その気になれば、俺なんて簡単に殺してしまえるんだ。
力関係は歴然。百パー本気で戦ったって、絶対彼女には負ける。
高速で疾走できる自慢の脚だって、彼女には適わない。
悔しいだろ?雄として、そういうのって。
だから、せめて。この短くて熱い、夜の間だけは…。
俺が勝ったって、良いじゃんか。
そうでしょう?…ネフェルピトー様。
「ヂー、いるんでしょ??」
彼女が俺を訪ねてくるのは、大抵真夜中だ。
ニンゲンならば、とっくに眠っているような時間帯。
突然の言葉にピクリと耳を欹て、よろりと起きあがった俺に、
「あはァ、やっぱりここにいたんだ。」
彼女は嬉しそうに目を細めると、軽い足取りで近づいて来た。
ここは、キメラ城内、地下のある一室。
城を作る時に偶然涌き出たらしい地下水が貯まり、地面の半分が浅い湖みたいになっている。
卵や餌の保管場になることもなく、キメラ兵の中でもその場所を知るヤツはほとんどいないため、俺の格好のサボり場所になっていた。
「あぁ、ネフェルピトー様。」
「悪い子だね、ヂー。またサボってたんでしょ?」
悪戯っぽく笑う。銀白色の尻尾がゆらりと揺れた。
「まぁ。」
俺はニヤリと笑い返した。
普段なら、上司にあたる彼女にサボリ現場を見られるなんてとんでもないことだ。どんな大目玉を食らうか知れない。
今だって、見つかったのが彼女ではなかったら…例えばペギー様だったら、怒鳴られる前に、自慢の脚ですたこらさっさと逃げ出していただろう。
しかし。
この時間帯に、この場所で、彼女が俺に会いに来るのには意味がある。
ネフェルピトー様は俺の隣にしゃがみ込み、膝を抱えた状態でちょこんと座った。
「ねぇねぇ。」
上目使いで俺の顔を覗きこむ。
いつもの事だ。
俺はわざと、目を合わせない。
薄暗い闇の中で、アーモンドみたいに大きい瞳が妖艶に光った。
「なんスか?」
こういう時に、彼女が何を欲してるか知っている。
だから、わざと軽い口調で、宙を眺めながら返事をした。
しばらくの沈黙。
彼女は少し居心地悪そうに、俺の尻尾の先の毛を指でちょいちょいと弄くっている。
「ヂー。」
猫特有の素振りで、彼女は俺にぴたっと体をすり寄せてきた。
フワフワの髪の毛からは、ほんのりと甘い香りがする。
彼女は。
いつもは積極的で我侭なくせに。
こういう時だけ、俺に甘えようとするんだ。
…まぁ、ぶっちゃけ嬉しいんだけどね。
一呼吸置く。
横目で見ると、彼女は相変わらずとなりで大人しく座っている。
瞬間。
ガバッと彼女を抱き寄せると、そのまま押し倒した。
「あんっ」
硬い地面に彼女の肩を押し付ける。
…思った通り。無抵抗だ。
首筋に顔を埋め、耳を軽く甘噛みする。
小さく悲鳴があがり、しなやかな体がビクンと仰け反った。
そして俺は、低い声で、焦らすように囁く。
「ヤリたいの?」
「……うん。」
彼女は俺の背に手を回した。
こういう時のネフェルピトー様は、不気味なくらいに大人しい。
うっとりと目を細め、小さくぽってりとした唇をきゅっと結んで俺を見つめている。
あー。
そんな顔で見つめられたら、俺の理性も吹っ飛ぶっつーの。…ま、元々理性なんてほとんどないんだけどね。
「ネフェルピトー様、やらしー。」
からかうように囁くと、軽く唇を啄ばんだ。彼女の頬がほんのり紅く染まる。
「ヂーのその笑顔がやらしいよ。」
「うっせー。ほら、脚開けよ。」
「あんっ」
何時の間にか、俺は彼女に敬語を使う事を忘れていた。彼女もそれを咎めることはない。
俺は彼女の太ももを力任せに開かせ、その間に自分の脚を絡ませた。
胸元のボタンを不器用に外して、片手をその中に潜らせる。
柔らかな素肌の感触。
胸当はつけていないようだ。(一度『ザザンみたいに大きくないから着ける必要がないんだろ?』ってからかったら、すごい力で引っ叩かれた事がある。痛かった。)
そのまま乱暴に弄ると、彼女は「んんっ…」と声を洩らした。
「小さーい。」
わずかに膨らんだ双丘をプニプニと突つく。
「ぅ…るさいよっ…ぁん。」
その反応が可愛くて可愛くて。
あぁ、俺の体が熱くなっていくのが分かる。
指先に硬い突起が触れたのを確認すると、軽くそれをつねった。
「ひゃっ!」
背中に回した腕に力が篭る。
「痛っ。おいっ、爪立てんなよ」
「む…りぃ…」
必死で俺にしがみ付いてくる。
こんなネフェルピトー様、昼は絶対お目に掛かれないだろうな。
そう思うと何だか征服感にも優越感にも似た感情が湧き出し、嬉しくなった。
木の芽を摘むように優しく。時には荒々しく。俺は一身に愛撫を続ける。
彼女が気持ち良くなる場所は、俺が一番知ってるんだ。
屈み込むように彼女の体を押さえつけると、もう片方の手でそのパンツのジッパーを下ろす。
パンツの中に手を滑らせて、奥の感触を確認すると、俺はニヤリと笑って彼女の耳元でささやいた。
「濡れてんじゃん。」
彼女は目を瞑ってフルフルと首を横に振る。
「びっちょびちょ〜。」
俺のカラカイに反撃する余裕ももうなくなったのか、彼女は脱力したようすで、小さな口を半開きにしてはぁはぁと息をしていた。
はだけた服の合間から覗く素肌が、月明かりを浴びてやんわりとひかる。
「気持ちいぃ…」
頬を赤らめたまま、力無くトロリと微笑むネフェ。
「…ねぇ。」
「!」
腕に回された彼女の手を振り解き、俺の口元に持って行く。
ぱくっと指を口に含んで、チロチロと舌で舐めまわした後。
「俺も気持ち良くしてよ。」
そう言うと、俺はベルトを外してパンツを腰まで下ろし、彼女に俺のモノを握らせた。硬く大きく膨らんでいる。
「んん〜…」
俺がそうであるように、彼女の理性も半分以上飛んでいるようだ。
絶え間無く与えられる快感に耐えながら、彼女はぎこちなく掴んだ手を動かした。
「ネフェのえっち。」
太股の間に滑り込ませた手を、クチュクチュを音を立てるようにかき鳴らし、彼女を焦らす。
「んーん…あぁん…やぁっ…ふぁぁ……ん」
はじめは堪えるように小さく洩らしていた声も、段々と大きくなってきた。
「にゃぁあっ…はぁん…やぁっ!!ん〜…」
…あぁ、可愛いなぁ。
俺の下で悶え動くネフェルピトー様の姿に、俺はゴクリと喉を鳴らした。
征服したい。服従させたい。よがらせて、悶えさせて、喘がせたい。
俺の中の野獣の血が、疼く。
…もう、我慢限界。
「きゃっ」
俺は彼女のパンツを太股の位置までガッと下げると、そのまま背中に手を回して彼女の体位を変えさせた。
よつん這いにさせると、肩を地面に押しつけて腰だけを高く上げたような格好にさせる。
きゅっとくびれた腰がたまらなくエロくて、ヤバい。
鳥肌が立ち、全身の毛がザっと逆立つのを感じた。
そして。さっきまで握らせていたモノを彼女にあてがうと、そのまま一気に突き上げた。
「にゃぁん!!」
ヌルリとした感触。
これ以上ないくらいに大きく膨張していた俺のモノは、勢い良く彼女の奥まで入っていく。
「ヂート…あんっ!!や…あんっあんっあんっ」
ネフェの肩を地面に押し付けたまま、乱暴に腰を振った。
桃色に紅潮した背中が、俺の腰に合わせて揺れる。
白銀色の尻尾は、力が入ってピンと硬直している。
小ぶりで形の良い乳房は、桃色の先端を硬くしたままでプユプユと揺れる。
「やんっ!!あんっ、あんっ!!」
動きに合わせて、掠れるように甘い声が漏れる。
俺は夢中で動いていた。
それに応えるように、彼女もまた、俺の動きにあわせて腰を振る。
「にゃぁっ、あんっ、やんっ」
彼女が気持ち良いように。彼女が昇り詰められるように。
最後に残った理性のかけらは、俺よりも彼女の快感を優先させた。
あー、好きだ。ネフェ、好き。好き、好き。
そして。
「やぁぁぁぁっ!!!」
大きく体を捩じらせた後、ぴくん、ぴくんと腿を痙攣させ、彼女は果てた。
それを確認した直後、俺の目の前も真っ白になって、一気に脱力して、彼女の上にどすっと倒れた。
「ん〜、楽しかった!」
さっきまでの悩ましい表情はどこへやら。
あっけらかんとしたカラッとした笑顔で、彼女はにゃははと笑いかけた。
「やっぱり、キミとが一番キモチイイや。」
「あー、そうッスか。」
「うん、上手。ふにゃーってしちゃうもん。」
「そりゃどうもありがとうございますねぇ。」
けろりとした顔で、すごい事を言ってのける。
―『キミ と が 一番』―
その言葉が意味する事はただ一つ。
貴方が他のヤツともヤッてるってことだ。
前から知ってたけどさ…やっぱ直接言われると凹むなぁ。
貴方が気まぐれに俺に抱かれに来て、俺がそれに快く応じるのは…
まぁ、健康なオスとして、ヤりたいって衝動にかられるってのがあるのは否めないけどさ。
やっぱり、貴方が好きだからなんだ。
そんな気持ちに気づいて欲しいなんて思わねぇし、言うつもりもないけどさ。
貴方の『一番』になれないのは、やっぱり悔しいよ。
貴方の隣には、いつもいつもアイツがいるしさ。
いったいあんな金髪の細っこいニンゲンの、どこが良いんだか。
俺の方は何倍も、何十倍も魅力的じゃん、そうだろ?ネフェルピトー様。
そんな事を考えながら。
俺はきっとこれからも、彼女を抱き続けるんだろう。