「ふーん、良かったわね。テッサとの仲が公認になって。」  
 そう言ってかなめはにっこりと笑った。  
 だが宗介には解る。  
 すでにかれこれ半年以上の付き合いで、口に出してこそいないが、お互い大切に思いあって  
いる仲でもある。  
 いくら朴念仁の宗介といえど、かなめの精神状態を察するのは難しくなかった。  
 
 すなわち、かなめは怒っていた。  
 
 顔こそ笑顔だが、その言葉には険がこもっていたし、何より…目が笑っていなかった。  
 宗介の額から一筋、冷や汗が滴り落ちた。  
 
                   ◇  
 
 そもそも、なぜかなめがへそを曲げるに至ったかは、少し前の話から始めなくてはならない。  
 
 1月。  
 溜まったミスリルの業務の消化と自己の鍛錬のため、宗介はメリダ島へと飛び立った。  
 かなめたちと遊びに行く約束を蹴ってである。  
 
 最近ではかなめもそれなりの理解を示してくれていて、「仕事なら仕方ないか」と残念そう  
ではあったが、すんなりと送り出してくれた。  
 最後に「……早く帰ってきてくれないとやだよ?」と可愛らしい一言をつけて。  
 だが、メリダ島で待っていたのは予想外の任務……テッサの「護衛」と、歴戦の古強者とは  
名ばかりの悪がき集団との乱痴気騒ぎinグアム……であった。  
 おかげで訓練はおろか、業務の合間にこなそうと思っていた宿題にも手をつけられず、  
ぎりぎり月曜に日本に戻った宗介は数学担当の教師にお説教を食らい、罰として更なる宿題を  
命ぜられたのだった。  
 
「まーったく。いっつもいっつもあんたって奴は……」  
 ついでにかなめにもお説教を貰ったが、そこはかなめの事、口では色々言ってもついつい  
宗介の世話を焼いてしまうのである。  
「しょーがないわね。宿題手伝ってあげるから今日はうちにいらっしゃい。それと……  
 ついでだから夕飯もご馳走したげる。」  
 ちょっと頬を染めながらも、怒った顔を崩さすかなめはそう言って、宗介を夕食に招待  
したのだった。  
 
 かなめの作った肉じゃがはいつもと違わず美味かった。  
 グアムで毎食胴回りが数倍になりそうなハイカロリーな料理につき合わされてげんなりしていた  
宗介にとっては、かなめの和食は極上といって良いご馳走であった。  
 その後宗介とかなめは宿題に取り掛かった。  
 少なくとも、ここまでは「良い雰囲気」だったはずだ。  
 
 だがその後、なぜ宿題に手をつけられなかったのか、グアムでの顛末を語るにつれてかなめの  
顔が変わって行った。  
 最初は眉を吊り上げ、その次に表情を失い、そして最後に仮面の笑顔を貼り付け…そして  
冒頭の台詞に戻るのである。  
 
                   ◇  
 
 外は北風吹きすさむ冬模様の天気だったが千鳥家の中はエアコンによって適温に保たれていた。  
 だがその中で、宗介は滝のような汗をかき、どうやってかなめの機嫌をとるべきかを頭の中で  
必死に模索していた。  
 
「…宿題も大体わかったわよね。じゃ、そろそろお開きにしましょうか。それから明日は  
 あたし先に行くから……顔見せないでよね。」  
 そう言い放ってかなめは席を立った。出て行け、というサインだ。  
 取り付くしまもない様子で、いつものパターンなら宗介は肩を落として帰り、数日後に  
ほとぼりの冷めた頃合でかなめに詫びを入れて仲直りするのが常だった。  
 だが、その時の宗介はかなめに誤解されたまま数日過ごすことになるのがたまらなく嫌だった。  
 テッサとの仲を誤解されたからだったのかも知れない。  
 宗介は立ち上がって、背を向けて台所へと行こうとしていたかなめの腕を掴んだ。  
「はなしてよ。」  
「いや、離さない。君に誤解されたままでは居たくない。」  
「……」  
 かなめが振り返ると、何時になく真剣な眼差しの宗介がいた。  
「……なによ。」  
「千鳥、このあいだのクリスマスのことは覚えているか?」  
「うん。」  
 かなめがこくり、と頷くのを見届けて、宗介は続けた。  
「あの時……テッサを救出した後で、俺はテッサに告白された。」  
「!」  
 かなめの顔に、驚きと、そして恐怖の色が広がる。  
 
 ──宗介はなんと答えたのだろうか……  
 ──テッサは可愛らしく、性格も良い、魅力的な娘だ。  
 ──自分のように、乱暴でがさつでずけずけとものを言う娘は嫌われたって仕方ない。  
 
 かなめの中で、劣等感が首をもたげ始める。  
「俺は……」  
「……聞きたくない。やめて! 離して!」  
 かなめは宗介の手を振り解こうとした。だが宗介の手はかなめの腕にあざができるのでは  
ないかと思うほど、がっちりと握られていた。  
「聞け!!」  
 宗介のその一言に、かなめはびくり、と体を振るわせた。  
「俺は…好きな人がいると……テッサの気持ちにはこたえられないと言った。」  
「……好きな人……」  
 かなめが宗介の目を見た。宗介の、大型犬のような澄んだ、人懐っこい瞳がかなめを見返す。  
「その娘は…強くて、美しくて、明るくて、俺に力を与えてくれる。その娘のそばにいられるなら、  
 俺はどんな困難にでも立ち向かっていける。」  
 宗介はそう言って、つかんでいたかなめの腕を引っ張った。  
 かなめはよろめいて体ごと宗介の胸に飛び込み、そして宗介はそんなかなめの肩をしっかりと  
抱きとめた。  
「俺に力をくれる、それは…千鳥かなめ……君だ。俺は君を、愛している。」  
 抱きとめたかなめの耳元で、宗介は囁くように、しかしはっきりと言った。  
 
 しばらくの間、二人は抱き合ったままだった。  
 だがしばらくして、先に口を開いたのはかなめだった。  
「……ずるい。」  
「何がずるいのだ?」  
 宗介が困惑したように聞く。  
 
「これであたしが断ったら、あたし悪者みたいだし。」  
「う……千鳥は俺のことが嫌いなのか。」  
 かなめの返答に、宗介はおろおろし始めた。そんな宗介を見てかなめはくすくす笑うと、  
自分も宗介の背中に腕を回してその逞しい胸に体を預けた。  
「おっかしぃ……心配しないで。あたしも宗介のことが好き……あんたは朴念仁で戦争ボケの  
 非常識人だけど……でも、ずっと、ずっと傍にいて欲しい。」  
「千鳥……」  
「かなめ……そう呼んでよ。」  
「……かなめ」  
「ん……良くできました。」  
 かなめはそう言って、ちょっと背伸びすると自分の唇を宗介のそれに重ねた。  
 少しの間、時間が止まる。  
 やがて、かなめは唇を離した。好きな人との最初のキスは……肉じゃがの味がした。  
「……初めてじゃなくて、ごめん。」  
「……なぜ謝るのだ?」  
「香港にあんたを迎えに行く前にね……あたし、レナードと会った時にファーストキス奪われたの。  
 あの時ね……すごく後悔したんだ。ソースケがいなくなっちゃう前の日にさ、髪を切ってあげたでしょ。  
 あたし、本当はあの時、宗介とキスしたいなって、思ったの。でも勇気が出なくてごまかした。  
 でも……レナードに唇を奪われたときにさ、何であの時ソースケとキスしておかなかったんだろうって、  
 すごく後悔した。」  
「……」  
「あたしって、いっつもそう。意地張って、素直になれなくて……信じる勇気がなくて、  
 いっつも好きって言えなかった。それでいっつも後悔してきた。香港に行った時だって、  
 あたしを置き去りにしたソースケをぶん殴って、その後で好きって言いたかったの。  
 でも、やっぱり言えなかった。」  
「かなめ……」  
「でもやっと言える。好きだよ、ソースケ。」  
 かなめは再び宗介と唇を重ねた  
 そして、重ねるだけでは足りなくて、唇を啄ばみあい、やかて舌を絡ませる程の激しい  
キスを交わし始めた。  
 
 濃密過ぎる時間が二人の間に流れる。  
 二人だけの部屋の中で舌を絡めあう湿った音だけが響く。  
 かなめは少しも離れまいと宗介の首に回した両腕に力を込め、宗介の両手はかなめの細い背中を  
抱きしめながら撫でさする。  
 そして、時間の感覚がなくなるほどの間抱き合っていた二人は名残惜しそうに唇を離した。  
「キスだけじゃ全然足りない……」  
 紅潮した顔で、かなめが宗介の目を見ながら言った。  
 そして、宗介もまた興奮した表情で、かなめを見て答えた。  
「俺もだ。」  
「うん、わかるよ……ほら。」  
 かなめの手が、宗介の学生服のスラックスの股間に触れた。  
 さっき抱き合ってキスしていたときから、かなめは自分の下腹に当たる硬く怒張した  
ペニスの感触を感じていた。  
「う…」  
「すっごい硬くなってる……男の子のってこんな風になるんだ。」  
「……相手が君だからだ。」  
 顔を赤らめながらも、真摯な眼差しで宗介が答える。  
「君とこうしていると、最近の俺は時々自分を抑えられなくなりそうになる。君を押し倒し、  
 全てを貪り尽くし、俺だけの物にしたくなる。今だってそうだ。だが……」  
 
「……何?」  
「俺は戦うしか能のない……人を殺すことしかできない男だ。そんな俺が君の傍にいて良いのか、  
 君を抱いてしまって良いのか……俺にはわからない。」  
 宗介の言葉を聞いて、かなめは宗介の胸に顔をうずめた。  
「ソースケは…ただの人殺しとは違う。マオさんだって、クルツくんだって、優秀な兵士だけど、  
 でも良い人たちでしょ。それにあたしは知ってるから……本当は宗介が優しくて、人の  
 命の重さを大事にしてるってことも。」  
「千鳥…」  
「そんな宗介だから、あたしは好きになったの。」  
 そう言ってかなめは宗介の顔を見上げた。その、はにかんで、恥ずかしそうな表情に宗介の胸が  
 きゅっと締め付けられる。  
「……その……助かる。」  
 しどろもどろになりながら答えた宗介の様子に、かなめは可笑しそうにくすくすと笑った。  
 そして、ひとしきり笑った後でかなめは笑みを浮かべたまま宗介に言った。  
「あたしはね、ずっとあたしはあたしだけのものだと思ってた。でもそうじゃない。ソースケとなら、  
 ずっと一緒にいたいの。だから、あんたは、今日からあたしのもの。……そして、あたしの心も  
 あんたのものよ、ソースケ。」  
「……ああ。」  
 かなめは宗介の手を取って自分の胸に押し当てた。  
「ち、千鳥」  
「だから……あたしに印を頂戴。決してソースケを忘れられないように、あたしの体に刻み込んで。」  
 
                   ◇  
 
 宗介がシャワーを浴びてかなめの部屋に戻ってきたとき、先に戻っていたかなめはバスタオル  
1枚を体に巻いただけの姿で、ベッドに腰掛けて待っていた。  
 
「遅い。」  
「む……すまない。」  
 宗介が謝ると同時に、かなめが抱きついてきて唇を奪った。  
 宗介の筋肉質の胸板に、バスタオル越しにかなめの豊満な乳房が押し当てられる。  
「ん…ちゅ……ふふっ、もう硬くなってきてる。」  
 興奮して怒張した宗介の一物が、バスタオル越しにかなめの下腹をつついてくる。  
 
 ディープキスを続けたまま、かなめはあとずさってベッドに倒れこんだ。  
 かなめに抱き付かれていた宗介もそれにあわせて倒れこむ。  
 
 狭いシングルベッドの上で、丁度宗介がかなめを押し倒すような格好で、二人は舌を絡めあった。  
「ん…ふ……そろそろ、してほしいな。」  
「わかった。」  
 二人の顔が離れると、宗介の手がかなめの胸元に伸びて、バスタオルの合わせ目にかかった。  
 そしてそっとバスタオルの前を開くと、かなめの肢体が顕わになる。  
 ……宗介の口からため息が漏れた。  
「……どう……かな?」  
「……綺麗だ……とても。」  
 シーツの上に広がったかなめの長い黒髪をバックにして、かなめの白い裸身が宗介の目の前に  
横たわっていた。  
 
 たっぷりとした乳房は仰向けでも形を崩さず天を向いていた。  
 
 それでいてその下のウエストは活動的なかなめらしく細く引き締まっていて、そこから続く腰は  
対照的に優雅な曲線を描きながら女性らしい豊満で官能的な肉付きを見せ、そこからしなやかで  
メリハリの利いたラインの脚へと連なっていた。  
 
 宗介の手が恐る恐る、かなめの肌に触れる。  
「……ん」  
 宗介のかさついた指先が触れた瞬間、かなめの口から吐息が漏れた。  
 かなめのほっそりした首筋をなぞり、鎖骨の窪みをなぞり、宗介の手は滑り降りて、  
たっぷりとした乳房に触れる。  
 そして、量感のある乳房を包み込むようにもって、そっと揉みしだく。  
「やっ…気持ち良い……ソースケ」  
 かなめの身体が跳ねる。  
 宗介の目の前にかなめのうなじが晒された。愛用のシャンプーの香りと共に、かなめの  
甘い汗の香りが宗介を誘う。  
 その香りに誘われて、宗介はかなめの首筋に顔をうずめた。  
 鼻先でうなじをなぞりながら、すんすん、とかなめの体臭を吸い込んだ。  
「……やだ…ソースケ、ちょっと変態っぽい。」  
「なぜだ? 君の香りはとても心地よい。」  
 そう言って、宗介はかなめの耳や首筋に唇を這わせた。そして首の付け根、鎖骨の辺りに  
強く吸い付く。  
「んっ…」  
 かなめが反応して小さく声を上げた。  
 宗介が唇を離すと、後にはうっすらと赤くうっ血の跡が残っていた。  
 
 宗介の唇が滑り降りて、左の乳房に転々とキスの跡を残しながらその先端に到達した。  
 綺麗なピンク色だったかなめの乳輪は今や充血して赤く染まり、その中央の乳首も硬く  
尖り始めていた。  
 宗介は先端を口に含んだ。口の中で舌がその乳首に絡み付き、乳輪をゆっくりとなぞる。  
「あっ…あ……」  
 自分で触れるのとは違う、ざらついてぬめった触感にかなめの口から声が漏れた。  
 
 宗介の口が左の乳首から離れる。  
 宗介の唾液で湿った乳首が空気中に晒されると、ただでさえ敏感になっていた乳首が  
ひんやりとした冷感に反応して硬度を増した。  
 
 宗介の唇は今度は右の乳房を口に含み、左と同じように舌で愛撫し始める。  
 その間、宗介のかさついてごつごつした指が乳房の横から脇をゆっくりと滑り降り、  
ウエストの背中側にもぐりこみ、そして尻まで滑り降りて張りのある尻肉を撫で回す。  
 宗介の愛撫にあわせて、かなめの体が跳ねた。  
 
 そして宗介は右の乳首を十分に堪能した後で…味わうように舌を這わせながら胸の谷間へと  
移動し、そこから鳩尾を経て、白く締まったおなかの中心…臍へと滑り降りてゆく。  
 かなめの形のよい臍の周りをくるりと嘗めまわし、その中心の臍に口づけする。  
 宗介は舌の先端で臍を掘り返し、吸い上げた。  
 かなめはその愛撫のくすぐったいようなむずがゆいような感触に吐息を漏らした。  
 無駄な肉のないかなめの腹がぴくぴくと波打つ。  
 
 宗介の手がかなめの尻から滑り降り、ざわり、と太股の裏側を撫でた。  
 そしてゆっくりと、抱え込むような体制のままで太股を撫で回す。  
 そして、かさついた宗介の指先が柔らかな内腿を撫でたとき、かなめの体が今までになく  
大きく跳ねた。  
 
「……どうかしたのか?」  
「ちょ、ちょっとね……内腿、ちょっと弱いかも。」  
「そうか。」  
 短く答えると宗介はかなめの下半身を素通りして両足を軽く抱えあげた。  
「ちょ、ちょっと、ソースケってば!」  
 かなめの抗議を無視して、宗介はかなめの白い内腿に唇を這わせた。  
「ふあっ!」  
 かなめの体が再び大きく跳ねた。宗介は柔らかな肉を味わうように内腿に舌を這わせ、  
唇で啄ばみ、キスの雨を降らせた。  
「やっ、だめ! ダメだってば!ソースケっ!」  
 宗介の愛撫にあわせて反応しながら、かなめが抗議の声をあげるが、宗介は無視し続けた。  
 
「はっ…だめ……ダメだっての…はぁ…」  
 愛撫でぐったりとしたかなめの抗議のトーンが下がった頃、やっと宗介の愛撫が止まった。  
 そして宗介は、やっと本来の目的地…かなめの秘部へと目を向けた。  
「やっ…ダメ…見ないでよ。」  
 よれよれのまま、かなめは自分の秘部を手で隠した。  
「なぜだ…俺と契りを交わすのが目的のはずだ。」  
「なんでも! …とにかく今はダメ。」  
 かたくなに拒否するかなめを見て、宗介は暫し考えて…内腿への攻めを再開した。  
「うぁ…ひゃ…そ、そっちもダメだって。」  
 かなめの体が再び大きく何度も跳ねる。  
 そして、手のほうがお留守になった瞬間に、宗介はかなめの手を押さえ込んだ。  
「あっ。」  
 かなめの顔が瞬時に赤くなった。  
 宗介が見たものは……形良く生えそろった陰毛の下、てらてらとおびただしい量の体液を  
流して濡れそぼっている秘裂だった。  
「だから見ないでって言ったのに……」  
「……良くわからないのだが。」  
「え?」  
 宗介は大真面目な顔で聞いた。  
「実は女性の性器を見たのはこれが初めてなのだが…君のものは何か違うのか?」  
 かなめはどこからともなく取り出したハリセンで一発殴っておいた。  
 
「なるほど、君は俺の愛撫にはしたなく感じてしまって、それを悟られるのが嫌だったと。」  
「はしたないとか言うな。だ、だって…ソースケがあたしの弱いとこしつこく責めてくるから悪いのっ。」  
 顔を真っ赤にしながら説明したかなめは、そこまで言うとぷいっとそっぽを向いた。  
「では、続けて良いか?」  
「……勝手にすればいいでしょ。」  
 そっぽを向いたままかなめが答えると、宗介はおもむろに顔をかなめの下半身に近づけた。  
「ちょ、ソースケ一体何、って、ひゃっ!」  
 宗介が自分の股間に顔を近づけていることに気がついたかなめが、それを止めようと手を伸ばしたが、  
それより早く宗介の唇がかなめの陰唇に触れた。  
 宗介が舌を伸ばし、外陰部をなめ上げるとかなめの腰がびくんとはねる。  
「や、やだ…ソースケ、そんな事」  
 宗介は答えずに舌を這わせた。今度は秘裂に舌をもぐりこませ、花びらを舐る様に。  
「あっ…はっ…やん、や、やだ…ダメだってば……ソースケぇ…」  
 宗介の舌がかなめの秘部をなぞるたびに、かなめが大きくガクガクと震えた。  
 粘膜が粘膜をこすりあげる未知の感覚は下腹部から背筋を這い登る快感に変換され、  
かなめは体を弓なりに反らせたまま苦しげにあえいでいた。  
 
 一方宗介は、秘裂から溢れる体液のすえた匂いにくらくらするような感覚を覚えながら、  
執拗に愛撫を加え続けた。  
 そして、宗介が愛撫をやめて顔を上げたのは、かなめが一際大きく体を反らせて、そして  
ぐったりとベッドに崩れ落ちた後だった。  
「大丈夫か、千鳥。」  
「ちょ…ちょっとタンマ……すごいの来てたの…やっぱ自分でするのとは違うのね。」  
 自分の自慰の感覚とは違う快感と絶頂感にぐったりしながらかなめが答えると、宗介が  
不思議そうな顔で聞いてきた。  
「……何が来ていたのだ? 俺には感じられなかったが…まさか、敵か!?」  
「違うわよ、バカ。そ、その…イっちゃったって言うか……ソースケは自分でしたことないの?  
 その…オナニーとか。」  
「ない。」  
 宗介は表情ひとつ変えずにきっぱり言い放った。  
「年頃の男の子って自然とそう言うことに興味持ってサルみたいにやってるって瑞樹が言ってたけど…」  
「女性に対する興味や性欲はある……だがオナニーは体力を無駄に消耗する。する必要はない。」  
「必要はないって……」  
 かなめはがっくりと肩を落とした。  
「初体験の男と女の会話なのかしらね、これって。 ……まあ良いわ、こういうのもあたし達  
 らしいっちゃらしいのかもしれないし。」  
「むう……すまない。」  
 なんとなくしょんぼりした顔で詫びを入れている宗介を見ながら、かなめはおずおずと足を開いた。  
 かなめの股間に咲いたショッキングピンクの花びらが、綻んで宗介を誘っていた。  
「……多分もう大丈夫だから…来て。」  
 かなめが頬を染めながらそう言って宗介を誘う。  
 火照ってわずかに赤みを帯びたかなめの肢体を見下ろして、宗介がひとつ、ごくりと喉を鳴らした。  
「……わかった。」  
 
 宗介は開いたかなめの足の間に体を置いた。が、そこで宗介は固まった。  
「……どうしたの?」  
「……どこに入れれば良いのだ? それに…水筒を忘れた。」  
「水筒?」  
 怪訝な表情でかなめがうーむと唸っている宗介に聞いた。  
「いや、以前俺はゴム製の簡易水筒だと思っていたのだが、その……行為に及ぶときに避妊に  
 使うものだとクルツに教えられた。部屋に帰ればあるのだが。」  
「ゴム製品? ……ああ、なんとなくわかったわ。」  
 宗介が言う物の正体に思い当たったかなめは、さらに顔を赤くしながら答えた。  
「きょ、今日は……無しでもいい。その……ソースケとあたしの初めてだから……」  
「しかし…」  
「それに……もし、赤ちゃん出来ても…ソースケなら、責任取ってくれるでしょ。」  
「勿論だ。」  
 宗介は少しの迷いもなく即答した。それを聞いて、かなめもまた安心したように笑った。  
「……うん。じゃ、来て。」  
「いや、場所のほうは相変わらずわからんのだが。」  
「……ああっ、もうっ。」  
 渋々、かなめは右手を自分の股間へと伸ばすと、指で秘裂を開いて見せた。  
「ほらっ…ここ……」  
 かなめの人差し指と薬指の間、中指が指し示す場所に膣口が開いていた。  
 真っ赤になったかなめが自分の手で秘部を晒す姿に宗介は異常な興奮を覚えながら、  
自分の一物の先端をかなめの膣口へとあてがった  
 
「ん……そこ。」  
「……行くぞ、千鳥。」  
「ちがう。」  
 かなめの指先が宗介の唇に突きつけられた。  
「か・な・め……言ったでしょ。こんな時ぐらいそう呼んでよね。」  
「……かなめ。」  
「ん……きて。」  
 
 宗介がわずかに腰を突き出した。  
 男を知らないかなめの膣が、宗介の物を飲み込もうとわずかに広がる。  
「ん……イタっ。」  
 圧力に耐えながら宗介の先端がもぐりこんだところで、かなめの表情がゆがんだ。  
「大丈夫か?」  
「ん……まだ大丈夫だけど…ゆっくりされるとつらいと思う……一気に入れて。」  
 宗介はひとつ頷くと、かなめの両足を抱え上げて膣口を上向かせ、自分の腰がその真上に  
来るように移動した。  
「ちょっと…この格好恥ずかしい。」  
「我慢してくれ…行くぞ。」  
 はちきれそうなほどにいきり立った自分のペニスに、宗介は体重を乗せた。  
 わずかに先端だけがめり込んでいた宗介のペニスが、かなめの秘部から溢れる愛液でぬめりを  
帯びながら、一気に飲み込まれた。  
「う…ぁっ…!」  
「く!」  
 自分の膣に焼け火箸を差し込まれたような熱さと痛みにかなめは思わず声を上げて宗介の  
体にしがみついた。  
 細くカタチの良い指先で宗介の逞しい背中に爪を立てる。  
 一方、宗介もまた、熱く蕩けそうな粘膜の刺激に必死に耐えていた。  
 かなめの膣は破瓜の痛みで宗介のペニスをぐいぐいと締め上げながらも、早くも宗介の  
ペニスから精液を搾り出そうと蠢き始めていた。  
 そして、ろくにオナニーもした事のない宗介にとってそれは想像以上の快感である。  
 早くも下腹の奥底からむずむずと射精感がこみ上げて来ていた。  
 砕けそうなほどに奥歯を噛み締めて耐えていたが、さほど間をおかずに限界を超えた。  
「かなめっ…もう、出そうだ。」  
「えっ?」  
 かなめは自分が驚きの声を上げるのと同時に、胎内に熱いものが放出されるのを感じた。  
「熱っ…あっ…」  
 熱い迸りを受けた膣がかなめの意思とは関係なく収縮を繰り返し、快感をもたらす。  
 体の奥に熱い精液を叩き付けられる感覚を感じながら、かなめは宗介にしっかりと抱きついたまま  
離れようとはしなかった。  
 
 溜め込んでいた大量の精液を放出し終わって、気だるい疲労感を覚えながら宗介がかなめの  
顔を見ると…かなめは恨めしそうに睨んでいた。  
「早い。」  
「……すまん。」  
 がっくりと宗介は落ち込んだ。  
「あたしまだちゃんとイってないし……今日はまだ付き合ってもらうからね。」  
「…了解した。」  
 そう言って宗介が腰を引くと、落ち込んだ宗介と同じく、ペニスも力を失って項垂れていた。  
「ふにゃふにゃね。」  
 
「少し待ってくれればまた起つと思う。」  
「ふーん……あ、そうだ。ソースケ、立って。」  
「? ……ああ。」  
 宗介がベッドの上に立つと、かなめは宗介の足元に移動してぺたり、と座り込んだ。  
「な、何をするんだ?」  
「えっと……わ、結構グロいわね、これ。」  
 かなめは以前瑞樹に借りて家で真っ赤になりながら読んだ雑誌の中身を思い出した。  
 おずおずと宗介のペニスに手を伸ばすと、陰茎をつかみ、ぎこちない手つきで扱き出す。  
「う…」  
「……気持ち良い?」  
「…肯定だ。」  
 ふにゃふにゃだった宗介の一物がかなめの手の中で少しずつ力を取り戻し始める。  
 そして硬さを取り戻すと、かなめはペニスの先端に顔を近づけた。  
「何をするつもりだ。」  
 宗介の前でかなめは舌を出すと、先端をぺろりとなめた。  
「う。」  
「……苦…変な味。」  
 かなめは初めて味わう精液の味に少し顔をしかめてから、さらに宗介のペニスに舌を這わせる。  
 裏筋を舐め上げ、先端をぐるりと舐めたあとで口に含んだ。  
 先端だけを口に含んで舌先で先端の尿道口を刺激する。  
「う…ちどり……」  
「ふ…ん……」  
 先端をしゃぶられる物理的な刺激と、かなめの唇に自分のペニスが飲み込まれている視覚的な  
刺激のダブルパンチで、ペニスはさらに硬さと大きさを増していく。  
 だがしかし、その刺激はいささか強すぎた。  
「ち、ちどり……」  
「ん…ちゅ…ふぁ…なに?」  
「非常にまずい……もう、出る。」  
「へ?」  
 かなめが宗介の答えの意味を理解する前に、ペニスから勢い良く精液が噴出した。  
 かなめの口元にあったペニスから噴出した精液はまずかなめの口に飛び込んだ。  
 そして、びっくりして口を離したかなめの顔の前で、ペニスは暴れまわりながら精液を  
撒き散らし続け、彼女の顔や美しい黒髪を白く汚した。  
「げほっ、ごほっ、けほっ。」  
「す、すまない千鳥。」  
「……ソースケ」  
 睨み付けるかなめの視線に宗介は直立不動になる。  
「……」  
「……」  
「……」  
「……ち、ちどり」  
「もういいわよ…キスしてくれたら許したげる。」  
 かなめはそう言って顔についた精液を指で拭い取ると、宗介の首に腕を回して顔を寄せた。  
 キス。最初重ねるだけ、そして2度目は舌を絡めるようなフレンチキス。  
 そして、かなめが唾液を宗介の口中に送り込み…宗介の顔が曇った。  
「…なんだこれは。」  
「あんたの精子……いきなり口の中に出すから、罰よ。」  
 なんとも言いようのない残念な表情の宗介を見て悪戯が成功した子供のように笑うと、  
かなめは枕もとのティッシュに手を伸ばした。  
「まったく……顔だけじゃなくて髪の毛とかにもいっぱいついちゃってるじゃない。」  
 ティッシュと並べておいてあった鏡を覗き込みながらかなめは髪についた精液をふき取りはじめた。  
 
 一方、宗介のほうは…目の前の光景に釘付けになっていた。  
 目の前にはかなめの後姿……色っぽいうなじと白いなまめかしいラインを描く背中があった。  
 かなめが髪についた精液をふき取っているために長い髪をすべて体の前に回していたためだ。  
 
 そして、さらにその手前。官能的な肉付きのむっちりした尻が無防備に晒されていた。  
 …尻の谷間の一方の終端、アナルの下に開くピンクの花びらから蜜のように血の混じった  
ピンク色の精液が滴り落ち、その淫靡な光景に宗介の中のオスの本能がたまらなく刺激された。  
「……千鳥。」  
「なに? …ってちょっと、ソースケ!」  
 後ろから腰に抱きつかれたかなめがびっくりして振り向くと、どこかぎらついた目つきの  
宗介の顔がすぐ目の前にあった。  
「ちょ、ちょっと、ソースケってばって……んぁっ。」  
 宗介の唇が耳の後ろからうなじを這い回り、キスの雨を降らせる。  
 両手は腰の位置から這い登り、重そうに垂れ下がったかなめの乳房をわし掴みにしつつ、  
先端を執拗に弄り倒した。  
「や、やだ…ソースケぇ。」  
 静まりかかっていた体に再び火をつけられ、硬くとがった乳首からもたらされる甘く  
あがらい難い快感に、体がガクガクと震えた。  
 
 宗介が乳房を責めているうちに、枕元に両手を付いて四つん這いに近い姿勢だったかなめの  
両腕から力が抜けた。  
 必然的に、膝をついていた下半身は持ち上がり、尻を突き出す姿勢となる。  
 宗介の唇がうなじから艶かしい背中のラインを這い登る。  
 そして、再びがっちりとかなめの腰を抱きとめると、尻肉の中心で息づいている秘裂に  
自分の一物の先端をあてがった。  
「ちょ、ちょっと、後ろからするの!? …ふぁぁぁぁっ!!」  
 不安がるかなめの声に答えることなく、宗介はペニスでかなめの体を一気に刺し貫いた。  
 先ほど膣内射精した精液とかなめ自身の愛液で十分すぎるほど潤っていた膣は、宗介の一物を  
 抵抗もなく、奥までするりと飲み込んでしまった。  
 いまだ残る破瓜のわずかな痛みを感じながらも、宗介のモノを受け入れたかなめの身体は  
先端が際奥に触れた瞬間、びくっと反応した。  
 そして2度目となる挿入で、早くもかなめの膣は本来の能力を発揮して蠢き始め、宗介のペニスを  
しごき、なで上げ、そして吸い付いて精液を吸いだそうと刺激を与え始めた。  
 腰が溶けそうな快感に宗介の頭が真っ白になり、オスとしての本能が宗介の身体を突き動かす。  
 ペニスが抜けるぎりぎりまで腰を引き、そして次の瞬間、かなめの子宮を串刺しにする勢いで  
激しく、乱暴に腰を打ちつける。  
 かなめの張りのある尻肉をたたく音が部屋の中に響き渡った。  
「ひっ。」  
 かなめが小さく悲鳴を上げる。  
 乱暴に突き入れられたペニスの先端が、その狭い口をこじ開けようと乱暴に子宮口を叩いた。  
 だが、1度では終わらない。連続して突き込み、まるで連続ジャブを食らわせるように  
かなめの子宮を突き上げる。パンパンという連続的に肉を叩く音が部屋の中にこだました。  
「やっ、はっ、やだっ、ソースケっ」  
 かなめの甲高い悲鳴も宗介にとっては今や性欲を煽るための1要素でしかない。  
 そしてかなめもまた、感じるのは単なる痛みだけでなくなりつつあった。  
 乱暴に子宮口を突き上げられる度に、鈍い痛みと共に鳥肌が立つようなじわりとした快感が  
背筋を上ってくる。  
 ペニスが突き込まれるのにあわせて腹筋がぴくぴくと反応し、痛いほどに勃起して硬度を増した  
乳首がシーツにこすれてさらに快感を送り込む。  
 
「あっ、はっ、はっ、あんっ、ソースケっ、ソースケぇ」  
 かなめの声が、甘ったるい嬌声に変わる。  
 宗介は無意識に更なる快感を求めて、腰の位置や角度を微妙に変えた。  
 時に膣壁の上部を付きあげ、下部をこすり、右側をこそげ、左側をなぞる。  
 それにあわせて、かなめの身体が跳ねる。いやいや、と頭を振り、長い黒髪が舞った。  
 
 宗介はかなめの腰を抱え込んだまま、かなめの上半身に手を伸ばした。  
 乳房をもみしだきながら、かなめの上半身を抱き起こす。  
 快感で身体に力が入らないかなめは抵抗も見せずに抱えあげられた。  
 腰の中心を串刺しにされたまま、宗介に支えられていなければ前に倒れてしまいそうな  
体勢で膝立ちになる。  
 姿勢が変わったことで感触が変わったのか、宗介の腰がさらにピッチを上げてかなめの  
腰を突き上げる。  
 かなめはもはや声さえ上げなくなった。ただ空気を求めて口をパクパクと動かしているだけ。  
 宗介のモノに蹂躙され続けている膣口からは、おびただしいの量のこすれてあわ立った  
愛液がだらだらと流れ落ち、シーツに大きなしみを作っていた。  
 そして二人とも、頂点まであとわずかだった。  
「かなめっ、出るっ。」  
「ソースケ、きて、きてっ、」  
 獣のような荒い息遣いの宗介のピッチがさらに上がる。  
 かなめの背中が弓なりにそり、今まで感じたことがないほどの快感を期待してうち震えた。  
 そして、上りつめた瞬間…かなめの身体が持ち上がるかと思うほど宗介が突き上げると、  
3度目にもかかわらず1度目をはるかに超えるような量の精液がかなめの胎内に放出された。  
 胎内の奥底に精液が叩きつけられるたびに、かなめの身体が大きくびくっ、びくっ、と  
身体を震わせる。  
 それは短い時間だったのかもしれないが、二人にとっては恐ろしく長く、感じたことのない  
快楽の時間だった。  
 
                   ◇  
 
「鬼畜。」  
「……すまん。」  
「変態。」  
「……面目ない。」  
「ケ・ダ・モ・ノ」  
「……しかしだな、」  
「なによ。言い訳するつもり? いいわ、聞いたげる。」  
 宗介の逞しい腕枕に頭を預けたまま、むっつりとした顔でかなめは宗介を睨んでいた。  
 そんなかなめを見て一瞬宗介は口ごもったが、意を決して答えた。  
「君の姿があまりに綺麗で、色っぽくて、素晴らし過ぎた。だから…思わず我を忘れてしまった。」  
「…!」  
 かなめの顔が真っ赤に染まった。  
 ぷいっと顔を背け、しばらく沈黙が続いた。  
「……なんか悔しい。」  
「何が悔しいのだ?」  
「なんか一方的に色々されちゃって……ソースケの意のままにされたっていうか。」  
 かなめは起き上がると宗介の身体に馬乗りになった。  
「な、何をする気だ。」  
「ソースケが音を上げるまで搾り取るの。覚悟しなさい。」  
 不敵な顔でそう言うと、かなめは宗介の一物を握った。  
 
                   ◇  
 
 カーテンの間から差し込む日の光に、かなめは顔をしかめた。  
 だが低血圧のかなめの目覚めはあまりよろしくない。  
「う〜〜、身体痛〜〜」  
 節々の痛みに顔をしかめ、胡乱な意識のまま布団から這い出そうとしたかなめは、素肌の肩が  
外気に触れた瞬間、その冷たさに布団の中へUターンした。  
「さぶ…」  
 ぬくもりを求めて布団の中をまさぐると、人肌のぬくもりを自分のすぐ横に発見して、  
ふにゃっと抱きついた。  
「んふ…んふふ……ぽかぽか…」  
 人肌のぬくもりの抱き枕にご満悦のかなめは寝ぼけたまま頬擦りする。  
「千鳥…その…困る。」  
「ん〜、いっつもあたしを困らしてるんらから〜、たまには困れ〜」  
 寝ぼけたままで支離滅裂な答えを返した後で、かなめの中のわずかに覚醒していた部分が  
超低速で思考し始める。  
 
 ここはあらしんちのベッドのはずなのに…なんでそーすけの声が聞こえるのかしら……  
 
 たっぷり10秒ほど考えたが結局答えが出ず、重いまぶたを開いてのろのろと声のした方向を見た。  
「その……そんなに密着されると…また君を抱きたくなってしまうのだが。」  
 宗介の困った顔が息が触れ合うほどの目の前にあった。  
 
「ぎゃ〜〜〜〜〜〜〜」  
 ごすっ。  
 
「痛いじゃないか。」  
「悪かったわよ。」  
 頭に出来たこぶをさすりながらかなめは宗介に謝っていた。  
「あたし朝弱いって言ってたでしょ。昨日のこととか咄嗟に思い出せなかったのよ。」  
「いや、俺も悪かった。咄嗟に口を押さえて捕縛すべきだった。」  
「するなっ!」  
 いつもどおりのボケに反射的に突っ込み、それからかなめは真顔に戻った。  
「昨日…しちゃったんだね。なんだか体中痛いわ。」  
「俺もだ…少し腰が痛い。」  
 そう言いながら宗介は腰をさすった。それを見てかなめはくすり、と笑うと自分の頭を  
宗介の胸に預けてもたれかかった。  
「ずっと一緒にいてくれるんだよね。」  
「ああ。ずっと一緒にいる。絶対に君を手放さない。」  
 宗介が答えると、かなめは宗介の胸板に顔をうずめたままで聞いた。  
「ねえ…いつまでこうしていられるのかな。」  
「……」  
 宗介には答えられなかった。  
 
 善良な陣代高校の面々と過ごす、騒がしくも平凡で楽しい日々。  
 アマルガムによって何時壊されるかもわからない平穏で平和な日々がいつまで続くのかは、  
誰にもわからない。  
 
 宗介はかなめの細い肩を抱きしめて、そして答えた。  
「……たとえ君がどこへ連れ去られたとしても、また俺が連れ戻す。この暖かくて幸せな日常に。」  
「……うん。」  
 一度壊れてしまえば、今の日常は決して戻らない。そんなことはかなめにもわかっていた。  
 だが、それでも……かなめは宗介の言葉に縋りたかった。  
「陣高……一緒に卒業しよ。」  
「肯定だ……約束しよう。」  
 宗介とかなめの小指が絡み合う。それは二人の固い約束の証だった。  
 
                   ◇  
 
〜 おまけ 〜  
 
「ああっ、もうっ。ここも、ここも、ここも、ここも……ソースケの馬鹿っ」  
「…すまん。」  
 全身に残った大量のキスマークを見て、かなめは途方にくれていた。  
 特に白い首筋と内腿に残ったキスマークはどうがんばっても「蚊に刺された」事にするには  
数が多すぎる上に場所が悪すぎた。  
「もうっ、内腿のキスマークなんて乳繰り合ってたっていうのばればれじゃないの!」  
「……すまん」  
「すまん、じゃないわよ。今日は体育の授業があるのに着替えられないじゃない!」  
「面目ない。」  
「はぁ…本当にわかってんの? まあ……とりあえずファンデーション塗って誤魔化すしか  
 ないかしらね……」  
「千鳥……非常に言いにくいのだが。」  
「はぁ? 何?」  
 がるるる、と唸りを上げそうなかなめの様子に、いささか腰が引けた様子で宗介は指摘した。  
「実は……背中にもあるのだが。」  
「うそっ…ああっ、こんなにいっぱい!」  
「済まない。」  
「死ねッ! あんたはいっぺん死になさい くぬっ! くぬっ! くぬっ! くぬっ!」  
「痛い、痛いぞ千鳥。」  
 かなめの素足に蹂躙されながらも、心なしか宗介は幸せそうだった。  
 
 
 

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