かなめは吹き込む冷たい風から逃れるために、毛布を頭まで被った。  
 
 ここはスイスの山奥、古い山荘の一室だった。  
 ニケーロを逃れたレナードの一派は各地を転々としていた。  
 囚われの身のかなめも当然それに同行せざろう得ない状況であり、普通の女の子のかなめに  
とって粗末な住まいや食事は身に堪えた。  
 今のかなめにとって、唯一の安らぎは眠ることだけだった。  
 夢の中では、幸せだったあの頃に帰ることができた。  
 恭子や瑞樹、オノD信二らクラスメイトたちとバカ騒ぎした日常、林水や蓮と共に活動  
した生徒会の日々、そして…宗介とすごした、いとおしい日々。  
 それら暖かくて甘い思い出に夢の中で浸り…そして目覚めた時の現実との落差に絶望する。  
 それでも、それにすがって耐える事だけが、今のかなめにできる全てだった。  
 
 毛布の中で、かなめは目を閉じる。  
 今日もまた、懐かしいあの頃にかえるために。  
 
                   ◇  
 
 宗介はチェックリストに目を通していた顔を上げ、目頭を揉み解した。  
 ニケーロでトゥアハー・デ・ダナンと合流して以来、宗介はマオたちと共に戦いに明け暮れていた。  
 そして、出撃の度に宗介はレーバーティンの戦闘記録の再チェックを行っていた。  
 ぶっつけ本番で戦場に投入されたレーバーティンはあまりに未知数の部分が多い。  
 実践で性能試験をやっているようなもので1戦闘ごとに新たな発見があるような状態だからだ。  
 勿論研究班が詳細に分析してはいるものの、それとは別に命を預ける機体の状態を把握するために  
宗介は毎戦闘ごとに独自に戦闘記録の分析を行っていた。  
「軍曹殿、肉体的疲労が無視できないレベルです。速やかに休息をとることをお勧めします。」  
「…うるさい。休むのはこの記録をチェックしてからだ。」  
 アルの進言を一言で押しやり、宗介はひとつ伸びをしてどさり、とシートに倒れこんだ。  
「俺は…約束したんだ…千鳥と…必ず…迎えに……ちど…り」  
 蓄積した疲労にあがらい切れずに、宗介は眠りに落ちた。  
 
「……」  
 宗介が眠りについたのを見て、アルは眠りを妨げないようにディスプレイの輝度を落とした。  
 そして…ちょっとした好奇心から、TAROSを起動した。  
 …宗介の夢を覗いてみたかったのだ。  
 すると…宗介の思考がアルに流れ込んでくると同時に、宗介の意識はオムニスフィアへと  
連結した。  
 アルはそれを見つめ続けた…興味深げに。  
 
                   ◇  
 
 かなめは光に満ちた空間の中をさまよっていた。  
 …いつものことだ。周りを情報と、誰のものとも知れない言葉が流れてゆく。  
 その中に、かなめは良く知った声を見つけた。  
 
 千鳥…  
 
 ソースケ!?  
 
 懐かしい言葉に、どことも知れない空間を漂っていた宗介の意識は、辺りを見回した。  
 目には見えない。しかし、たしかにかなめはそこにいた。  
 
「軍曹殿、肉体的疲労が無視できないレベルです。速やかに休息をとることをお勧めします。」  
「…うるさい。休むのはこの記録をチェックしてからだ。」  
 アルの進言を一言で押しやり、宗介はひとつ伸びをしてどさり、とシートに倒れこんだ。  
「俺は…約束したんだ…千鳥と…必ず…迎えに……ちど…り」  
 蓄積した疲労にあがらい切れずに、宗介は眠りに落ちた。  
 
「……」  
 宗介が眠りについたのを見て、アルは眠りを妨げないようにディスプレイの輝度を落とした。  
 そして…ちょっとした好奇心から、TAROSを起動した。  
 …宗介の夢を覗いてみたかったのだ。  
 すると…宗介の思考がアルに流れ込んでくると同時に、宗介の意識はオムニスフィアへと  
連結した。  
 アルはそれを見つめ続けた…興味深げに。  
 
                   ◇  
 
 かなめは光に満ちた空間の中をさまよっていた。  
 …いつものことだ。周りを情報と、誰のものとも知れない言葉が流れてゆく。  
 その中に、かなめは良く知った声を見つけた。  
 
 千鳥…  
 
 ソースケ!?  
 
 懐かしい言葉に、どことも知れない空間を漂っていた宗介の意識は、辺りを見回した。  
 目には見えない。しかし、たしかにかなめはそこにいた。  
 
 抱きしめたい。宗介はそう願った。  
 すると、自分の腕の中に、やわらかい女の体が収まっていた。  
 
 かなめは、突然逞しい男の胸に抱きとめられた。  
 指でなぞると、大小さまざまなたくさんの傷が感じられた。  
 
 ソースケ…  
 
 かなめはその胸板に頭を預けた。暖かく、力強い、愛しい男の感触に、かなめは心安らぐのを感じた。  
 
 千鳥…  
 
 宗介は、腕の中の少女の背を撫でた。  
 長く、つややかな黒髪の感触。  
 そして、その切れ間に覗くすべらかな肌の感触。  
 宗介の手が滑り降りる。滑らかな白い背中を滑り落ち、くびれた腰を過ぎ、女性らしく  
膨らんだ尻を撫でた。  
 目には見えないはずなのに、宗介にはそれが手に取るようにわかった。  
 
 かなめはキスしたいと思った。  
 少し背伸びして、宗介の首に手を回し、唇を重ねた。  
 唇が重なると、お互いに自然に舌を絡めあった。  
 まるで蕩けるような感触…舌が絡み合い、宗介の筋肉質な胸板にかなめの豊満な乳房が  
押し付けられ、柔らかくつぶれる。  
 
 接触した部分が溶け合い、一体となるような甘美な感触に、二人は酔いしれた。  
 
 唇が癒着するような感触を味わっていたかなめは、下腹部を突き上げる感触に気がついた。  
 宗介の股間の一物が、勃起してかなめの下腹をつついていたのだ。  
 
 …ね、しよ?ソースケ  
 …千鳥  
 
 かなめは宗介の腰に足を絡みつけた。宗介も張りのある尻肉をつかみ、かなめの腰を  
自分の腰の前に固定する。  
 そして、いきり立った一物をかなめの股間の綻びに押しあてると、鋭く腰を突き出した。  
 宗介の硬くそそり立った一物が、生娘のはずのかなめの膣に抵抗もなくするりと滑り込む。  
 宗介は繰り返しかなめを突き上げ、それにあわせてかなめは腰をくねらせた。  
 
 腰が一体になるような感触。  
 宗介もかなめも、お互いどちらがペニスで突き上げているのか、子宮を突き上げられて  
いるのか曖昧になり、そして二重の快楽におぼれる。  
 かなめの乳房に、宗介がかぶりついた。しかも左右同時に。  
 右の乳首を吸われ、左の乳首を舌で転がされ、快楽に体が震えた。  
 宗介もまた、全身を無数のかなめの唇にまさぐられる感触に、たとえようもない快楽を  
覚えていた。  
 胸板の上の乳首をかなめの舌が愛撫し、耳たぶを食み、指の一本一本をしゃぶりあげる  
感触に気が狂いそうになる。  
 
 やがて二人の快楽が、頂点を迎える。  
 お互いの境界が曖昧になり、今や二人は一体となって溶け合った快楽の塊となっていた。  
 
 …うん…んあ…ソースケぇ…ソースケぇ!!  
 千鳥…ち…どり…かなめ!  
 
 大きな快楽の波が、今まで曖昧だった二人の境界を再び明らかにした。  
 宗介がかなめの際奥にペニスを突き入れ、かなめもまた歓喜を持ってそれを受け入れた。  
 
 ああ…ソースケ…  
 かなめ…愛している…  
 
 二人の意識が、闇に落ちていく。  
 完全な闇に落ちる寸前、二人の小指が絡み合った。  
 
 やくそくだよ…ソースケ。早く迎えに来て…  
 ああ、必ず助けに行く…  
 
 そして、二人の意識は完全に闇に飲まれた。  
 
                   ◇  
 
 窓から差し込んだ朝日の光でかなめは目を覚ました。  
 酷く寝汗をかいていた。そして…まとわりつくような疲労感。  
 乳首は硬く尖り、下着はぐちゃぐちゃに湿っていた…まるで今の今までセックスでも  
していたかのように。  
 
 やだ…あたしったら…  
 
 淫夢にしてもあまりに幻想的で生々しい夢だった。むしろ共振に近いような…  
 
 …まさか、ね。  
 
 かなめは頭を振ってそれを否定すると、布団を這い出して着ていた衣服を脱ぎ捨て、  
タオルを手にシャワーに向かった。  
 
                   ◇  
 
「う…」  
 宗介はからだの痛みと下半身の不快感に目を覚ました。  
 ASのシートはお世辞にも寝心地の良いものとはいえない。  
 節々の痛みに耐えて身を起こすと、まとわりつくような疲労感が宗介を襲った。  
 そして股間に不快感を覚えて目を落とすと、ありえない量の夢精が下着を汚し、その  
外側のカーゴパンツにまでしみを作っていた。  
 
 あれは夢のはずだ…  
 
 宗介はそう思い込もうとしたが、夢にしてもありえないような、それでいて生々しい夢だった。  
 
 まさか…な。  
 
 宗介は、疲れのせいだと割り切ってコックピットを這い出した。  
 そのまま格納庫を出て部屋へと戻っていった。  
 
 そして…宗介が格納庫から消えるのを確認して、アルは記録を停止した。  
 オムニスフィアで出会った二人が何をしていたのか…アルはつぶさに見て、忠実に記録していた。  
 
 さて…この記録はどうすべきでしょうか…  
 
 アルはしばらく判断に迷った挙句、研究班や専属操縦兵である宗介にも閲覧を禁ずる  
最重要記録として保存した。  
 …人間の男女の恋愛に関する貴重な資料として。  
 

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