最近カイトが帰ってこない。  
前から仕事等で帰ってこなかった事は度々であったが、そういう時は必ずいつも彼からの連絡が入っていた。  
…でも、この頃は…  
「今日も帰ってこないのかニャ…」  
もう何度も見たであろう窓の外を見つめながら  
ネフェルピトーは呟いた。  
 
 
 
−−−・…夜もふけた頃だろうか。  
いつものようにカイトのスペアの服を抱きしめながら眠っていたネフェルは、突然ドアの開く音で目を覚ました。  
(カイトが帰ってきた!!)眠気なんて一瞬で吹き飛んでしまった。  
ネフェルはとっさにベットから飛び起きると、かすかに明かりの漏れる居間の方へ駆け出した。  
 
「カイト!!」  
暗い寝室のドアの向こうに待ちに待った彼は居た。  
「…何だ…。まだ起きてたのか。」  
久しぶりに会ったカイトの態度はなんだかそっけないものであったが  
今、ネフェルにとってそんなことはどうでも良かった。  
カイトが帰ってきてくれた!  
彼が居ない間、どんなに帰りを心待ちにしていた事か。  
彼女はそのままカイトに抱きついた。  
久々の彼の感触…久々の彼のにおい…。  
「カイトぉ…寂しかったよ…」  
まるで本物の猫のようにカイトに甘えるネフェル。  
カイトにも柔らかで温かい彼女の感触が伝わる。  
しかし、彼は強引にそれを振りほどいた。  
「疲れてるんだ…、少し休ませてくれないか?」  
「ごっ、ごめんニャ…。つい、嬉しかったから。  
あっ、ご飯なら冷蔵庫の中に入ってるニャ。それに、お風呂も…」  
「もういい、適当にシャワーを浴びて寝ることにする。」  
カイトはピシャリとそう言い放つと、一人でバスルームの方へ消えてしまった。  
ネフェルは突然の彼の冷たい態度にとまどった。  
こんな事彼の一面を見るのは初めてだった…。  
と、いうよりもそんな一面を見せるようなことはしなかった。  
(カイト、疲れてるんだよね。仕方ないニャ…)  
一人その場に取り残されたネフェルはどうすることもできず、  
大人しく寝室で彼を待つことにした。  
 
 すぐそばに人の気配を感じてネフェルはうっすらと目をあけた。  
どうやらカイトを待って少しうたた寝をしてしまったようだ。  
「ぁ、カイト……。」  
「……何だ?」  
少し大きめのダブルベッドに腰掛ける彼はやはりどこかぶっきらぼうであった。  
「ううん、何でもニャい…。」  
とっさにそう答えてしまったがなんでもないわけがない。  
ネフェルはとても不安だった。  
(カイト、またいなくなっちゃうのかニャ。もう、僕の事嫌いになったの?)  
ちくり。と胸が痛む。  
こんな痛みはネフェルにとって初めてだった。  
どうして、こんなにも彼を愛しいと思うようになったのだろう。  
最初は、キメラアントとして戦った相手に対する興味でしかなかった。  
でも、今は違う。  
あの時、キメラアントの巣で初めて味わった甘い快楽。  
そしてあの気持ち。  
彼が好き。  
彼に抱かれたい。  
ネフェルに悲しみとは別の感情が沸き上がってきた。  
 
「ねぇ、こっち向いて欲しいニャ…」  
これで何度目かの呼びかけにカイトは少しうるさそうに振り向いた。  
「なんだ、さっきか……」  
しかし、言葉の途中でネフェが彼の唇を塞ぐ。  
「ん………っ…。」  
自分からキスをするのはいつもの事だったが、  
今ほど切ない気持ちのキスは初めてだった。  
お互いの舌が絡み合い、そして離れる。  
「…っはぁっ…。お前急にどうしたんだ…。」  
カイトは少し狼狽したようだったが、  
ネフェは彼に抱きついたまま離れない。  
数週間も一人ぼっちで耐えてきたのだ。  
快楽を知ってしまった彼女の体はもうこれ以上我慢することが出来なかった。  
「カイト…お願い…」  
ネフェが熱を帯びて潤んだ瞳で懇願する。  
体があつい。なんだか息をするのが苦しい。  
自然にカイトに抱きつく腕にも力が入る。  
早く…早く楽にして欲しい…。  
 
普段は無邪気で子供っぽいところがあるネフェルも  
今はこんなにも艶めかしく、美しい「雌」に変わっていた。  
そんな彼女の姿に触発されたのか、  
あまり乗り気ではないようだったカイトが「やれやれ、」とばかりに  
体を起こし、ネフェルの上になるよう体制を変えた。  
「あっ」  
自分の上の暖かな重みが優しい安堵を感じさせてくれる。  
そのままきつく抱き合うと、どちらともなく深い接吻を交わした。  
さっきとはまた違う甘い味。ネフェルは以前カイトに誉めてもらった舌をめいっぱい絡ませ、  
その心地よい温度を味わった。  
幾度となく離れる二人の唇が糸を引く。  
しばらくの抱擁と接吻の後、カイトがゆっくりとネフェルの服に指をかけた。  
ボタンが一つ外れるごとに、彼女の白い肌やほんのりと膨らんだ乳房が露になってゆく。  
黙々と続く、じれったいような時間の中  
ネフェルは不意に少しの不安を感じた。  
彼女の上でもう服を脱がせ終えようとしているカイト。  
彼はどんな気持ちで自分を抱くのだろう。  
しかし、そんなことを思っても  
もう熱を持ってしまった疼く体や、これから起こる事に対する期待はどうしても止められそうに無い。  
ネフェルはちらりとカイトを見つめ、  
そして、静かに目を閉じた。  
 
かすかに窓から漏れる月明かりの中、二人の影が重なる。  
「あっ…にゃんっ」  
一糸纏わぬネフェルの細い体にカイトが唇を滑らせた。  
首筋から胸へ、舐めるようにゆっくりと。  
そのくすぐったいような感覚にネフェルの耳がぴくぴくと動く。  
それを見るとカイトはさらに彼女の耳にもくちづけた。  
「やんっ、くすぐったいよぉ、カイト」  
ネフェルが思わず呟くと、彼は  
「じゃあ、やめるか?」  
と少し意地悪っぽく答えた。  
「!!だめ…、やめちゃだめ…。」  
素直なネフェルはあわてて首を振る。  
この行為に対する純粋な悦びにじらされた事が上乗せされ、  
彼女の全身は淡い桜色に上気していた。  
カイトにとっては面白いほどの反応だ。  
彼はふっと笑うと、ネフェルの脚に手をかけた。  
これから起こる事を理解し、彼女は生理的に体を硬くしたが  
すぐに力を抜き次の行動を待ち構える。  
カイトもそれを確認すると  
ゆっくりと奥のほうへ指を伸ばした。  
 
これから慣らすはずだったネフェルのそこはすでに十分に濡れていて、  
カイトの指をすんなりと受け入れた。  
「あぁん・・・にゃあ・・・」  
久しぶりの侵入に彼女の口から可愛らしい嬌声が漏れる。  
奥を攻め立てられる度に甘さを増す声。  
カイトが指を増やすと  
ネフェルはうっすらと汗ばんだ体を捩じらせ、彼の指を締め付けた。  
彼女の桃色の蕾から淫らに光る滴があふれシーツを濡らす。  
小振りな乳房を震わせ喘ぐこの一匹の猫の姿は、  
とても、とても美しかった。  
「カイトぉ…僕、君のが欲しい…」  
うつろな瞳から涙を零しネフェルはさらに最後の刺激を求める。  
「ああ、ネフェルピトー。」  
カイトは優しくそれに答え、彼女のそこから指を引き抜いた。  
彼もまた。同じ事を思っていたのだろう。  
愛液で濡れた指を自らの唇で拭き取り  
「力を抜け、入れるぞ。」  
わずかに高揚を孕んだ声でそう告げると  
すでに熱を持ち立ち上がっていた彼自身をあてがい、  
ネフェルの体を貫いた。  
 
「にゃあぁぁぁっっ!!」  
今までとは比べものにならない程の衝撃がネフェルを襲う。  
ずっと、コレが欲しかった。  
「にゃあっ…にゃぁぁんっ!!!」  
夢中で指を絡め、彼からの支配を一身に受ける。  
二人の動きにあわせて、カイトの金髪がさらさらと揺れた。  
綺麗で長い彼の髪。すらりとした体。  
その全てが愛しい。  
愛を必要としない筈の彼女に初めて芽生えた感情、  
それだけが今ネフェルと動かしている全てだった。  
大好き、カイト  
どこにも行かないで――――  
しかし思わず零れそうになった言葉は声にならず、  
代わりに甲高い歓喜の悲鳴が口をついて出た。  
「あっ…あぁん!!カイトぉっ!!」  
押し寄せる快感の波に何度も意識が遠のいてゆく。  
もう、何がどうなっているのか分からない。  
唯、彼が今までにない勢いで中を突くのだけは分かった。  
 
二人の間から熱いものが溢れ、内股を伝う。  
ネフェルは飛びそうになる意識に負けないよう  
本能のまま、飢えた雌猫のように腰を振った。  
元々それに対する羞恥心等持ち合わせてはいない。  
ひたすら自分のやわらかい膣をカイトに擦り合わせ、  
二人の熱が一つに溶け合うのを感じていた。  
彼を締め付ける力も彼女が高まっていくのと同時に高まっていく。  
「あぁん…にゃぁ…にゃあぁぁぁっっ」  
真っ白なシーツの上で登りつめようと乱れるネフェル。  
いつしかピン、と張った背筋にぞくりとしたものが通り抜け  
限界が近いことを悟ってしまう。  
絡みつく彼女の中でカイトもまた限界を迎えようとしていた。  
いや、まだ離れたくないよ…  
溢れる思いは一際高い鳴き声となる。  
「ぁっ、あぁぁぁぁんっっ!!!!」  
絶頂に達する瞬間、ネフェルは自分の中に彼の熱が注ぎ込まれるのを感じた。  
だが、甘美な余韻を感じる暇もなく、  
彼女の意識は恍惚を感じたまま闇の中に深く、深く堕ちていくのだった。  
 
 
次にネフェルが目を覚ました時、すでに外では日が昇ろうとしていた。  
隣にはもう、カイトは居ない。  
あわてて家中を探してみたが、やはり彼の姿はどこにも見当たらなかった。  
「行っちゃったんだ…」  
そう知ったとき、突然言いようのない不安と寂しさに襲われ、  
ネフェルはその場に崩れ落ちた。  
なぜだか分からない。だけど彼女の大きな瞳からは次から次へと  
大粒の涙が溢れる。  
カイトと出会ってからは色々と知らなかった感情に出会うことが出来た。  
だけど、こんな思いなんて知りたくなかった。  
「カイト……。」  
一人取り残されたこの哀れな少女には  
いつ訪れるか分からない次のことなど考える余裕はなかった。  
ただ、誰も居ない部屋で途方にくれ  
彼の名前を呼び続ける他になかったのだ。  
 

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