水見式では、シズクの念系統は具現化系と出た。彼女の念能力の指南役は、具現化系の長所や短所、
物体の具現化の仕方についてレクチャーした。物体を具現化するには、その物体について正確に
イメージ出来なければならないらしい。そのためには物体をよく知ることが必要なのだそうだ。
シズクは掃除機をその対象に選び、一本の古い掃除機を手に、暗い個室に閉じ籠った。これから、
掃除機を具現化出来るようになるまで、ただコレをいじくる生活が始まる。
最初の数日は、掃除機を撫でたり振り回してみたり、それの絵を描いてみたりしたのだが、まったく
具現化出来る気配がない。シズクは指南役が個室に食事を持ってきてくれたときに、弱音を吐いた。
すると指南役は
「まだ掃除機への理解が足りないのだ。舐めてみるとか、投げるとか、いろいろやることがあるだろう」
とシズクを一喝した。
なるほど、投げたことはあるが舐めたことはない。シズクは掃除機を布で拭いてキレイにしてから、
先端のノズルを取り外すと、菅の根本に舌を押し付け、先の方に唾液を付着させながら移動していく。
先っぽの円筒の部分、舌先をチロチロさせて舐める。円筒の内と外、しっかり舐めるとシズクは口を離した。
「ふぅ〜」
念の修行を始めてから禁欲生活が続いていた。なにしろ山の中に年老いた指南役と二人きりなのだ。
久しぶりに舌を使った事が、シズクにHな感覚を呼び戻した。