「ん・・・。」  
 
窓から差す日差しに意識が持ち上げられていく。  
昨晩は遅くまで歩きまわったおかげで、かなり熟睡していたようだ。  
体を起してボーっとしていると、、隣で寝ていたはずの彼の姿が見えないことに気付いた。  
 
『おはようございます。ミセス・サガラ』  
 
ふと枕元においてある端末から電子合成された男の声がかかる。  
 
「・・・・おはよ、アル。・・・というか何時も言ってるけど、ミセスって止めない?第一、正式に籍入れてないし」  
『問題ありません。慣れた呼び方を変えるのは一苦労なので、早い内から今後使う呼び名に統一するべきです。』  
 
無機質な男の声は、自分のわずかながらの苦言も、バッサリと切り捨てる。  
籍を入れてないと言っても、どうせ遅かれ早かれ時間の問題だろ?と言外に言われたのが少し癪だが、  
本人が変えないと言っている以上、もう自分が何を言っても無駄だろう。  
ため息を漏らしながら、別の話題を振る。  
 
「テッサとの約束はもういいの?」  
『はい。大佐殿・・もとい、艦長殿は昨日2100を持って、無事マオ少尉のマンションへ帰宅しました。』  
「そう。テッサとの旅行、どうだった?」  
『一時トラブルが発生しましたが、結果オーライです。私にとっても有意義な時間でした。』  
「へえ。よかったら聞かせてくれる?」  
 
端末越しに話す相手―――アルが先日テッサの護衛としてバニ・モラウタの墓参りについて行ったことは聞いていた。  
(もっとも、彼自信は衛星回線越しにアラストルを動かしていただけなので、ついて行くという表現も変だが。)  
しばらくアルからバニの墓参りで出会った少年や、その時戦った現地のゴロツキ。そして、バニと心の中で会話できたことを  
聞いてるうちに、部屋の外から男が帰ってきた。  
 
「む。千鳥、起きたのか。」  
「ソースケ。何処に行ってたのよ。」  
「経路を確認していたのだ。俺は直接行ったことはないからな。朝食を摂ったら、出発するぞ」  
「うん。・・・今日出たら、何時ぐらいに着く?」  
「レモンから受け取った情報だと、そう遠くない。今から出れば、昼過ぎには着くはずだ。」  
 
そう言って、宗介は荷物をまとめ始める。  
 
私、千鳥かなめと相良宗介は、今は東南アジアの古い町、そこの宿に泊まっている。  
目的は―――宗介がナムサクで亡くしたと言う少女、ナミの墓参りだ。  
 
あの戦い―――文字通り世界の命運を賭けたメリダ島の戦いを終え、学校で再開してから3カ月たった。  
一度は、共にもう一度あの学校に通うという選択肢も出たが、それは叶わなかった。  
ウィスパードがもう≪ささやき声≫を聞けないというのは、各国の諜報機関には周知されつつある。  
それでも、まだブラックテクノロジーを諦めきれない輩は存在するだろう。彼らが――世界がウィスパードを諦めるには、まだ時間が掛かるのだ。  
いずれ遠くない未来で、自分達はあの町に戻り、落ち着くことができるだろう。その為にも、今はあの町にはいられない。  
 
2人でそう結論を出し、陣代高校で再開したクラスメイトたちに、しばしの別れを告げ、宗介とかなめは日本を旅立った。  
特に行くあてがあったわけではないが、  
 
「世界を見て回りたい。世界を見て・・・何十年先になるか解らないけど、  
いつか天国にいった時、あいつにこう言ってやるの。あんたが否定した世界は案外悪いものじゃなかったって」  
 
かなめの、この言葉を皮切りに、世界中を歩き回ることにした。  
『私も同行しましょう』とアルが言ってきたが、「お前のような荷物をもって旅ができるか」という宗介の一言で切り捨てられた。  
結果、アルの本体は宗介がどこかに隠し、かわりに直接回線付きの端末を常時持つことで妥協することになった。  
そうして、アメリカ、ユーラシア、アフリカ、オーストラリア。世界中を回ってるうちに、東南アジアの片隅に来た時、宗介がふと口にした。  
 
「・・・・墓参りしたい人間がいるのだが、寄り道していいか?」  
「墓参り? いいけど、昔の戦友?」  
「いや・・・。以前、この近くの町で世話になった。」  
「この近く?」  
 
かなめが訝しげに地図を眺める。  
 
「近くって言うと・・・・ナムサクってところ?」  
「そうだ。君を探している途中で、その町に滞在した。その時に世話になったんだ。」  
そう言ってから、宗介は己の迂闊さを罵った。  
ナムサクで最近世話になった人間。その墓参りをしたいと言うと、必然的にかなめはこの疑問に辿り着く。  
 
「・・・最近、亡くなったの?どうして?」  
「それは・・・」  
 
言うべきか。いや、言わない方がいい。言えば優しい彼女は傷付く。あれだけの戦いと別れを経験したのだ。彼女の心が無傷だとは思えない。  
口には出していないが、故郷を離れなければならない事だって辛い筈だ。  
これ以上、彼女を苦しめる訳にはいかない。  
《彼女》の死は自分の内に秘めておくべきだ。  
 
「・・・・病気で・・な。俺が駆け付けた時には手遅れだった。」  
 
言葉にしてから、苦い記憶と罪悪感が浮き彫りになってきた。  
 
「そう・・・。お墓、その町の中にあるの?」  
かなめはその様子に何か察したのか、それ以上は聞きこんでこなかった。  
だが、それが自分の言葉を信じているという事に繋がると思うと、真実を告げられない痛みに張り裂けそうだった。  
 
「いや・・・。墓地の場所は、彼女が育った村だ。村の場所は知らないが、彼女はレモンとも面識があってな、彼女を埋葬したのはレモンだ。村の場所は、あいつに聞けば解る。」  
 
少し待て、と言い、宗介は端末をいじり始めた。おそらく、レモンに連絡しているのだろう。  
それを眺めながら、かなめは頭の隅に引っかかりを感じていた。  
《彼女》―――宗介はそう言った。そこは良い。だが、《ナムサク》。この町の名と《彼女》というキーワードを組み合わせると  
どこかで聞いたような気がする。  
そう、夢だ。夢の中でナムサクの名前と、それを語る女の子に会った気がする。あれは何時見た夢だったろうか。あれは――  
 
「―――鳥、千鳥!」  
「へっ!?えっ!?な、なによ?」  
「何ではない。何度も呼んだのだぞ。レモンから村の場所を聞いた。少し遠いから、途中にある町で一泊するぞ。」  
「うん。・・・ねえ、その子の名前、何て言うの?」  
 
宗介は僅かながら、口籠ったが、はっきりとその名を口にした。  
「・・・ナミだ。」  
 
「結構、荒れてるわね」  
「彼女の話だと、ここも戦争の被害らしい。」  
 
荒廃した村に辿りついたのは、昼を少し過ぎるくらいだった。  
荒れ果てた村は、ろくに復旧されていないのだろう。田畑は油でボロボロになっており、家屋はASに蹂躙された跡が生々しく残っている。  
人の気配は皆無だ。生き残った者は別の地へ安住を求めたのだろう。  
 
こっちだ、と宗介が言い、かなめの手をとって歩き出す。  
村の中心を抜け、やがて小さい丘にさしあたると、その頂に真新しい十字架があった。  
 
「あれが?」  
 
かなめがそう聞くと、宗介は黙って丘を登り、十字架に刻まれた文字を読み取る。  
≪NAMI≫―――没年月日も一致する。間違いない、彼女の墓だ。  
 
「あたし、ここで待ってようか?」  
「・・・・済まん、頼む。」  
 
かなめを丘のふもとに残し、宗介はナミの墓に向かい合った。  
 
ナミ。かなめを連れ戻すことができた。君の協力がなければ、俺はナムサクで死んでいただろう。  
今でも、感謝している。そして・・・君には謝っても謝りきれない。俺が殺したようなものだ。  
もし君が生きていれば・・・レナードに賛同したか?世界を再構成すれば、君の人生はもっとマシなものだっただろう。  
ウィスパードも生まれず、AS――あんな兵器も存在しなかっただろう。そして―――俺とかなめは出会わなかった。  
君は俺を罵るかもしれないが、今でもレナード、そして少佐を止めたことは後悔していない。  
ここが、俺たちの生きている世界だ。唯一無二の、残酷で滅茶苦茶で、優しい世界。この世界で、ずっと生きていく。  
何時か、俺もそちらに行く時が来るのだろう。その時には、また―――――  
 
 
時間にすれば、数分だろうが、宗介にとっては何時間も感じられた。  
あの時できなかった別れを告げ、かなめの元へ戻って行った。  
 
「待たせたな。」  
「・・・・もう、いいの?」  
 
ああ、と応じ、宗介はかなめと帰路についた。  
十字架に掛けられていた――いつもナミがつけていたペンダントが風で優しく揺れている事に、宗介は気付かなかった。  
 
宿に着き、部屋で食事を終え、今後の予定を2人で立てている時に、宗介はかなめの様子に違和感を覚えた。  
食事中も思い詰めた顔でいたり、今でも地図を眺めてはいるが、ほとんど上の空だ。  
 
「千鳥、気分でも悪いのか?」  
 
真っ先に疑ったのは、彼女の体調不良だ。普通の女子高生の生活をしていた彼女にとって、旅はやはり不慣れなのだろう。  
妙な感染症にかかった疑いもある。それならば、一刻も早い処置が必要だ。  
 
だが、かなめは意に決した顔で宗介に向かい合い、口を開いた。  
 
「ソースケ・・・・ナミさんって、どうして亡くなったの?」  
 
ドクンッ、と心臓が跳ねる。まずい、顔には出すな。ごまかすのだ。それなら昨日話しただろう?この一言で済む  
いや――無駄だ。もう勘付かれている。彼女は聡明なのだ。昨日話した内容を忘れるわけがない。その上で訊いてきたのだ。  
 
「・・・・それ・・・は・・・」  
 
口の中が渇く。目が泳ぐ。昨日の葛藤が蘇る。話すことは簡単だ。再び嘘を塗り固めることも容易い。  
だが――これ以上、彼女に嘘を吐きたくない思いもあった。しかし、言えない。言えるわけが無い。言えば、彼女は――  
 
項垂れていた宗介の頭を、ふわりと優しい感触が包み込む。  
 
「ウジウジ悩むなんて、あんたらしく無いわよ。」  
 
宗介は、震える手を彼女の腰にまわし、ぎゅと抱え込む。  
そして、ポツリ、ポツリとナミの死の真相を話し始めた。  
 
宗介の語った話を聞いても、かなめは微動だにせず、宗介の頭を抱えたまま静かに佇んでいた。  
 
「・・・・俺のミスだった。クラマの警告通りに姿を現わせば・・・いや、それ以前に、彼女をあの場に連れていくべきではなかった。俺が・・・」  
 
何度も思い浮かべた自責の念。ナミが死んだ直後のあの無力感。そして・・・彼女の死の上で救ったかなめが、この話を聞いてどう思ったか。  
自分はいうなれば、彼女を救うために別の少女を犠牲にしたのだ。それを、かなめがどう感じるか、想像するだけで絶望にも似た気分になる。  
 
「・・・・」  
「・・・昨日は嘘を吐いて済まなかった。君がナミが死んだ理由を知れば傷付くと思うと、言えなかったんだ。」  
「・・・・」  
「・・・・千鳥?」  
「こんの・・・」  
彼女の言葉に、宗介が首を上げた瞬間  
「バカソースケッ!」  
彼の鼻頭に、彼女のヘッドバッドが炸裂した。  
 
「・・・・かなり痛いぞ」  
「どやかましい!あたし、メキシコであんたに言ったわよね!あの言葉、もう忘れたの!?」  
 
彼女の言葉が、ふと蘇る。  
忘れていない。決して忘れるはずがない、あの誓いだ。  
『あたしを助けに来て。どんな犠牲を払った構わない。何人死んだって――  
何百、何万、何億人死んだって構わないから。だから、あたしを迎えに来なさい!  
あんたの持てるすべて――そのクソの役にも立たない、非常識で迷惑きわまりない兵隊の技能を総動員して、どんなにヤバい相手でもギッタギタにやっつけて、あたしを抱きしめにきなさい!!』  
 
「ナミさんの事は・・・・」  
興奮した頭が、少しは冴えてきたのだろう。落ち着いた口調でかなめは続けた。  
「そりゃあ・・・残念よ。何かできたかもしれない。でもね、これであたしがヘコむのを、あんたが気にすることはないの!」  
「だが・・・」  
「聞きなさい!あたしは、誰かが犠牲になるのを覚悟して、あんたに助けを求めたの!それぐらい、あんたに助けてほしかった!あんたと一緒に居たかった!」  
 
ぐいっ、と宗介の襟首を掴んで顔を近づける。  
 
「あたしが今、なんでこんなに怒ってるか解る?」  
「・・・俺が、ナミが死んだ理由を隠してたから」  
「40点。まあ、それもあるわ。けどね、一番は――あんたが、あたしを気遣うあまり、自分だけ傷を背負おうとしてることよ!」  
 
襟首を持たれたまま、思いっきりベッドの上に放り投げられる。  
大の男を放り投げるとは。いつも思うのだが、あの細腕の何処にそんな力があるのだろうかと、こんな時に唐変木な疑問が頭をよぎる。  
仰向け状態で呆けていると、一瞬でマウントポジションを取られる。  
凶暴な野獣に襲われてるようだ―――――口に出せば、本当に野獣になってしまうから心でつぶやくのみだが。  
 
「メリダ島で、あんたがあたしを罵ってくれた通りよ。あたしはお姫様なんかじゃないわ。今この時間の代償に誰かが犠牲になったのも解ってる。そこまで想像力乏しくないわよ」  
「・・・・」  
「けど、あんたが一人で抱え込む必要なんてないわ。あたしはそんな事、望んでない。」  
「だが、千鳥――」  
「あんただって、あの戦いでたくさん傷付いた。頑張ってくれた。あたしを取り戻してくれた。」  
 
かなめの手が、そっと宗介の頬―――十字傷に触れる。  
 
「辛かったわね。もう・・・力を抜いて良いんじゃない?」  
 
 
頬に水滴が流れ、シーツに落ちると、僅かな滲みを作る。  
水滴ではない、これはあの時と同じ、涙だ。そう認識すると、自分の意思に関係なく嗚咽が漏れてきた。  
 
「・・・ッ・・・くっ・・ぅ・・・」  
 
泣くのは、これで二回目だ。  
あの時は、状況的にすぐに泣きやんだ。だが、この涙は、いつまで経っても、おさまりそうになかった。  
 
「・・・落ち着いた?」  
「ああ。もう大丈夫だ」  
結局、涙が止まった時には日付を跨ごうかという時間だった。  
上半身を起こし、ベッドの上でかなめにしがみつきながら、泣き続けたのだ。目も鼻も真っ赤になっていた。  
 
「ほんと、肝心な所は抜けてるのね」  
「・・・・・面目ない」  
 
くすくすと笑いながら言うかなめの姿に、憮然としたまま宗介は答えた。  
 
「まあ、ソースケらしいっちゃ、らしいけどね。さ、明日も早いし、そろそろ寝ましょっか。」  
 
シャワー浴びてくるわね、と言い、腰に回ったままの宗介の腕をやんわり離そうとした。  
だが、  
「・・・ソースケ?」  
 
腰に回ったままの屈強な両腕は、離す気が全く無いようにガッチリ固まっている。  
少し強めに外そうとしても、ビクともしない。  
 
「・・・ふと、思うのだが」  
 
かなめの鳩尾あたりに顔を押しつけたままの宗介が、ポツリと、だがハッキリ聞こえる声で呟いた。  
 
「俺だけ泣き顔を見られるのは、不公平じゃないか?」  
「・・・・・・・・・は?」  
 
瞬間、ぐるりと、かなめの見ている景色が反転した。背中にはシーツの感触、見上げる所には――――宗介の顔。  
 
「ちょっ!」  
「俺がこれから千鳥の泣き顔も見る。うむ、実にフェアだ。」  
 
言葉の意図を理解した瞬間、かなめの顔は、瞬時に青くなってくる。  
 
「は、はぁ!?あんた、ホントに反省―――」  
「しているぞ。今後は一人で抱え込んだりしない。それに、君はお姫様ではないからな。遠慮も必要なかろう」  
「ばっ!あれはそういう意味じゃ、ひっ!」  
 
服の裾から忍び込んだ手が、脇腹をするりと撫でるだけで、ゾクリとした感覚が浮き上がる。  
 
「ちょ、やめっ!!ひぅっ!」  
「それにクルツが以前言っていた。据え膳食わねば男の恥?・・・だと」  
「あんた・・っ・・・現文苦手・・・意味・・解ってないでしょーが・・・!んっ・・・ッ・・・んぅ」  
「問題ない」  
 
裾から入り込んだ手が包み込むのは柔らかな膨らみ  
形を確かめるように、丹念に揉みしだかれる。  
 
「ぁ・・・まっ・・・せ、せめてっ、しゃわっ、シャワーっ!」  
「どうせ汗をかくのだ、問題なかろう」  
「ありまくりよ!乙女心の問題な、ふぁ!!」  
 
現在進行形で胸をイジメテいる手。その片方が、何の苦労もなくショーツの中に忍びこんだ。  
行きついた先、下肢の付け根は既に湿り気を帯びており、指を動かせばピチャリという小さな音が2人の鼓膜を震わす  
 
「―――――!」  
「なんだかんだ言いつつも、楽しんでるではないか」  
「なッ、ん・・・あんたっ・あっ・・調子に・・・ふッ・・ん」  
 
じわりじわりと押し寄せる快感の波。それを堪え言葉を紡ごうとしても口からでるのは自分のものかと疑いたくなるような甘い声  
目の前の最愛の人の手、時には舌にあてられた箇所は、火傷をするかと思うぐらい熱を帯びていく。  
やがて思考さえも麻痺し、何がなんだかわからなくなる。  
――――やめてほしい。――――続けて、もっと愛して。 脳内では前者の考えが、後者に急速に奪われていく  
 
「・・・千鳥」  
 
いいか?と男が目で訴える。  
ホント、こういう所は犬みたいねと心の中で呟く  
 
「いいよ・・・・来て・・・」  
 
「あぁっ、あ・・あ・・んっ!」  
「く・・・・・・・・・・ッ」  
 
充分に濡れたそこに、痛みはなかった。だが、下腹部の異物感に半ば反射的に全身が強張る。  
最初の時に比べたら、すごい進歩だ。あの時は痛みで大泣きして、気が付いたら自分が半殺しにした彼がベッドに突っ伏してた。  
目を半開きにして彼の顔をのぞき見る。いつもと同じむっつり顔。しかし、余裕がないのがありありと見てわかる。  
彼も必死なのだ。己の欲望のみをぶつけ、自分を傷つけまいと  
 
「ち・・どりッ、力を抜け・・・ッ」  
「う・・・ぁ・・っ、む・・り、んっ・・・!」  
 
繋がった状態で、しばらく制止する。やがて膣内の力が抜け、圧迫感がやわらいできた。  
 
「千鳥・・・動くぞ・・・」  
「ハぁ・・・ゆっくり・・・よ・・、っ・・・いきなり激しくしたら・・・シバく」  
 
「んんっ・・・あ・・あぁ!」  
「フ、・・・」  
「っ、んぁ!・・や、あッ・・ソー・・スケッ・・・!」  
「ッ・・・千鳥・・・もうッ・・!」  
「ふぁ!・・・あ・・ソースケ・・・ッ・・・ああっ!」  
「・・・くっ!」  
「ああぁぁっ!・・・・ハッ・・・・ハァ・・・」  
 
 
 
 
「・・・・最低。明日もけっこう歩くのに。」  
「・・・・・」  
「立てなかったら、あんたのせいよ。」  
「・・・だが、君も途中から、乗り気に、」  
 
ドゴォ!とすさまじい音を繰り出して、かなめの回し蹴りは宗介のコメカミにヒットした。  
 
「・・・・とてつもなく痛いぞ。と言うより、それだけ動ければ大丈夫じゃないか」  
「うるさい。明日も早いんだから、もう寝るわよ」  
「その前に」  
宗介がふと言葉を切りだす  
 
「君はどうしてナミの死んだ理由が嘘だとわかったんだ。」  
「・・・別に。ただ、元気そうな娘だったから、病気じゃないだろうなと思っただけよ」  
「・・・元気そうな娘?君は彼女に会ったことはないだろう?」  
「・・・・・・・」  
 
実のところ、かなめ自信にもよくわかっていない。  
ただ、なんとなくそんな気がしたのだ。いつか見た、あの夢の中で。  
確証はないが、おそらく間違いない。あの夢で会った女の子は、ナミだ。  
 
「・・・千鳥?」  
「・・・・あーーーっ、もう、うるさい!この話はおしまい!寝るっ!!」  
 
考えても仕方のないことだ。  
いつか、また夢で会う事ができるかもしれない。その時に聞いてみよう。  
 
窓の外を見やる。日本とは違い、とても澄んだ星空だ。  
なんとなく良い夢が見れそうだと感じながら、かなめは睡魔に屈することにした。  
 
 

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