「…ふぅん」
最初に目に付いたのは繊細なレース細工だった。
男物とはまるで違う華美な装飾と光沢のある生地が、最後の砦とばかりに
最低限の面積で肝心の箇所を覆い隠している。
それは下着、というよりはデコレーションといった方が正しいのかもしれない。
大切な相手に見せる為だけの、秘密の飾りつけ。
小さな薄い生地の下にはうっすらと淡い茂みの色が透けていた。
半端に隠れている分、なまじ裸よりもなんだか淫猥な感じがする。
「可愛いな」
普段ならあまり口にしないような台詞が、自然に口をついて出た。
下着だけじゃない。千鳥が俺の為だけに選んだこれを身に付けて
ベッドで待っていてくれたという事実が純粋に嬉しく、愛おしく思えたのだ。
悪戯のように指先で生地の上をつう、と撫でる。生地越しに濡れた感触が指先に伝わった。
「…ん…っ」
頭の上からなんともいえない可愛らしい声が降ってくる。その表情をチラリと盗み見れば、
千鳥は相変わらずきつく瞼を閉じたたまま、必死に声を漏らすまいと片手で口元を押さえている。
「千鳥、我慢しなくてもいい」
そう言っても、千鳥はイヤイヤとかぶりを振って手を口元からどけようとはしない。
その仕草が余計に俺を煽った。
小さな布きれの、一際細くなっている箇所を指先でぐいと引っ張る。甘酸っぱいような
女の匂いと、かろうじて隠れていた其処が露わになった。剥き出しになったその場所に
ペロリと舌を這わせると、千鳥の身体がビクン、と大きく跳ねる。
「ひゃッ!?……やっ、バカ、何…ッ!」
思わず漏らしてしまった悲鳴に自分自身で驚いたのか、千鳥は咄嗟に脚を閉じかけるが、
俺の腕と肩に阻まれてそれは叶わなかった。逆に内腿にかけた己の掌で、更にぐいと脚を開かせる。
濡れて溢れて、あからさまになった其処に更に深くくちづけて奥まで舌を忍ばせた。
必死に身を捩じらせて俺の舌から逃げようとする腰を半ば強引に押さえ込む。
「ん、ぁッ!いや、ぁ…!」
千鳥はまだ口元を手で隠しているのか、くぐもった喘ぎ声が漏れた。
切なげな声と荒い呼吸音、己の舌が立てる淫らな水音が頭の中に響いて、
なけなしの理性を凄まじい勢いで侵食していく。獲物の肉を屠る獣のような気分で
濡れた肉と熱を味わい、やがて舌先で探り当てた小さな突起を集中的に責めてやると、
悲鳴のような声が上がった。
「ん、ああああああああッ!!!」
声を抑える余裕も吹っ飛んだのか、千鳥は枕の端を両手で必死に握り締める。
まるで全身に電流でも流されたかのように身体を仰け反らせ、ビクビクと震えた。
初めて身体を重ねた時もそうだったが、千鳥はここを責められるのが弱い。
漸く引き出せた素直な反応に内心ほくそ笑みながら、俺は執拗に同じ箇所を攻め続けた。