「ちょっとソースケぇ、ビール足んないわよ」  
 顔を仄かに紅く……いやかなり紅く……とても真っ赤に染めているマオが宗介に催促を  
繰り返す。彼女の手には空になったビールの缶が握られている。  
「いい加減にしてくれ。マオが酔い潰れでもしたら俺は死んでしまう」  
 目の前で空き缶をぷらぷらさせているマオに心底疲れきった声で宗介は控えるように注意  
した。宗助の部屋にはすでに大量の空き缶が散乱しており、足の踏み場もないほどだ。  
「私の言うことが聞けないってえの? いい度胸ね」  
「程々にしてくれと言っているんだ」  
 実際ここ数日の宗介の疲労は尋常ではなかった。トゥアハー・デ・ダナンの艦長、つまり彼  
の上官に当たる人物、テレサ・テスタロッサがどういうつもりか彼の通う陣代高校に短期の転  
入をしてきたのだ。そのため普段の任務であるかなめの護衛とともにテッサの身の安全まで  
守らねばならなかった。先日など体調を壊して倒れてしまうという失態を犯していた。だから  
マオが合流してくれたのは喜ばしいことなのだが、まさか着いて早々酔い潰れて任務遂行に  
支障をきたすなどは……と心配でしょうがなかった。  
「もういいわ。ちょっとシャワー借りるわよ」  
 宗介がビールを用意しないと判断するとマオは立ち上がり、しっかりした足取りで風呂場へ  
向かった。  
「あんたも一緒に入る?」  
「くだらんことを言ってないでさっさと入ったらどうだ」  
「ったく、冗談分かんないやつね」  
 風呂場の戸を音を立てて閉めると、後には宗介だけが残された。溜め息を一つ吐き、急いで  
空き缶の山を片付け始めた。いつもならばこれほど早急に片付けなどしないのだが、今は状  
況が違う。宗介の寝室だったところには、マオに付き合いきれず早々にダウンしてしまったテッ  
サが寝ているからだ。宗介は言葉どおり神経をすり減らし、どんな些細な粗相もせぬように努  
めていた。  
 もし僅か、ほんの塵一つほどでも大佐殿の気に触れてしまえば、きっと俺は魚雷発射管に  
詰められて三百キロの爆薬と一緒に射出されてしまうだろう……というのが今の彼の行動の  
根幹にある想いだった。  
 
「――ふう。こんなものか」  
 一通り始末を終えた宗介は改めて室内を見回した。清掃されて現れたのは殺風景な彼の  
部屋、ではなくマデューカス中佐と千鳥かなめによって改装されたカジュアルな部屋だった。  
床は不審者が侵入したとしても足を滑らせるのではないかというほど磨き上げられ、硝煙の  
匂いもさほど気にならない。  
「…………」  
 しかしそれでも宗介は不安でたまらなかった。  
 自分はマデューカス中佐から目を付けられている。悪い意味でだ。果たしてこれでいいのか?  
もっと床を磨き、もっと千鳥が置いていった消臭剤なる妖しげな化学薬品を散布すべきではな  
いのか?  
 考え出せば不安は膨らむ一方だった。こういう時は自分で考えるより他人の意見を求めるこ  
とが良い選択だ、と彼は学んでいた。早くマオが風呂から上がらないか気になり時計に目をや  
ると、すでにマオが風呂場に行ってから三十分近く時間が経っていた。  
 女性の風呂は長いと聞くが、マオもそうなのか?そういえば大佐殿は……。  
 テッサが初めてここを訪れたときのことを思い出し、その時彼女はマオと同じように風呂場に  
……と、ここまでで記憶を脳層奥深くに押し込めた。  
 いかんいかん!ふしだらな言動・思想は爆薬三百キロだ!  
 思考を中断すると布団を敷き始めた。自分の分ではなくマオの分だ。彼はというと壁にもたれ  
かかってしゃがみ、そのままマオが部屋に戻ってくるのを待った。  
 待って十分。女性はどれだけ風呂に浸かっているのだ?俺には分からん。聞こえてくるのは  
シャワーの音のみ。  
 待って三十分。こんなに入浴が長いのなら銃の手入れでもしていれば良かった。聞こえてくる  
のはシャワーの音のみ。  
 待って一時間。これほど長いとは思ってもいなかった。聞こえてくるのはシャワーの音と、いびき。  
「――――!」  
 一時間以上同じだった姿勢を崩し、急いで風呂場に向かい扉を開いた。  
 
「おいマオ! まさかお前……っ」  
 寝ていた。シャワーを出したままなみなみと張られた湯船の中、浴槽の縁に上体を預けて  
気持ち良さそうに寝ていた。  
「だから飲み過ぎるなと言ったんだ……マオ、起きろ」  
 抱えたくなる頭を振って気を取り直し、ぐうすかと大いびきを立てるマオの肩を掴んで揺す  
る。と、ほとんど開いていない眼で宗介の顔を見上げてきた。  
「んん……? あぁソースケぇ、どしたぁ?」  
「呂律が回ってないぞ。早く浴槽から」  
「あ、分ぁった! 一緒に入りたいんでしょぉ? よしよしおいで」  
「っぅぐ……!」  
 突然宗介の身体にマオの両腕が絡みつき、がっしりと抱きついてきた。さすがにたじろぎ、  
ずるずる尻を引きずって後退すると、  
「あぁ? 何で逃げんのよぉ」  
 マオの身体も一緒についてきた。しなやかな肢体が浴面からするりと抜け出した。  
「い、いや……」  
 先ほど想像しようとしたテッサのシャワーシーンとは比べ物にならない本物の女性の裸体  
に取り乱しかけるが、  
 ふしだらな言動・思想は爆薬三百キロ、ふしだらな言動・思想は爆薬三百キロ!  
 マデューカス中佐の警告により植えつけられた指示が即座に全身に行き届き、理性を保つ  
ことができた。  
「ふ、風呂場で寝るな。敵が襲ってきた場合、裸で戦闘を」  
「私はいいの。なんたってこの身体があるから」  
 マオの胸が宗介の下腹部辺りに密着し、宗介はまた後退しようとした。しかし無情にも背中  
は壁に突き当たり、動きを封じられた身体はマオに抱きつかれたまま固まってしまった。  
 
「逃げなくてもいいじゃないの。それとも何? 私の身体じゃ不満?」  
「…………」  
 答える余裕のない宗介は口を固く閉ざし、天井を見つめ、よくない汗を大量に噴き出しなが  
らもこの状況を耐え抜こうとした。  
「私の方見ないの?」  
「…………」  
 宗介の胸をマオの指がそっと這い回る。それでも彼は耐え抜こうと歯を喰いしばり、そして  
とうとう業を煮やしたマオは実力行使に出た。  
「女の誘いに乗らないなんて、そんな悪い坊やには……」  
 マオの指が鳩尾で止まった。瞬間、  
「お仕置きよっ!!」  
「がは――」  
 マオの鉄拳がそこにめり込んだ。逃げ場のない宗介の身体はマオの拳の威力を十二分に  
堪能し、泡を吹いて昏倒してしまった。  
「最初っから言うとおりにしないからよ」  
 顔はまだ酔っているのか赤みを帯びているが、目だけは鋭く冴えていた。  
「ま、たまにはこんなセックスも有りよね」  
 宗介の局部の前に顔を移すと慣れた手つきでファスナーを開け、パンツの中から少しだけ  
硬化した桃色の生殖器を引き出した。  
「まだ全然じゃないの。しょうがないわね、マオ姐さんが一肌脱ぎますか」  
 すでに脱ぐものはないマオが不完全な器官を手にし、ゆっくりと搾るように刺激を与えてい  
った。不完全とはいえ反応を示していたため、すぐにそこへ血液が集まり始めた。  
 
「あんたのことだからどうせ童貞なんでしょ? 大丈夫、私に任せて……」  
 意識を寸断された宗介に優しく語り掛けるマオ。  
「任せて……」  
 その瞳が次第に驚愕に見開かれていく。  
「って、あんたどこまで大きくする気よ!」  
 マオの手の平に収まるサイズだったそれは凄まじい膨張率で勃起し、両手で握っても亀頭  
一つ分以上余るほどの大きさになっていた。  
「ちょっと待って! 反則だわこんなサイズ!」  
 独りで激昂し、独りで宗介のものにけちをつけ始めた。  
「大体何よ、まだ経験ないくせにこんな…………クルツなんか豆粒に見えるじゃないの!」  
 と独りで騒ぎ立てていたが、しかし宗介の逞しく反り返る一物を見ているうちにやってみたい  
かもという欲求が……。  
「………………まあ何事も経験よね」  
 けちをつけていた事実をあっさり拭い捨て、揚々と宗介の上に跨った。  
「ゴムがあったら使い方教えてもよかったんだけどねぇ」  
 下肢の陰裂に宗介の先端をあてがい、ゆっくりと腰を下げていく。下半身を押し拡げる圧迫  
感は今まで咥えてきた数々の男どもとは比較にならないほど強烈だった。  
「ちょっとちょっと……ソースケ、凄いよ……」  
 もしかしたら自分が壊れてしまうのではないかという痛みが恐怖となってマオに警鐘を鳴ら  
すが、それ以上にあった宗介に対する興味心からさらに腰を下げていく。肉を限界まで圧迫  
され息が詰まりそうになるが、呻くのを堪えて奥まで宗介を呑み込んだ。胎内から腸を抉られ  
る気分に  
させられるが、これほどの刺激は久しぶりのことだった。  
「まずい……私が先にイっちゃうかも」  
 今度はそんな心配をするが、すぐににやりと妖艶な笑みを浮かべた。  
「それはそれで面白いけどね……っと」  
 極太な肉棒に身体を貫かれ、悦び、貪るように下半身の抽迭を始める。十分すぎる体液が  
二人の結合部にぬらりと煌いていた。  

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