抜けるような青い空に、真っ白な鳩が羽ばたいていく。  
「綺麗だっ…。なんと神々しいっ…!まさに女神だっ…!!美しいぞっ…み、美心ぉぉぉっ…!!」  
嗚咽混じりの父の言葉に、窓の外を見つめていた花嫁が振り返った。  
「やだ、パパったら…。今からそんなに泣いてたら、バージンロードを歩けないぞっ…」  
そう、いま鏡に映る自分は確かに、美しいのかもしれないと美心は思う。  
おとぎ話のプリンセスのような、きらびやかでいて清楚な純白のドレス。  
高名なデザイナーが、美心ただ一人のために作ったものだという。  
ふんだんにあしらわれている光の粒は、本物のダイヤモンド。  
式に招いた友人たちは、美心の姿を見てきっと感嘆の声を上げるだろう。  
(でも……)  
美心の表情が曇る。その時ノックの音が響いた。  
 
「おお…。さすがだな。スゲー綺麗だぜ、美心…」  
現れたのは、美心と同じ純白のタキシード姿の花婿だった。  
花婿は美心に歩み寄ると、その頬に触れた。  
「お前はオレにとって、たった一つの真実(リアル)…。戦場に咲いた一輪のバラ…。  
金に群がる人間しか知らなかったオレにリアルな愛を教えてくれた…。一生大切にするぜ、美心……!」  
「和也くん……」  
花婿からの熱い愛の言葉に、美心はそっと微笑を返す。  
(そうよ…。和也くんは美心のこと大切にしてくれるし、好きっていっぱい言ってくれる…。  
みんな言うじゃない…。女の子は求められて結ばれるのが幸せなんだって…。だから美心、きっと幸せになれる…)  
「和也様、美心様、そろそろお時間です」  
 
本来は父親にエスコートされて歩くバージンロードだが、美心は泣きながら崩れ落ちそうになる父を支えながら歩いていった。  
そして祭壇の前に立ち、宣誓の儀式が始まる。  
「誓います☆」  
和也の誓いが終わり、長くうねった髪の牧師が次に美心の方を向く。  
「新婦美心、あなたはここにいる兵藤和也を、病める時も健やかなる時も、富める時も貧しき時も、  
夫として愛し、敬い、慈しむことを……誓うざんすか?」  
「……」  
「誓うざんすか?」  
「……」  
美心の瞳からいつの間にかボロボロと大粒の涙が流れ落ちていた。  
(お金がある時も……貧乏な時も……)  
思い出すまいと封じ込めてきた面影が、美心の胸の中のスクリーンにあふれ出す。  
鋭いまなざし。長い髪。傷のある頬。優しい声。尖った横顔。  
(愛して、敬って、慈しんで、ずっとずっと一緒にいたいのは……)  
ただならぬ様子で涙を流す花嫁に、その場にいる者たちがざわめき始めたその時  
 
バーーーーーーーーーーーーニ!!!  
 
荘厳な教会に似つかわしくない、荒々しく蹴破られる音を響かせて扉が開いた。  
 
逆光の中たたずむ、背の高い影。  
 
「美心っ……!」  
鋭いまなざし。長い髪。傷のある頬。優しい声。尖った横顔。  
 
「カイジ…くん……」  
 
美心をまっすぐに見つめる眼。夜も眠れぬほど恋焦がれた、まっすぐに見つめて欲しいと願ったその眼。  
 
「カイジくんっ……!!」  
もう何も考えられない。ドレスの裾を掴んで、美心はバージンロードを走り抜けた。  
愛しい胸に飛び込むと、そのままギュッと強く強く抱き締められる。  
(ウソみたい……夢みたい……こんなのありえないよぉ……)  
美心の瞳から涙が次から次へとあふれ出して、カイジの胸を濡らす。  
 
「お、おい…、ふざけんなよ…!何やってんだお前らっ!とっ捕まえろ、野良犬をっ……!」  
和也の怒声で、静まり返っていた空気が動き出した。  
カイジと美心は手を取り合って教会の外へと走り出た。すぐ後を数人の黒服が追いかける。  
「カイジくんっ!捕まっちゃうよっ!」  
「あと少しだっ……とにかく走るぞっ……!」  
教会の敷地のすぐ外に、黒塗りのベンツが停まっている。その後部座席が開いた。  
「カイジっ……!早く乗れっ……!」  
車の中でサングラスをかけた男性が叫んでいる。  
美心を先に、押し込むように車に乗せてからカイジが乗り込む。  
追いついてドアにしがみついた黒服二人に無茶苦茶な蹴りを入れて、強引にドアを閉めた。  
「出してくれ!遠藤!」  
 
あとに残された者たちの混乱ぶりは、とくに詳しく語るほどの事柄でもない。  
飛び交う怒号、取り乱し怒鳴り散らす花婿、招待客の間で絶えず交わされる囁き、花嫁の父の号泣、そして牧師の哄笑。  
「いやぁ〜〜〜、いいですいいですこのドタバタした感じ……!  
本来……結婚式というものはすべからく……こうでなくては……ダメざんす……!」  
 
追っ手を振り切ってたどり着いたのは、森の奥深く雪に閉ざされた山荘。  
パチパチと爆ぜる暖炉の炎。そのオレンジ色に肌を染められながら唇を重ねる二人。  
おそるおそる、確かめるように。そして徐々に激しくなる。  
「美心……美心っ……」  
美心のぽってりとした唇を貪れば貪るほど、カイジの息が荒くなっていく。  
美心の腰を抱いていた手が徐々に這い上がる。  
とりあえずの着替えとしてカイジに借りたTシャツ。その白い布地を突き上げる二つのふくらみ。  
その柔らかなふくらみを長い指が包み込む。  
「あん……カイジくんのエッチっ……」  
揉みしだかれ、布越しに撫で回されると、ブラを着けていない先端部がムズムズと疼き始める。  
むず痒いような、もどかしい感覚。  
「んっ……んん……」  
「気持ちいい?ここ……」  
そう尋ねられた次の瞬間、美心の身体が跳ね上がった。  
「あぁんっ……!」  
カイジの爪が、美心の疼く先端部を布越しにカリカリと引っ掻いたのだ。  
電流のように鋭く、蜜のように甘い快感が美心の中を駆け抜ける。  
かすかに浮き出て見える程度だった胸の突起が、みるみるうちにくっきりと浮かび上がる。  
それをTシャツの上からくすぐられ、つままれ、転がされる。  
「あ、はぁんっ……だめ……、そこ、だめぇ……」  
美心の身体がさらに跳ねる。  
(カイジくんが……こんなにエッチだったなんて……)  
胸を弄ばれるたびに、Tシャツの裾からあらわになった太ももをモジモジと擦り合わせてしまう。  
その白く滑らかな肌に、カイジの手が降りてくる。  
「ダメっ……!ダメだよぉっ……!」  
「なんでだ……?」  
「だって……だって……」  
美心はカイジの腕を掴んで必死にかぶりを振る。  
(だって……美心の…おまた……すごくエッチになってるもん……自分でもわかるくらい……)  
「見せてくれ……美心のおまたを……!」  
 
「あはぁぁんっ……やだっ、や、カ、カイジくんっ……」  
美心のあられもない嬌声と、同時に聞こえるピチャ…ピチャ…という湿り気を帯びた音。  
先ほどからの愛撫で充血し濡れそぼった粘膜にカイジの舌が這い回る。  
飢えた野良犬のように熱い息を吐きながら、あふれて流れ出す愛液を一滴も逃すまいとするかのように  
舌をねじ込んで美心の内部を舌先でえぐる。  
(カイジくんの舌……すっごく熱くて……ザラザラしてるよぉっ……!それになんだか……違うトコも……)  
カイジが唇や舌を蠢かせるたびに、長く鋭い鼻が美心の鋭敏な突起を弾く。  
思いがけない刺激に、たまらずクリトリスが充血してぷっくりと膨らみ、さらに鼻先と擦れ合う。  
「美心のここ、やらしいな……」  
肉厚の花びらを持った食虫植物のように、ヒクヒク震えながらよだれを垂らす秘所をじっくりと眺めてカイジが囁く。  
「だってぇ……カイジくんが……ヘンなことするんだもんっ……」  
「ヘンなことって……?」  
「し、舌とか……鼻とかで……」  
「鼻?」  
一瞬キョトンとするが、すぐにその意味を理解しニヤリと笑みを浮かべる。  
美心の太ももを両腕で担ぐように抱えると、濡れそぼった秘所に顔を近づける。  
美心の大好きな、尖った横顔。その特徴的な高い鼻。  
その鼻先が、硬く充血したクリトリスをとらえ、擦り上げた。  
そして、その下でヒクつくピンク色の濡れた粘膜に舌がチロチロと這わされる。  
「あっ……」  
さっきの刺激は偶然だが、今度は違う。  
美心のクリトリスが蹂躙される。鼻先が包皮を剥き上げる。あらわにされたサーモンピンクの真珠が転がされる。  
同時に、柔らかな内部に侵入した舌が、その表面のザラザラを女の敏感な襞に擦り付ける。  
「あっ、ひいっ……!ダメっ、ダメだよぉ……!」  
押し寄せてくる強烈な快感から、たまらず逃れようと身をよじるが、下半身をカイジにがっちりと固定されて動けない。  
逃れることもままならず、押し寄せる快感の津波にさらされる。  
「これ、好きなんだろ……?」  
「だ、ダメぇ……っ!ホントに、お、おまたが……ヘンなのっっ……」  
美心の切羽詰った反応を見て、カイジが舌の動きを早めた。そして充血しきった肉の真珠を鼻先でこねくり回す。  
(イッちゃう……イッちゃう……イッちゃう……)  
頭の中がスパークし、カイジを跳ねのける程の勢いで腰が大きく跳ね上がった。  
「んああぁぁぁぁっ……!!」  
 
蕩けきった表情で絶頂の余韻に全身をわななかせる美心に、カイジの声が途切れ途切れに届く。  
「もう……我慢の限界だ……!ねじ込むぜ、美心っ……」  
達したばかりで湯気が出そうなほど火照った部分に、何かが押し当てられた。  
(キャッ……!カイジくんの……おチン……ポっ……!)  
美心は思わず両手で顔を覆う。その指の隙間からそっと窺うと、カイジのモノがはっきりと見えた。  
(やだ……すごく、おっきい……)  
屹立したそれが、美心の敏感な果肉の中にズブズブと沈んでいく。  
「はぁぁぁんっ……」  
硬直した男の感触が果肉の中に染み渡ってくる。  
(美心とカイジくんが……ひとつになってる……)  
いったん全てを美心の中に収めてから、おもむろに抜き差しが始まる。  
一度絶頂に達したせいか、美心のそこは感度が高まっている。  
そのような状況で、Gスポットをカリで何度も擦りたてられて、堪え切れずにはしたない声を上げてしまう。  
「いいっ、いいっ、ソコっ……、すごいよぉ……」  
「オレも……たまんねえっ……」  
眉間にシワを寄せ、ギュッと目をつぶって快感に耐えるカイジがいとおしくて、美心は震える声で呼ぶ。  
「カイジくんっ……もっと……奥まで……」  
その言葉を待っていたかのように、剛直が美心の奥深いところをズニッと貫いた。  
浅瀬から奥の院、奥の院から浅瀬へと、長いストロークで粘膜同士が擦れ合う。  
カイジのカリが美心の媚肉をえぐる。美心の襞がカイジの剛直に絡み、吸い付く。  
(すごい……つながってるトコから……全部溶けちゃいそう……)  
クンニで達した時とはあきらかに違う、身体の一番奥からマグマがあふれ出しそうな感覚。  
「き、きもちいっ……こんなの、はじめて……」  
「美心、オレもう……ダメだっ……!」  
カイジのピストンが激しさを増す。火花が出そうな摩擦に、美心のマグマがついに噴き出した。  
(イクっ……!おまたの中が、こすれて、イクぅ……っ!)  
もはや声にならない。限界まで熱くなってとろけた粘膜が、同じく限界を迎えつつあるカイジのモノをギュッギュッと締め上げる。  
絶頂に達した美心の強烈な締めつけに合わせて、カイジの身体が痙攣する。  
何か熱いものが注ぎ込まれる初めての感覚を、美心は遠のく意識の中で感じていた。  
 
水の中から浮かび上がるような、先程までとは打って変わって静かな覚醒。  
そっと目を開けると、すぐそばにカイジがいる。  
(なんか……ちょっと照れくさいんだ…ぞっ……)  
暖炉の炎に照らされる横顔、ぼんやりと煙草を吹かすその姿に美心は見惚れる。  
「あ、美心、起きたのか……。コーヒー飲むか?」  
そう言って缶コーヒーを手渡すカイジの顔が、心なしか浮かない表情に見えた。  
(どうしたの?カイジくん……)  
美心の方を見もせずに、煙草をくゆらせながら暖炉の火を見つめている。  
沈黙の中で、パチパチと炎の爆ぜる音だけがやけに大きく聞こえる。  
(カイジくん……美心がすごくエッチだったから……幻滅したのかな……)  
泣きそうになりながらカイジの横顔を見上げていると、不意にその顔が美心の方に向き直った。  
吸いかけの煙草を揉み消し、強い瞳で美心を見つめる。  
「あのさ、美心、呆れないで聞いてほしいんだけど……」  
言いかけて躊躇うカイジを、美心は促した。  
「呆れたりなんかしないよっ……言って、カイジくん」  
「……オレさ、知っての通り素寒貧の無職だし……とてもこんな事を言える立場じゃないのは解ってる……だけど」  
「だけど……?」  
「他の男と結婚なんかするな……」  
美心の手からコーヒーの缶がすべり落ちる。  
「まだ指輪も買えないけど……」  
美心の見開いた瞳から、一筋の涙がこぼれ落ちる。  
鋭いまなざし。長い髪。傷のある頬。優しい声。尖った横顔。  
一目見たときから恋焦がれて、ずっとずっと一緒にいたいと願った人。  
素寒貧の王子様は美心はそっと抱き寄せ、誓いの口づけをした。  
 
 

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