「ネフェルピトー、早く来るんだ!!」
「カイト……」
「急げ!崩れていくぞ!!」
ネフェの腕をつかんだカイトの手を勢いよく払いのける。
「ネフェルピトー…?」
ふっと柔らかな笑みを見せ、カイトの方を見やる。
「ごめんね。やっぱりボク、女王様を裏切ることなんてできないよ」
「何を言っているんだ」
「…キミ一人で逃げて」
「ネフェ……」
カイトの言葉が途中でつまる。
ネフェの大きな瞳から、大粒の涙がこぼれ落ちていた。
「だってボクは、女王様の為に生まれてきたんだから。
女王様を守ることが、ボクの生きている意味なんだよ」
女王様はボクに命を与えてくれた。
今度は、ボクの番。
「カイト、キミと出会えてよかったよ。できればもう少しそばにいたかったけど…」
ドン、と音が響いて岩が落ちてきた。
パラパラと砂が頭上からふってくる。
もうすぐ崩れる。
「ネフェルピトー、俺とこい。一緒に逃げよう」
「……カイト……」
ありがとう
そうネフェの唇が動いた気がした。
次の瞬間、ネフェが勢いよくカイトの体を突き飛ばした。
キメラアントの巣から、落ちてゆく。
霞んでいく視界の中で、ネフェは、確かに幸せそうに笑っていた……。