〜とあるヒトとアリの話〜  
 
 
………暗く、湿った部屋の中で『それら』――――長髪の人間の雄とヒトに似た姿の蟲が、  
互いの身体を重ね、睦(むつみ)あっていた。  
 
“じゅぷっ、じゅぽっ”  
 
ネフェルピトーはカイトの性器を半ばまで口に含み、唇でしごくように吸い上げながら  
一気に口からサオの部分だけを引きずり出して、カリを唇にひっかけ亀頭を口内に残し、  
亀頭全体と尿道口を舌先で責めては、また半ばまで咥えこむのを何度も繰り返す  
という方法でカイトを愛撫していた。  
 
「んっ、んっ、んっ」  
 
甘い、くぐもった呻き声を上げながら、一生懸命に首を動かすネフェルピトー。  
その精一杯の愛撫に、カイトも喘ぎ声を上げて応える。  
 
「う…はぁっ……ぁあ…っお、おい」  
「んふうぅ、んんっ…」  
 
“じゅぽぉ、じゅるるる、じゅぴっ”  
 
カイトのをしゃぶるのに夢中で、ネフェルピトーは呼ばれたことに気付かない。  
 
「おいっ!」  
「んくっ、んぅ……ふぁ?」  
 
やっと呼ばれていたのに気付いたネフェルピトーは、“じゅぼっ”と、ワザと音を立てながら  
フェラチオをやめて、顔を上げた。  
 
惚けたように少し開いた口の端から、唾液とカイトの先走りがまざったものが流れている。  
大きな猫科動物の眼でカイトを見つめながら、『?』という表情をして彼女はたずねた。  
 
「どうしたの、カイト」  
「あまりそればっかりやってると首が疲れるだろ、やり方を変えろ」  
「…『これ』、気持ち良くなかった?」  
「そんなことはない」  
「じゃあ…」  
「首に悪いからだ。ずっとそればっかりやってると、痛めるぞ。無理するな」  
「……それってヒトの場合でしょ、ボクはべつに平気…」  
「いいからっ、咥えこんだままやってくれ」  
「…うん、わかった」  
 
 
ネフェルピトーは蛇が蛙を飲み込むように、ゆっくりとカイトの性器を口に含んでいった。  
平均のものよりずっと大きいそれを根本まで咥えると、ネフェルピトーの口腔はカイトの  
分身によって全て満たされてしまう。  
彼女はカイトに言われた通りに、首は動かさず舌と唇のみの愛撫を始めた。  
 
“ぬちゅっ、れろろぉ、ぴちゃっ”  
 
ざらついた舌で舐めまわし、唇ですする。  
 
「……ねぇーカイトぉ、気持ち良い?」  
 
一旦しゃぶるのやめ、舌先でカリの段差部分をなぞりながら彼女はたずねた。  
 
その責めに快感のうなり声をあげながら答えるカイト。  
「ううっ…ああ、イイぞっ」  
 
その返事を聞いたネフェルピトーは嬉しそうな顔をして、ますます積極に舌を動かした。  
亀頭だけを頬張り、口唇でカリ首を、舌先で尿道口をチロチロと激しく愛撫する責めに、  
カイトはたちまち射精に至ってしまう。  
 
「うぐっ、だっ出すぞっ」  
「んぐうぅ!? うぶっ」  
 
カイトは急にネフェルピトーの頭をつかんで引き寄せ、己の男根をムリヤリ口腔に押し込み、  
白濁した精液を思いっきりぶちまけた。  
ただでさえ口内の大部分をカイトの性器で占領されているネフェルピトーはたまったものではない。  
 
「ゲホッ、うえぇ……も〜ひどいニャあ…」  
「すまんっ、大丈夫か」  
「べつに平気だよ…」  
 
そう言うと、ネフェルピトーは“あーん”と大きく口を開き、カイトに見せる。  
すると彼女の口内は、いたるところにカイトの精液がへばりついて糸を引いていた。  
 
「あはぁ…ほとんど飲んじゃったのに、こんなに残ってるよ。たくさん出たね、カイト」  
 
ネフェルピトーは口内に残った精液も、ノドを鳴らしながら飲み込むと、カイトの股間をじぃっと凝視する。  
 
カイトのそこは未だにそそり勃っており、まったく衰えていない。  
 
「ねぇカイト…今度はボクにしてよ」  
 
ネフェルピトーが上着の釦を外してはだけると、生白い肌と小振りな乳房が現われた。  
カイトはネフェルピトーの裸を見る度に思う、コイツは本当に人間に近いカタチをしている、と。  
 
初めてネフェルピトーの裸身を見たとき、蟲の名残を持つ関節に、嫌悪にも似た激しい  
『違和感』を覚えたが、同時に透きとおるように白い肌と、人間としては幼い身体、  
そして手足の先と頭にある獣の部品(パーツ)………  
それらの要素と、この関節が醸し出す背徳的な雰囲気に、カイトは己の暗い欲望が  
起き上がってくるのを感じていた。そして何よりも―――――――――――――  
 
「上はそのままで良いから、下も脱げよ」  
「うん…」  
 
ネフェルピトーがほのかに顔を赤らめつつ、ハーフパンツをおろすと、そこには小さいながらも  
自分の存在を主張するように勃起した、男性器が在った。  
 
両性具有。これこそがカイトの背徳の欲望を、最も刺激する要素である。  
 
一般的なキメラアントの生態系において、メスは女王以外存在しない。働きアリや兵アリは皆オスだ。  
しかし、食った生物の遺伝子を取り込んで、新たに生む仔に反映させるキメラアントは、  
まれに他の生物のメスに似た姿をした個体が、生まれてくる事も有る。  
無論メスとしての生殖能力は無いのだが。  
 
それと同様に、人間の女の遺伝子をベースに生み出されたであろう、女性型キメラアントの  
ネフェルピトーも未成熟な男性器の付け根に、未『発達』な女性器が存在した。  
だが彼女(彼?)の場合、ちゃんと女性器にも性感帯があり、刺激を受けると愛液を分泌するのだった……  
 

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