世界を股にかける盗賊集団、その名は幻影旅団。  
普段、彼らは団長クロロ・ルシルフルの命がない時は、  
各自それぞれに自分の時間を過ごしている。  
とは言え、暇を持て余した者同士は大抵アジトにいるのだが・・・。  
「そういやさ、マチってまだ処女なのかな?」  
突然、何の脈絡もなくシャルナークがカードを山に置いて、そうポツリと呟いた。  
「は?」  
共にカードゲームをしていたパクノダ、ノブナガ、フェイタン、ウボォーギンは  
シャルナークが言ったことを一瞬理解できず、思わずシャルナークの顔を見た。  
「おめぇ、今何て言った?」  
聞き間違いかと思ったウボォーギンがシャルナークに尋ねた。  
「え? マチは処女なのかな、ってさ。」  
平然と答えるシャルナークに、口元の見えぬフェイタン以外は表情を引きつらせる。  
「なに? どうしたの?」  
そこへ食事に行っていたシズクが戻ってきた。  
「お帰り、シズク。今さ、マチが処女かなって話をしてたんだけどさ。」  
「あ、それ聞きたい。」  
シャルナークが一人で言い出したことだったが、それが勝手に話題にされた挙句、  
シズクも興味津々といった感じで、ゲームの輪の中に入って座った。  
 
「それでマチは処女なの?」  
シズクがクリッとした目で全員の顔を見る。  
「・・・マチは俺たち同様、クモ創設時のメンバーの一人だ。」  
ノブナガが口を開いた。  
「奴は最年少だったわけだし、クモに入る前にヤッちまってるわけはねぇだろうからなぁ。」  
「それじゃあ、クモに入ってからエッチしたんだ?」  
過激なことをさらりと言うシズクに、シャルナーク・フェイタンを除く一同は再び顔を引きつらせた。  
「だ、誰かマチとヤッたか? 俺ぁヤッてねーぞ。」  
ウボォーギンはシズクの言い出した犯人探しから一番に抜けた。  
「俺は別に女にゃ興味ねーからよ・・・。」  
「ノブナガ、それって下手すりゃ誤解されるわよ?」  
「何言ってやがる・・・ったく。」  
パクノダのツッコミへのノブナガのリアクションは小さなものだった。  
そしてノブナガは立ち上がって。  
「この手の話は俺は苦手だ。席外すぜ。」  
と、部屋から出て行ってしまった。  
「ウボォーはマチみたいのはタイプじゃないんだ?」  
ノブナガの退室も意に介さず、シャルナークはこの話題を続けた。  
「そらオメェ、もっとボリュームのある・・・例えばパクみてぇな方がいいわな。」  
「な、変な目で見るんじゃないわよ!!」  
ウボォーギンの視線を胸の谷間に感じ、パクはそこを手で隠した。  
 
「ふーん、女好きのウボォーでもマチはタイプじゃないのか・・・。」  
シャルナークはアゴを手で擦りながら言った。  
「そういうアンタはどうなの?」  
パクノダは言い出しっぺであるシャルナークを睨んだで尋ねた。  
「え、俺? ダメダメ、俺ってインポだもん。」  
「へ?」  
「へー、そうなんだ。」  
何も反応しないフェイタン、納得するシズクを除いて、  
ウボォーギンとパクノダは三度、顔を引きつらせることとなった。  
「ところでよ、シズクは処女なのか?」  
この空気はシャルナークに悪いと思いウボォーギンは、話題を逸らした。  
「あたし? うん、処女だよ。」  
「えっ!?」  
シズクが団員になる時、シズクの記憶を見たことのあるパクノダは驚きの反応を見せる。  
(確かシズクは・・・。)  
「ムダね。シズクは一度忘れたこと思い出さないね。」  
パクノダの反応を読み取って、ようやくフェイタンが声を出した。  
「・・・そ、そうね。」  
パクノダが頷く。  
「話を戻そう。マチが処女かってことなんだけど・・・。」  
「マチは行きずりの男に股を開くタマじゃないね。」  
シャルナークが言い終える前にさっさとフェイタンが結論を言ってしまった。  
 
「まぁ、確かにそんな女じゃねーわな、マチは。」  
「そうだね・・・。」  
「そっか。」  
ウボォーギン、パクノダ、シズクはフェイタンの意見に同意または納得する。  
「じゃ、やっぱりマチは処女なんだ?」  
「でも団長やヒソカとは・・・。」  
とシャルナークがシズクに反論しようとしたところで・・・。  
「アタシがどうかしたって?」  
何時の間に現れたのか、そこにはマチの姿が。  
「うん。シャルがね、マチは処女なのかなって。」  
「げっ・・・。」  
「お、おい・・・。」  
普通に答えてしまったシズクに、シャルナークは元より  
ウボォーギンやパクノダも思わず引いてしまう。  
「あっ、そう。」  
マチは座っているシャルナークに歩みより、そしてキッと見下した。  
「・・・何なら確かめてみる?」  
「ご、ごめん・・・マチ・・・。」  
「ふんっ。」  
鼻を鳴らしてマチは再びすたすたと部屋を出て行ってしまった。  
そしてしばらくの静寂の後・・・。  
「ねぇ、結局マチは処女だったの?」  
シズクの質問に答える者は誰一人としていなかった。  

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