日曜日の繁華街、宗介の服をかなめが選んでやったり、かなめが大好きなボン太君グッズを買い漁ってきた帰り道だった。
宗介が何かに気付いたらしく、とある店の奥に、かなめを押し入れてから、出入り口で周囲を警戒している。
かなめは、『また、尾行の気配でも感じたのかしら?』と思いながら、店の奥のウィンドゥケースをしばらく何気なく見ていた。
「・・・え゙・・・」
絶句して目を見開いた後、まわりを見ると、色とりどり、サイズ各種のモノが、そそり勃つように何本もチン列されている。
小さな樹脂製や、なんとも立派な形をしたシリコン素材の本体に、コントローラーが付いていたりする『特殊用途の電動器具』。
そう、この店は、いわゆる『大人のおもちゃ屋』だった。
(この前の薬局での妊娠検査セットといい・・・な・ん・で・こ・ん・な・・・)
かなめは、わなわなと拳を震わせていたが、すぐ手元にあったモノが気になって、つい思わず手に取ってしまった。
一度手にしてしまうと、今度は手放すのが惜しくなる。そんな心理が働いた。
(コレは・・・うぅ、どうしよう・・・こんな店にはもう二度と入らないだろうし・・・獲物を前には以下略だし・・・)
(・・・周りには誰も居ない・・・お金を払う間だけ、恥ずかしいのを我慢すれば・・・・・・えーい、ままよ!)
かなめは、深呼吸してからレジに向かうと、黙って下を向いたまま支払いを済ませた。
受け取ったモノを急いでバッグに押し込んで、(うっ・・・あたしって汚れちゃった?)と思いつつ店の出口へ走った。
「千鳥、大丈夫だ、俺の気のせいだった。問題無い!」
その涼しげな声で、かなめの怒りが再燃し、宗介は道路の真ん中で『くぬっ!くぬっ!くぬっ!』っと蹴たぐり回された。
●
翌日の夕方、宗介は、後でかなめの部屋に来るように頼まれていた。約束の時間に部屋を訪ねたのだが応答が無い。
拳銃を片手に部屋に入ると、なんのことはない、かなめは、背もたれを少し寝かせた一人掛けの椅子で眠っていた。
その姿は、制服の上着を脱ぎ、ブラウスのボタンがいくつか外されていて、深い胸の谷間まで見えている。
ミニスカートから伸びた足は両膝が開かれていて、もし、正面に回れば『彼女は最高よ!』と叫びたくなるであろう格好だった。
なにか、疲れてぐったりしているようにも見えるが、どこか満たされたような、幸せそうな寝顔だった。
(寝かせておいてやろう。書置きをして出直すか)
そう思ったところで、かなめの手元、座った腰のすぐ横に置いてあるモノに気付いた。
それは、ナニかのコントローラーで、電気コードが繋がっている。コードの先は、ミニスカートで隠されていた。
宗介は、そのコントローラーを手に取ろうとして、誤ってボタンに触れてしまったらしく、すぐ近くでナニかが動き出す音がした。
(ブゥゥーン・・・)
「ぁんっ・・・」
殆ど同時に、かなめが小さな呻き声を漏らして、それまで開いていた太腿を『きゅっ』っと閉じて腰をくねらせた。
かなめが動かした腰と、椅子の肘掛けとの間に手を挟まれて、宗介はコントローラーに触れることすら困難になっていた。
「困った・・・下手に手を動かして、スカートが捲くれ上がったところで目を覚まされたら・・・また金属バットで・・・」
どこからか、携帯電話のバイブレーション機能に似た音、いや、もっと激しい唸りのような連続音がしている。
(・・・ヴゥヴゥーンーヴゥヴゥーンーヴゥヴゥーンー・・・)
暴れる振動体を柔らかいもので押さえ込んだような、くぐもった響きだ。
それは、かなめのスカートの中から、そう、確かにお尻の前の方、挟むように閉じた太腿のあたりから聞こえてくる。
よく見れば、かなめの白い太腿が、ふるふると少し震えている。顔の表情からも、ナニかを感じているのがうかがえる。
いけないことをした気持ちになった宗介は、かなめが目覚める前にスイッチを切ろうと、なんとか指を伸ばしてボタンに触れた。
(カチッ・・・・・・グィン・・・グィングィーン・・・)
「くっ・・・違うボタンか」
さっきまでの単調な振動音から、ナニかが抵抗を受けながら、周期的な動きをゆっくり繰り返すような作動音に変わった。
(グィングィーン・・・グィングィーン・・・グィングィーン・・・)
「・・・・・・・・・・・んっ・・・・・・・・・・・・・んっ・・・・・・・・・・・・・んっ・・・」
いつしか、その周期的な作動音に合わせて、かなめの腰が前後に揺れていて、少し鼻に掛かった吐息が漏れ始めている。
尚も必死にコントローラーに指を伸ばそうとしている宗介の腕に、かなめの手が、そっと重ねられた。
「・・・あぁ・・・ソースケ?・・・」
「千鳥、起こしてしまったか、すまん。すぐ止めてやる」
「・・・ぃぃの・・・とめ・・・ないで・・・・・・きもち・・・ぃいの・・・」
「・・・さっきも・・・ひとり・・・で・・・やって・・・たの・・・」
「・・・だから・・・このまま・・・」
かなめは、ぼんやりと虚ろな目をして、押し寄せる波動に身をまかせている。
大きく開かれた胸元で、素肌にうっすらとにじんだ汗が、キラキラ光って妙に艶かしい。
周期的な動きは、豊かな乳房も揺れるほどに、さらに大きく、だんだんと間隔が短くなっていく。
(グィンッ、グィンッ、グインッ、グインッ・・・)
「・・・・・んっ・・・・・・くっ・・・・ぁふっ・・・ぁんっ、んぁっ・・・」
ナニかに、繰り返し強く攻めたてられているように、腰の動きがさらに激しくなって、もう喘ぎ声が出てしまう。
一瞬の間の後、かなめは、急に『ビクンっ』っと背中を大きく仰け反らせた。
「・・・・・・・・・はぅんっ!・・・」
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「あぁ気持ちよかった。『太腿・お尻マッサージ』から『腰揉み』が強くなって、最後の強い『背伸ばし』にはビックリしたけど」
「起こしてすまん。『マッサージ・チェア』のコントローラーだとは知らずに動かしてしまって、停止ボタンが分からなかった」
「いいの、さっきソースケ待ってる間にも『30分コース』やってて、それで気持ちよくて眠っちゃっただけだから」
「ところで、俺に何か用があるんじゃないのか?」
「えっと・・・これ、ソースケにあげようと思って・・・」
それは昨日、かなめがアノ店で、恥ずかしさを乗り越えて手に入れたモノ。
ショットガンを構えたボン太君(よく見るとニセモノっぽかったりする)が、大きくプリントされた男性用下着だった。
「ボン太君グッズコレクターとしては、レア物に目が無くて、つい衝動買いしちゃったけど、あたしが持っててもしょうがないから」
「服を選んでくれたうえに、下着まで、助かる」
もらったパンツを手にした宗介は、見慣れない『袋状の部分』に気が付いて、裏側から指を差し込んでみた。
パンツの真ん中で、ボン太君の構えたショットガンの銃身が、『立体的』になって突き出していた。
「うげっ・・・ああいう店で売ってるのは、やっぱり、そういうパンツなのね・・・」
(おわり)