「サガラさん、今、暇ですか?」  
 自分は一体何をやっているのだろうか。  
 普段の自分なら絶対にしないことをしている。  
 そして、それを抑えられないでいる。  
『はい、特に用はありませんが。何か?』  
 宗介の言葉が返ってくる。  
 口調が友人や恋人にではなく、上官に対してのものである。  
 テッサは少し悲しくなった。  
「……こんな時くらい……」  
『は?』  
 自分の思いをつい口に出していたらしい。  
 宗介の言葉にはっとなって慌てて弁明する。  
「な、何でもありません」  
 そう言って一息つくと、テッサは宗介にあることを告げた。  
「いいですか、誰にも内緒ですよ」  
『わ、分かりました』  
 少し焦った感じのした宗介のことばを聞くと、テッサは受話器を置き、自分のベットに座った。  
 これから起こるであろうことを想像すると、自分の顔が火照ってくるのが解る。  
「…サガラさんが悪いんですからね」  
 小さく甘い声でつぶやいてみる。  
 テッサが熱く甘い吐息をつくと、右手の人差し指を自分の小さな唇へと運ぶ。  
 そっと、優しく指を口内に導き入れると、舌先で指を弄ぶ。  
 初めは優しく、だんだんと激しく。   
 室内にはピチャピチャと指をなめる音と荒い息。そして時折小さな喘ぎ声が響いた。  
 
 宗介は焦っていた。  
 彼女がこんな時間に俺に用があるという。  
 しかも、そのことを誰にも言うなと。  
 彼女は俺にいったい何をさせる気なのだろうか。  
 以前、彼女とマオが喧嘩したときは俺にASに乗るための教官をしてくれと頼んできた。  
 初めはマオのことを殺せと命令されるものだと、ハラハラしたものだ。  
 しかし、今回は全く解らない。  
 彼女が誰かと喧嘩しているなんて噂はない。  
 もしかしたら、また酔って電話してきただけかもしれない。  
 もしそうなら止めなくては。  
 しかし、先ほどの電話では彼女の口調はハッキリとしていた。  
 いや、彼女はきれる方だ。  
 もしかしたら俺に極秘で何かを調査してほしいのかもしれない。  
 多分そうなのだろう。  
 宗介は勝手にそう決めつけると、例えどんなことを言われようとも成功させてみせる。と、顔を引き締めた。  
 テッサの部屋に向かって歩いていると、前方から誰かきた。  
「あれ?宗介じゃん」  
 聞き慣れた声が向こうから聞こえてきた。  
「クルツか」  
 お互いが良くみえる所まで近づくと、お互い立ち止まる。  
「どうしたんだ? お前がこんな時間にうろつくなんて」  
 クルツが不思議そうに宗介を凝視する。  
「たまたまだ」  
 宗介がなんとかごまかそうと、違和感無く言ってのける。  
「ふーん、俺はてっきりテッサの部屋にでも行って覗きをすんのかと思ったんだがな……」  
 あんまりな言いぐさである。  
「俺はそんなことはしない」  
 確かに宗介はそんなことをするようなたまではない。  
「クルツはどうしてこんな所にいるんだ?」  
 宗介が反対に質問をすると、クルツはあらかさまに焦った。  
 
「いや、俺もたまたまなんだ…」  
「そうか、じゃあ俺は急いでいるから行く」  
 これ以上話していることもないだろうと宗介が話を切った。  
「ん、じゃあな」  
 そのまま宗介とクルツは別れた。  
(さて、やっかいなことになった)  
 宗介は真っ直ぐにテッサの部屋に行くのをあきらめると、途中で迂回した。  
 そのまま歩いていると、やはりつけられている気配がある。  
 おそらくクルツだろう。  
 宗介の行動に興味を持ったようだ。  
 宗介は角を曲がると物陰に隠れた。  
 息を殺し、気配を断つ。  
 しばらくすると、先ほど宗介が曲がってきた角から忍び足で進むクルツが現れた。  
 宗介はただじっとクルツが通り過ぎるのを待つ。  
 宗介の姿を見失ったクルツは慌てたようすで辺りを見回す。  
 するとそこにマデューカス中佐が偶然現れた。  
 マデューカス中佐の姿を見るとクルツは慌てたようすで走っていってしまった。  
 マデューカス中佐はクルツを見ると「まったく……」と疲れたようにつぶやき、行ってしまった。  
 宗介はそれから三十秒数えると、隠れていた場所から出た。  
「余計な手間をかけてしまったな」  
 宗介は少し速いテンポで歩き出した。  
 
 テッサは空いていた自分の左手を胸に持っていく。  
 パジャマの柔らかい感触が感じられる。  
 弱く揉んでみた。  
 まず下着の硬い感触が手に伝わってきて、次に胸が押されるのが感じられた。  
 今度は先ほどより強く揉んでみる。  
 先ほどよりも胸の形が変わる。  
 何度も何度も同じことをする。  
 そのたびに自分で自分に感じさせる快感が伝わってくる。  
 しかし、全てがもどかしいくらい弱い刺激である。  
 テッサは一旦手を休めると、パジャマのボタンを一つ一つ外し始めた。  
 全て外し終わるとベットの上に置き、今度はブラのホックに手をかけて外した。  
 肩に掛かっているひもを外して先ほどのパジャマの上に置く。  
 テッサは自分の上半身を部屋にある鏡で確認する。  
 まだ幼さを残す体つきながらも、均整のとれた体が映っている。  
 おもむろに右手をお腹に当てて、つつつと下に向かって動かす。  
 左手は自分の胸へと移動さしている。  
 右手がおへそを経てパジャマのズボンに当たった。  
 その下に手を侵入させる。  
 するとすぐにショーツが手に当たった。  
 
 そこで一瞬手が戸惑い、ショーツには手を付けずに、そのまま下へと進む。  
 ショーツの肌触りが気持ち良い。  
 手が股の間に辿り着くと下への動きを――  
 部屋のドアがノックされる。  
 ――止めた。  
 コンコン。  
「誰ですか?」   
 テッサの問いかけに彼女が待っていた人物の声が返ってきた。  
「大佐殿、私です。相良です」  
 テッサは待つように言うと、脱いでいた下着をベットの下に隠し、パジャマを着直す。  
 先ほどまでの行為で乱れてしまったベットのくずれを直し、ドアに近寄る。  
 ドアノブに手をかけようとして、少し思いとどまった。  
 こんな状態の自分にも分かっている。  
 引き返すならここが最後だ。  
『大佐殿?』  
 ドアの向こうから宗介の声が聞こえてきた。  
 テッサは無言でドアノブに手をかけて……ドアを開けた。  
「良く来てくれました。どうぞ入ってください」  
「はっ」  
 
 宗介は焦っていた。  
 ひどく焦っていた。  
 まさかこんな事になるとは思ってもみなかったからだ。  
 テッサに部屋に招き入れられ、さあいよいよ命令が、と思っていると、  
『どうしたんですか? 中に入って椅子にかけてください。今、お茶を入れますから』  
 と、あまりにも普通のことを言われたからだ。  
 いったい彼女は何を考えているのだろうか。  
 まさか、これはあくまでも個人的なことであるという印か?  
 考えれば考えるほど悪いことが浮かんでくる。  
「あ、あの、大佐殿…」  
「今はテッサと呼んでください」  
「!? で、ではテッサ、俺に用とは一体」  
「きゃっ」  
「テッサ!?」  
 慌てて駆け寄る。  
「いたたた」  
「大丈夫ですか、テッサ。お怪我は?」  
「だ、大丈夫です。相良さんは椅子に座って待っていてください」  
 どうも様子がおかしい。  
 俺は何か見落としているのだろうか。  
「お待たせしました。紅茶ですけど、大丈夫ですよね」  
「はい」  
「どうぞ」  
 目の前に置かれたカップを見る。  
「飲んでみてください」  
 
 テッサに見上げるようにして見られている。  
 期待のこもった視線だ。  
「では」  
 一口飲んでみる。  
 すぐにレモンの良い香りが口内に広がった。  
「どうですか?」  
 覗きこむようにして、テッサが宗介の表情を伺う。  
「おいしいです」  
「………本当ですか?」  
「はっ、肯定であります」  
「そうですか、よかった」  
 テッサは満面の笑みを浮かべると、カップを口元へと運んだ。  
 事実、テッサのいれた紅茶は美味しかった。  
 だが、今の宗介にはそれすらも疑わしき物であった。  
「……それで、テッサ。俺に用とは?」  
 いつまでも紅茶を飲んでいる場合ではない。  
 宗介は(自分でも解ってはいるが)ひどく緊張した声でテッサに言った。  
「え……あ、あのですね」  
 テッサはひどく言葉を濁すと、俯いて黙り込んでしまった。  
 気まずい沈黙が訪れた。  
 その沈黙の間、テッサの顔が赤くなっていくのが宗介には手に取るように解った。  
(なんだ。なんだか嫌な感じが……あの時と同じだ。とてつもなく嫌な感じ……)  
 宗介はテッサがマオと喧嘩してASの乗り方を教えたときの、砂浜のことを思い出していた。  
 テッサがASを(形だけでも)乗りこなせるようにするために、本当に四苦八苦したものだ。 
 
 今回も同じような……いや、それ以上のことが起きるのかもしれない。  
 先ほど決心したばかりだというのに、早くも船は座礁し始めている。  
 だが、ここで引き下がるわけにはいかない。  
 自分は彼女の友人であり、彼女は自分に助けを欲しているのだ。  
 しかし、  
(それほどまでに言いにくいことなのだろうか?)  
 そもそも、彼女が顔を赤くする理由が解らない。  
 この部屋の空調は正常に機能していて、自分も暑くは感じていない。  
 服装かとも思ったが、特に露出が激しいとは思えない。  
 もちろん宗介はその姿にドギマギしてはいるのだが、今はテッサから聞かされるであろう「頼み」の方に強引に注意を向けているので問題ない。  
 沈黙の長さに比例して、宗介の不安は大きくなってゆく。  
 喉がカラカラに渇き、体温が上昇してくる。  
 緊張のせいだろうか、心拍数が高く、音まで聞こえてきそうだ。  
(メリッサ、助けてくれ。メリッサ!)  
 宗介は心の中で叫んだ。  
 だが、スクランブル要請が届くことはなく、現状においては全てを自分一人の能力で解決しなければならない。  
 なんという過酷な任務だろうか。  
 今更ながらに、自分は、この偉大で計り知れない少女の友人として、不釣り合いなのではないかと思う。  
「………あのですね」  
 宗介が一人で葛藤していると、テッサの震える声が聞こえてきた。  
 はっとして自分の思考を全て排除すると、全神経を集中させる。  
「サガラさん…私…私」  
 テッサの、自分を見つめる目が潤んでいる。  
 頬は上気して赤く染まっており、塗れた唇から出てくる吐息は、少し荒い。  
 
 宗介は、思わずつばを飲み込む。  
 見慣れたはずのその顔が、ひどく魅力的に感じる。  
 思考が麻痺し、体が自然に動く。  
「―――!?」  
 だが、その動きは止められた。  
 手元にあったカップに手が当たり、倒してしまったのだ。  
 まだ中に残っていた液体がこぼれ、  
「うわっ!?」  
 とっさに反応できなかった宗介の服にかかってしまった。  
「あっ、すぐに拭くものを用意しますね!」  
 そう言ってテッサが立ち上がると、慌ててタオルを持ってくる。  
「すまない、テッサ」  
 拭くのは自分の仕事だと立ち上がりタオルを受け取ろうとすると、テッサはかまわずに自分で机を拭き始める。  
 だが、机にこぼれた量は少なく、すぐに拭き終わる。  
「サガラさんも、すぐに拭きますね」  
 机の上を拭き終わり、テッサが宗介の服にこぼれた分を拭こうとする。  
「い、いや、大丈夫だ。自分でできる」  
 さすがにそんなことまでさせるわけにはいかない。  
 慌てた宗介は、テッサからタオルを多少強引に奪い取ろうとする。  
 だが、テッサは宗介にタオルを渡そうとはしない。  
「ダメです、私がきちんと最後までやります!」  
 そう言って、奪われそうになっているタオルをギュッと握る。  
 だが、それに合わせるように宗介はさらに力を込めて力を入れてタオルを引き、  
「キャッ!?」  
 あまりの強さに、テッサはバランスを崩してしまった。  
 体にくるであろう衝撃を予測し、思わず目をつぶる。  
 
(………あら?)  
 だが、予想に反してその衝撃はこなかった。  
 代わりに、力強く包み込むような暖かさを感じる。  
 どうしたのだろうと目を開けてみると、  
「さ、サガラさん!?」  
 なんと、自分の体が宗介に抱きしめられていたのだ。  
「大丈夫でありますか、テッサ」  
(な、何で?)  
 実は、お互いにタオルを引っ張り合っていたせいか、手に込めていた力はそのままだったので、  
バランスを崩した体は当然のようにテッサの体は宗介の方へ倒れていったのだ。  
「あ、だ、大丈夫です」  
 慌てて離れようとすると、  
「うおっ」  
 元々無理な体勢でテッサを受け止めていた宗介は、テッサの動きに対応できずに転んでしまった。  
「きゃっ」  
 支えを急に失ったテッサも、つられて倒れる。  
 だが、今回も衝撃を感じることはなかった。  
 宗介が、自分の体を下にしてテッサを守ったのだ。  
「すまない、テッサ」  
 宗介は落ち着いてテッサを起こそうとする。  
 だが、テッサはそれを拒絶した。  
 自分を起こそうとする宗介の手を、体を揺すって振り払うと、宗介の胸に頬を乗せる。  
「サガラさん……」  
 思い出すのは、あのASを動かす訓練をした砂浜のこと。  
 少し形は違うが、あのときと同じだ。  
(でも……)  
 似てはいても、やはり状況は違う。  
 今は、他人の目を気にする必要などないのだ。  
 愛しい人の胸に頬を預け、うっとりとする。  
 だが、一方の宗介は困惑していた。  
 
(こ、これではあのときと同じではないか……)  
 そうは思うのだが、あのとき感じたイヤな予感、このままではいけないという感じがしないのだ。  
 彼女から漂ってくる香りはかぐわしく、柔らかい。  
 女性を感じる。  
 普段意識していない分、衝撃は大きい。  
(ど、どうすればいいんだ……)  
 とりあえず、テッサが体の上に乗っているので身動きすることができない。  
 何かしたくて、でも何も思いつかなくて、何もできなくて。  
 宗介は、本当に困っていた。  
 
 しばらく二人で抱き合ったままでいると、宗介はあることに気づいた。  
(なんだ、体が熱い……)  
 先ほどまでどこも悪くなく、病気もしていないはずの自分の体が、異常な熱を帯びていることに気づいたのだ。  
 それだけではない。  
 五感が、特に触感が普段に比べて異常に良すぎるのだ。  
 普段は気にもとめない服の肌触りから、テッサの身体の柔らかさ、ちょっとした動きから肌にかかる吐息までが鮮明に感じられるのだ。  
(自分は、どうしてしまったのだ)  
「サガラさん……」  
 聞こえてくる声は、自分には熱っぽく感じる。  
 
「ねえ、サガラさん。さっきの紅茶、少し変じゃありませんでしたか?」  
 テッサが急に聞いてきた。  
 だが、そもそも自分は紅茶を飲むことなどには慣れていなくて、何がどう変だったのかまるで分からない。  
「俺には、よく分からない」  
 正直に言うと、テッサはクスクスと笑い、体を動かして上に、つまり彼女の顔が近づいてくる。  
 その際、身体の上を滑る彼女の身体の柔らかさが、ダイレクトにこちらへ伝わってくる。  
「実はですね、あの紅茶にはちょっとだけ細工をしておいたんです」  
 彼女の言葉と一緒になって吐き出される息が、こちらの口の中へと入ってくる。  
 その息は熱く、心臓が高鳴る。  
「テッサ……」  
 目の前にいる彼女が愛おしい。  
「それはですね、二人の気持ちが通じ合えるようになる、魔法の薬なんです」  
 テッサが目を閉じ、顔を近づけてくる。  
 それは、自分も今まで何度もやってきた行為にもかかわらず、全くの別のものに感じた。  
 
 二人の唇が重なる。  
 宗介は、そこにかつてない柔らかさを感じた。  
 自然に瞼が閉じてゆき、視覚以外の五感がさらに鋭くなる。  
 今合わさっている唇が、さらに強く感じられる。  
 微かに塗れた唇は、二人を完全に一つにしていて、そこでは熱すらも同一にしようとしている。  
 温かい。  
 そう感じたのは、初めてだった。  
 時間の感覚が、狂ってくる。  
 体内時計ではわずか5秒のことなのに、宗介には1時間にも2時間にも感じられた。  
 そして、そのわずか5秒でテッサは顔を上げて唇を離す。  
「ふふっ、どうですかサガラさん」  
「………」  
 宗介は答えることができなかった。  
 宗介の感じた感情を、感覚を、いったいどう表現すればいいのか分からないのだ。  
「テッサ、俺は……」  
「イヤ、でしたか?」  
 宗介は首を横に振る。  
 それを見たテッサは宗介に微笑みかけ、また顔をおろしてゆく。  
 再び二人は繋がった。  
 ただし、先ほどとは違った繋がり方だ。  
 二人の唇が触れ合うと、今度は宗介の口の中にぬめってざらついたものが入り込んできたのだ。  
 テッサが舌を入れてきたのである。  
 驚きはあったが、宗介はすぐにそれを受け入れた。  
 こちらに入り込んでくる舌に、宗介はそっと触れてみる。  
 テッサはすぐにそれに反応し、二人の舌は絡み合った。  
 宗介も、ぎこちなくはあるがテッサのリードのおかげか二人の交わりはすぐになめらかなものへと変貌する。  
 口の中を縦横無尽に貪られる。  
 歯を一本一本撫でられ、時々こちらの舌から逃げるように動かしたかと思えば、積極的に絡めてくる。  
 口内に流れ込んでくる唾液は生暖かく、不思議と甘く感じた。  
 息継ぎのためにいったん唇が離れると、今度は宗介からテッサを求める。  
 
 舌を伸ばし、まずは唇を小鳥のように軽くつつく。  
 すると、まるでそれが合図であったように唇が開かれ宗介を誘う。  
 宗介は、すぐに誘いに応じた。  
 舌をテッサの口内に差し入れ、相手の舌を求める。  
 先の動きを思い出し、まねてみる。  
 すると、相手は応えた。  
 こちらの舌の動きに合わせ、それでもぎこちない宗介の動きをサポートする。  
 部屋の中には舌の混じり合う音が、ピチャピチャと響いている。  
 その音に、二人は酔いしれた。  
 動きは獣のように激しくなり、本能のままに相手を求める。  
 唇を甘噛みし、舌を吸い、唾液を流し込み、飲み込む。  
「んふっ…」  
 度重なる口づけに、口の周りは唾液でべちゃべちゃだ。  
 だが、そんなことを二人は気にしない。  
「あぁ……ふあぁ。………ふふふ、サガラさん。ねえ、移動しましょう? こんな堅い場所じゃなくて、もっとふさわしい場所へ」  
 テッサの意見に宗介は首肯し、二人は起きあがりベットへと移動した。  
 テッサは宗介の上着を脱がし、上半身をさらけ出す。  
 宗介は、もはや全てをテッサに任せた。  
 ベットへと押し倒され、また唇を交わす。  
 今度は自分から、先ほどより積極的に舌を伸ばし、絡ませ、唾液を交換する。  
 テッサもそれに応じ、室内にはまたピチャピチャという音が響き渡る。  
「はぁ…サガラさん」  
唇が離れると、テッサの口から荒い息とともにとため息が漏れる。  
二人の間に架かった橋をつと吸い、飲み込む。  
 フフッと小さく笑う顔は、まるでイタズラに成功した子供のようだ。  
 宗介がぼんやりとキスの余韻に浸っていると、テッサは宗介の頬にキスをし、下あごにキスをし、首、鎖骨、胸板へとテンポ良く連続してキスの嵐を降らす。  
 特に、鎖骨の少し上あたりを強く吸い、キスの跡を残しておく。  
 彼は、私のものだ。  
 誰にも渡さないという、彼女の意思表示だ。  
 そして、キスの嵐は乳首へと至った。  
 
 テッサから見て右側の乳首に吸い付き、舌を絡めて転がす。  
 すでにキスで興奮してコリコリに固まっていたそれを、テッサは最初優しく、次第に早く強く刺激する。  
 テッサは、恍惚としてその行為を行っていた。  
(あぁ、これがサガラさんの胸)  
 何度、この胸に抱かれたいと思ったことだろうか。  
 この胸を想い、自らを慰めたことも一度や二度ではない。  
 そのたびに、テッサは何度と無くむなしい思いをしていた。  
 彼は普段日本にいて、彼女…千鳥かなめさんばかり見て私なんて目にも入っていなくて、今頃二人で仲良く食事をして、お話をして。  
 仕方のないことだと、分かっているのに悲しくなる。  
 仕事を片づけ一人で部屋に戻ると、いつも真っ先に見るのは彼と一緒に写った写真だ。  
 私の横で一緒に写っている彼の写真を見ると、寂しい思いを紛らわそうとしているのによけいに寂しくなる。  
 その度に、写真立ての中の彼を前にして自らを慰める。  
 マオによって植え付けられた知識を総動員し、彼のものを想像し。  
 だが、しょせんそれは想像のものでしかなかった。  
 私の望んでいたものが、今目の前にある。  
 そう思うだけで、テッサはいつも以上に激しく興奮していた。  
「ん…んぅ……ちゅぱ」  
 自然、行為に熱が入ってくる。  
「くっ……テッサ……」  
 宗介は、今まで感じたことのない感覚に翻弄されていた。  
 彼が幼い頃は、この顔立ちと肌のせいで何度か襲われたことがあった。  
 だが、宗介にとってそれらは全て軽蔑の対象であり、幼いながらに恐怖の対象でもあった。  
 自分は、決してこのようなことはしないであろう  
 そう決意すらしていた。  
 だが、いざ事が始まってしまうと、どういうことか自分の決意も嫌悪感も全てきれいさっぱり気にならなくなっていた。  
 いや、むしろそれとは反対にこの行為を受け入れたい、もっと続けたい、そういった感情があふれてくるのだ。  
 理性ではなく、本能がむき出しになる感覚。  
 今までそういう風にならないよう理性的に生きてきた宗介には、今の自分は酷く無防備に感じられた。  
 宗介の経験から言うと、感情的になればなるほど戦場では死ぬ確率が高くなる。  
 感情的になるな。  
 
 理性的であれ。  
 何度と無く教えられ、また、実感してきたことだ。  
 そのはずなのに、宗介は求めていた。  
 自分の胸を吸うテッサを見下ろす。  
 テッサはその視線に気づかず、夢中になって宗介の胸を吸っていた。  
 もちろん、宗介はその刺激に気持ちよさを感じている。  
「テッサ」  
 呼びかける。  
 すると、気づいたテッサは口元を唾液で濡らしながら、顔を上げる。  
「ああ、サガラさん…」  
 テッサの額にはうっすらと汗が浮いていて、ほつれた前髪が何本かくっついている。  
 それに気づき、宗介は自然とその髪をかき上げてやる。  
「サガラさん。見てください、私の全てを」  
 テッサは、宗介の体に跨るように体を起こすと、煩わしそうにパジャマの上を脱ぎ出す。  
 その下には下着はつけておらず、テッサの胸があらわになる。  
 肌にはすでに汗が浮いていて、胸の頂に至るように首筋から汗がつと流れ落ちる。  
「んふふ、どうですか?男の方に見せるのは、初めてなんですよ」  
 怪しくほほえむテッサは、視線の定まらない目で宗介を見る。  
 自信と、僅かな恥じらいがこもっている。  
 宗介は、思わずつばを飲み込んでいた。  
 言葉が出てこない。  
 宗介から見たそれは、扇情的でありながら美しかった。  
「美しい……」  
 宗介には、その姿を美しいと表現する以外に無かった。  
「ふふふ。サガラさん、嬉しい」  
 テッサは宗介の手を取り、自分の胸へと導く。  
 汗で濡れた胸は、宗介の手にぴったりと張り付いた。  
 恐る恐る手に力を込めると、テッサは嬉しそうにあえぎ声を漏らす。  
「あんっ……。ふふ、大丈夫ですよサガラさん。女性はそんなに簡単に壊れたりなんてしませんから、もっと強くしても」  
 怖々とした手つきが面白かったのか、テッサはクスリと笑う。  
 
 それはそうだ。なにせ戦場であれほど勇敢に戦い、そして何度も生き延びてきた彼が、こんな事で戸惑っているのだから。  
 テッサにとって、ダナンの皆は勇敢の代名詞なのだ。  
 その中でもエリート集団の人間であるSRTの宗介が、こんなことで怯える。  
 テッサには――宗介には悪いとは思いながらも――可愛いと思えてしまう。  
「あっ……そう、もっと強く……ア、イイッ!」  
 宗介がテッサに言われたとおり強く揉むと、テッサはたちまち嬌声をあげ始める。  
「んぅ…はぁ、はぁ。ああぁ、んくぅ!」  
 宗介の手が不規則に乳首に当たる。  
テッサはすぐに昇りつめていく。  
「あぁ、サガラさん吸って! 私の胸、強く、お願い!」  
 テッサは宗介の頭を抱え、自分の胸へと押しつける。  
 宗介は言われたとおりにテッサの胸へと口をつける。  
 乳首を軽く吸ったときだ。  
「あ、ん〜! ……あぁぁぁぁあああ!!」  
 宗介を抱くテッサの力が強まり、すぐにぐったりと力を失ったように倒れてくる。  
「ぬぅ…テッサ、大丈夫か?」  
 顔を横に倒し、なんとか呼吸経路を確保した宗介は心配そうに訪ねる。  
 今の宗介は、顔の上にテッサの胸が来ていて彼女の顔が確認できないのだ。  
「ふわぁ…はい、だいじょうぶですよ〜」  
 フワフワした感じの言葉が帰ってくる。  
「軽くイッタだけですから」  
 そういうと、テッサはすぐに体を起こし始めた。  
「ねえ、サガラさん。まだ、満足していませんよね?」  
 怪しく笑うテッサに、宗介は何も言うことができなかった。  
 
「ふふふ。いきますよ、サガラさん」  
 テッサはゆっくりと腰を落とし始めた。  
 宗介のモノは、手を添える必要がないくらいに堅くなっていて、ねらいは定めやすい。  
 テッサの割れ目からは、愛液がしたたり落ちていて、それがかかるたびに宗介のモノはビクビクと震える。  
「あん、動かないでください」  
 テッサの割れ目が、宗介のモノをとらえる。  
「えい!」  
 つぷり。  
 テッサは宗介を優しく飲み込んだ。  
「ぐがぁっ……!?」  
 宗介は、ダイレクトに伝わってきた快感に、抵抗することすら出来ずに射精してしまった。  
「あ、まだ…!」  
 まだほんの入り口にあったせいか、宗介のモノは射精の勢いで抜けてしまった。  
 勢いよく射精された精液は、テッサのお腹にかかる。  
「……もう、だらしないですよ、サガラさん。それでも男ですか?」  
「はっ、はい……もうし、わけ、ありませ、ん」  
 息も絶え絶えに返事をする宗介は、まともな受け答えが出来ない。  
「次は許しませんよ」  
 テッサはしぼみかけた宗介のモノを手に取ると、自分の股にこすりつける。  
「あは、もう元気ですね」  
 宗介の若さと射精したばかりの敏感さで、すぐに元の堅さを取り戻していた。  
「いきますよ」  
 テッサは、ためらい無くくわえ込んだ。  
「ちゃんと我慢してくださいね」  
 そう宗介を注意して、ゆっくりと腰を落としてゆく。  
 ぷつ。  
 宗介は、何か薄い膜のようなモノを破った感触を感じた。  
「――――くっ」  
 テッサの顔が、少ししかめられる。  
 だが、テッサは止まることなく最後まで腰を下ろしきった。  
 
「ハァッッ……どうですか、サガラさん。私の中に、全部入っちゃいました」  
 宗介の胸に手を置き身を支えるテッサは、汗で額をびっしょりと濡らしていた。  
 先ほどしかめられた顔も、今では満足そうな表情に変わっていた。  
「私ね、初めて、だったんですよ。だから、すっごく痛いんじゃないかって、そう思ってたんです。でも、変なんです。  
サガラさんと一つになっているって、そう思っただけで、痛さが気持ちよさに変わっちゃったんです」  
 宗介には、初めてとか痛いとかはよく分からなかった。  
 が、何故かテッサを離したくないと、そう思った。  
「あはっ、サガラさんの、すっごくあついで素。私、溶けちゃいそう」  
 試しに力を入れてみると、宗介のが自分の中でピクッと動いたのが分かる。  
 その反応が何故かおかしくて、テッサはクスクス笑ってしまう。  
「どうした、テッサ」  
「ううん、なんでもないの」  
 不意打ちにテッサが動く。  
「……っ!」  
「ほらほら、あんまり油断していると、またすぐですよ」  
 宗介の慌てた様子を楽しみながら、テッサはゆっくりと動く。  
 ほんの少し動いただけなのに、強烈な快感が二人を襲う。  
「あん!」  
 テッサの口から、遠慮のない嬌声が漏れた。  
 ゆっくり味わうはずだった快感がい奇異に来て、それを躰がどん欲に何度も味わおうとテッサの躰が自然に動き出す。  
「あ、……あっ、あん、あ……ああ!」  
 強烈な刺激に膝がガクガクと震える。  
 腕に力が入らなくて、宗介の胸に倒れ込む。  
 そんなテッサを受け止めながら、宗介はゆっくりと動き出していた。  
 しかし、宗介が意識して動いているのではない。  
 本能だ。  
 テッサの膝を腕で固定し、腰を振る。  
「ああぁぁぁ…、サガラさん、サガラさん」  
 テッサの声から漏れる声が、雄としての宗介の本能を刺激する。  
「ふっ、はっ、あはっ、サガラさん、すごく……いい!」  
 
 自然と動きが早くなり、比例して快感の波が、早く高くなる。  
「あっ、あっ、あっ、あっ、あっ」  
 テッサの嬌声に引きずられるように、宗介は何かを考えることをやめていった。  
 本能の命ずるまま、体を動かす。  
 すると、よけいな思考が頭から抜けた分、躰がさらにテッサを……女を求め始める。  
 腰の動きが早くなり、体の動きがスムーズになる。  
 生物としての欲求を満たしてゆく。  
「くひぃ…あぁ、私、サガラさん、私!」  
 テッサの雌が宗介の雄を感じ取り、より深く、より強く繋がろうとヒダをヒクヒクと動かし、さらなる深みへと宗介を導く。  
「くぁ……テッサ!」  
「あぁ…! サガ…ラ………サガラ…さ…ああああ……!?」  
 頂まで登り詰めたテッサは、今までに感じたこともないほどのオルガニズムを味わう。  
 体は弓なりにのけぞり、手の指先から足のつま先までピンと張りつめた。  
 その際、今までで一番強く締め付けてきたテッサの絞るような快感に、宗介も最後の階段を一気に上りきった。  
「くぅ………っ!?」  
 最後に奥まで突いた所で、宗介の精液は尿道を駆け上がり、ペニスの先で爆発した。  
 視界が真っ白になり、スパークする。  
「あ、ああぁ……熱い……」  
 テッサは精を中で受け止めながら、恍惚とした表情を浮かべた。  
 そして、目の前にある宗介の唇に軽くキスをすると、眠るように意識を失っていった。  
 
 

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