いつもは全然起きれないのに、今日はなぜか早くに目が覚めた。カーテンの隙間から差し込む明かりが眩しかった。  
「ん…」  
もぞ、と身をよじろうとしたら突如大きな手にぐいっと胸元まで引き寄せられて、思わず「ひゃっ」と変な声が出てしまい、あわてて口元を押さえる。  
心臓の鼓動が聞こえるほどの近距離で、またきつく抱き締められて今度は声も出なかった。  
近くにある彼の胸板が、昨夜の出来事を連想させて、自然と顔が赤くなる。  
「…ソースケ?」  
「…」  
「に、逃げたりしないから。その…苦しいんだけど」  
すると、気がついたようにぱっと力を緩められて、でも、離れたりはしないように優しく腰に手を回される。  
いつもこうだ。いつもどこにもいかないよう宝物を大切に抱き締めているような抱きしめ方をしてきて、だけどどうかすればまるで壊れ物を扱うように優しく触れてくるのだ。  
そんな宗介にふ、と笑みがこぼれる。  
「…おはよ」  
「…ああ」  
「どうしたの?嫌な夢でも見た?」  
「いや、寝ていた君が、俺を呼んでいた。」  
「私?」  
どうして?と問うと、わからんが君が泣きそうだったので不安になったと答えられた。  
「…どうしたらいいか、わからないんだ」  
「ん。多分怖い夢でも見てたのよ。大丈夫…ありがとう」  
「ちど…」  
彼が言い終わる前に、遮るようにぎゅっと抱きついた。広い胸板。規則正しく聞こえる鼓動。引き締まった筋肉、私を抱き締める腕。すべてが、あたたかい。 生きてる。安心する――  
「…大好き」  
…恥ずかしいけれど本当は、私が意識を飛ばす少し前、いつも「愛してる」って私に口付けること、知ってる。  
心の奥でもっと、もっと私を好きになって、なんて思う私もいて、なんてわがままなんだろうって自分で呆れる時もあるけれど。  
私を一生懸命愛してくれるあなたがいとおしくて、伝わらない想いがもどかしくて、手を伸ばしてみたら力強く握ってくれるから、やっと少しだけ安心したりして。恥ずかしいから絶対口には出さないけど。  
 
「千鳥」  
額にちゅ、と口付けられてゆるゆると顔をあげる。そこには真剣な眼差しのソースケがいて、数秒見つめあったあとゆっくりと瞳を閉じた。  
唇に柔らかな感触。蕩けそうなくらいに、甘くて優しい。心地いい。啄むように口付けられて、私はそれに応える。  
「ん…」  
私の唇にいた彼のそれが、ゆっくりと下へ移動する。  
「…や、…っぁ」  
首筋をきつく吸われて言葉が遮られた。  
「…千鳥を俺のものにできたら、と何度も思ったことがある。いっそ腕の中に閉じ込めて、どこにも行かないように。…だが違うんだ。千鳥はみんなと笑いあっているから千鳥で、俺の腕の中でおとなしくしているのが君なんじゃない。だから、これだけでも、許してくれないか」  
かあ、と思わず頬が紅潮するのがわかった。  
彼に、愛されている。  
「…うん」  
正直ずるいと思う。こういう時だけ甘え方が上手くて。こいつはもしかして確信犯じゃないだろうかなどと何度思ったことか。  
 
 
 

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