく笑った。  
 
「……片方だけ先に裸になっちゃダメだよ?……交代交代に脱いでって……相良くん、ワイシャツ脱がせて……」  
 
寒々しい蛍光灯の下で、すでにワイシャツを脱ぎTシャツ姿の宗介が、恭子の襟元のボタンに手を掛ける。  
 
一個。二個。三個を外したところで、恭子の胸の膨らみ―――かなめと比べれば小振りだが、それでも予想外にグラマラスな―――と、水色のブラジャーが露になる。宗介はボタンを外す手を止め、白く柔らかそうな胸元を凝視し、  
 
「まだダメだよ……脱いでからじゃなきゃ。すぐに触らせてあげるから。ね?」  
 
と笑顔の恭子に嗜められた。  
 
恭子のワイシャツを脱がし終え、今度は自分のズボンを脱ぐ。  
灰色のボクサーパンツの上からでもわかるそれは、これ以上ないまでに勃起している。突起の先端がカウパー腺液―――通称、我慢汁で湿っているのを見て、恭子は自分の体を見て彼が興奮しているという事実に嬉しくなった。  
 
「……ありがと」  
 
ポツリと呟く。  
 
「なんだ?」  
 
「ううん、なんでもない。ほら、次はスカートだよ」  
 
恭子は努めて明るい声で言った。  
宗介の手がスカートのホックをいじる。が、焦燥からかなかなか取れない。  
いつもは凄く複雑で物騒な機械ばかりいじってるくせに、スカートさえまともに脱がせられないのだ。  
本当に初めてなんだ―――恭子はそう思い、眼下で焦っているザンバラ頭が愛しくて愛しくてたまらなくなった。  
 
「……すまん」  
 
恭子は宗介の手を取り、うまくスカートを脱がせるよう指導してやる。  
 
「初めてなんだから仕方ないよ……なんだか嬉しかったし……それに、わたしも初めてなんだよ?」  
 
「なにがだ?」  
 
「……こういうエッチなことするの」  
 
彼に遠回しな表現は通用しない。それにも関わらず恥じらいが、恭子の口に蓋をして、セックスという言葉だけはどうしても言えなかった。  
 
「これはエッチなことなのか?」  
 
股間をあれだけ腫らしといて、一体この男はなにを言っているのか?恭子は彼の常軌を逸した鈍さに、急激に不安になった。  
 
「そうだよ……わたしが相手じゃイヤ?」  
 
今にも泣き出しそうな顔で言う。  
 
「そんなことはない」  
 
宗介はきっぱりとそう言った。彼のはっきりとした物言いは、時々だが人を安心させる。  
 
宗介は恭子のスカートを脱がすと、自分のTシャツの裾を掴み、荒々しく脱ぎさった。間近でTシャツを払われて、仄かに汗の匂い―――宗介の匂いが、恭子の鼻先をくすぐる。  
 
「……傷だらけだね」  
 
率直な感想だった。  
彼女は宗介の脇腹の古傷にそっと触れて「……痛かった?」と呟いた。  
宗介の表情が幾分固くなる。恭子はしまった、と思った―――恭子が撫でるその傷は、順安でかなめを守るために負った傷だった―――当然恭子に、そんなことはわからない。だが、わざわざこんな時に過去を掘り返すようなことを言うべきではなかった、と後悔した。  
お願い。過去のことなんて考えないで。今は、今だけは―――わたしのことだけを考えて―――。  
 
「痛かった……が、常磐が撫でてくれたおかげで、もう痛くない」  
 
頬をかきながら宗介はそう言った。  
再び泣きそうな顔になった恭子をどうにか笑わせたくて、宗介は慣れないジョークを言った。はっきり言って全く面白くない。それでも恭子は晴れやかに笑い、「よかったね」と言った。  
 
 
「次はブラジャーだね」  
 
ひとしきり笑うと恭子は、自分のブラジャーの下部に両手をあて、胸元を強調しようとした。が、虚しくなって止めた。どうせすぐに見られてしまうのだ。今更虚勢をはったところで意味はない。  
 
宗介は彼女の背後に回ると、ブラジャーのホックを外した。慣れたのか、恭子と目が合わないため幾分緊張が和らいだのか判然としないが、今度はすんなりと外すことができた。  
 
ブラジャーが重力に従って床に落下する。恭子の柔らかな乳房が外気に触れ、乳首が心持ちひんやりとした。彼女は身を固くした。  
 
見たい。触りたい。どんな色をしている?どんな感触をしている?どんな味をしている?  
 
 
「まだダメ……!」  
 
正面に回ろうとする宗介に背を向けて「恥ずかしいよ」と小さく呟く。  
 
普通の男なら有無を言わさず襲いかかっいるところだ。が、ここでちゃんと言うことを聞くのが、宗介が宗介たる所以である。彼は忠犬の気質を持つ男であった。  
恭子は胸元を押さえ、宗介に背を向けて深呼吸をし、精神を落ち着かせる。  
 
「……恥ずかしいから、同時に見せっこしよ?……相良くんがわたしのパンツを後ろから脱がせて、相良くんもわたしの後ろで自分のパンツを脱ぐの……ダメ、かな?」  
 
宗介は熱く込み上げる衝動を、無理矢理に押さえつけ、「いや、かまわん」と愛想の無い声で言った。  
 
宗介は素早くボクサーパンツを脱ぐと―――途中、勃起したペニスがパンツのゴムに引っ掛かったりしたが―――恭子の背後に屈みこんだ。  
水色の生地に包まれた柔らかそうな尻肉。それだけで宗介のペニスは、人生最大までいきり立った。  
パンツの横の部分を両手で持ち、徐々に下へとずらしていく。  
まず最初に尻の谷間の上端が見え、パンツのゴムの上に尻肉がのる。今にも、本能的にペニスをねじ込みたくなる衝動を、歯を食い縛り必死に耐える。  
 
無垢な、それでいて性欲を掻き立てる尻が完全に露出したあたりで、恭子は急に両足を閉じた―――もし、パンツから糸が引いてたらどうしよう―――自分の尻に突き刺さる宗介の視線を感じて、触られてもいないのに恭子の股間はびちょびちょに濡れていた。  
 
「常磐……もう少し足を開いてくれ。パンツを脱がせられない」  
 
「ご、ごめん」  
 
恭子は最低限だけ股を開き、腰をよじり、尻を揺すり、どうにか股間が濡れているのを誤魔化そうとする。が、目の前で丸出しの尻を振られて、宗介はたまったものではない。ただでさえ我慢ならないのに。触れてもいないのに射精してしまいそうだ。  
 
宗介は触れるギリギリまで、股ぐらに鼻を近付けると、その場で思いっきり匂いを吸い込み、ねじ込みたい衝動をどうにか押さえ込んだ。  
 
「……脱げたぞ」  
 
「ありがと……じゃあ見せっこしようか?」  
 
別に運動をしたわけでもないのに、恭子の呼吸はすでに乱れている。それは宗介も同様だった。呼吸器の障害だろうかと一瞬疑い、今は彼女のことだけを考えようと、頭からその疑いを弾き出す。  
 
「振り向くよ……いい?」  
 
「ああ」  
 
恭子は自分の胸を抱いていた手を、背中にまわすと、ゆっくりと宗介を振り返った。  
 
最初は首だけを捻り、照れたように笑う顔が。  
次に腰を捻り雫石のように無垢な乳房が。  
最後に足を右足を軸に回転させ、可愛く生え揃った、いやらしく濡れそぼった隠毛が宗介の視界に飛び込む。  
彼女の肢体は白石の彫像のように白く純真なのに、なぜかぬらぬらと淫靡に濡れているような気がして、もう、本当にどうしようもなくなってしまって―――彼のペニスが脈動し、我慢汁を滴らせる。  
あまりにもグロテスクな見た目と動き。  
 
その正直すぎる反応に気付いて恭子は、  
 
「相良くんのエッチ」  
 
と頬を赤らめて言った。  
 
―――恥ずかしい。いやらしい……だけど、愛しくてたまらない―――  
愛情と不安と好奇心で、心臓が破裂してしまいそうだ―――張り詰めた『それ』にわたしが触れたら、彼はどんな顔をするのかな?どんな動きをするのかな?  
……確かめたい……でも、『それ』を触りたいなんて彼に言ったら、エッチな女だって軽蔑されちゃうんじゃ……そんなのイヤ。絶対にイヤ……イヤだけど……でも、でも―――。  
 
「……常磐?」  
 
恭子の視線が自分の『それ』に注がれているのに気付いて、宗介は少し落ち着かない気分になった。  
 
「え!な、なに相良くん?」  
 
「いや……君はその……俺の性器に興味があるのか?」  
 
どこまでもデリカシーのない物言い。  
恭子は今まで以上に顔を赤くして「あの、その……」と言葉を探す。が、上手い言葉が見つからない。彼の言葉は珍しく的を得ていて―――恭子は白状した。  
 
「……うん……興味あるよ?……ダメかな?相良くんはそ、その……」  
 
『それ』のことをどう呼んだら良いものか。『それ』にも『それ』なんかじゃない、ちゃんとした呼び方が合って……でもそれは凄く恥ずかしい呼び方。  
でも、でも、実際に口にしてみたら、物凄くやらしくて気持ち良いかもしれなくて……もういい。言ってしまおう。どうせこれから、もっと凄いことするんだから。  
 
「そ、その、おちんちんに興味ある女の子、キライ?」  
 
俊巡。  
 
「……常磐。『おちんちん』とは、なんだ?」  
 
肩透かし。宗介は日本語に堪能だが、いわゆる幼児語については詳しくない。  
もっと形式張った的確な言い方でないと、彼に伝わらないことを悟り、恭子は真っ赤な顔でまくしたてた。  
 
「ペニス!男根!男性器!ちんこ!ちんぽ!うまい棒!の、ことだよ!」  
 
「常磐。あまりそういう言葉は、大声で言わない方がいい……」  
 
相良くんのせいでしょ!と言い返す気力もなく、恭子はうなだれた  
―――最悪……もう完全に嫌われた。少し苛立ったからって開き直ってあんな言葉を叫んで……どうしよう。また泣きそう―――。  
 
「嫌いじゃないぞ」  
 
宗介の言葉の意味が一瞬掴み取れず、恭子はきょっんとした顔で彼を見上げた。  
 
「『おちんちん』に興味がある女性のことだ。俺は嫌いじゃない。なぜなら俺もそうだからな」  
 
意味がわからない。いや、わかる。彼は自分のおちんちんに興味があると言ったのではなく、つまり、つまり―――。  
 
「俺も君の体……特に胸や、俺でいう『おちんちん』がある部分に興味があるからな……それに、何事にも興味を持つことは良いことだと思うぞ?」  
 
「そ、そう。ありがと……」  
 
この男はしれっとした顔で、とんでもないことを言ってのける。  
 
たとえ興味があるとしても、普通本人の前では言わない。他の人が言ったら完璧にセクハラだ。  
なのに、彼が言うとなんでこんなに胸が高鳴るのだろう。  
 
「じゃあさ……おちんちん、もっと近くで見てもいいかな?」  
 
「かまわんぞ」  
 
直立した宗介の前に、恭子はひざまづいた。  
鼻先数センチのところに努張したペニスがそそり立つ―――眼鏡、邪魔だな―――眼鏡も、髪もといていないことに今更気付いて、恭子は丸眼鏡と緑のリボンをあわただしく外す。  
髪をといた恭子は、常より少し大人びて見えて、宗介は図らずもドキドキとしてしまう。  
その間も恭子の視線は、目の前のペニスの裏筋に注視されていた。  
すごい。すごいすごい。わたしにはついてない……変な筋がいっぱいで……多分、他の人のだったら気持ち悪くて見てられない……なのに、相良くんのだと思うと見てるだけじゃ我慢できなくて。  
 
「……触っていい?」  
 
「……ああ」  
 
隠語の連呼は無駄ではなかった。恥ずかしすぎる言葉を口走ったことで緊張がほぐれ、大胆に攻めることができる。  
眼前のペニスに右手を伸ばす。白く細く、小さな手。人生で初めて異性に触れる指先、ペニスの根元に絡み付く。全長を覆うのに片手だけでは足りず、恭子は左手を、鬼頭の上に被せた。それだけでペニスが脈動し、我慢汁を滴らせる。  
 
「えへへ……ベタベタだね」  
 
宗介の我慢汁は尋常の量ではなかった。もともと体力があるうえに、彼はオナニーをしない。無駄に体力を消費する愚かな行為だと言って、射精は夢精以外ではしたことがなかった。  
そして体調の問題か、ここ二週間ほど夢精していない。金玉が重い。  
 
「これ知ってるよ……が、我慢汁って言うんでしょ?……こんなに一杯出るんだ……すごいね」  
 
普通は出ない。彼は特別だ。  
恭子の手はまるでローションをいじったかのようにぬるぬるとしている。今この瞬間さえ、ペニスの先端から、こんこんと泉の如く湧き出る我慢汁。恭子の綺麗な指の動きにあわせて、ぐちゃぐちゃと卑猥な音をたてる。  
彼女はペニスを上下に擦るようなことはせず、握る手をゆるめたり、力を入れたりと、グッパーグッパーしていただけだったが、宗介は砕かんばかりに奥歯を食い縛り、良く知る『中佐』や『少佐』の顔を思い浮かべ、耐えなければならなかった。  
手の中でビクビクッとペニスが脈動する。すごくやらしい。グロテスク。こんなの入るのかな?わたしには大きすぎないかな?……でも必死で、射精を我慢する姿は、少しだけ可愛いかったりして。  
 
「えい!」  
 
「と、常磐!?」  
 
いきなり腰に抱きついてきた恭子に、宗介は驚きの声をあげる。  
彼の鍛えられた腹筋にグリグリと額を擦り付け、彼の匂いを胸一杯に吸い込む。  
手の平で尻を揉む。固い。でも弾力と張りがあって、なんか気持ちいい。  
ペニスに胸を押しつける。わざと鬼頭が乳首に当たるようにし身体を捩る。指で触れるよりも熱い。ぬるぬるしてて気持ちいい。脈動がより強く感じられる―――もうずっとこうしていたい―――。  
宗介のペニスが、恭子の存外大きなおっぱいにズブズブと埋没していく。まるでおっぱいに挿入しているような感触に―――  
柔らかい。吸い付くような肌。優しくてやらしい匂い。常磐の心臓の鼓動が、股間に伝わってくる―――宗介は「あぁ……」と短く呻いた。  
その声を聞いて気を良くした恭子は、彼の腰を抱いたまま自分の身体を上下に揺すり、おっぱいをペニスに強く擦り付けた。  
まるで宗介の身体全体がペニスになり、恭子の白い身体―――白い指によってシゴかれるような錯覚。背筋を蟻が這いずるような快感が宗介を襲い、ほどなく限界を迎えた。  
 
「くぅ……!」  
 
「きゃっ!?」  
 
胸の谷間でペニスが一際強い脈動を見せ、濃い、白子のような精液を吐き出しながら暴れ狂う。  
恭子はあまりの精液の量に驚きながらも、一層強く宗介の腰を抱き、おっぱいをペニスに押しつけた。  
 
「ぇ、えっ!……す、すごい!まだ出てるよ……」  
 
宗介の射精は30秒ちかく続いた。  
その間恭子はずっと、彼の精液を全て受けとめるように、ペニスの上に覆い被さり続けた。柔らかい胸も、天使のような顔も、明るい色の髪も、濃い精液でドロドロだ。  
宗介は手に自身の精液がつくのもかまわず、彼女の髪をすくように撫でると、  
 
「すまん……汚してしまったな」  
 
と謝罪した。息が荒い。  
 
申し訳なさ気な彼の顔を見てられなくて、恭子は明るい声と、表情で言った。  
 
「大丈夫だよ!最初からこうなるのはわかってたし……それに、さ、相良くんの精液は汚なくなんかないもん!……って、ひゃっ!」  
 
宗介は膝立ちになって恭子の顔を覗きこみ、彼女の頬についた精液を舐め取った。  
脇の下に腕を回し、やさしく抱きながら顔中を、肩や胸まで舌を這わせる。キスするように、ついばむように舐めたかと思えば、今度は舌を根本まで出して、ベロンベロンと舐めてきたり……なんか本当に犬みたい、恭子はそう思った。  
 
「えへへ……相良くん、くすぐったいよぉ……ふふっ」  
 
宗介は無言で舐め続ける。精液は変な味だ。でもなんだ?常磐の肌は少し甘いというかなんというか……。  
 
「君はうまいな」  
 
「えっ?」  
 
エッチが上手いという意味だろうか?違う。相良くんは多分……。  
 
「ひゃうっ!」  
 
「うむ。やはり美味い」  
 
綺麗な桃色。今まで恭子以外に誰も触れたことがない乳首に舌を這わせ、彼は言った。  
傷つけないように細心の注意を払いながら、乳首に吸い付き、舌先で弄ぶ。ちゅぱちゅぱっという淫らな音を聞いて―――やってることは赤ちゃんと変わらないのに、なんでこんなに気持ちいいの?―――と恭子は思った。  
 
「おっきな赤ちゃんでちゅね〜。恭子ちゃんのおっぱいはおいちぃでちゅかぁ〜?」  
 
恭子は照れ隠しに、幼児語―――赤ちゃん言葉で問い掛けた。宗介はちゅぽん!という音をたて、乳首から口をはなし、  
 
「うむ。君のおっぱいは美味いぞ」  
と答えた。  
 
「ダメだよー。赤ちゃん言葉で聞かれたら、赤ちゃん言葉で答えなきゃいけないんだよ?」  
 
「そうなのか?……だが、俺はその赤ちゃん言葉というのが、いまいちよくわからんのだが……」  
 
それは日頃見慣れた人間にしかわからない些細な変化だが、本当に困ったというような顔をする宗介が、滑稽で。それでいて愛しくてたまらなくて。  
 
「じゃあわたしの後に続けて言ってみて?」  
 
「了解した」  
 
自分で言うのって、なんか馬鹿っぽくて恥ずかしいけど。  
 
「恭子ちゃんのおっぱいは……え〜と……ねぇ相良くん。わたしのおっぱいってどんな味がするの?」  
 
復唱させる台詞を言う途中で、恭子の脳裏に妙な疑問が浮かんできた。  
おっぱいが美味いってどんな味だろう?……自分じゃ舐めたことないし……まさか、肉の味ってことはないよね!?  
 
「なんというか……本来は無味。もしくは汗のしょっぱさくらいしか感じられないはずなんだが……何故か君のは……」  
 
珍しく歯切れの悪い返答。変な質問だったかな?と恭子は思った。  
 
「……何故か君のおっぱいは……かすかに甘い……優しい味というか、舐めてると酷く安心する。そんな味だ。とにかく美味い」  
 
彼が誉めてくれてるのはわかる。でも結局、どんな味なのかはいまいちわからない。そもそも安心とは、興奮と逆の言葉ではないだろうか?こんな状況で果たして喜んでいいものだろうか?と恭子は思った。  
が、太股に再び熱く、硬くなったペニスを感じ―――まぁいっか。欲情はしてくれてるみたいだし―――と自分自身に言い聞かせた。  
 
「じゃあさ……わたしのおっぱい、好き?」  
 
「ああ。好きだぞ」  
 
「大好き?」  
 
「大好きだぞ」  
 
『好きだ』と一言言われるだけで、些細な不安など掻き消えてしまって。  
 
「うふふ……ありがと。じゃあ言うよ!これはさいじゅうようにんむだから、一字一句間違えず復唱すること!いい!?」  
 
「りょ、了解した」  
 
恭子の妙な物言いに、宗介は少しだけ狼狽えた―――軍隊ごっこ、なんちゃって。言い慣れない言葉だから少し変だったかな?  
 
「恭子ちゃんのおっぱいは、甘くておいちくて大好ゅきでちゅう〜……はい!」  
 
「……きょ、きょうこちゃんのおっぱいは、甘くて、お、おいちくて大好ゅきで、ちゅう〜」  
 
「よくできました!偉いね〜」  
 
宗介の物言いは思った通りたどたどしくて、少し恥ずかしそうで、それでも一生懸命で―――なんかいいかもしれない……『きょうこちゃん』って―――思い付きをそのまま口に出してみる。  
 
「ねぇ相良くん。さっき言った『きょうこちゃん』って……その、どうだった?」  
 
「どうだった、とは?」  
 
皆目見当もつかんといった様子の彼の前で、うつむき、指先をいじいじと弄びながら恭子は言う。  
 
「わたしの呼び方……『きょうこちゃん』って呼びやすい?」  
 
宗介は口のなかで、三回『きょうこちゃん』と呟いてから、  
 
「どうも言いにくいな。少し長い」  
 
と言った。  
落胆。別に呼び方なんてどうでもいいけど、いつまでも名字じゃ少し他人行儀なんじゃないかと思ったりして……そんな乙女心の機微なんて、彼には絶対わからない、と納得している自分がいて。  
 
「そもそも俺は、ちゃんとか君とか、そういうのが苦手なのだ……『きょうこちゃん』よりも単に『恭子』と呼ぶ方が、楽でしっくりくるな」  
 
宗介に『恭子』と呼ばれた瞬間、妙な快感が股間からうなじまで駆け上った。  
人間には、他人に支配されたいと思う心の働き、欲求があるという。『恭子』と下の名前を、呼び付けで呼ばれた瞬間、自分が彼の物になってしまったような錯覚に陥って。  
 
「うん、それいいね!……恭子……今夜はわたしのこと、恭子って呼んでよ……いいかな?……宗介くん……?」  
 
さりげなく名前で呼んでみる。前々から言ってみたかった。でもなんか恥ずかしくて、今までの関係が壊れてしまいそうで……でも、やっと言えた。彼は何も言わず受け入れてくれるかな?  
 
「……わかった、今日は君のことを恭子と呼ぼう」  
 
「ありがとう……宗介くん!」  
 
本当は今夜だけでなく、ずっとずっとそう呼んで欲しいけれど。  
 
普段は使わないベッドの上で、二人して見つめ合って。  
 
「宗介くん、宗介くん」  
 
「どうした?恭子」  
 
「えへへ、呼んでみただけだよ」  
 
『宗介くん』と彼を呼ぶのも、『恭子』と彼に呼ばれるのもくすぐったくて、楽しくて、気持ち良くて―――用もないのに何度も彼の名を呼んでしまう。  
そのたびに彼は律儀に『恭子』と呼び返してくれて、わたしは、今の自分の気持ちをどう表現するばいいのかと気をもんでしまって―――結局、一番シンプルな言葉へとたどり着いた。  
 
「宗介くん、大好きだよ」  
 
言いながらしなだれかかるように、彼の首に抱きつく。  
 
「俺もだ。恭子、好きだ」  
 
彼の温かい息が耳をくすぐり、初めて『恭子』と呼ばれた時のように、背筋がゾクゾクとした。  
 
恭子は帰り道での会話を回想する―――わたしが宗介くんに『愛してると言ったことがあるか?』と聞いたとき、彼は確かにこう言った。  
 
『……言った記憶はないが……言われたことならあるぞ』  
 
もしかしたら彼の言う『大好き』は、友人に使う『大好き』とそう変わらないものなのかもしれない。  
でも、こんな風に抱き合って、彼の甘い言葉を聞いたのは、今はまだ地球上でわたしだけのはずで。  
ただそれだけで、彼女の胸は、これ以上ないまでに満ち足りる。  
 
「ぎゅーっ」  
 
と言いながら恭子は、両腕に力を入れ、互いの身体を密着させた。  
自分の頬を、彼のバッテン印がついた頬にスリスリと擦り付ける。  
白い乳房が宗介の硬い胸板に潰されて変形し、脇の下からはみ出した。  
 
「宗介くんの匂いがする」  
 
首筋に顔を埋め、恭子は言った。  
彼女は宗介の腰に両足を回すと、股間の土手、恥丘をペニスの根本に擦り付ける。  
互いのお腹の間に努張したペニスが挟み込まれてペニスの根本から、何か熱いものが込み上げてくる。  
 
熱い。硬い。ぬるぬるしてる。ビクビクしてる。  
 
「ふふっ……宗介くんもぎゅーってしてー。ぎゅーって」  
 
宗介は彼女の背中に手を回すと、優しく、それでいて力強く抱き締めた。  
彼女は痩せていて、その肉の中にはしっかりと骨格が埋没しているはずなのに、なぜこんなにも柔らかい?  
思いっきり力を入れれば、その肩や腰はどこまでも細くなっていってしまいそうで、宗介は爆弾を解体するとき以上の繊細さで彼女を抱き締めた。  
 
互いの股間がさらに密着して、恭子の一番敏感な部分が、宗介自身の根本に強く擦り付けられて―――やだ、なんか気持ち良くなってきちゃった―――彼女は身をよじり、いやらしく腰を揺する。  
 
男と女、互いの体液が交ざりあって、ぐちゅぐちゅと淫靡な音をたてる。  
 
「恭子……!」  
 
「わっ!?」  
 
我慢の限界だった。宗介は恭子を腰にのせたまま、彼女ごとベッドの上に倒れこむ。倒れこんだ衝撃で腰に回されていた彼女の足がゆるみ、ベッドの上に投げ出された。  
 
やっぱりね、と恭子は思った。急に無口になったから、もしかしたらって思ったけど……そうだよね、男の子だもんね。むしろここで宗介くんの理性を吹っ飛ばせなきゃ、女が廃るというかなんというか……。  
 
「……宗介くん酷い顔してるよ?」  
 
いつのまにか絆創膏が剥がれてしまった頬に手を添えて、恭子は言う。  
 
「悲しいの?……それとも寂しい?」  
 
見上げた彼は、なにか取り返しのつかないことをしてしまったような顔をしていて、思わず恭子は声をかけた。  
 
少しわたしを乱暴に扱っただけで、こんなにも恐怖に奮えて―――嫌いになると思った?わたしがどこかへ行ってしまうと思ったの?―――そう思うんだったら―――  
 
「もう一回ぎゅーってして」  
 
わたしのこと、ずっと捕まえていてよ。  
恭子の天使の笑顔に励まされて、宗介の顔から険しさが消える―――自分の体重が彼女の身体にかからないように肘や膝を張りながら、慈しむように細い肢体を抱き締めた。  
 
「……恭子」  
 
「ん……うっ……」  
 
貪るようなキス。今度はさっきとは逆に、宗介が舌をねじ込んだ。  
 
口内を犯す。唾液をさらい、濡れる舌に絡み付いて。  
まるで何かを捜し求めるように、上顎や歯の裏、唇の裏や奥歯のそのまた奥まで舌を伸ばす。蹂躙する。  
彼女の口内から唾液を吸出し、自分の口内で淫らな音をたてながら自分の唾液と混ぜ、また彼女の口内に流し戻す。  
おいしそうに喉を鳴らしながら、唾液を飲み干す彼女を間近に感じて、宗介は世界に受け入れられたような安堵感を覚えた。  
 
「宗介くんのエッチ」  
 
息継ぎに離れた濡れた唇が、そんな言葉をつむいだ。  
 
無意識だった。無意識に宗介の右手は、背中から彼女の左の乳房に移動し、左手は彼女の股間をまさぐっていた。  
宗介が乳房を揉みしだき、濡れそぼった割れ目に指先を埋めるたびに、恭子は「あっ……やぅ……!」と苦し気な声をあげる。  
 
「あ、んぅ!……宗介くん……宗介くん……!」  
 
彼の名を呼ぶのは気持ちいい。  
 
「……ひぅ!あぁ!ぃやぁ……あぁあ……ん!」  
 
本能だ。性知識に無学な宗介は、本能で恭子の性感帯を捉えた。親指が恭子のクリトリスを捉え、優しく擦り上げる。  
 
乳首は硬く勃起し、股間は宗介の腕どころか、シーツ、その下のクッションを濡らすまでグショグショに濡れている。断続的な痙攣。  
 
おしっこ漏らしちゃったかも……と思い恭子は半泣きになった―――初めてのエッチでこんなになっちゃうなんて、淫乱な娘だって思われたらどうしよう……でもしょうがないよ……だって、いつも宗介くんに触られるのを想像して、オナニーしてたんだもん―――。  
 
「え!ヤダ……!宗介くん、そこは……恥ずかしいよぉ……」  
 
自分の身体の上を、這いずるように下の方へ移動する宗介に気付き、恭子は声を荒げた。  
 
彼女は足を閉じ、進行を妨げようとするが、宗介の鍛えられた膂力に抗うことは出来ず、図らずも宗介の頭を両足で挟むような形になってしまった。  
宗介は眼前の、まだ誰にも見られたことのない秘所を、まじまじと見つめた。  
 
「やだやだぁ。恥ずかしいってば……そんなとこ汚いよ……きっと臭いし……宗介くんガッカリするよ?」  
 
だっておしっこ漏らしちゃったもん。  
 
「汚くないし、臭くもないぞ?」  
 
宗介は陰唇の割れ目に、鼻をぐりぐりと押しつけながら言った。恭子は「ひゃぅ!」と驚いたような嬌声をあげた。  
 
「絶対ウソ、だもん……?」  
 
「否定だ。君の股間はいやらしい匂いはしても臭くはないし、このヒダの色や形も、俺は、とても綺麗で魅力的だと思うぞ?」  
 
思ったまま、見たままをそのまま口にする。それが宗介の欠点であり、また美点でもあった。  
いやらしい匂い?ヒダの色、形が綺麗?嬉しいような、そうでもないような。  
 
「……宗介くんは、わたしのおま……おまんこのこと、好き?」  
 
「……おまんことは?」  
 
バカ。  
 
「……目の前にあるもの」  
 
「好きだぞ」  
 
やっぱり嬉しい。彼が『好きだ』と言うだけで、またしても些細なことはどうでもよくなってしまって―――まるで呪文一つで病を癒す、魔法使いみたいだ。  
 
宗介は舌を根本まで引き出すと、先程恭子の顔についた精液を舐め取ったときのように、股間をベロベロと舐めだした。  
酷く荒っぽい舐め方にも関わらず、時折的確に、恭子の濡れそぼった性感帯をくすぐる。  
彼の舌がアナルに触れたとき、恭子はたまらず短く鳴いた。  
 
「ふっ……ひぅ……!」  
 
「やはり君は美味いな」  
 
アナルが美味しいわけないでしょ!そんな言葉も自分の嬌声に掻き消されてしまって。  
良く通る、抑揚の無い声を発する彼の舌と唇が、こんなエッチな―――少し変態的かもしれない―――行為に使われているのが信じられなくて、もしかしたら彼は別人なんじゃないかと不安になる。  
けれど、自分の股間で蠢くザンバラ頭は、自分のスカートを脱がそうと悪戦苦闘していたそれと、同じように可愛くて―――愛しくて―――。  
 
キスをしたい。宗介はそう思った。この部分が大隠唇、そしてその内側が小隠唇と呼ばれることは、知識としては知っている。  
当然見たのは初めてだが……なるほど、確かに唇に似ているな―――この唇の中も、上の唇と同じように、仄かに甘く、優しい味がするのだろうか?―――。  
 
「ぁ、あぅ!?……そ、宗介くん?……そんなとこに挿れちゃ……んぅ!」  
 
宗介は舌先に力を込め、膣口に押し当てる。  
舌先を窄め、膣口を強引に押し拡げる。舌先が三センチほど膣内に挿入されて……味は……少し苦いか?……これならまだ肛門の方が……と愚にもつかない感想を持った。  
膣壁の味をすこしでも感じるように、舌を抜き差しし、唾液と愛液の混合液を撒き散らしながら膣内を蹂躙する。  
 
あぁもぉ!なんで宗介くんは、こういう恥ずかしいことばかりするのかな!?  
恭子は嘆く。それでも股間が、腰が熱く疼いて。我知らず腰を浮かせ、宗介の顔に大事な部分を擦り付ける。  
愛しいザンバラ頭を両手でわしゃわしゃと掻き抱き、両足を宗介の肩の上にのせ、首の後ろでクロスさせる。  
太ももやふくらはぎに力を込めて宗介の頭を抱き込むと、顔の下半分が恭子の股間と一層強く密着し、膣内で暴れる舌が、より奥深くまで挿入された――――もぉ……もぉ……!  
 
「んぁ!……宗介くん!宗介くん……好き……ぅあぅっ……もぉ……いやいゃあ!!」  
 
恭子が両手と両足で、宗介の頭を締め上げるのと同時に、膣が収縮し彼の舌先を締め上げた。  
恭子の細く柔らかい身体が全身を使ってうち奮え、膣周辺の分泌腺や尿道から、大量の潮が噴水のように吹き出した。宗介の顔がぐっしょりと濡れる。  
それでも彼は、舐めるのを、キスするのを止めてくれなくて。  
 
「やだやだぁ……もぉいいよぉ……」  
 
恭子は宗介の頭から両手をはなし、自分の顔を隠す。  
おしっこ漏らしちゃった……それもこんなに一杯。宗介くんに一杯かかって。飲まれちゃって……。  
厳密には潮は小水とは別物だが、今回が初めての潮吹きだった恭子に、そんなことはわからない。  
彼女は指の間から泣きそうな声で、  
 
「おしっこなんか飲んじゃダメだよ……?汚いから………お腹壊しちゃうよ?」  
 
と言った。  
 
「汚くないないし、腹も壊さん」  
 
宗介は股間から顔を上げ、両手で隠された彼女の顔を見上げる。  
手の下の彼女の顔は、もう天使のような笑顔をたたえていないだろう。真っ赤な色をして照れてる?もしかしたら怒っているかもしれない。それでも彼女の顔が見たくて。  
 
「君の身体の中で、もしくは君の身体から出るものに汚いものなどない」  
 
宗介は恭子の身体をよじ登るようにして移動した。手に覆われた彼女の顔と、自分の顔を近付ける。イヤイヤと彼女は首を振った。  
それにも構わず、彼は指の隙間から彼女の顔を覗きこんで、  
 
「君は自分の身体に俺の精液がかかったとき、言っただろう?俺の精液は汚くなんかないと……だから、君の身体から出る体液も、俺にとっては汚くなんかない。君の体液は俺にとって、君にとっての俺の精液と一緒なんだ……恭子……頼むから顔を見せてくれないか?」  
 
と言った。  
恭子は両手の下で更に顔を真っ赤にして、  
 
「……宗介くんのヘンタイ」  
 
ポツリと呟いた。  
変態と言われるのは心外だが、否定したところでなにも始まらない。  
宗介は自分の頬をポリポリとかきながら、  
 
「変態は嫌いか?」  
 
と問い掛けた。  
 
「ううん。ヘンタイな宗介くんも、好きだよ」  
 
両手の下から現れた顔は、真っ赤に染まり、目尻に涙がたまっているにもかかわらず、輝くような満面の笑みを浮かべていて―――ただそれだけで彼のペニスは、これ以上我慢ならないといった様相を呈してしまって。  
 
「……後ろからはちょっと怖いから、初めては前からにしようね?」  
 
恭子は、自分の腰の横に両膝を置いて、膝立ちになった宗介を見上げ、照れたように笑って言った。  
ぬらぬらと光るグロテスクなペニスが、視界に入る。  
触れてもいないのにビクンビクンと脈打っている。心なしか彼の息も荒い。互いの汗と愛液が混ざったやらしい匂いが、鼻について、それだけで膣がきゅぅと収縮する。  
早く欲しい。でも、怖い。  
 
宗介は後ろに下がり、彼女の両足の間に腰を落とした。  
彼はペニスを右手で掴むと、恭子の恥丘や隠裂、クリトリスに、亀頭と裏筋を擦り付ける。  
ヌルヌルになった生の性器と性器が触れ合って、凄く気持ちいい。にちゃにちゃと淫らな音がして、彼女の濡れた隠毛が亀頭に絡み付いた。  
 
「……挿れるぞ」  
 
と言ったくせに、なかなか入ってこない。  
さっきまであんなに舌をねじ込んで好き勝手していたくせに、膣口を見失ってしまったようで……亀頭が焦らすように陰唇を刺激する。  
宗介は自分で擦り付けているにもかかわらず、ただそれだけで射精しそうになってしまった自分を恥じた。  
 
「違うよ。それはおしっこの穴だよ……もう少し下……それは、うんちを出す穴……恥ずかしいから、触っちゃヤダよ?」  
 
さっき少し舐められたのに、今だにアナルは慣れない。  
 
「す、すまん……ここか?」  
 
「うん……よく見つけました……」  
 
皮肉なのか本当にそう思っているのか判然としない。  
 
やっとここまできた。不安で怖いけど、凄く嬉しい。どうしよう……また泣いちゃいそうだよ……。  
膣口に亀頭を押し当てて慎重に進めていく。実際には特に音などたっていないはずなのに、深く入るたびに、ズブズブと幻聴が聞こえてくる。  
宗介のペニスがカリを越えてもう少しいったところで、今までにない抵抗があって。  
メリメリとその『膜』を亀頭に裂かれながら―――痛い。熱い。苦しい。でも、嬉しい。このまんま根本までおちんちん嵌められて、二人して気持ち良くなって―――そして気付く。  
 
「んぁうぅっ!」  
 
突然、恭子が悲鳴を上げた。  
 
「どうした!?……痛かったか?」  
 
「ううん……違うの。ただ思ったより大きくて、お腹の中が苦しくなっちゃって……大丈夫だよ?……続けて……」  
 
心配そうな表情で問う宗介に向かって、見る人を安心させる笑顔で恭子は応えた。  
違う。違うの。確かに少し痛いし苦しい。でもそれは予想してたより全然マシで……宗介くんにいっぱい愛してもらったからかな……全然平気。  
それより問題なのは―――彼が今、ゴムをつけてないってことで……もしまたあんなに沢山中出しされちゃったら……赤ちゃんできちゃう、かも。  
そう思うと膣内が急激に収縮してしまって。  
まだ根本まで入ってないのに。  
 
「……恭子……もう駄目だ。射精るぞ……!」  
 
「ぇええっ!?」  
 
熱くて濃い精液が尿道より飛び出す。  
宗介は本能的に恭子の腰を抱き、射精しながら、根本までペニスを一気に押し込んだ。  
恭子の狭く浅い膣の中。子宮口に亀頭が叩きつけられ、彼女は「んぁああ!!」と叫び声をあげた。  
宗介はペニスを軸に恭子の腰を横に回転させ、子宮口をこじ開けんばかりにグリグリと亀頭を押し付ける。  
恭子の膣壁が宗介の射精に反応し、ぬらぬらと蠢く。  
外からくるものを内側に押し込むように膣壁が動き、宗介は自分のペニスが、彼女に吸い込まれてしまうのではないかと錯覚した。  
 
射精は再び30秒ちかく続き、膣口とペニスの隙間から、大量のスペルマが滴った。  
それはあまりの濃さ、粘性のため、すぐにはシーツの染みにならず、恭子の隠毛に絡み付いたり、恥丘から糸を引いてブラブラと二三度揺れたのち、やっとこ重力に負けるのだった。  
 
宗介くん、いくらなんでも、早すぎるよ……。  
 
膣から萎えたペニスをにゅぽんと抜かれ、横寝になった恭子は、上気した頭でそう思った。  
おちんちんはもう外に出たのに、まだなんか入ってるような気がするよ―――実際、大量のスペルマが膣内に残留していて、恭子が違和感から腰を捩るたび、こぽこぽと流れ出た。  
 
濃い精液が太もも、尻を伝ってシーツに流れ落ちる。……本当に赤ちゃんできちゃうかも……でも宗介くんの赤ちゃんなら、いいかな?むしろ欲しい。  
わたしと宗介くんの子供だったら、絶対可愛いよ!宗介くんって結構ハンサムというか、可愛い顔立ちしてるし……  
自分で言うのもなんだけど、わたしだって、可愛いくなくはないと思うよ!だってお母さんやお父さんが可愛いって言ってくれるもん!  
……名前はどうしよう……男の子だったら恭介、女の子だったら宗子、かな!?絶対どっちでも可愛いよ!  
……でもお腹が大きくなったら、もう高校には通えなくなっちゃうなー、今時中卒でも生きていけるかな―――と思い、宗介の今までの生き方を想像し、どうにかなるか、と考えた。  
 
学歴とかキャリアとか関係ないところで生きてきた彼と一緒なら、親子三人……子供は三人くらい欲しいから親子五人くらいどうにか生きていけそうな気がする……  
それに宗介くん、あんなに沢山高そうな機材もってるし、投資もしてて、兵器関係で外国ばかりだけどコネも沢山あるんだよねー……もしかしたら宗介くんって、結構将来有望なんじゃないかな?  
 
―――などと女の打算をしている恭子に、背後から宗介が声をかけた。  
 
「……すまん」  
 
えっ?どういうこと?  
 
「……だ、大丈夫だよ!お互い初めてなんだから、少し乱暴になっちゃったり……少しどころかもの凄く早かったけど……  
全然気にしてないから!……これから何回だってできるんだから、次回はもっと頑張ればいいんだよ?」  
 
そういう意味だよね?  
最後少し乱暴で、もの凄く早かったから宗介くん恥ずかしくなって、申し訳なくなっちゃって、謝ってるだけでしょう?  
 
「いや、そのことも確かに申し訳ないのだが……そのことではなくてだな……」  
 
もしかして、わたしに中出ししたこと後悔してる?―――やだよやだよ!宗介くんはわたしのもので、わたしは宗介くんのものなんだから!子供が出来ちゃイヤ?わたしは欲しいよ!?  
宗介くんが嫌だって言っても、わたしは絶対生む。絶対可愛いもん!二人なら育てられるもん!そうすれば宗介くんはずっとわたしと一緒だもん―――だからそんな申し訳なさそうな声、出さないでよ。  
 
目尻に大粒の涙をたたえ、懇願するような瞳で宗介を振り替える。  
そうするとそこには、本当に申し訳なさそうな宗介の顔と―――やだやだ!―――また再び硬く熱くそり立った、今だに元気過ぎるペニスが視界に入った。  
 
「すまんがまだまだ足りないんだ……君はずいぶんと疲れてしまったようだが……うわごとを言い、目の焦点が合っていなかったぞ。大丈夫か?……君の後ろ姿や、その……股間から垂れる『俺の』を見ていたら……また君を抱きたくなってしまって……」  
 
妄想の世界にトリップしていた恭子を見て、宗介は妙な勘違いをしたようだ。  
 
「……恭子。君さえよかったら、俺にまた抱かれてくれないか?」  
 
なにがなんだか良くわからない。  
きょとんとした顔で「……うん。いいよ」とだけ言うと、彼は本当に嬉しそうな顔をして、わたしの背中にしがみついてきた。  
 
逞しい腕と胸、硬い腹筋、強靭そうな足腰、そしてどうしようもないくらい駄々っ子なペニスが、わたしの後ろに密着する。  
 
尻肉と尻肉の間に、彼のペニスが挟み込まれる。  
わたしがお尻の筋肉に力を入れて、ペニスを圧迫すると、気持ちよさそうに腰を上下させ、ヌルヌルとペニスを擦り上げた。  
 
亀頭や裏筋がアナルに直接あたる。  
凄く恥ずかしいのに本当にもう、どうでもよくなっちゃって―――だってもうわたしの全部、唇もおっぱいも、おまんこもアナルも……心も身体も、あなたにあげてしまっていいような気がしたから。  
 
尻の谷間で、ペニスが激しく脈動する。  
恭子の背中と宗介の腹の間に熱い精液が吐き出され、彼はそれを塗りたくるように―――彼女は自分のものだと誇示するように―――身体全身を擦り付けた。宗介は『気持ちいい』と言葉で言う代わりに、深く深く息を吐いた。  
 
「……宗介くんばかりズルいよ。自分ばかり気持ち良くなって……わたし宗介くんと一緒に、気持ち良くなりたい、な……?」  
 
全然満足できない。もっといっぱい。身体中ベトベトになって、愛液のなかで溺れちゃいそうなくらい、宗介くんに嵌められちゃって。  
 
「……君は気持ち良くなかったのか?」  
 
どうも宗介には、自分が気持ち良ければ相手も気持ち良いだろうと、思い込んでしまう変に自己中心的なところがあるようだ。  
 
そりゃ確かに気持ち良かったけど……やっぱり。  
 
「今のは今のでいいけど……射精すときは、わたしのおまんこの中じゃなきゃ……ヤダよ?」  
 
彼女の愛らしい唇がいやらしい言葉を呟いて、今まさに吐き出しきったところにもかかわらず、宗介のペニスは、尻肉の中で、先ほどよりも更に硬く太く熱くなった。  
 
宗介は少しだけ下にズレると、尻の間でペニスをスライドさせ、恭子の愛液とスペルマでジュクジュクな、膣口へと、再び亀頭をあてがった。  
 
両手で二つの乳房を揉みしだく。乱暴なのに繊細に。人差し指と中指の間に乳首を挟んで、コロコロと転がしてみたり。左右の乳首を擦り合わせてみたり。  
 
「恭子」  
 
自分の顔を彼女の肩の上、顔の横に置き、彼女の名を呼ぶ。  
 
「君の顔が見たい」  
 
振り向いた恭子の濡れた唇に口付けするのと、努張したペニスが彼女のヴァギナを貫くのはほぼ同時だった。  
 
宗介が腰を押し込み、恭子の膣内の淫らな収縮が、太く逞しい物を招き入れる。  
 
今度は一息に突き刺す。  
宗介の鍛えられた下っ腹と、恭子の柔らかな尻肉が衝突し、スパンキング音を発した。  
 
彼女の尻が、打ち付けられた衝撃で波打つ。彼女の肢体はどこまでも柔らかい。  
 
「もっと……!いっぱい!激しく!揺すって!いや!ぁあ!ぁん!!」  
 
彼女の尻に腰を打ち付けるたびに、彼女はどうしようもなく甘い叫びをあげる。  
あまりに激しく鳴くため、キスを中断せねばならなくなった。  
 
彼女は上半身をベッドにヘタリ込ませたまま、無意識に下半身だけを突き上げる。  
『抱かれる』という『犯される』といったポーズだ。宗介の中の雄が、今夜一番の咆哮をあげる。  
 
奥まで貫いたペニスを、膣口付近まで抜き出す際、亀頭のカリがさっきだした精液を掻き出して、ジュッポジュッポと大きな音を立てる。動きに合わせてスペルマが飛び散る。  
 
彼女はその音がどうにも恥ずかしいらしく、甘い嬌声を上げながらも耳を真っ赤にして、それが宗介には可愛いくて可愛いくて仕方がない。  
 
何度も何度も。激しく、それでいて優しく腰を叩きつけられ、彼女の膣内が、もうあなたのことをはなさない、と言わんばかりの勢いで脈動、収縮した。  
 
「やぁあ!もう……もう……!宗介くん、宗介くん!……ぃゃああああああ!!!」  
 
万力のような力でペニスを締め上げられ、宗介は顔をしかめた。  
 
それでもどうしようもないくらい気持ち良くて、恭子の膣に搾り取られるように、ビュルビュルッと勢い良く射精する。  
 
宗介が射精してもなお、膣の収縮、痙攣は続き、出したばかりのペニスに『もっともっと!』と催促する。  
 
一度に二度の射精。一気に倍の量のスペルマをたたき込まれ、膣内の圧力が高まっていく。  
ついには限界を超え、万力の如くペニスを締め上げていた膣口の端から、ビュルビュルと勢い良くスペルマを吐き出した。  
 
恭子の身体中から力が抜け、今度こそ満足したといった様子で、だらしなく崩れ落ちる。  
 
それでもまだ、膣内は程よく収縮し、ヌメヌメとした壁が淫らに蠢いていた。  
 
宗介もまた疲れ切って恭子の背中にヘタリこむ。が、ペニスの方はと言えば、今だ貪欲に催促する恭子のヴァギナに応えて、ゴポゴポと射精を続けている。  
下半身で繋がったまま、二人で同時に痙攣し、二人の繋ぎ目からダラダラと愛液を滴らせた。  
 
 
 
どれくらいそうしていただろうか。  
ずっと覆い被さったままだと、恭子が疲れると思った宗介が、横に退こうとして、それでもまだ彼女と繋がっていたくて、彼女を後ろから抱きしめ、結局挿入したまま横抱きでいることに落ち着いて。  
 
「ボン太くんだな」  
 
宗介の発言は、いつも突飛で唐突だ。そして不必要なまでに真剣な眼差しで語られる。  
 
「……宗介くん……いきなりどうしたの?」  
 
「いや、俺たちの子供の名前だ。なにか良いものはないかと考えていて……」  
 
ずっと一緒にいたいと思ってたのは、自分一人だけじゃなくて。  
同じ時、同じ場所で同じことを考えていて、体以上に心まで重ね合わせたことに気付いて―――胸の奥に小さいけれど温かいものが、ポッと灯った気がして、凄く嬉しい。  
 
「ふふっ……宗介くんはおもしろいねー。でも、ボン太くんはちょっと……二人でゆっくり考えよ?」  
 
時間はあるんだから―――わたし達は、もうずっと一緒なんだから。  
 
青白い蛍光灯の下で笑う彼女は、自分の性欲を再び燃え上がらせ、理性を吹っ飛ばすには十分魅力的で―――まだ抱き足りないんだが―――と言おうとした唇を、柔らかい唇で優しくふさがれてしまって、それきりもう何も言えなくなってしまって。  
 
「宗介くん、愛してるよ」  
 
最後に少しだけ、愛とは何かわかったような気がしたが、それはもしかしたら気のせいかもしれなくて。  
 
 
 
 
 
 
了  
 

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