「……バカ」
拗ねたような、甘い囁きが耳元をくすぐる。
寄せた頬の耳たぶに、少々きつめに歯をたてられた。
「痛いぞ」
思わず漏らした文句にも、つい苦笑が滲む。
「すっかり目が覚めちゃったじゃない…あんたのせいだからね」
「なら、責任を取らないとな」
上目遣いに俺を睨む濡れた瞳を覗き込み、不満げに尖らせた唇に軽く自分のそれを重ねた。
角度を変えて何度もくちづけを交わしながら、細い背中を抱きしめる。
そのまま掌を下へ滑らせ、くびれたラインを辿ると僅かな布きれの感触が指先に触れる。
掌に余る程度の丸みをゆっくりと揉みしだくと、耳元でせつなげな溜息が漏れた。
鎖骨を甘噛みして、そのまま白い胸元に舌を這わせる。
口に含んだ先端部分は先程とは比べ物にならないくらいに硬く勃ち上がり、
俺の愛撫に懸命に応えていた。
なだらかな腹部と可愛らしい臍にもキスの雨を降らせると、幾度となく
頭上で小さな喘ぎが漏れる。
素直に声を出せばいいのに、千鳥はいつも必死に声を抑えようとするのだ。
何かを堪えるようなその表情が、余計に俺の嗜虐心を煽るなどとは知りもせずに。
緊張して張り詰めた太腿をさらりと撫でると、白い身体にビクリと震えが走る。
薄明かりの下で脚を開くのが恥ずかしいのか、千鳥の両腿は俺の脇腹を
挟むようにして、なんとか脚を閉じようと空しい努力を続けていた。
「千鳥」
羞恥か、情欲か、その両方か。熱に浮かされたように頬を染め、泣き出しそうに
潤んだ瞳を下から覗き込む。
ずっと唇を噛み締めていたせいか、まるで紅を引いたかのように赤くなったそこが
かすかに震えていた。
目を合わせたまま、再び白い脚に掌を滑らせる。
そこを力任せに開く事は不可能ではない。
だが、そうはしたくなかった。
「見せてくれ」
千鳥自身の意思で、その身体と心を開いて。
俺に、見せて欲しかった。
「全部」
今にも泣き出しそうな潤んだ瞳を見つめながら、白い膝頭にチュ、とくちづけた。
時間にすればほんの数秒、千鳥の表情に困惑と迷いの色が浮かび、所在無い両手を
胸の上辺りでぎゅうと握り締める。頬を僅かに朱に染め、覚悟を決めたようにきつく瞼を閉じた。
白く張り詰めた腿が、極度の緊張のせいか小さく震えて。
もどかしいほどにゆるゆると、固く閉じられていたその場所が開かれていく。