「毒なんて不粋なものは入っていないから、遠慮せずに食べるといいよ」  
銀髪の少年――レナードは、料理に手を付けようとしないかなめの様子を見て  
やんわりとそう言うと、優雅な手つきで食事を始めた。  
 
 
かなめが全く不本意にレナードのもとへ連れてこられてから、丸一日が過ぎた。  
かなめが軟禁されている部屋には、アンティーク調の家具が上品に配置され、天井には  
豪奢なシャンデリアが吊るされており、やわらかく暖かい光を放っていた。  
今出されている料理や食器にいたるまで、何から何まで一級品。  
シャワーでも浴びて少し落ち着こうとバスルームに向かったら、浴室に  
鎮座していたのは花の形の足付きバスタブだった。  
これには少し呆れたが、かなめのいる部屋はまるで一泊でウン十万、ウン百万は  
軽く行きそうな、高級ホテルのスイートの一室だった。  
 
しかし今のかなめには、天蓋付きのお姫様ベッド(クイーンサイズ)だの花の形を  
あしらったシャンデリアだのに心をときめかせる余裕があるはずもなかった。  
 
先程運ばれてきた豪勢な食事もそうだ。敵の用意した食事に手を付けるのは癪でもある。  
とはいえ。  
かなめは昨日から何も口にしていない。正直なところ、かなり空腹だった。  
この男の前でお腹を鳴らすのは嫌だ。  
それに今実になる物を食べておかなければ、逃走のチャンスが  
巡ってきた時に、うまく立ち回れないのではないだろうか。  
そう考え、かなめはしぶしぶ料理を食べ始めた。  
もくもくと料理を口に運ぶ。  
そんなかなめを見てレナードはやんわりと微笑んだ。  
「味の方はどうかな」  
「まあまあよ。あなたがいなければもっとおいしく食べられたけど」  
とりつくしまもなくかなめが言うと、レナードはおかしそうに笑った。  
 
食事を七割ほどたいらげるとお腹が苦しくなったので、残すことにした。  
意外に量が多い。一方のレナードは、きれいに料理を  
食べ終え、例によって優雅な仕草で水を飲んでいる。  
細身で、とてもそんな風には見えない彼だが、やはり17歳といえば食べ盛りの時期だ。  
ましてや男の子。これくらいの量など、軽々と平らげても別に変ではない。  
宗介も、本人は『腹六分目まで』と言ってはいるが、けっこうな量を食べる。  
いつだったか、大貫氏の部屋で鍋パーティーをした時は肉ばっかり食べて  
みんなの反感を買っていたものだ。  
家でカレーをごちそうすると、必ず2回はおかわりをしていた。  
日本人なのに、米で食べるよりパンの方がいいなんて言い出して、  
帰り道に軽く議論したこともある。  
そういえば、あの時は――――  
「食後のお茶をどうぞ」  
レナードの声がした。半分ぼぉっとしながらそちらを見やると、彼は優雅な手つきで  
ティーカップにお茶を注ぎ、かなめの目の前に差し出した。  
薄々感じてはいたが、宗介とレナードは、本当に対称的だと思う。  
物腰や会話の仕方、持っている雰囲気。それらにおいて、二人は綺麗に正反対だ。  
それぞれの育ったであろう環境を想像してみれば、当たり前のことではあるが。  
 
出されたお茶は、これまで彼女がかいだことのないような、不思議な香りがした。  
花の香りにも思えるし、何か南国系の果物の香りのようでもある。  
なかなかおいしいお茶だった。一杯すべて飲み干した。  
 
 
レナードは、お茶を飲んでいなかった。  
彼は、かなめがお茶を飲む様子を微笑しながら見つめている。  
かなめは考え事に耽っており、そんなことに気付きもしなかった。気付けなかった。  
 
そしてそれが、敗因となった。  
 
 
夜も更けて。  
ベッドにあぐらをかいて、なんとか脱走できる手だてはないかと考えあぐねていた  
かなめは、自分の体温がかなり上がっていることに気付いた。  
(風邪でも引いたのかな。とりあえず今日は寝よう・・・)  
明日は、宗介は来てくれるだろうか。今頃、必死に自分の居場所を探しているはずだ。  
(ソースケ・・・)  
申し訳なさと不安感、彼へのいとおしさがないまぜになり、かなめは泣きたくなった。  
泣くもんか。絶対に泣かない。  
ふるふると頭を振って、泣きたい気持ちを無理矢理追い払う。  
学校帰りに、手をつないだ時のことが思い浮かんだ。  
彼の、ぎこちない、優しい手つき。視線。声。  
(・・・ソースケ・・・)  
頭が、ぼおっとする。体の芯が疼いて、落ち着かない気持ちになった。  
呼吸が荒い。いつの間にか、ずいぶん汗をかいていた。  
やはり、風邪を引いてしまったようだ。さっさと風呂に入って、寝てしまおう。  
かなめは立ち上がり、浴室へと向かった。  
 
さっさと服を脱いで裸になると、ますます体の芯が熱く落ち着かない気持ちになった。  
(なんなの・・・?)  
怪訝に思いつつ、浴室へ入る。  
シャワーを出して、体を洗う。  
とたんに気付く。  
 
自分の秘部が激しい熱を持ち、ぐしょぐしょに濡れそぼっていた。  
(・・・っ、なにこれ?)  
なんともいえない背徳的な気持ちが彼女を支配した。  
あまり見ないようにしてそこにシャワーを当てる。  
「・・ひぁっ!?」  
全く思いもよらない刺激に、彼女は思わず声を上げた。甲高い声が、浴室に響き渡る。  
内股がぶるりと震え、意識もしてないのに腰が浮く。下腹部から胸の辺りにかけて、  
これまでに感じたことのない種類の刺激が走った。  
わけがわからなくなって、震える手で慌ててシャワーを止める。  
おかしい。自分はどうしてしまったのだろう。  
落ち着きのなさも増す一方だし、簡単な考え事も出来なくなってきた。  
視界がとてもせまい。歩くこともままならない。熱い。  
かなめはふらふらと浴室から這い出すと、体も拭かずバスタオルを  
体に乱暴に巻き付けて、走るようにパウダールームを後にした。  
あちこちにぶつかりそうになりながらも、なんとかベッドに辿り着く。  
しかし、そこには―――  
「やぁ。どうしたんだい、そんな格好で。びっくりしてしまったよ」  
レナードは別段驚いた様子もなく、真っすぐにかなめを見据えてそう言った。  
 
たちまち、自分の体の異常の原因や、彼が何の目的でここにいるのかに  
思い当たって、かなめは我を失いそうなほどの怒りや憎悪、恐怖感を感じた。  
「・・・あのお茶ね。あんたは最低のクズ野郎だわ」  
「そうかな?君にも、いい思いをさせられると思うんだけど」  
レナードが立ち上がる。  
「ち、近づかないで・・・!!それ以上近づいたら、ぶっ殺すわよ・・・!?」  
かなめは精一杯叫んだが、勇ましい言葉とは裏腹に絶望的な気持ちになった。  
全く、力が入らないのだ。立っていることはなんとか出来るが、走ったり、  
彼を殴ったりはまず出来なさそうだ。  
それでも、手近にあったランプに手を伸ばす。・・・持ち上がらない。  
自分の体が思い通りにならないことや、すぐそばに迫っている貞操の危機に、  
頭がおかしくなりそうだった。  
「こっちにおいで」  
レナードの長くしなやかな指が、肩に触れる。  
理性では、彼女は激しく抵抗していた。彼の手を打ち払って、このランプで  
頭を殴り付けてやりたかった。  
「嫌・・・やめて。触らないで。お願い・・・」  
「そんなに、恐がらなくてもいいのに」  
レナードのしなやかな指が、優しくかなめの細い肩に置かれた。  
彼の唇が、彼女の濡れた唇に重なる。眩暈がするような、甘い感触。  
いったん唇を離すと、レナードはかなめの潤んだ瞳を覗き込んだ。  
かなめは、彼の瞳から目を逸らせなかった。  
数秒間見つめ合った後、再びレナードが唇を重ねてくる。  
閉じることもままならない歯列を割り、彼が侵入してくる。  
「・・んぅぅ・・・」  
口中をくまなく侵され、下唇を軽く噛まれると、かなめの腰がくだけた。  
彼はかなめの腰を片手で支え、ようやく唇を離す。  
二人の唇の間で、銀色の糸がきらりと光り、すぐにふつっと切れた。  
かなめが息を乱しながら、焦点の合わない目でレナードを見上げると、彼は伏せ目がちに  
微笑み、彼女をバスタオルごと軽々と抱き上げて、ベッドに横たえた。  
 
優雅な仕草でかなめの体に覆い被さると、かなめの顔を覗き込んで、  
「・・・初めてなんだ?」  
彼女は、答えなかった。  
「彼とは、『そういうこと』しなかったんだ?」  
彼女は、答えられなかった。  
涙が一筋、頬を伝う。  
顔を背ける。  
「僕が教えてあげる・・・恐がらなくていいんだよ」  
レナードはかなめの首筋にやさしく口づけると、かなめからバスタオルを  
取り払った。  
「・・・ッ!嫌・・・!」  
かなめは、精一杯の力をこめて彼の体を押し退けようと試みたが、全く  
無駄な抵抗にしかならなかった。  
熱を持った彼女の体は、意志とは別に、女の悦びを感じていた。  
濡れた髪は白い肌にまとわりつき、焦点を失って潤んだ瞳や上気した頬は  
『女』よりも『雌』を彷彿とさせた。  
「綺麗だよ・・・本当に、君は美しい」  
レナードは、かなめの首筋から肩、胸元にかけて、優しくキスを落としていった。  
かなめは精一杯歯を食いしばっていたが、彼女が時折堪え切れずに漏らす  
押し殺したような甘いため息や、高く擦れた声は、余計に彼を昂ぶらせた。  
 
彼の唇が、胸の項に辿り着く。  
「ぁ・・ッ・・・や、やめ・・・」  
レナードは執拗に胸の項を責め続ける。かなめの反応を試すように、唇と舌を使い、  
強弱を付けて桜色をねぶりまわす。強く吸い付くと、かなめがこらえ切れずに  
嬌声を上げた。  
「・・・すごくかわいいよ」  
彼は呟き、かなめの耳に舌を差し入れた。  
「・・・っ!!やぁあっ・・・!!」  
かなめの背中がのけぞり、必死にもがいて彼の下から這い出ようとする。  
レナードは体重をかけてそれを押さえ込み、彼女のびっしょりと濡れた  
秘部に手を寄せる。  
くちゅくちゅと、水音が静寂の中に響く。  
「・・・ッああっ・・・!あ、ぁっ・・・」  
「・・・こんなに濡らして。いけない子だな。彼のことでも考えてた?」  
「・・っ・・最低!あ、あんたなんか、死んじゃえばいい・・・!」  
「ひどいなぁ。ちょっと傷ついたから、お仕置きだ」  
レナードは微笑み、首元からしゅるりと黒いタイを  
抜き取った。  
 
かなめの両手首を結び、さらに、それを器用にベッドボードに固定する。  
「っ!・・・な、どうするつもり」  
彼は身を起こすと、かなめの質問には答えずに、彼女のへその下辺りに唇を寄せ、  
そのまま徐々に下腹部へ下げていった。  
彼の目的を知ったかなめは、恐怖に色を失った。  
「や・・やだ・・・やめてよ・・・や、嫌ぁ!!」  
唇が淡い茂みに触れ、冷たい指が陰唇を開く。  
熱い舌先が包皮を剥いて、赤く充血したクリトリスを弄ぶ。  
「あぁっ!・・・い、あぁあッ!!・・ぁああッ・・・・」膣奥から、熱い蜜液がほどばしる。  
レナードはそれをぺろりと舐め取り、クリトリスに強く吸い付いた。  
「ああああああああッ!!」  
かなめは髪を振り乱し、強すぎる刺激から逃れようと腰をずり上げた。  
レナードはかなめの腰を抑えつけ、なおも強く強く吸い付く。  
「やぁあーッ!!ああああああッ!!・・・ッ!!!!・・・ッ!!!!」  
絶頂を迎えたかなめが一際高い声で鳴き叫ぶ。後半は声にならなかった。  
しなやかな足が一瞬ビクン!とこわばり、力を失ったようにゆっくりと投げ出された。  
「・・・気持ち良かった?」  
レナードがかなめの顔を覗き込む。かなめは虚ろな目をレナードに向けた。  
そこには、一切の感情もなかった。  
「今頃、彼は君のことを一生懸命探しているんだろうね」  
「・・・やめて」  
「僕も、意外なんだ。こんなことまで彼の先を越すなんて思わなかった」  
「・・・やめてよ」  
かなめの目に涙が浮かぶ。  
「悲しまなくていいよ。僕が忘れさせてあげる」  
レナードはかなめの涙を舐め取り、頬に優しく口づけると彼女の手の拘束を解いた。  
ゆっくりと服を脱いで、かなめに覆い被さる。  
 
首筋や鎖骨の辺りに舌を這わせ、時折強く吸い付く。  
いつの間にか、白い肌には淡い花びらが点々と散っていた。  
かなめはずっと目を閉じていた。眉間に皺を寄せ、長いまつげが震えている。  
切なげに押し殺した溜め息を漏らし、くすぐったそうに身じろぎした。  
耐えているようにも、感じているようにも見える。  
レナードの指が執拗に乳房を愛撫し、尖った項をいじる。  
「・・・ぁあ・・・」  
片手が茂みに延ばされ、その感触を楽しむように動かされた後、指先がクリトリスを強く擦った。  
「・・・ッ!!ふぁあ、あはぁッ・・・!」  
つぷっ、と音を立てて、一本の指がかなめの中に侵入してくる。  
あのお茶のせいか、痛みはない。感じるのはむしろ―――  
「んんッ・・・!!」  
内腿がぶるっと震え、レナードが指を動かすと、たちまち熱い蜜が溢れる。  
「すごいな。別の生き物みたいだ。絡み付いて離してくれない」  
レナードはかなめの耳元で呟き額に口付けると、さらに指を一本増やした。  
「ひあぁッ・・・!あッ、あァッ!!」  
ぐちゅぐちゅと音を立て、レナードの指が前後する。  
「あッ!あァああッ!!」  
内部が激しく収縮し、絶頂を迎えようとした。  
 
「んッ・・・!!」  
ちゅぷっ、と音を立てて指が抜かれる。  
レナードは自身を取り出し、入り口に強く擦るようにしてあてがった。  
その刺激に、かなめはびくりと身を強ばらせる。  
「力を抜いて。しっかり掴まって・・・」  
彼は、耳元でささやいた。  
 
ゆっくりと、彼が侵入してくる。やはり痛みはなかった。  
(あぁ・・・入って、来るぅ・・・)  
「んぅぅ・・・」  
(苦、し・・・)  
彼はとても大きく、かなめは強い圧迫感を感じた。  
彼が、最奥に達する。  
「あはぁッ・・・!!」  
思い出したくないのに、宗介の顔が強く頭に浮かんだ。  
かなめの目にみるみる涙が溢れ、ぽろぽろと流れ落ちていく。  
レナードはそれを舐め取り、今までとは打って変わって激しく、鋭く腰を動かした。  
「ぅっ!あっ!あぁっ!!あぁああッ!!んっ!!んんッ!!」  
嬌声が上がり、かなめは強い快感にあらがうように激しく頭を振った。  
「あっ!はあァっ!ああッ・・・!うっ、うぅぅ・・・!!」  
ぬちゃぬちゃという淫らな水音と肌のぶつかり合う音、2人の荒い吐息が部屋の中に満ちる。  
「・・・どう?初めての感想は」  
かなめは答えず、苦しげに眉間に皺を寄せ、歯を食い縛った。  
「だいぶ感じてるみたいだけど」  
かなめは口を喘がせながらも、精一杯レナードを睨み付けた。  
「か、感じてなんか・・・な、いッ・・・・!!あ、あん、たなんか・・・ッ感じるもんですかっ・・・!!」  
「正直じゃないな」  
レナードがかなめの秘部に手を延ばし、クリトリスを強く擦る。  
「・・・ッ!!ぃ、ん、んんぅぅ・・・ッ!!」  
腰の動きをさらに速め、徹底的にかなめを責め立てる。  
「んっ!んっ!うぅ・・・ッ!!は、ああぁッ!!」  
胸の項に強く吸い付くと、かなめは裏返った悲鳴をあげた。  
内部がぎゅっとすぼまり、絶頂が近いことを告げる。  
 
さすがのレナードも、ぐいぐいと締め付けられて限界を感じる。  
かなめは狂ったように嬌声を上げ、髪を振り乱したて鳴き叫んでいた。  
「・・・っ、・・・千鳥かなめさん」  
「・・・っ!??」  
笑みを含んだ声で、耳元に囁く。  
 
 
「彼に、よろしく」  
「――――――!!!」  
 
 
どくどくと、レナードがかなめに注ぎ込まれる。  
絶頂を迎えたかなめは、声にならない叫び声を上げ、たちまち意識を失った。  
 
 
朝、かなめが目を覚ますと、レナードの姿はなかった。  
体がひどくだるい。秘部には、血がこびりついていた。  
純潔の証。  
もう二度と、戻ってこないもの。  
 
 
遠くから、ASのガスタービンエンジンの駆動音が、かすかに聞こえた。  
こちらに向かっているようだ。  
 
かなめはベッドに横たわったまま、静かに目を閉じた。  
 
 
 
   《Fin.》  
 

Gポイントポイ活 Amazon Yahoo 楽天

無料ホームページ 楽天モバイル[UNLIMITが今なら1円] 海外格安航空券 海外旅行保険が無料!