「ん…」  
暗い車の中で、少女は目を開けた。  
その少女は両手両足を縛られており、身動きがとれない状態だった。  
「な…なによ!なんなのよこれは!」  
少女は必死で自分を拘束しているロープを切ろうとしたが、少女の細い腕では、それは不可能だった  
「お目覚めかな〜?お姫様?クッハハハ…」  
前の座席で車を運転している男が下卑な笑い声をあげる。  
その声を聞いた瞬間、少女は自分がどうなったのかを思い出した。とても鮮明に。  
いつも通りの帰り道。頼りになる戦争馬鹿との帰り道。  
カレーに合うのはライスとパンどっちだという不毛だが、楽しい議論。  
そして、いつも通り別れた。そして、家の鍵を出したその時…  
そこから先の記憶はなかった。  
「あ…あなた…私をどうする気よ!」  
少女は恐怖を押し殺し叫ぶ  
「ん〜?いや、別にあんたに恨みがあるわけじゃあないさ。ただな…」  
男はノラリクラリとした話し方だったが…  
「ただ…すっかり堕落し切っちまったあの野郎…カァシムの野郎に…目を覚まさせてやりたいんだよ…」  
この台詞は、一言一句切るように噛み締めた、少女―千鳥かなめが人生で初めて聞く種類の声だった  
 
 
ほぼ同時刻  
彼は焦っていた。  
彼の人生の中でも、これほどの焦燥に襲われた経験は少ない。  
幼い頃より硝煙の匂い漂う戦場で育ったにも関わらず。  
彼はたった一枚のメールによって、かつてない焦りを感じた  
そのメールは…  
「この〇〇マンションに夕方までに来い。来なければ貴様の大事な人間が死ぬ。必ず一人でこい。どことも連絡を取るな。一つでも守らなければ、必ず彼女を殺す。」  
そう書いてあった。  
名前は書いていない。アドレスも出鱈目の使い捨てのものだ。  
しかし、最後の彼女…つまり。  
「千鳥…っ」  
たまらずうめく  
即座に千鳥かなめの部屋に向かったが、当然無人だ。  
夕方まではまだそれなりの時間はある。  
だが、所属している組織に連絡する事もできない。  
たった一人で、彼女を取り返さねばならない。  
「千鳥…千鳥…!」  
彼―相良宗介は走りながら何度も彼女の名を呼ぶ。  
掛け替えない彼女。あの笑顔を取り返す。  
鋼鉄の意思と灼熱の怒りをもって、相良宗介は一直線に走り続けた  
 
 
宗介が指定されたマンションに着いたのは、日が傾きはじめた午後4時だった。  
もう余り時間はない。武装に時間をかけすぎた。  
宗介は走ってきた勢いそのままにマンションに踏み込んだ。  
すると、住民の要望や、マンションの所有者のお願いなどが書いてあるところに、明らかに彼当ての張り紙があった  
[214号室にこい。貴様の行動は既に監視している。妙な真似をすれば、即座に女を殺す]  
簡潔な文だったが、こんな所に張り付けておけば警察も来る。  
つまり…  
宗介は舌打ちしてその張り紙をむしり取ってビリビリに破いた。  
恐らく宗介がこうすることも予想済みなのだろう。  
敵は彼の事をよく知っている。宗介はそう確信した。  
宗介は破いた紙をポケットにつめて、指定された部屋に歩いた。  
そこに千鳥がいる確率はかなり低い。  
だが、宗介にはなにも選べなかった。  
万が一にもあってはいけないのだ。  
―彼女の死など―  
宗介はゆっくりと油断なく歩きながら、冷や汗を止められなかった。  
嫌な想像ばかり浮かぶ。これでは新兵のようだ。  
やがて、210号室を見つけた。  
この4つ先の扉…  
扉を通り過ぎる度、嫌な予感は広がった。  
そして、宗介は…  
214号室の扉を開いた  
 
その部屋には…  
真ん中に白い紙がおいてあり、その少し前にテレビが置いてあった  
「……千鳥……」  
宗介はうめく  
と、いきなりテレビの電源が入った  
「クク…カカ…待ってたゼェ〜カシム…ククッ…クハハ…」  
テレビからはいきなり…最も会いたくない男が映った  
「ガ…ガウルン…?」ガウルン。かつて宗介と北朝鮮にて死闘を演じ、死んだと思われていた男―が現れた  
「会いたかったぜぇ〜カシム〜」  
耳障りな笑い声をあげながら画面の中の男はギラギラした目を宗介に向けた  
「ガウルンッ!千鳥を誘拐したのは貴様か!」  
意味がない事だが、テレビに銃を突き付け叫ぶ。まだ部屋には足を踏み入れてはいない。「ククッ…まあいいから…入ってこいよ?カシム〜ゆっくりとなあ…」  
宗介には選びようがなかった。この男にはなんの交渉も通用しない。最悪の男なのだ  
宗介は言うとおりゆっくりと部屋に足を踏み入れた  
「いい子だ…カシム…クハハッ…そんなにこの娘が大事かな〜?」宗介が部屋の真ん中…白い紙が置いてある所までくると、ガウルンはカメラから顔を離し、体全体が見えるようにした  
そこには…  
「千鳥っ…!」  
千鳥かなめがいた  
外傷はなさそうだったが、ぐったりとしている  
「ガウルンッ!千鳥に何をした!貴様…!」宗介は珍しく怒りを完全に表に出し叫ぶ  
「いい顔だな…カシム…安心しろ。変な薬は使っちゃいねぇよ。ま、ちょっと体が動かなくなる薬を打っただけだ。後遺症もない。安心したか…カアシム〜」  
「ガウルン…千鳥にそれ以上何かしてみろ…必ず殺してやる…」  
宗介はかみ締めるようにうめく  
「ククッ…寝ぼけたか、カシム?俺は死ぬことを恐れるような奴か…?」  
そう。この男には脅迫すらできない  
 
「くっ…!貴様……!」  
宗介は口惜しそうに呻きながらも、銃を下げる  
そして、モニターの中でニヤニヤとする男に、唇を噛み締めながら「ガウルン…ッ…頼む。千鳥には手を出さないでくれ」  
ガウルンには交渉は通じない。分かっていることだ。  
しかし、自分の懇願ならば…  
宗介は最も頭を下げたくない男に懇願することに激しく屈辱を感じたが、そんなことに構ってはいられない  
しかし…  
「………ハア〜〜〜」モニターから大きく、長い溜め息が聞こえた  
宗介は頭を上げてガウルンを見ると、さっきまでのニヤついた顔とは打って変わり、何か…失望し、諦めた表情になっている  
「……?ガウルン…」宗介は冷や汗がまたとてつもない勢いで吹き出すのを感じた  
嫌な予感がする  
自分は何か、致命的なミスをしたのかもしれない…  
まずい、まずい。  
冷や汗は止まらない。自制心も限界に近い。ガウルンが何も話さない事が更に宗介の不安を煽る  
そして、たっぷりと間を置いた後、ガウルンは口を開いた  
「カシム…お前、どこまで墜ちてんだ?俺と初めて会ったお前は…美しく強かった…あのお前は…」  
 
ガウルンはそこまで言って言葉を切った  
また部屋に重い沈黙がおりる。  
ガウルンは苛立っている。間違いない。  
宗介は恐ろしくなった。自分はミスをした。確信した。冷や汗は止まらない。体が動かない。何か言わなければいけないのに、言葉が出てこない  
ガウルンが再び口を開いたのは、動揺する宗介をじっくり眺めてからだった  
「気に食わねぇなあ、カシム。特に気に入らねぇのは目だ。なんだその目?その面?その態度?敵に向かって…頼むぅ〜?ハア〜カシム…やっぱりお前には目を覚まさせる薬が必要らしい…」  
わからない。この男は何を言っている?確かに自分は変わった。日本に来てまだ数か月だが、学校の友人や―彼女―のお陰で多少は変わり初めているような気はする。なぜそれがいけない?ガウルン…貴様は何が不満なんだ?  
宗介は頭でそれだけ考えたが、ガウルンの明らかに苛立っている―いつでもためらいなく人を殺しそうな―目を見ていると、何も言えない。  
そして、薬?何か麻薬のような物を俺に?ならばそれでもいいだろう。千鳥が無事ならば。麻薬を投与されても必ず戻る。自分なら必ず。戻って見せる  
宗介はようやく口を開こうとした時、ガウルンがそれを遮るように手を上げ―  
「薬を勘違いしてないか…?麻薬とかやばい薬物なんてお前に打っても意味ない…俺が求めているのは、相良…お前がカシムに戻る事だ!」  
ガウルンは一気に捲し立てる。そして―  
千鳥かなめの胸のひもをゆっくりと解き始めた  
 
 
千鳥かなめは眠っていた。  
車に乗せられるままにマンションに到着すると、「降りろ」と銃で脅された。  
言われるままに車から降りると、いきなり口にガーゼを当てられた。その後の記憶はない。  
「ん…?」  
千鳥かなめは聞き慣れた声を聞いた気がした。  
いつも自分や回りに迷惑ばかりかけている、戦争馬鹿で大切な人間の声を。  
彼は怒っているようだった。  
焦っているようだった。  
珍しいことだ。なんなのだろう。  
体が重い。一応目は覚めているのに意識はないような感覚。  
まどろみの中でかなめはまた眠りそうになった。しかし…  
「……戻る事だっ!」耳元であの男の叫び声がする。同時に、違和感を感じた。  
そこで、かなめは覚醒した。  
胸のひもが解かれている。更に半分ほどまで捲られている。  
形のよい乳房の下半分が下着ごしに見えてしまっている。  
「ち…ちょっ!?何するのよ!やめてよ!やだ!やだ!」  
覚醒したばかりだが、異常な事態に叫びが止まらない。  
しかし、体は動かない。指くらいしか動かない。自分の制服を捲っている手を払いのけたくても、逃げたくても、腕も足も動かない。「ガウルンッ!貴様っ!やめろ!やめろぉ!貴様の狙いは俺だろう!千鳥に手を出すなっ!!」  
宗介の声が聞こえてくる。苦労して首を動かすと、モニターに宗介の顔が映っている。  
「ククッ…カシム…動くなよ〜?その部屋の白い紙の上に座れ。ほらどうした?殺しちゃうぞ〜カシム〜」  
「ガウ…ルン…くっ…」  
宗介は渋々と従う。白い紙に腰を下ろした瞬間、ガウルンが何かのスイッチを押す  
 
ガウルンがスイッチを押した時、部屋の壁に無数に仕掛けられたセンサーが作動した  
「ククッ…カハハ…カシム…もうこれで一歩も動けないぜ〜。そのセンサーは赤外線センサーだ。お前が紙の上から離れた瞬間…」  
ガウルンはそこで言葉を切る。  
そして。  
「嫌っ!やだ、やだやだ!」  
かなめの制服を一気に捲り上げ完全に脱がしてから  
「ドカン!!だ、気をつけろよカシム〜。あ、後モニターから目を逸らすなよ〜  
一瞬でも逸らしたらこの女ごと吹っ飛んでもらう。よ〜く見てろよカシム!」  
「ガウルン…やめろ…やめろぉぉ!」  
宗介の叫びが狭い部屋に響く。  
だが、なにもできない上半身は下着のみとなったかなめをガウルンはじっとりと眺める  
「見るな!見るなぁ!このっ…見ないでよぉ!」  
かなめの目に涙が浮かぶ。  
男にこんな風に眺められるのは初めてではなかったが、こんな状況で見られるのは初めてだった。屈辱と羞恥で顔はすでに真っ赤だ  
ガウルンはしばらく眺めていたが、やがて小さく溜め息をつくと、彼女の上半身を隠していた小さな白い下着をはぎとり、直接胸を揉み始めた。顔は無表情。まるで、何かの作業を淡々と行っているようだ  
「いやぁ!やめてよ!やめ…やだ!やだよ! やめてって言ってるでしょ!?いやあ!!」  
 
かなめは涙を堪えながら必死で叫ぶ。  
だが、当然やめてくれない。それどころか、手つきは更にいやらしく動き、胸の先端に刺激を与える動きも加わり始めた  
宗介はモニターからこちらも必死に制止を訴える  
「やめろ!ガウルン!お前の望みは叶えてやる!カシムにでもなんでも戻る!だからやめろ!やめてくれ!!千鳥に手を出すなぁっ!」  
手は止めずにガウルンが答える。その顔にはニヤニヤとした表情が戻っていた。  
「わかってねぇなあカシム。今の堕落して腐ったお前なんざ興味ねぇよ。いいから黙って見てろ。自分の無力のせいで起っちまったことの結果をなぁ」  
ガウルンの胸を揉む動きが激しさを増す。  
更に口で愛撫を加え始める。  
舌で乳首の回りを舐め回し、口に含んで甘く噛む  
「いや…いや…。やぁ…ぁ…。やめて…やだ…ぁ…ぁあ…っ…」  
かなめの吐息が荒くなっていく。  
だが、拒絶の意思はまだまだ強く、涙を流しながら弱々しく首を振り拒絶の言葉を繰り返す  
「ククッ……ダァ〜メ!恨むならカシム…相良君を恨むんだな?ハッハァ!」  
そして。  
ガウルンはかなめのスカートを無理やりはぎ取った  
そして。  
「胸はなかなかいい揉み心地だったが…こっちはどうかな?かなめちゃぁーん?」  
 
ガウルンの手がゆっくりと、本当にゆっくりとかなめの下半身に迫っていく  
「や…だめ!そこはやだ!そこだけはやめて!お願い!やだやだぁ!」  
「ガウルンー!貴様いい加減にしろぉ!いますぐやめろ!やめるんだ!よせぇぇ!」  
二人とももはや半狂乱で叫ぶ。  
だがガウルンの手は止まらない。顔には先程からのニヤついた顔が張り付いたようになっている  
そして、ガウルンの手はそこに辿り着く  
クチュ……  
湿った音が響く。  
「かなめちゃーん?なにかなこの音は〜?  
カカッ…良かったなカシム〜かなめちゃんは喜んでくれたみたいだぜ!ハハハッ!」  
かなめの顔が更に紅潮する。確かに先程の愛撫から下半身に妙な違和感を感じていた  
だからこそ、触って欲しくなかった。見られたくなかった。  
彼に。  
そのままガウルンは下着ごしにそこを責める。  
指を少し突き入れ、ゆっくり抜く。上から下まで撫でる。繰り返す。  
「い…ぁ…や…あ、あぁ…やだぁ…っ…っ!」  
下着の染みが拡がる  
かなめの声から拒絶の言葉が紡げなくなっていく  
「……千鳥……」  
宗介は泣きたくなった。無力だ。自分はあまりに無力だ。  
好きな女一人すら守れない。  
自分には戦うことしかないのに。  
情けない。情けない。吐き気がする。  
だが、モニターから目は離さない。  
 
ガウルンはしばらくそこを責め続けたが、急にピタッと動きを止める。  
「さて、じゃあ味あわせてもらうか、かなめちゃんの味を…クハハッ…」  
ガウルンはそう言うとかなめの下着を引き裂いた。素手である。  
「いっ…いやあ!いや!やだ!見ないで!やだよ!いっ…やだ!やだぁー!」  
ガウルンは顔をそこにゆっくり近付ける。  
両手でまたゆっくりとかなめの両足を開きながら。  
薬で体に力が入らないかなめの足は、あまりにもあっさりと開いていく  
そして。  
ガウルンはそこから溢れる蜜を舐めとるように舐め上げた  
「ひっ!?いや!そんなとこなめっ…んぁ…やだぁっ!ぁ…っ…や…だ……だ…ぁ…めぇ…っ!」  
かなめは初めての感覚に必死に抗う  
思ってはいけない。思ってはならない。  
こんな状況で。彼に見られているのに。  
気持ちいいなどと。  
「いーい味だぜカシム〜お前も飲みたいか?ククッ…」  
ガウルンは蜜を舐めとるような動きから、愛撫に舌の動きを切り換える  
舌を突き入れ、膣内を舐め回し、突起を舌と指でつつく。  
「んんっ…ああ…ひや…や…ぁあーっ!やだ!やだぁ!こんなっ!こんっ…なぁ…!ぁっ……」  
かなめは首を振りながら涙を流す  
未知の感覚は濁流のようにかなめの拒絶の意思を削いでいく  
「ふぅっ…さあて…メインディッシュといくか…カシム」  
 
宗介は茫然自失になっていた。  
吐き気は更に強くなる。  
嫌になる。自分の無力。  
だが、かなめを死なせないためにモニターからは目を決して逸らさない。  
だが、モニターの中では最悪の展開が始まった  
 
ガウルンはズボンを一気に下ろす  
そこにあるものは、既に雄々しく天を突いている  
「いいか、かなめちゃん?これをこれから入れるんだ。痛くて苦しいだろうが、ま、精々相良君の薬になれるよう喘いでくれ」  
ガウルンはかなめの目の前にそれを持っていき、見せつけてからかなめの耳に囁いた。  
「いや…だめ!それだけはだめぇ!初めてなの!やだぁ!お願い!やめっ…!」  
ガウルンは両足を更に開き、その間に体を滑り込ませる。  
そして、かなめの蜜を溢れさせている場所にそれをゆっくり擦りつける  
「いや…やだ…やめて!初めてなのよ!やだ!初めては…初めては好きな人にしたいの!だからお願い!やめてぇ!」  
そして。  
「助けて!宗介ぇー!」  
ここまで。  
一度も言わなかった。かなめが彼に助けを求めた場面というのはほとんどない。彼女は自分でなんとかする人間なのだ。  
だが、耐えられなかった。この状況に。ほとんど無意識に出た助けを求める声。  
宗介はそれを聞いて唇を噛み締めた。血が流れる。口の中に血の味が拡がる。だが、なにもできない。  
「ガウルン…やめてくれ…やめろぉぉぉぉ!」  
「ククッ…ハハ…カカ…カシム」  
ガウルンはかなめから目を逸らし宗介を見る。  
「これがお前が弱くなった結果だ。もうお前には何も守れねぇよ」ズッ…  
 
ガウルンは宗介に見せつけるように腰をゆっくり進める  
それは千鳥への気遣いではなく、単なる宗介―カシムへのサド心だろう  
「い…!!っ!!いた…ぁっ!!痛…い…痛い痛いー!!やめ…てっ…やぁ…っ…!!抜いて!ねぇっ!!抜いて抜いて抜いてぇっ!!」  
千鳥は処女を失う肉体的な痛みと、それを彼に見られているという精神的な痛みで激しく首を振りながら叫ぶ。  
いつの間にか薬の効果は薄まったらしい。  
だが、遅すぎた  
「ち…どり…」  
宗介の目は虚ろになり始めていた。  
守れなかった。守りたかった。彼女だけは。なぜ彼女が。自分のせいか。どうすればいい。どうすればいい…  
単語と自己嫌悪だけが頭に浮かび、何も考えられない  
「ん〜いーい感じだカシム〜。そうそう!お前はそういう目をしなくちゃなあ!しかしやっぱり処女の膣はいいなあおい!クハハハァッ!聞いてるかカシムゥ!」  
ガウルンは高らかに歪んだ笑い声をあげながら腰を突きいれる。そして、それは根元まで埋没した  
ガウルンは一気に腰を動かす。千鳥への気遣いなど微塵もない  
「いぁっ!痛いっ!痛いよぉ!ぁあ!!やっ!動かないで!!痛い!痛い!んぁああ!」千鳥は少し動くようになった手でガウルンの体を押し返そうとするが、この大男には少女の細腕の力など全く通じない  
 
千鳥のこんな姿を見るのは初めてだ。  
怒っている彼女、歴戦の傭兵である自分を張り飛ばす彼女、優しい彼女、まともな食事を初めてご馳走してくれた彼女、そして―  
[全く…困った奴なんだから、あんたは]  
自分が起こした騒動を見て、困ったように微笑む彼女。  
そして。今の彼女は。唯唯涙を流しながら首を振り、懇願を必死に行う。そして、彼女の目に映る色は―  
絶望だった。  
戦場で何度も見た目。仲間の一人が致命傷を負った時の目だ。  
一片の希望も慈悲もない。唯唯絶望の目。  
辛かった。そんな千鳥かなめは見たくなかった。だが、モニターの中で変化が起こり始めた  
「んっ…ふぅっ…や、やだっ…やだっぁ……なん…や…ぁあっ…」千鳥の声が変化する。唯の泣き声ではない。先程とは声の質が違う。  
「クク…かなめちゃんは淫乱だなぁ?初めてなのにもう感じまくってるのか!ハハッ!」ガウルンの動きも変化している。ただ激しく突くだけではない。  
ねじるように、深く、浅く。快感を与えるための動きだ。  
「そ…そん…な…こっ…!あっ!ああっ!!あん…んかに!かん…うぁっ…あ!あっ!いやっ…ぁあ!」  
かなめは否定しようとするが、喘ぎでかきけされてしまっている  
嫌だ。嫌だ。嫌だ!なんで。なんで!こんな男、好きでも何でもない。嫌いだ。大嫌いだ。なのに、なぜ。なぜ!  
「き…ぁ…もち…いっ…」  
 
声は最早無意識にこぼれる。本能のままに。理性は限界だった  
「クハハハッ!カハハッ!カシム!カシムカシム!聞いたかおい!ハハッ!気持ちいいそうだ!良かったなあカシム!かなめちゃんは嫌がってないそうだ!」  
実はかなめには眠らせたあと、催淫効果の非常に高い薬を注射していた。一時的な薬で後遺症もないが、全身にその薬が回ると処女でも淫乱と化す。だが、当然そんなことは宗介とかなめは知るべくもない。  
「………っ……!!!」  
目を閉じたかった。逸らしたかった。耳を塞ぎたい。聞きたくない。彼の目は完全に虚ろになり、モニターを食い入るように見ていたが、それは宗介の意思ではない。彼女を死なせたくないという想いがただそうさせているだけだ。  
「あっ、あっ、うんっ!やぁっ!だめ!あっ!」  
かなめは声を抑えようともしない  
ガウルンはニヤつきながら、体位を変えた。抜かないままで、かなめの背中を抱き、無理やり抱き押し、自分は仰向けになる。  
いわゆる騎乗位だ。  
ガウルンは突き上げることはせず、ただかなめの胸を軽く揉む  
「かなめちゃーん?気持ち良くなりたければ自分で動くんだ。できるだろう?ほらほら、やってみろよ」  
「そん…できるわけっ…なぃ…っ…したく…な…ぁっ…」  
だが。  
動かすと気持ちいいのでは。先程よりも深く入っている。この状態で動かすとどんな感じなのだろう。  
かなめは、誘惑と必死に戦う。囁きと戦うように。  
だが、ガウルンがかなめの乳首を摘んだ瞬間、理性は崩壊した  
 
ぎこちなく、だがしっかりと腰を振り始める。豊かな胸が、それに合わせて揺れ始める  
「くぅっ…あんっ…!!だ…や…こんなの…やだ…ぁっ!だめぇっ!やだあ…んあっ!」  
かなめの口からは喘ぎが再び始まる。  
ガウルンはそれに満足し、両手を頭の後ろで組み、かなめの痴態を観察している。  
「いぁっ!こん!だっ!やあっ!やだ!!ぅ…ぁっ…も…だ…もう…んっ…ぁっ…!」  
かなめは夢中で腰を振る。彼の事がゆっくり霞む。快感が彼女の意識を奪う。  
「いやぁ〜気持ちいいね〜。上手いじゃないかかなめちゃん?ご褒美を上げよう!ククッ!」  
ガウルンは急に飛び起き、かなめからそれを抜く。  
そして、かなめに後ろを向かせ、そのまま組み伏せる。かなめは抵抗しなかった。  
そのままバックから突きいれる。  
凄まじい早さで腰を動かす。かなめもそれにぎこちなく同調する  
「ふ…ふか…ぁ…だめぇ!こんなのぉ!やぁ……わた…わた…し…も、もう!もうだっ…!あ!あっ!んぅ!」かなめは激しく叫ぶ。そして、絶頂に達しようとしたとき、ガウルンはまた体位を変え、正常位にした。  
そして、カメラが二人の顔に近付く。  
ガウルンは腰を激しく動かしたまま、かなめに口付ける  
「ん!?ふぁ…ん…ん…っ…ぅ…ん…ぁ…ふっ…」  
かなめは大きく目を見開いたが、舌が差し込まれ、かなめの口内を蹂躙することを拒絶しなかった。  
 
まるで昔からの恋人同士のように唇を、舌を絡ませる二人をアップで見る宗介は、気が狂いそうだ。  
「やめ…もう…やめてくれ…やめてくれ…」モニターから目を逸らす事もできず、宗介はつぶやく。  
「さあ!仕上げだ!よ〜く見ろカシム!!」  
ガウルンは叫ぶように言い放ち、スパートをかける。  
「あっあっ!ああっ!だめっ!だめぇっ!んっ!うっ!あっ、あっ!あああぁぁー!!」  
かなめは一際高い叫びをあげる。絶頂に達したようだ。それとほぼ同時、ガウルンが腰を深く、深く突き入れ停止した。腰を震わす。まさか。  
「ん…あつっ…い…んぅ…出てる…中…でて…だされちゃ…たっ…」  
「ふぅ〜良かったぜかなめちゃん…クハハハッ!」  
ガウルンはあろうことか処女で学生であるかなめに中だししたのだ。  
「さて、カシム。楽しんでもらえたかな?聞こえてるか?ん〜?」  
宗介は…吐いていた。涙を流しながら。嘔吐の経験などいくらでもあるが、単純な気持ち悪さだけで吐いたのは初めてではないだろうか。  
「情けねぇなあカシム!いいか?こんな事になったのはお前が弱いからだ!弱くなったからだ!俺を憎め!!さあ憎め!!そして強くなれよ!また゛カシム゛に会うのを楽しみにしてるぜ!!クハハハッ!ハハハハッ!」  
耳障りな笑い声。  
 
「ここはその部屋の真上の部屋だ。かなめちゃんを助けに来いよ?ククッ…じゃあな?相良宗介君!!」  
モニターが切れる。  
ガウルンは即座に逃げただろう。今からではとても追いつけない。部屋のセンサーはモニターが切れてから1分で切れた。  
宗介はふらふらと立ち上がり、口と顔を拭い、その部屋の真上、314号室に向かった。  
鍵は掛かっていない。見たところ罠もない。扉を開く。  
見たくない光景が広がる。  
かなめは全裸に制服を巻き付けるようにして震えて泣いていた。  
「……千鳥」  
宗介は虚ろな声で語りかける  
かなめは一瞬宗介の方を見て、また泣き出す。  
「……すまない。こうなったのは俺の…俺のせいだ。ガウルンの狙いに、君が巻き込まれた。すまない。謝って許してもらえるとは思っていない。だが、本当にすまなかった」  
かなめは答えない。  
宗介は心が極限まで冷えていくのを感じた。この数か月で作り上げた関係。最早戻らないだろう確かにあった感情。  
失われた。全て。彼の中に芽生えた小さな暖かさは、再び凍り付いた。  
かなめに自分の服を着せ、半分無理やり彼女の家に連れて帰る。  
ひたすら彼女は泣いていた。  
ごめん。ごめんなさい。  
と聞こえた気もした。聞きたくなかったので聞こえない振りをした。  
かなめは気付かなかった。  
 
彼の目が、転校してきた、いや、任務で潜入してきた時より、更に冷たく、虚ろになっていることに。  
この目を知るものは、いや、この目を知って生きている者は少ない。  
そう。相良宗介の目は、硝煙と銃弾、死体が当たり前の世界。  
殺人人形カシムに戻っていた。  
最早どうでもいい。任務すらどうでもいい。奴は、奴は殺す。必ず。必ず殺す。  
何のためかなど関係ない。自分が持つすべての能力で奴を殺す。それも唯殺すのではない。  
自分が持つあらゆる拷問術でゆっくり殺してやる。  
必ず。  
次の日、千鳥かなめは学校を休んだ。  
友人のおさげの少女が見舞いにきたが、出る事さえしなかった。  
そして彼は。  
「なるほど。千鳥かなめの護衛から解いて欲しいと。そしてガウルンを追いたい。そんな勝手な理屈が―」  
「通らないならば、除隊させて頂きます。大佐殿。申し訳ありませんが、これだけは譲れません。奴は必ず殺します。俺が、必ず」  
彼は、二日後に東京から姿を消した。  
 
 
 

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