「ねえ、ソースケ」  
「なんだ」  
「林水先輩とお蓮さん、ここ何日か様子がおかしいと思わない?」  
「ふむ…」  
 宗介は生徒会室の奥、生徒会長席に座る林水とその横に控える蓮に目を向けた。  
 
 会長席の林水はいつもと変わることの無い白皙、細面で怜悧な風貌で変わったところは  
見られない。オールバックのヘアスタイルにも一分の隙も無かった。  
 だが宗介の兵士としての目は、上官の苦悩を敏感に読み取っていた。それはいうなれば、  
戦略上の重大な決断に頭を悩ませる司令官のそれである。  
 
 一方、蓮はというと、これは分かりやすかった。  
 浮かない表情、度々吐き出されるため息、そして苦悩の色の浮かぶ眼差し。  
 そのどれをとっても、「私は悩んでいます」と宣伝しているようなものだった。  
 
「たしかに、少々様子がおかしいな」  
「でしょ? 何かあったのかしら…」  
「ふむ…もしや」  
 何か気が付いた風な宗介の言葉に、かなめは身を乗り出した。  
「何か気が付いたの?」  
「うむ…恐らく、美樹原は何らかの組織に弱みを握られ、陣代高校の機密漏洩を持ちかけ  
 られたに違いない。それを会長閣下に報告し、閣下は陣代高校のために美樹原を切り捨てる  
 べきか否か、判断に困っているのだ。美樹原は有能かつ会長閣下の右腕とも言える立場の人間だ。  
 簡単に切って捨てるには代償が大きすぎる。だがしかし、」  
 
 すぱん!  
 
「痛いじゃないか」  
「痛いじゃないわよ!そんな事あるわけないでしょ。もう少し常識的に考えなさい」  
「むぅ」  
 宗介はかなめに叱られてしゅんとなった。尻尾があったら力なく垂れているかもしれない。  
 一方、宗介を叱りはしたものの、かなめも何かそれらしい理由は思い浮かばなかった。  
「…仕方ないわね。帰りにお蓮さんを誘ってちょっと話を聞いてみましょうか。ソースケは  
 林水先輩のほうお願いね。で、今夜あたしんちで合流して報告しあいましょう」  
「了解した」  
 
                  ◇  
 
 頃合を見て、かなめは蓮を連れ出した。  
 蓮は林水に何事か告げたいが言い出せない風で未練タラタラだったが、結局その勇気が  
涌いてこないことで諦めて、かなめの誘いに従った。  
 
 今二人は泉川の商店街を歩いている。  
 時間は夕暮れ時で、買い物の主婦が大勢行き交っている。そんな中を二人は駅に向かって歩いていた。  
「ねえ、お蓮さん…林水先輩となんかあったの?」  
 学校を出てしばらく黙々と歩いていたかなめは、途中で買ったトライデント焼きを片付けた  
ところで切り出した。  
「いいえ。先輩とはいつも通りです」  
 否定はしたが、蓮の顔色はさえなかった。かなめと一緒に買ったトライデント焼きにも  
ほとんど口をつけていない。  
 
「でも…ちょっと様子変だよ? あたしじゃ相談相手になれないかな?」  
「……」  
 蓮は立ち止まって、しばらく黙り込んでいたが、やがて振り返って話し始めた。  
 
 美樹原蓮はここ数日悩んでいた。家のことについて。  
 
 美樹原組は歴史と格式、そして義理人情を重んじる今時珍しい任侠集団である。  
 その組長寛二の「素人衆には迷惑かけちゃなんねぇ」という方針により、地域住人からの  
ショバ代を強引にまきあげるようなシノギは美樹原組では一切していない。  
 
 また、現在のヤクザ組織の収入としては定番ともいえる麻薬と売春にも手を染めず、  
もっぱら的屋とノミ行為にて糊口をしのいでいる状態である。  
 ゆえに元々それほど裕福とはいえない組であるが、時折物入りな時はあるもので、その時は  
仕方なく寛二の顔で知り合いの金融業者に借金を申し込んでしのいでいた。  
 その額は積もり積もっておよそ5千万円。  
 
 ところがその債権を、どこから調べたのか、探し出して買ったものがいた。  
 …元龍神会組長の菅沼である。  
 
 菅沼は龍神会を壊滅させられて以来、檻の中から残った舎弟を使って美樹原組を調べさせ、  
借金があることを突き止めたのである。  
 そして数日前、菅沼の舎弟が美樹原組に来て要求したことは、借金の一括返済か、蓮と  
菅沼の息子との結婚であった。  
 組をつぶされ、角山組から破門された菅沼は、今や関東の極道界にボン太くんの名と共に  
畏敬の念を持って語られている美樹原組を逆に取り込むことでヤクザ界に復権を果たそうと  
目論んだのである。  
 
 無論、寛二とて蓮を易々と菅沼に渡すつもりは無かったが、およそ5千万という借金は  
今の美樹原組にとっては途方も無い額だった。  
 一気に返済するとなると、組事務所一切を売るぐらいしかないが、伝統ある組事務所を  
売るということは寛二にとってはすなわち組の解散に等しいことだった。  
 
 そして、蓮もヤクザの娘としてそれなりの心構えをもって今まで生きてきた。  
 蓮は7代続いた組を自分の我侭で潰す事はできないと考えていたし、自分が身を差し出す  
ことで組が永らえるのならば、それも仕方の無いことだと思っていた。  
 
 しかし、同時に蓮は17歳。まだ恋愛に夢を持っている年頃である。  
 彼女には片思いながら意中の相手もいる。 ……言うまでもなく林水敦信その人である。  
 
 …自分がどこの誰とも知らない男と婚姻することになるにしても、せめて一言思いを  
林水先輩に告げてからにしたい。  
 
 蓮はそう思いながらも言い出すこともかなわず、ここ数日悶々として学校生活を送って  
いたのだった。  
 
「はぁ〜 あの変態組長に息子が居たの」  
「はぁ…まだ18歳だそうですが、法的には結婚もできますし」  
 そう言って、蓮は憂鬱そうにはぁ、とひとつため息をついた。  
「で、林水先輩には告白しないの?」  
「…告白して先輩を悩ませるのであれば、いっそ黙っていたほうが良いのかもしれません。  
 告白したいのはあくまで私の我侭ですし」  
 
 そう言って、蓮は目を伏せた。  
 かなめは、どう言葉を掛けたら良いのか分からないまま、泉川駅の傍で蓮と別れた。  
 一礼したあと、背を向けて去っていく蓮の背中が、かなめには泣いている様に見えた。  
 
                  ◇  
 
「…ということみたい。 で、そっちはどうだったのよ」  
 香ばしく焼きあがったギンダラの切り身の横につやつやに炊き上がったご飯をよそった  
お茶碗と、海苔の味噌汁の入ったお椀を並べながら、食卓でお預けされている犬よろしく  
待っていた宗介に話を振った。  
「うむ。俺が会長閣下に聞いてみたところではな…」  
 
                  ◇  
 
「会長閣下、少しお話があるのですが、よろしいでしょうか?」  
 かなめと蓮が出て行き、林水と二人っきりになった生徒会室で、宗介は切り出した。  
「何だね? 相良君」  
 宗介は休めの姿勢のまま林水の視線を受け止め、ひとつ咳払いをしてから話し始めた。  
「失礼ながら、会長閣下には悩みがあるようにお見受けしました。」  
 林水はちょっと驚いたように眉をわずかに動かした。  
「なぜそう思うのかね?」  
「…自分のカンです。」  
「ふむ…自分では何もないように振舞っていたつもりだったのだが…」  
 林水は少し考え込んで、そして答えた。  
「相良君は、見合いというものを知っているかね?」  
「見合い……ですか。たしか、結婚相手を見極めるために紹介された相手と面会する事  
 だったと思いますが。」  
「そうだ。実は私のところにいくつか縁談話が来ていてね……」  
   
 林水敦信はここ数日悩んでいた。  
 林水は高校進学に際して、周りの反対を押し切って陣代高校を入学して以来勘当同然と  
なっているため、自らの学費と食い扶持を自ら稼ぎ出して生活している。  
 それゆえに普段親の意見や影響などというものとは縁遠い生活をしてはいるものの、  
林水自身はまだ未成年の高校生である。  
 一方、親には親権というものがあり、子供の育成や教育に対して責任があるために、  
子供の将来や進路といったものに少なからず口を出すことができるわけである。  
 
 そして数日前、林水に親から見合いの話が来た。  
 表向きは親として息子に良い許婚を探してやろうという体裁を装ってはいるものの、  
実際のところは政治家とのパイプが欲しい政財界の人間と、影響力の拡大を狙いたい政治家の  
魚心と水心であって、要するに政略結婚である。  
 
「閣下にその気がないのであれば、断れば良いのでは?」  
「私もそのつもりだったのだが…敵も然る者、父から回ってきた見合い相手は学業や能力、  
家柄、そして器量まで文句をつけがたい娘ばかりでね。会いもせずに断るのはいささか難しい  
状況なのだよ。」  
 そう言って眉をひそめたまま、林水はメガネの位置を正した。  
「断ると分かりきっている相手と見合いをして、後々傷つけることになるのもいささか忍びない。  
 何か見合いその物を断るいい口実を探しているのだが…見つからなくてね。」  
 
「見合いを断る口実ですか。しかし、断っても閣下のお父上がまた新たな相手を探して  
 くるのでは?」  
「それは心配ない。」  
 宗介の疑問に林水は不敵な笑みを浮かべて答えた。  
「父に対しては私にもいくつか手札があるのでね。」  
 
                  ◇  
 
「……で、結局林水先輩は見合いを断る口実が欲しいのね。…あ、んん…ちょっと。」  
 かなめは宗介の執拗な愛撫に身体をくねらせた。背筋を這い上がるゾクゾクする快感に  
鳥肌を立てる。  
 
 あの激しい初体験以来、宗介とかなめは「深夜警護」と称して毎日のように身体を重ね  
続けていた。  
 覚えたての頃はサルのように、とはよく言う話だが、今の二人はそれに近い。  
 若さと体力に任せて一晩に5回6回とこなす日々が連日のように続いていた。  
 日々研鑽と分析を重ね、連日あの手この手の綿密な戦略でかなめの肉体を侵略してくる  
宗介に対して、かなめは一方的に翻弄され続けていた。  
 今もまだ挿入前だというのに1度軽くイかされてしまっていた。一晩で2桁に迫る回数  
イかされることも珍しくないのだ。  
「それに関しては、俺がひとつ作戦を具申した。閣下は今晩熟考されるそうだ。」  
 かなめの茂みに舌を這わせて愛撫していた顔を上げて、宗介が答えた。  
「……意見?…まさか、また、爆弾とかでふっ飛ばせとか、言ったんじゃないでしょうね。」  
 荒く乱れた息を整えながらかなめが聞くと、いささか傷ついたというような表情で宗介が  
反論してきた。  
「俺は馬鹿ではない。閣下には「すでに将来を誓った相手がいる」と言ってみてはどうかと申し上げた。」  
「ふーん、宗介にしては珍しい意見ね。あんたがそんな事言うなんて。…んっ、そこダメだったら。」  
「見合いとは結婚相手を探す会なのだから、すでに相手がいれば意味をなくすだろうと思っただけだ。」  
「はぁ…ん……や、そこ…ダメだってあん…」  
 話をしている間も宗介の責めは止まらない。指先でかなめの弾力に溢れた乳房を優しく  
揉みながら、もう片方の手は弾むような張りのあるむっちりとした尻を撫で回す。  
 残ったもう片方の乳房の先端に唇を這わせる。先端の突起から乳輪にかけて舌先を円を  
描くように這わせ、その後突起の先端を舌先でつついて刺激を加える。  
 そして、興奮で充血して先端ばかりか乳輪までが盛り上がったのを確認してから宗介は唇を離した。  
唾液で湿った乳首が外気に触れるとひんやりとした感覚が更なる刺激となって、さらに硬さを増す。  
「はぁ……でも、嘘ついてもすぐにばれるんじゃないの? まあ、あの林水先輩の事だから、  
 ありもしない架空の女の戸籍とか簡単にでっち上げそうな気もするけど。」  
「嘘をつかなければいい。俺は美樹原を相手役に推薦しておいた。」  
「え?お蓮さん?」  
「そうだ。会長閣下が恋人にと考えるなら彼女が筆頭に来るだろう。それに美樹原も会長閣下を  
 慕っている。適任だ。」  
「へえ…意外。」  
 感心したような目で見られて、宗介は心外そうな顔で聞いた。  
「何が意外なのだ?」  
「あんたにそう言う色恋沙汰に関する観察眼があったとは思わなかったわ。」  
 かなめの言葉に宗介は憮然として反論した。  
「……君とこういう関係になって、俺も少しは男女の色恋について理解したつもりだが。」  
「……怒った? ごめん。」  
 かなめがすまなそうに苦笑いして謝ってみたが、宗介はむっつりとしたまま無言でかなめの  
 両足を両肩に抱えあげた。抵抗する間もなく腰が持ち上がり、かなめの女陰が宗介の目の前に  
無防備にさらけ出される。  
 
「やっ、ちょ、ちょっと。」  
「すまないというのならば、君にはカラダで償ってもらおう。準備も万端のようだしな。」  
 十分すぎるほど潤っていたかなめの秘裂に宗介は自分の分身の先端をあてがった。  
「もう…なんか夜になるとソースケ性格変わってない?」  
「そうだとすれば君がいけないのだ。君の色香は俺を狂わせる……では、行くぞ。」  
 歯の浮くような台詞を並べながら、宗介は腰に力を込めた。  
 凶悪でグロテスクな肉の塊が容赦なくかなめの敏感でデリケートな部分に侵入し、カラダを引き裂く。  
「はぁん…っ!」  
 膣内を蹂躙しながら押し入ってくる宗介のペニスの感触に鈍痛を覚えながらも、愛する男に  
犯される幸福感でかなめの口元に愉悦が浮かんだ。  
 宗介は人差し指で屹立したかなめの乳首を弄びながら、強い弾力を持つ乳房を全体をゆったりとこね回した。  
 下半身と胸からの同時の攻めで、かなめの身体は強い快楽に満たされてゆく。  
 人体の一部とは思えないほど恐ろしく硬くそそり立った肉棒が、かなめの膣内の弱い部分を  
乱暴にえぐりながらリズミカルに子宮を突き上げる。  
 子宮口を叩かれるしびれるような感触に反応してかなめの引き締まった腹筋がぴくっ、  
ぴくっと引きつる。そして腰は無意識のうちにさらにペニスを求め、少しでも自分の  
奥底へと導かれるように、宗介が突き込むのにあわせて鋭くしゃくりあげている。  
 二人はまるで一体の機械にでもなったかのように、ベッドの上で同期してリズムを刻みながら  
動き続けた。  
 
 だが、高まりはかなめの方に一足先におとずれた。  
 かなめが一際大きく腰をしゃくるのと同時に宗介の腰にその長くすらりとした足をがっちりと  
絡ませて腰を固定する。  
 かなめは膣の奥の奥までペニスを飲み込み、膣口を宗介のペニスの付け根にすりつける。  
 そして、少しでも隙間を埋めるかのように宗介の背中にまわした両腕に力を込め、宗介の  
胸板に自分の豊満な乳房を押し付けた。  
 かなめの唇が宗介の唇を求める。宗介がそれに無言で答え、舌を絡めあう。  
 そして絶頂。かなめの身体が大きくがくっ、がくっ、がくっ、と痙攣するのと同時に宗介の  
分身をリズミカルに締め上げた。  
 
 やがて、快感の大きな波が去ったかなめは、ぐったりとしてベッドに倒れこんだ。  
 まだペニスを差し込まれたままの秘裂からはおびただしい量の愛液が泡立ち、白く濁って  
あふれ出し、シーツに大きなしみを作っていた。  
「良かったか?」  
「……うん。」  
 そう言って、肩で荒い息をしながらかなめは笑って答えた。  
「そうか……では今度は俺の番だな。」  
 そう言うと宗介は抱え込んでいたかなめの右足を開放し、左だけを改めて抱えあげた。  
「またバックから?」  
「いや、次は横だ。」  
「横? ……って、ちょ、ちょっと、ソースケ!」  
 宗介は左足を抱え込むと同時にかなめの右足を跨いだ。側位と呼ばれる体位だ。  
 かなめはこの体位は初めてだった。  
「ちょ、ちょっと! まださっきの余韻で敏感なんだってば。」  
「では、行くぞ。」  
 かなめの抗議を無視して宗介は再びピストン運動を開始した。  
 限界まで左足を開脚し秘裂をさらけ出した状態で、宗介のペニスが有無を言わさず根元まで  
叩き込まれた。  
「ひっ〜〜〜〜〜!」  
 
 不意を突かれて悲鳴を上げそうになって、かなめは思わず口を押さえた。  
 だが宗介の責めは止まらない。  
 宗介のペニスが連続してかなめの下腹の奥底まで突き刺さる。その度にかなめは声が  
出そうになるのを必死に堪えた。ついこの間も、隣近所に響き渡りそうな大きな喘ぎ声を  
上げてしまい、朝学校に行くのにマンションを出る時に恥ずかしくて死にそうな思いをしたのだ。  
 そして、そんなピストンがしばらく続いて…そして奥まで挿入したところで止まった。  
 攻めが一息ついてかなめはほっとした。だが、それは次なる責めの前触れだった。  
 宗介は根元までペニスを挿入したままで、大きくのの字を描くように腰を回した。  
 一息ついて油断していたかなめは膣内をぐりっ、とペニスでかき回され、大きな悲鳴を上げた。  
「ひやっ!」  
 ぐりぐりと腰を動かすたびに普段触れ得ない部分をえぐられ、単純なピストンでは味わえない  
快感に身体がびくっ、びくっとベッドの上で跳ねた。  
「はっ、ああっ、だめ、それだめ! ソースケっ!」  
「そろそろ俺もいきそうだ……中でもいいか?」  
「だめっ! ゼッタイだめっ! 今中に出されたら、おかしくっ、なる!」  
 かなめは最近ピルを服用するようになっていたので妊娠の恐れはなかったが、精液を直に  
流し込まれると意識が飛ぶほどの快感を得る事があるのに最近気がついていた。  
 それを恐れて息も絶え絶えにかなめが訴えるも、宗介もまた絶頂を目前にして聞こえて  
いなかった。かなめの左足を抱えたまま、腰だけを激しく動かしてかなめの股間に叩きつけ  
続けている。  
「くっ、ふっ、ふっ、はっ、いく、いくぞ。」  
「はぁっ、やっ、だめっ、だめっ、だめぇ!」  
 宗介が一際激しく腰を叩きつける。ペニスの先端がかなめの子宮口を的確に捉えた。  
 かなめが膣内で宗介のペニスが膨らむのを感じた次の瞬間、子宮の中に焼けるような熱さの  
体液が流し込まれるのを感じ……意識が飛ぶような激しいオーガズムの波がかなめを襲った。  
 痙攣を起こしたかと思うほど身体を弓なりにしならせながら、宗介の放つ子種を下腹の奥底で受け止め続けた。  
 
 意識が真っ白に漂白されるのを感じながら、同時にかなめは種付けされる雌の喜びを感じていた。  
 
                    ◇  
 
 あくる日。  
 
「あー、腰痛〜い。」  
 どんよりとした目つきのままあくびをかみ殺しつつ、かなめは腰をさすった。  
 昨夜はいささかがんばりすぎた。調子に乗りすぎて2桁にのる大台を達成してしまったのだった。  
おかげで超寝不足のうえに体中の節々が痛かった。おかげで授業もろくすっぽ頭に入って  
こなくて、何度か注意も受けていた。  
「今日の体育の授業が激しかったのかね?」  
「いえ…」  
「ではプライベートで何か運動でもしたのかね?」  
「まあ、そんなとこです。」  
「ふむ……」  
 扇子を片手にかなめの横を歩いていた林水は扇子をぱちん、と閉じると暫し考え込んで、  
その後かなめを挟んで反対側を歩いていた宗介に目を走らせ、そして言った。  
「それは相良君と二人でやる運動かね?」  
「え゛」  
 かなめが固まった。  
 宗介は顔を引きつらせたまま、滝のような冷や汗をかいていた。  
「な、なんでそう思うんですか……林水センパイ」  
 
「いや、なに。相良君と君のシャンプーの香りが一緒だったのでね。運動の後で汗でも  
 流したのかと思ったのだが。」  
 確かにその通りだった。朝起きてから二人で一緒にシャワーを浴びつつ、おまけに流れで  
風呂場で一発いたしてしまった。  
「え、えっと……ソースケの奴が今朝うちに来たときにあまりにも汗臭かったので、あたしんちのシャワーに問答無用で叩き込みました……」  
 かなめが口からでまかせを並べ、その横の宗介はそれにガクガクと頭を縦に振って必死に  
同意した。  
「ふむ、そうかね。私はてっきり君たち二人がセッ「ああ、あれっ、あれですっ!センパイ、  
 あれがお蓮さんの家です!」ほう、あれが。」  
 かなめの身を挺した話題そらしが功を奏したのか、林水の関心は目の前の屋敷に移った。  
 
 今日、蓮は学校を休んでいた。  
 おそらく林水に対する未練を断つために、残り数日を休んで過ごすつもりなのだろう、  
とかなめは推察した。  
 
 一方、一晩熟考した林水の心は決まっていた。  
 生徒会の仕事を早めに切り上げた林水は、かなめに蓮の自宅への案内を請うた。  
 このため、生徒会は早々にお開きとなり、林水とかなめ、宗介は連れ立って美樹原家へと  
向かう事になったのだった。  
 
「ごめんくださーい。」  
 かなめが玄関を開けて声を掛ける。  
 美樹原家──すなわち美樹原組組事務所は古きよき時代のしっかりした作りの木造建築である。  
 とはいえ、建屋は屋敷と言えるほどの豪華さは無くただの平屋の民家である。しかし庭は広く、  
敷地を含めればそれなりの資産価値を持つと思われた。  
「へい、どちらさんで……って、おお、かなめちゃんじゃねえですかい。」  
 奥から出てきたのは若頭の柴田だった。強面の顔がかなめの姿を認めたとたんに和らいだ。  
「あ、柴田さんお久しぶりです。お蓮さん、居ます?」  
「お嬢さんですかい? ……まあ、居る事は居るんですがねぇ……」  
「失礼。」  
 柴田が渋い顔で応対に困っていたところで、今まで黙っていた林水が一歩前に進み出た。  
「あんたは?」  
「美樹原君の学校で生徒会長をしている林水というものです。美樹原君のお父上…美樹原組長に  
 お会いしたい。」  
 
                    ◇  
 
 蓮は朝から自室に引きこもっていた。  
 学校に行く気にはなれなかった。行けば林水と顔をあわせなければならないし、そうなれば  
なお一層未練が積もる。  
 約束の期日がくれば婚約をしなければならず、その後ならばいろいろなものに諦めも  
つくだろうと思い、それまで数日学校を休もうと決めた。  
 尋ねてくるであろう学校の友人も柴田に頼んで断ってもらうように言ってある。  
 
 勉強机に臥せったまま、蓮は視線をめぐらせる。  
 机の上には教科書や参考書が並んでいる。その横に小さな写真立てがあり、林水と二人で  
納まった写真が入っていた。以前生徒会の活動のときに撮った物だ。  
「……先輩。」  
 そうつぶやくと、蓮の目から涙がこぼれた。  
「……お蓮さん?」  
 
 背後のふすま越しにかなめの声が聞こえて、蓮はびくっ、と反応した。  
「……かなめさん。」  
 涙を拭きながら蓮はふすまのほうへと振り返った。  
「今ね、林水センパイが組長さんと話してるの。」  
「林水先輩が!?」  
 蓮はその名を聞いて思わず立ち上がった。  
 ふすまに駆け寄ると乱暴に開け放つ。ふすまの向こうには驚いた顔のかなめと、思わず  
背中に片手を回したままの宗介がいた。  
「林水先輩が? なぜなんです? 先輩が父と何のお話を!?」  
「うーん…」  
 いつもとは違うまくし立てるような蓮の問いに驚きつつも、かなめはちょっとだけ悪戯っぽい  
表情で答えた。  
「きっと、お蓮さんにとって良いことよ。」  
 
                    ◇  
 
 庭を見通せる美樹原家で最も広い部屋へと林水は一人通された。  
 そこには病床の組長、寛二が居た。寛二は寝床から半身を起こした状態で林水をじっと見ていた。  
 林水はそんな視線に物怖じする事もなく、いつも通りの冷静さで寛二の前まで進むと、  
柴田に差し出された座布団を固辞して畳の上に正座し、寛二に正対した。  
「陣代高校で美樹原君と共に生徒会で働いております、林水敦信と申します。」  
 そう言って林水は軽く一礼した。  
「蓮の奴からおめえさんの事は聞いている。蓮じゃなく俺に話というのは何だ。」  
 腕を組んで試すような視線を向けたまま寛二が尋ねると、林水は両手をたたみに突いて  
深く頭を下げた。  
「……そいつは何の真似だ。」  
 そのとき、パタパタという足音が近づいてきたかと思うと、誰何することもなくがらり、と  
ふすまが開け放たれた。  
 それと同時に、林水の口からその言葉が放たれた。  
「私と美樹原君、いや、蓮さんとの、結婚を前提としたお付き合いを認めていただきたい。」  
 それを聞いた蓮は……その場で失神した。  
 
 

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