大晦日の夜も更け、日付が変わりつつある頃。神社へと続く通りを並んで歩く、一組の男女の姿があった。  
「思ったとおり似合うわよ、そのジャケット」  
「そうか?」  
 数日前に購入した際、かなめに選んでもらったダウンジャケット。その襟を摘まんだ宗介が、少しだけ照れた表情を見せる。  
 自分の見立てが正しかったこと。そして嬉しそうな彼の様子を見て機嫌を良くしたかなめは、振袖を揺らして軽やかに歩を進めた。  
 
 天候に恵まれたこともあり、周辺は初詣客で賑わっていた。  
 こうした人ごみではスリなどが頻発するが、かなめには優秀なボディガードが同行しているので、そちらの心配はほぼ無用だった。  
 だが、その優秀で用心深い彼が、境内への武器の携帯を断固として譲らなかったため、渋々ながら了承してしまった。  
(すいません、神聖な場所への参拝に物騒なものを持ち込んで・・・といってもあたしじゃなくて横の戦争バカがですけど)  
 彼女は神社が見えてくる前から、何度も何度も胸中で手を合わせていた。  
 
 二人が境内に足を踏み入れようとした時、厳かな金属音が遠くから流れてきた。  
「っ・・・!」  
 途端に宗介が身構え、周囲に鋭い視線を巡らす。右手は早くも腰の愛銃に掛かっていた。  
 その手がぽんと押さえられ、気楽な口調の説明が来る。  
「へーきへーき。除夜の鐘よ。近所にお寺があるから」  
「なるほど、これがそうか」  
 納得した彼は、すぐに緊張を解いた。  
 安堵の溜息の後、かなめの顔に小さな苦笑いが浮かぶ。  
「やっぱり説明しておいて正解だったわね。それでもギリギリっぽかったけど」  
 初詣に除夜の鐘、お賽銭におみくじ、エトセトラ。  
 年の変わり目の催しについて、彼女は年越し蕎麦をすすりつつ宗介に説いて聞かせてから家を出てきたのである。  
 転入直後よりマシになったとはいえ、日本的な常識がまだまだ不足している彼のこと。  
 特殊な状況はあらかじめ知らせておかなければ、ことあるごとにテロと勘違いして発砲しかねない。  
「昼間みたいに騒ぎ起こしてドタバタしてるうちに年越しなんて、絶対イヤだからね」  
「・・・すまなかった」  
 結局、荒羽場神社でのバイトは、本日の夕方付けでクビになっていた。もちろんバイト代など入るはずもなく。  
 当初は巫女として初詣客を迎えている予定だったのに。宗介のおかげで臨時収入ごと完全にパアである――弁償を請求されなかっただけ幸運だったが。  
 さらには、暇になったからこそ二人での初詣が可能となったのだ。かなめは前向きに解釈し、現状に目を向けた。  
 最大の山場と思われた除夜の鐘に関しては、クリアしたも同然。ブリーフィングの苦労は報われそうであった。  
 人の流れから外れたところで並んで佇み、二人は黙って鐘の音を聴いていた。  
 去り行く年の様々な出来事――とりわけ、宗介が転入してきた春以降の騒がしい毎日が思い返される。  
「色んなことがあったね」  
「そうだな」  
 しばしの間が空いて。  
「さて・・・」  
 腕時計をじっと見つめていたかなめは、ある瞬間、袖を翻して宗介に向き直った。  
「明けましておめでとう、ソースケ。今年もよろしくね」  
「・・・なにをだ?」  
 鼻緒も切れん勢いでずっこける。  
「そ・・・そこでそう来るのね、あんたは・・・」  
「どうした、大丈夫か」  
「黙らっしゃい! 新年早々ボケかますな!」  
 差し伸べられようとした彼の手を額で押し上げながら立ち上がると、かなめはちゃんと着崩れを整えてから頭を抱えた。  
「不覚だったわ。まさか、これにも解説が必要だったとは」  
 さっきまで危惧していた問題に比べれば、その程度の不覚は無害に等しかったのだが。  
 作戦成功を確信した後だけに、落とし穴にハマったような敗北感があった。  
「・・・つまり、どういうことだ」  
「やかましいっ!」  
 人差し指を真っ直ぐ突きつける。反射的に顎を反らす宗介。  
 こうなると、周囲から注がれる好奇の目などお構いなしである。かなめは早口でがなり立てた。  
「年明け恒例の挨拶なの! アハッピーニューイヤーってこと! 深く考えないで言われたら同じように返せばいいのよ!」  
「そ、そうなのか・・・了解した。では」  
 ゼイゼイと肩で息をするかなめが落ち着くのを待ってから、宗介はひとつ咳払いをして、  
「明けましておめでとう。今年もよろしく、千鳥」  
 と、いつも以上に畏まった態度で告げた。  
 かなめは満足そうに腕組みをして大きく頷いてから、極上の微笑みを返した。  
「うん。よろしくね」  
 
 ひととおりの初詣イベントを終えた二人は、千鳥家へと戻ってきた。  
「どうだった?」  
 彼からジャケットを受け取ってハンガーに掛けつつ、かなめが訊ねる。  
 ソファーに座った宗介は、和服に包まれた彼女の後ろ姿を眺めながら短く答えた。  
「・・・不思議な行事だな」  
「あはは。なんか新鮮な感想」  
 美しい背中のラインが小さく揺れる。  
 外の雑踏の中では周囲への警戒が先に立って、隣をじっくり見るゆとりがなかった。  
 長い黒髪を結い上げた彼女は、普段の下で束ねた髪型とは受ける印象がまるで違う。加えて、モデルなみの高身長と抜群のスタイル。  
 それらで構成された成人女性と遜色ない姿に、宗介は既視感を覚えた。  
「ずっと日本に住んでると、当たり前に受け入れちゃってるからね」  
「文化とはそういうものだろう」  
 確実に見たことがある。つい最近だ。  
「おっ。珍しくまともなこと言ってる」  
 彼女が隣に腰を下ろしながら茶化してくる。  
 珍しく・・・そう、珍しく思い出せない。戦場の感覚が鈍っている証拠だ――いや、そんなことは今どうでもいい。  
 長い睫毛の映える、雅な横顔。後ろ襟から覗くうなじ。首筋にかかる後れ毛。  
 いつだっただろうか。  
「ふあ〜・・・やっぱ、慣れない格好で出歩くと疲れるわね」  
 それまでの優美さが消し飛ぶほど不遠慮な、だがそれでいて彼女らしい仕草のあくび。  
 そこで唐突に思い出す。  
(! あの時か・・・)  
 ガールハント大会で賭けに負けた自分を、彼女が助けてくれた時。  
 あの時の和装も髪型も、二人きりになってからの普段以上に明け透けな態度も、ちょうど今とそっくりだった。  
 思い出した拍子に、その日感じた落ち着かない気持ちや、ある種の衝動も急速に蘇ってきた。  
 今は塩梅よく室内だ――なぜか、そんな思考が脳裏を過ぎる。  
 ふと、結い上げた髪を解こうとする姿が視界に入った。  
 思わずその手首を掴む。  
「えっ? どしたの」  
「あ・・・いや」  
 自分でもすぐには理由が分からず、宗介は口ごもった。  
 掴んだ手を離し、胸中を整理して、若干目を逸らしてから申し出る。  
「まだ、その髪型のままでいてくれ」  
「? それはいいけど・・・なんかソースケ、顔が赤いよ。風邪引いた?」  
 かなめが警戒心の欠片もない態度で、彼の額に手を伸ばしてきた。  
「っ・・・」  
 ふわりと漂う彼女の香り。  
 効果絶大のフェロモンを間近で吸い込んだ宗介は、脳髄のどこかが麻痺するのを感じた。  
 ほっそりとした肩に腕を回し、ぐいっと寄せる。  
「ひゃっ」  
 小さな悲鳴とともに、振袖に包まれた肢体が倒れ掛かってきた。  
 眼前に曝け出された白いうなじに、夢中で唇を当てる。  
「あっ・・・ちょっと・・・ソースケ?」  
 戸惑いの声も、痺れた脳は瞬時に誘い文句と認識する。  
 彼の口は首筋のカーブを這い登り、彼女の耳の裏へと到達していた。  
「んっ・・・あッ」  
 断続的に漏れ出る、鼻に掛かった声。  
 宗介は身を竦める彼女の襟を掴むと、着物の肩口をはだけさせた。  
 鎖骨に沿って指がするすると動き、続いて同じラインを唇がなぞる。  
「ああっ・・・ぅん・・・っ。はぁ・・・ふゥ」  
 吐息が熱を帯びてきた頃。しばらく止まっていたかなめの手が動きを見せた。  
「はっ・・・」  
 不意に背を撫でられた宗介が、我に返ったように口を離す。  
 彼はまるで叱責を悟った子犬のように俯き、おずおずと視線だけ上に向けた。  
「ちど・・・むっ」  
 彼女の人差し指が唇に触れ、台詞を遮る。  
 再び現れた既視感と、どこか心地良い束縛感。  
 指一本で容易く行動を封じられてしまったボディガードに、かなめは若干はにかみながら言った。  
「・・・部屋、行こっか」  
 
 寝室へと移動した二人は、ひとまずベッドに並んで座った。  
 改めて彼女の和装を上から下まで眺めた宗介が、一字一句確認するように告げる。  
「千鳥。やはり、きれいだ」  
「ありがと。だいぶお世辞が上手くなったじゃない」  
 さも心外、とばかりに彼の口がへの字を深くする。  
「俺は世辞など言わんぞ」  
「自分から無愛想を認めるのもどうかと思うけど・・・」  
 かなめが苦笑していると、宗介が彼女の腰周りを興味深そうに眺め回した。  
「これは・・・どういう仕組みなのだ?」  
「ああ。飾り帯だから、後ろのやつはすぐ取れるわよ。ほら」  
 と、帯に留めてある華やかな飾りをひょいと外して横に置く。  
「ね、簡単でしょ・・・って、聞いてるソースケ?」  
 排除された装飾品には目もくれず、彼は黙々と『本体』の解体に取り掛かっていた。  
 
 帯を解いた彼女をベッドに横たえた宗介は、左右の合わせを掴みながら何気なく呟いた。  
「・・・和服とは、洋服より脱がせやすいものなのだな」  
「ばっ・・・」  
 裏表のない純粋な感想は、かなめの耳には凄まじい威力の攻め言葉となって突き刺さっていた。  
 顔を真っ赤にして怒鳴る。  
「ばか! このムッツリスケベ!」  
「な・・・? なぜ怒る?」  
「怒るわよっ! あんたそんな、ぬ、脱がせやすいとかサラリと・・・っ」  
「脱げやすい、と言ったわけではないぞ」  
「んなこたぁ分かってるわよ!」  
「千鳥。少し落ち着け」  
 宗介の手が彼女の額にそっと触れた。  
 ごつごつとした男性の掌から、彼の体温が直に伝わる。  
「あ・・・」  
 先ほど自分がしようとしていた行為と全く同じはずなのに、なんなのだろう――この高揚感と、対照的な安寧感は。  
「・・・ごめんね。なんか、めちゃくちゃ恥ずかしくて」  
 かなめは彼の後頭部に手を添え、引き寄せた。  
「お酒抜きでこんなことするのって、今までなかったもんね・・・」  
 だからなのだろう。初めてではない行為のひとつひとつが、やけに鮮やかな感覚として身体の芯に刻み込まれていく。  
 そのことを意識するたび、くすぐったくて居ても立ってもいられなくなってしまうのだった。  
「そうだな。だが俺は・・・」  
 宗介が囁きかけたところで、唇が重なる。  
「んんっ・・・ふっ・・・ゥン」  
 胸が締め付けられるように苦しい。でも、とても心地良い。  
 相反する感覚が常時体内に同居しているようで、思考が混沌の渦に呑み込まれそうになる。  
 彼女の口唇を舌で撫でた宗介は、続いて温かい口内へと入った。  
 小さな密室でのランデヴー。軟体動物のように蠢く彼らの軟らかい内壁は、飽きることなく何度も寄り添い、触れ合いを繰り返した。  
 分単位で時間が流れて。ゆるゆると頭を持ち上げた宗介が、台詞の続きを呟いた。  
「今の君を見ていると・・・酒を飲んだ時のような心地になる」  
「・・・かなりの殺し文句ね」  
 心なしか、かなめは涙声になっていた。  
 彼の頭部が再び下りてくる。  
「なんだ、それは」  
「知らなくていいわよ」  
「そうか」  
 全く執着せず会話を終わらせ、宗介は彼女の首元に横から顔を埋めた。  
 日本語の意味などいつでも解かる。今は、今しかできないことに専念しよう――  
 また、うなじと耳の裏に何度となく唇を落とす。  
 髪を上げている時でなければ露出されない、それらの箇所。先刻思いがけず発見した秘蔵の宝がすっかり気に入った彼は、余すところなく唇を当て、舌先で愛撫した。  
「んっ・・・あぁ・・・ふうッ。あ、あァッ・・・」  
 甘い美声を脳が味わうかたわら、指先が振袖の合わせを完全に開放する。半裸となった彼女を、宗介は全身で抱き締めた。  
「ぅんっ・・・んん」  
 かなめがもどかしげに身をよじらせる。  
 心情の機微には基本的に疎い宗介だが、今は彼女の要求を察することができた。本能か、はたまた学習効果か。  
 手早く自分の服を脱ぎ、彼女の下着も脱がせにかかる。  
 今日かなめが身に着けているブラジャーは、肩紐のない前留めタイプだった。  
「これも前回より外しやすくて便利・・・」  
「分かったから、そういう感想をわざわざ口に出すなってば!」  
 鋭い手刀のツッコミを浴び、宗介は本来の意味で悶えつつ思った――やはり女性の心理には謎が多い、と。  
 
 覆うもののなくなった素肌を愛撫されるうち、かなめは彼の言葉に納得していた。  
 確かに、酒を飲まずとも酔ったような心地になる。いや、それ以上に強力な恍惚感だ。  
 世界が見えなくなっていく。彼に触れている箇所と、そこから全身へと広がる快楽しか脳が認識できなくなる。  
「うっ、あぁ・・・はあ、あぁん・・・ッ」  
 身をよじるたび、鍛えられた腕力に繋ぎ止められ、キスの雨が降り注がれた。  
 痛いほどに疼く双丘の先端を、指先が的確に弄り、舌先が執拗にねぶる。  
 ほどなく、シーツに擦り付けていた腰の奥深くにも彼の指が伸びていった。  
「あ、あァ・・・!」  
 脊髄を一気に電流が駆け上る。まともに息が吸い込めない。  
「あぁ、はっ、あ・・・んぅっ・・・あぁッ! ぅん、はぁッ・・・」  
 懸命に開閉して酸素を求める口に、彼のそれがまた重なってきた。  
 二つの口腔を介して、上から下へと熱い吐息が移動し・・・  
(・・・ひょっとして)  
 いつの間にか、しっかり鼻まで摘ままれていた。  
 
 
 彼女が苦しそうに喘いでいたので、試しに酸素を送り込んでみたのだが。  
 むーむーという唸り声が「やめろ」の意味だと悟り、宗介は鼻を摘まんだ手を離した。  
(やはり、今の千鳥に人工呼吸はあまり効果がないようだ)  
 唇も一旦離す。予想通り、抗議の声。  
「ぶはぁっ。い、いきなり・・・なにやってんのよっ!」  
「すまない。呼吸ができていないように見えたのだ」  
「もう・・・大丈夫、だから」  
 呆れ顔で荒く息をつく彼女にも、一味違った魅力があった。  
「本当に大丈夫なのか」  
「本当に、大丈夫よ」  
「では、続けるぞ」  
 秘所の表層に置かれていた指を、奥へと潜らせる。  
 身じろぎと連動して大きくうねる二つの丘陵は、逆の手が交互に揉んではひねり回した。  
「ぅあっ・・・あはぁぁ・・・ふぅ、あぁッ!」  
 瑞々しく潤った肉壁を伝って生み落とされた彼女の蜜が、次々と指に絡み付いてくる。  
 手と壷を粘りある糸で瞬間的に繋ぐそれは、獲物を内に取り込もうとする触手を髣髴させた。  
 
 応急水筒あらため避妊具の装着を終えた宗介は、彼女の内腿に手を掛けた。  
「最近いつも持ち歩いてるの?」  
「クルツからそのように助言されたのだが・・・」  
「・・・なるほど、納得・・・」  
 だんだん同僚の彼に毒されてきているのでは――ふと小さな不安に見舞われる。  
 そんな彼女の憂慮になど気付くはずもなく、宗介は壷の口を押し広げると自身を宛がった。  
「では・・・」  
「ん」  
 短い確認が終わり、挿入に続いてピストンへと移行する。  
「うぅ、ん・・・あっ、は・・・あぁ、んあぁッ! ふあぁッ・・・!」  
 かなめは、初夜に比べて明らかに反応が良くなっていた。嬌声の激しさも、壷の締め付けも。  
 一方、宗介もテクニックが数段上がっていた。  
 抱えた彼女の太腿を活用し、突き上げる角度を細かく変化させる。さらにテンポやタイミングにも工夫を凝らし始め、静と動を巧みに操りつつあった。  
「ふっ・・・くっ、む・・・」  
 接合部から溢れ出ては辺りに飛び散るふんだんな蜜液は、二人の秘所をぐっしょりと濡らしていた。  
 夜闇の中、漏れ入る月明かりに照らされて、輝きを放つ彼らだけの楽園。  
「うぁ、あぁ・・・あ、ひあぁッ! ぅあ、あぁッ!」  
 官能的に表情を歪め、首を振るかなめ。全身の細かい痙攣が、繋がった宗介にまでダイレクトに伝わってくる。  
 やがて耐え難いほどの強靱さをもって、壷の口が宗介自身を一際がっちりと咥え込んだ。  
「ぐっ・・・む、うぅっ!」  
 どくどくと脈打つ彼自身の内部が、大きく震えてからスパークする。  
「そ、す・・・あぁッ、んあぁあぁぁッ!!」  
 最大限度まで浮き上がったかなめの背中が、自由落下してスプリングを揺らした。  
「はぁっ・・・はあ・・・はあ・・・」  
 その隣に倒れ込んだ宗介は、深呼吸を試みながら、同様に肩で息をする彼女の横顔を眺めた。  
 乱れ髪から覗く汗ばんだうなじにも、生命力に満ちた美しさがあった。  
 
 
 二人がぼんやりとまどろんでいた時、カーテンの隙間から朝日が差し込んできた。  
「あ・・・初日の出」  
 かなめが眩しそうに顔をしかめる。  
 新しい年の夜明けだ。  
「ソースケ、今年は去年みたいに騒ぎ起こさないでよ。まあ・・・絶対に、とまでは言わないけど」  
「最善は尽くす」  
 殊勝に口を引き結ぶ彼に、  
「ん。それならよろしいっ」  
 がばっと抱き付いたかなめは、自分が散々キスされた首筋に優しくお返しをした。  
 
 
おわり  
 
 

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