とある昼すぎ。
春をひさぐ女達が共同で寝泊まりするちいさな家屋の一間に
場違いな学生服姿の少年が上がり込んで来た。
少年の髪は白く、彼の年齢をどこか曖昧に見せていた。
少年の毋親はかつてここの住人であったが、とうに亡くなっている。
父親はわからない。かわるがわる住人達に面倒を見られて少年は育った。
年代のばらけた数人の女達がまだ化粧気もなく部屋でくつろいでいた。
下は18、9ぐらいから
上は少年の毋親の仕事仲間だったらしいので
おしてしかるべし。
「おや、しばらく見ないと思ったらどこいってたの…」
「学校はちゃんといきなよ?」「ごはん食べたのかい?」
口々に話しかける彼女達の目の前に少年は黙って札束を積んだ。
「ちょっと…!いったいどうしたのさこれ!」
「あんた…何をやらかしたの!?」
「ヤバいことしたんじゃないだろうね!」
少年はぽつりと言った。
「…麻雀で勝ったんだ」
皆目を丸くする。こんな大金はいままで誰も見たことがない。
「今まで世話になったから…姐さん達で分けてよ」
その日の仕事は休みとなって、ちょっとした宴会が始まった。
金は山分けしてもひとりひとりの取り分は十分にある。
「これだけあれば当分働かなくていいや」
「何言ってるんだい、あたしはこれを元手に商売をしたいよ」
「嬉しいねえ、これで借金が返せる…」
酒がどんどん茶碗につがれ廻され、笑い声が響く。
しかし金の山はあきらかに女達を高揚させ、どこかおかしな空気が漂ってきた。
そのうち酔った一人が少年にしなだれかかってきた。
それが、かわぎり。
「あんた、大人相手に勝ったんだろ?じゃあもう一人前だ…」
「こっちも一人前にしてあげるよ…」
一人は少年の下半身を舌で慰め、また別の一人は胸をはだけて押し付ける。
少年は黙ってされるがままになっていた。無関心なようにも、
女達の反応をおもしろがるようにも見える様子だった。
いくつもの指が、唇が、乳房が少年を愛撫する。
「もう仕事で男と寝るのはさあ…これで最後にするからいっぱいサービスしてあげるよぉ…」
女の裸も男女の営みも少年はさんざん目にしてきたが、実体験はまだだった。
戸惑いつつも体は熱を帯び反応する。
いざなわれるままに女の体に分け入ると肉が絡み付き
はじめての感覚に少年は小さく声を漏らす。
その間にも他の女の少年への愛撫は途切れない。
しかし門前の小僧なんとやらでコツはすぐに掴み
やがて大きく腰を突き立てる。卑猥な音が繰り返される。
「…ん…そう、そこをもっと…あ…」
はじめてらしからぬ深い動きに
仕事の時の余裕も忘れて女は腰をくねらせ乱れていく。
そうやって次々と少年は女達と交わっていった。
むせかえるような匂いと嬌声は部屋に満ち
いっそうその場を狂わせる。
だがこの嵐のような響宴のさなかに
ひとり少年はしだいに醒めていった。
狂ってやがる…
だけどこれじゃ足りねえよ…
無理もない。もっと痺れる感覚を、たぎるような熱を、
深い闇を、少年は知ってしまったのだから…
翌朝、少年は姿を消していた。
いつものようにそのうち戻ってくるだろうと思われたが、
それきりだった。
白い髪の男のことを女達が風の噂に聞いたのは、それからずいぶん後のことだ。