ここは帝愛グループの地下強制労働収容施設。  
何百人かあるいはもっとか、債務返済能力のない人間達が借金のかたに集められている。刑務所などここに比べればはるかに天国なのだろう。伊藤カイジは煙草に火をつけて、明日も来るであろう機械的な絶望に辟易としていた。  
 
『ちくしょう...こんなの人間の生活じゃねぇ...家畜、いやもっとそれ以下。時間に殺される為だけの...処刑場!!』  
 
もう一週間か、時間の感覚は愚か昼夜もあやふやだ。起きていても寝ていても、常にがんじがらめにされた精神は既に限界が近い。  
時折、じわり...と耳と指の傷が疼くのを感じる。あの忌まわしい記憶を留めさせるにはここは十分すぎる所だ。  
 
『E班整ー列!!』  
看守の掛け声が響き、また一層カイジの気鬱に拍車がかかる。煙草の火を消してのそのそと歩く。  
いつも通りシャワー(と呼べる程のものでもない)を浴び着替えを済ますと食堂に向かう...が、今日は一同ホールに集合がかかった。  
 
内心毒づき、そのまま整列してると黒服に囲まれた幹部とおぼしき男が中央に出てきた。  
 
『な...!』  
 
ざわ...ざわ...  
ざわ...  
幹部らしき男が中央に....が、その後ろだ。その後ろには  
 
『お、女ぁ...??』  
 
黒服に囲われた内側には何十人もの女達がいた。カイジ達と似たような服を着て、どれもひどく痩せていてとても健康的とは呼べない風貌。目をギラギラさせているが覇気がない。『静かにしろ!静かに!!』  
 
ざわざわざわ...  
 
『(この地下収容場には女もいるのか!!)』  
 
『これより、女労働者の時間外勤務時間とする!各自交渉の後に時間内に行う事!!また交渉額は必ず報告をする事!!怠った者は厳罰の対象となるので注意する事!!』  
 
ざわ...ざわざわ  
 
『おっしゃ〜!!』  
『久しぶりだぜ!!』『ひぃ〜!ひぃ〜!』  
男達の下世話な矯声が一斉にホールに響いた。  
『(なっ...!!交渉?!時間外勤務って...つまり...)』  
 
 
売..春...?  
 
カイジが唖然とする中、尚も一層ホールは男達の異様な熱気に包まれていた。  
『(まさか..まさかこの禁欲の監獄にそんな事が...だが..しかし!!)』  
カイジの困惑をよそに、他の労働者達は色めきどよめき歓喜している。  
そう、これは女収容者達が『時間外勤務労働』とする男収容者達に向けての売春なのだ。  
売春ルートに流されるのは二十歳未満まで。しかしそれ以上の女は、本人の希望制でこの収容場に限り男性労働者にむけてのみ金を稼ぐ事がゆるされているのだ  
 
支払いはもちろん円の1/10であるペリカで行われる為、破格な値段ではあるが、当人らによって効率よく手取金を稼ぐ事は可能。  
基より、この様な禁欲生活で発散出来ない男達にしてみれば頭を地についてでも得たい数少ないチャンスなのだった。  
 
 
『(兵藤...!どこまで腐ってやがる..!!)』  
利害の一致により、定期的に行われるこの闇売春はここの数少ない最大娯楽だった。誰も異論など唱えない。  
 
 
『おい、姉ちゃん1000ペリカだ!!1000ペリカで触らせてくれるだけでいい!!』  
 
『こっちは20000ペリカで本番までだ!!!』  
男達の下卑た怒号が飛び交い、カイジはいたたまれなくなってその場を離れた  
 
 
『(バカ野郎..!!こんなのあいつらの思うツボじゃねえか!!くそ!!)』  
 
(くそっ!!くそっ!!  
これじゃ本当の家畜だぜ!!!なってたまるか...あいつらの家畜に...!!!)  
 
 
ホールを出て共同部屋に帰る廊下で、煙草に火をつけた...これが最後の一本..!!(くそっ!!)  
隠し持っていた煙草も底をついた...ますます面白くない。  
利根川と兵藤との一線を期して、カイジは転落の一途を辿るばかりだった。  
 
ボロ...ボロ...悔し涙が湧く。  
『あのぅ...』  
 
びくっ  
 
不意に背後から声がしてカイジが振り向いた後ろには女が一人立っていた。  
 
『あ..あの』  
 
カイジは無視を決め込み足を早めた。  
女は身じろぎしているが追いかけるようについてくる。  
ふぅ、と煙を吐きだしてカイジは振り向きもせずにピシャリと言った。  
 
『生憎、俺は入ったばっかでペリカとか言うふざけた金も無い。それに女を買うつもりも無ぇ。』  
 
再び小走りで歩き始めると、女は焦って追いかけてくる  
 
『あの...違う..』  
『んだよ!!』  
鋭くどなりつけて、振り向いた。  
 
『あの...あなた...カイジさんですよね』  
 
!!?  
不意に名前を呼ばれたのに驚いて立ち止まってしまった。  
女はもじもじしながら俯き目に涙を浮かべていた。  
 
(勘弁してくれ...)  
 
カイジはそのままうごけなくなってしまった  
 
『.....』  
『やっぱり...あなた...カイジさんでしょう?あの...スターサイドホテルの唯一の成功者、利根....きゃっ』  
カイジはおもむろに女の腕を掴んで全速力で走り出した。  
『ちょ...まって速っ』  
『黙ってろ!!』  
 
廊下を走り抜けて、部屋を横切り掃除用具のボックスに女を押し込み自分も体をねじ込んだ。  
バタンっ...はぁ、はぁ、  
ざわ....  
体から冷や汗が吹き出している。口を手で塞ぎながらカイジはゆっくりと女を見た。女は息を切らして恐怖に目を見開いている。薄暗くてよく見えないが、わずかな光から見える限り知った顔ではない。  
 
『あんた...何者だ?なぜ俺を知っている』  
 
『あ....』  
『帝愛の人間か?』  
胸ぐらを掴み鋭い剣幕で睨み付ける。  
 
『ち...ちが...違う。あたし....』  
女は怯えて声がかすれている。  
『あ、あたし...あ...恋人。』  
『あん?』  
『恋人が...いたの...ホテルに...参加してたの...い、痛』  
!!!  
カイジはさっと腕を離し波打つ心臓を落ちさせる為、深呼吸をした。  
『....聞いたのか?あの夜のこと。て事は生き残りだな、見てたのかあの勝負』  
 
こくこくと必死に首を振り、女はまたボロボロと涙を流した。  
カイジはハァ、と溜め息をついて俯いた。  
 
『あ...すまねぇ。勘違いだった。俺の...悪い。』『いえ...まさか此処にいるなんて...黒の長髪に、その手袋....指、でしょう?』  
 
『あぁ...』  
 
カイジの中に少し、僅かな安堵感が広がった。ここに来てから自分の身の内を知る者などおらず、ずっと気を張っていたのだった。  
『あたし...彼が帰って来てすぐに連れて来られたの。』  
『肩代わりか?』  
『.....』  
『男はなにしてやがる』『...仕方なかったの』  
 
カイジの中にざわっと怒りが込み上げてきた。  
『テメェがパクられんのが筋だろうが...女にこんな地獄を味あわせて。狂ってる』  
 
『違うの』  
『違わねぇよ』  
 
裏切り、カイジは人間の瀬戸際の醜さを散々見てきた。どいつもこいつも身の保身。大金を前にしてしまえばそれが性なのかもしれない。  
 
『彼の借金は、150万。女は男より返済能力が高いって...早く返せるって。彼は怪我で足が動かなくなったから、だから...カイジさん?』  
ぼろ...ぼろ...  
『(ちくしょうめ!!)』  
 
女は男より返済能力が高い...これを意味するのは体を売る事より他に無い。  
『歩合制なのよ。帝愛グループが主催するイベントとか接待で、上手くやればそんなに長くはかからないわ。あたしももう半分ほど...さすがにペリカって単位には騙された気分だったけど、それでも頑張ったの...ペリカだって(笑)ふふ...』  
『笑い事じゃあねえだろ』カイジは落ち込んだ。この女、明るくほがらかだが前向きなのか馬鹿なのか...  
『年は?』  
『二十歳。ギリギリセーフ』  
セーフと両手で交差させてクスクス笑う。  
『馬鹿かお前』  
『そうね、でも仕方ないの。それにあたしが馬鹿ならカイジさんもでしょ』  
『ったく...』  
カイジは呆れて扉を開けようとした。  
『あ、待って。』  
女はカイジの腕を掴み出ようとするのを阻止した。『カイジさん、あたしを買ってくれませんか。』  
『はぁ???』  
 
全く何を言い出すのか。『言ったろ?金が無いって。早くホールに戻って少しでも金回りの良い奴を探せ』  
(抱けるかよ...身の上を知ってしまった女を)  
『...こんな娼婦でも誰でもいいって訳じゃないのよ...彼、言ってたわ。カイジさんはデカイ男だって。勇気をもらえたって。これからは真面目に生きていくって...』  
 
『駄目人間だぜ俺は。そのあんたの男もな』  
『違う...と思う。』  
 
真面目に生きる...多分嘘だ。同類だから解るのだ。駄目な人間はやはり駄目。ギャンブル、酒。繰り返す。実際、カイジも半年ほどの逃走中ギャンブル中毒となり常にアドレナリンを求め続けた。金を得ると言うより、再び至悦の渦中にいたくて仕方がなかった。  
だから駄目。もう治らない。  
 
 
『お金はいらないわ...と言うより貰って欲しいの。彼からのお礼よ。お金はあたしが出すから抱いて欲しい』  
『何言ってんだ。出来る訳ねえだろ』  
 
 
『駄目よ。お願い』  
 
 
はぁー...頭が痛い。  
(男も馬鹿だが女も馬鹿だ。馬鹿ばっかりだ!!!)  
女はすっと後ろにもたれてカイジの腕を引き寄せた。狭いボックスの中でカイジが前のめりになる。  
 
『....煙草』  
『え?』  
『持ってるか?』  
『あ...うん...持ってる』『くれ。それでいい』『え....?』  
『金はいらない。煙草をくれ。それでいい』  
女はニコッと微笑んでカイジの顔を手で包み口付けをした  
 
 
地下施設はねっとりとした淫靡な空気に狂気じみていた。  
比較的若くて容姿が良いものは高額でせり落とされる。隔離される場所などあるはずもなく、トイレの個室はあっと言う間に埋まり、みな部屋で雑魚寝状態で興じている。羞恥心など、この空気である訳もない。  
金のない者はそれらを見てはしっこで自慰にふけったりする。  
 
 
狂気だった。普段禁欲を強いられている男達の欲望の濁流が渦巻いている。  
『ハァ...ハァ...うっ』『うっうっうっ...あっ』  
 
 
『...始まったみたいね』十秒ほどの軽い口付けを交わし、女はカイジに首を回しながら言った。  
 
『馬鹿か...あいつら。監視カメラが常に作動してるんだぞ』  
カイジは女の腕を軽く外して逃げる様な体制を維持している。  
『丸見えじゃねえか...』『それがいいんですよ』『言わばこれはショーみたいなものなんです。監視カメラで筒流れ。暇な幹部の良い暇潰し...あたしは何度か来てるから..解る』  
 
 
だから嫌...と言うそぶりも見せず女は淡々としていた。  
『慣れるわ...すぐに』  
そう言うともう一度カイジの腕を取った。  
『ここは見えないから』  
『あ...あのさ』  
カイジがもじもじしながら顔を背ける。既に顔が真っ赤。  
『俺...やっぱり』  
『やめちゃうんですか...?』  
 
『今...出てったら...あたし違う男に買われちゃう。しかもロクにお金もないような人。みんなの目の前で...抱かれるんだわ』涙声で訴えられた  
 
...カイジは詰まった。結局今から外に出ようとも、どこへ行っても男女があちこちで絡まってるのだから居る場所がない。このまま時間が来るまでこの女とボックスにいるしかないのだった。  
カイジは改めて女の顔を見てみた。薄暗いのにも目がなれて顔も解るぐらいになっていた。いたって普通の少女だと思う...少し幼い感じがのこる痩せた少女。髪は短かった。  
また途端に恥ずかしくなってカイジは俯いた。  
『カイジさん...』  
『ご...ごめん!俺...どうしていいか解んねぇ、こんな体制だし、場所だし...おっ..』  
 
唇で言葉を塞がれてしまった。甘く、柔らかな舌が添えられた。とろけるような感覚にカイジは脱力し...そのまま自分の舌もからませた。気の遠くなるようなしかしはっきりとした覚醒があった  
 
短い吐息とも声ともとれる甘い音がする...何度も何度も貪っては快楽を得る。離してはまたくっつき、舌の滑らかさを楽しんだ。  
 
『はぁ...ん..ぁ..』  
女の手がカイジのシャツの下を昇ってくる。  
ざわっとしたくすぐったさに思わず身をよじる。肌と肌が順番に触れ合うもどかしさ、切なさが込み上げる。  
 
(久しぶりなんだよ...)  
内心少し焦りながらもカイジは女の体を抱き締めていた。細い首。折れてしまいそうな肩。浮き出た鎖骨にも舌を這わせる  
 
『ひぁ...!!』女は応えるように身をよじった。  
カイジの手が女の腰にまわり、そのままゆっくりと服をたくしあげる。  
細い身体...すべすべした感触を楽しんだ後、柔らかな二つの膨らみにそっと触れる。  
 
『ぁ.....』  
そのままゆっくりと円を書くように手のひらで挟み込む。小さいが、触り心地は最高だった。  
頂上にある突起にも優しく触れると、女は切ない声で求めた。  
『カイジさん...良い。優しい...』どんどん込み上げる焦りの衝動が走らないように、カイジはゆっくりと肌の触れ合いを慎重にした。  
経験が豊富な訳がない。触り方ひとつ、どこかで覚えたわずかな記憶。  
 
『カイジ...さん』  
『カイジでいい』  
女の手首を掴み、万歳させるように持ち上げて突起を吸った。  
ひっという短い悲鳴と共に、びくりと震える。  
薄紫色の跡が残った。  
 
(女って...どこもかしこも柔らかい)  
女の背中に腕を回して服を全て抜き取った。  
 
 
カイジに抱かれながら、女はとても切なかった。売春婦の抱き方じゃない。不器用に丁寧に確かめるように...ふと恋人の事が頭によぎった。  
この半年、恋人以外何人の男に抱かれたのだろう。申し訳ないとは不思議と思わなかった。必死だったから。殴られても乱暴にされても相手の言うままに残った恋人の為にただ我慢した。  
 
気がつけば涙が流れていた。カイジの優しさが切なかった。  
背中にギュッとつかまりながら声を出さずに泣いた。  
すっと手をからませ、カイジの手袋を取った  
 
『あ...おい』  
『....これ...あの時の傷?』  
 
指四本。縫合の跡が痛々しいぐらいにはっきり解る。  
『これも?』  
髪を耳にかけて、傷を見る。  
『ああ...』とカイジは短く唸った  
 
『痛い...?』  
『いや....でもたまにじわっと疼く。悔しくて』  
ボロ...ボロ...  
『お、おい..泣くなよ』『カイジ、カイジは...沢山人が死ぬの見たんでしょう?』  
『...ああ』  
『怖かった?』  
『ああ...でも』  
 
『一番怖かったのは...人間が人間を裏切る瞬間を沢山見た事だ。』  
『カイジは良い人だから裏切らなかったでしょ?』  
『俺だって...揺らいだ。自分が生き残る為には誰かを蹴落とさないといけないって事を正当化しようとした。』  
 
『カイジ...可哀想』  
女は尚も苦しそうに顔を閉じた。  
『あたしも同じ境遇の子達が死んだの見たわ。あたしよりずっと若い子。まだ子供。』  
 
 
カイジは困惑した。女に泣かれるとどうしたら良いのか解らない。  
多分、この女は情に厚い女。男の為に身をなげうって必死に明るく努めて...  
 
(抱けるかよ...傷付け...られるかよ...!!!)  
ボロ....ボロ...  
 
『カイジ、抱いて』  
『へ...?』  
『何だかカイジに抱かれてたら、あたし強くなれる気がするわ』  
ぎゅっと抱き付いて、カイジのズボンをするりと下ろした。  
『ちょ...待って...もう俺』  
『大丈夫...』  
 
そのままカイジの内腿を撫でて、半起ちになったものをゆっくり手で包んだ。  
『うっ...』  
ビリっとした刺激が体に走り、つい反応してしまう。言葉に反してだんだん熱く、血液が集中する『ぅあ...あ..待って』  
女の手は速さを増して、先端を撫で付ける。  
先から出たぬめっとした液体がさらに潤滑を促す。  
『うぅ...あっ...ヤバ....』  
『気持ちいい?』  
『ぁ...』  
言葉が声に出ない。  
限界だ。  
そっと女の秘所に指を添えた。ぬにっという柔らかく熱い入り口は熟れ溶けていた。  
ボックス内は二人の熱いこもれ息だけが響く。  
 
『カイジ...入れて』  
女の片足を持ち上げ、腰を掴んで自分の剛直したものをあてがった。  
あっけなく挿入っ...!!  
頭から突き抜ける快楽がカイジを襲う。気を抜けば一瞬っ!!ギリギリで求め続けた。  
ぬちゃっぬちゃっくちゃ  
微振動で少しずつ高まる焦燥感!!!  
女は両足をカイジの腰に回して応える。女の体は驚くほど軽かった。  
『カイジ...カイジ!!カイジ!!!あっ...あっ..』  
『うあっ...!!!』  
腰を引き抜き、カイジは果てた  
 
ボックスを出ると、そこらじゅうに甘ったるいむせかえる匂いがした。  
汗と女の匂い。  
みなそれぞれ煙草をふかしたり、今日はどうだった良かったなどと下世話な話をして盛り上がっている。  
 
 
『カイジ』  
向こうから女が帰ってきた。  
『これ、飲んで。あと約束の煙草は赤マルよね?』  
手渡されたのは缶コーヒーとマルボロ二箱。  
『これ3つで10000ペリカとか相変わらずぼったくりよね』  
『こんなに?』  
『いいの!お礼だって言ったでしょ』  
『あぁ...そうだったか悪りぃ。ありがとう』  
明るいところで見ると、女は一層可愛らしかった。笑顔がよく似合う...ボーイッシュ的な。  
『あたしも吸っていい?』  
そういって自分のポケットから煙草を取り出し火をつけた。カイジにくれたものとは別の銘柄だ。『吸うのか...?』  
『まあね。』  
恋人と同じ銘柄だろう....とは言わなかった。  
 
 
『コーヒーも飲みなよ』『あぁ...』  
二人して飲んだ。  
少し甘い感覚がゆっくりと気持ちを落ち着かせてくれた。  
『また、来るのか?』  
『う〜ん...どうかな。一応希望者って事だけど、私は正規で売春してるから...あまりここには回されない』  
『そうか...』  
 
 
二人は黙ったまま煙草をゆっくりと味わった。  
 
 
『集合ー!!!』  
幹部の役人が号令をかけた。どうやら時間が来たらしい。  
ざわ..ざわ...と労働者達がまた騒ぎ出す。  
 
『じゃあ...行くね』  
女が腰を上げる。  
『あ...ちょっと待って』カイジは焦って、咄嗟に缶コーヒーのプルトップを引きちぎった。  
『これ...』  
『?』  
『持っとけ』  
女の手のひらにそれを渡す。  
『あと少しで帰れるんだろ?それで...上に出たら男に見せろ。二度と女を泣かすんじゃねぇって...自分の女が男に無下にされた戒めだ。俺が渡したって言って良い。』  
女はキョトンとしたが、喉でくっくっくっと笑った。  
『あたしの指にはめてよカイジ』  
 
『その方が焼きもち焼かせられそう』  
カイジは違いねぇと、言われた通り女の小指にプルトップをはめた。また二人でクックックと笑った  
 
 
 
帝愛グループ総本部。  
 
 
大規模だがごく密に様々な施設が存在する。  
その中の最奥、最も企密な場所があった。  
 
 
ゴゥンゴゥン...シュー  
ゴゴゴ..ゴゴゴ..プシュー  
 
『たく、やってらんねぇな毎日毎日よくここまで運んでくるもんだ』  
袋麻に包まれた荷物を機械的に焼却炉に投げ出す。  
 
『まぁ...抱えてるもんの数が半端ねえからな。ここもほぼ24時間体制で、俺達の給料もはずむぜ』  
 
 
ゴゥンゴゥンゴゥン....  
 
『こうなっちゃな、これだけ動かすのも無理ねえか』  
 
 
ぼすっぼすっぼすっ  
 
『次ぃ〜...お〜っとやべえ』  
 
麻袋からボトリ...  
 
『またバラかよ。きちっとまとめてくれないとなぁ』  
 
『なんだぁ?』  
『いや、バラだよバラ』『ありゃホントだ』  
『見た感じ女っぽいな』『腕だけで解るもんだな』  
 
『まぁ〜大体売春組だろ。お客の嗜好でよ、よくあるんだよバラバラ』  
『うへぇっ犯された上にバラバラかよ』  
『まぁな。一本ずつ...とか』  
『ゲロ〜血みどろでセックスとは上のお方の趣味は解らんなぁ』  
『ほれ、さっさと拾え』『ん?なんだこりゃ。指に何か挟まってるぜ。これも上のお方のお嗜好か?』  
 
『知らねーよ(笑)さっさと放り込め。どうせ売春組なんて大抵頭イカれちまって廃人になるんだよ。』  
 
 
『へいへ〜い♪』  
 
ジュジュシュッ...ジジジ...ボボボっ...ボッ....  
 
 
ねぇカイジ  
あたし、絶対上に帰るんだ。  
 
 
帰ったら真っ先にカイジの事を自慢するから。  
 
言い忘れてたけどね  
 
 
あんたって  
 
最高だね  
 

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