ある日の放課後…
「千鳥、実は頼みがあるのだが。」
「なに?…また爆発ネタとかはいやよ。」
「いや、そうではない。実は…非常に言いずらいのだが…」
「なによ…あたしがそういうウジウジしたのが大きらいなの知ってるでしょ。さっさと言いなさい。」
「わかった。では言おう。千鳥、俺に毎朝味噌汁を作ってほしい。」
「えっ…そ、それって・・・」
かなめの心が激しくときめいた。
「な、なんで…突然そんな事…こ、困るよ…あたしにだって、心の準備が・・・」
「そうか、困るのか…すまない、無理なら他を当たろう。」
「あ、そ、ソースケ!ダメなんて言って…って、他?」
「そうだ。」
そう言いながら宗介は腹を押さえた。
「実は最近腹の調子が良く無くてな。丁度常盤に相談したら毎朝味噌汁を飲むのがいいと言われたのでな。
味噌汁の作り方がわからないと言ったら千鳥に相談するといいといわれたのだが。」
「・・・ソースケ。」
「なんだ…どこか調子でも悪いのか。体が震えているが。」
「紛らわしい言い方するなッ!」
すぱん!
「…痛いじゃないか。」
「あんたが乙女心を弄ぶからよ!くぬくぬくぬくぬくぬくぬ!」
「痛い、痛いぞ千鳥。俺としても千鳥の味噌汁はいつも美味いと思っていたので、常盤の提案は最適だと思ったのだが。」
宗介にスタンピングを繰り出していたかなめの足が止まった。
「…」
「千鳥、どうかしたのか?」
「・・・し、仕方ないわね。」
かなめはそっぽを向いたまま言った。
「あ、あたしぐらいしかあんたに手料理食べさせてくれる女の子なんて居ないでしょ。毎朝食事用意してあげるわよ。」
「そうか…すまない。この借りは必ず返す。とりあえず、新しい護身アイテムなどどうだろう。」
「いらないわよ。ソースケが傍に居るんだから。…それで、お味噌汁の具は何がいい?」
「うむ。以前食べたなめこの味噌汁が俺の好みなのだが。」
「じゃ、明日の朝はなめこの味噌汁にしよ!帰りに買い物に付き合いなさい!」
「うむ、了解した。」
二人はそんな会話を交わしながら・・・傍から見れば恋人同士であるかのように仲睦まじく・・・下校していった。
『ワーン・ミニッツ!!』
ヘルメットに仕込まれたヘッドセッド越しにカーゴベイ乗員の怒鳴り声が聞こえた。
宗介は目を開いた。
目の前の様々な情報を表示するモニターの圧迫感で、今自分がASの中の狭いコックピットに居ることを思い出した。
輸送機の外は相変わらず暴風雨で、上下左右に激しくシェイクされ続けている。
こみ上げる胃のむかつきを紛らわすために目を閉じているうちに、軽くうとうとしてしまったようだ。
操縦桿を軽く操作してM6の動作を確認しながら、先ほどのまどろみの中で見た愛しい少女の面影を思い返した。
「千鳥・・・」
もう一度会いたい。ただそれだけのためにここまできてしまった。
では行くか
ただ、彼女の笑顔を見るため・・・それだけのために、相介はまた、戦場へ一歩、踏み出す。