はあ〜〜〜っ…  
遊具でさんざん遊び倒しといて、ふと我に帰り賢者タイム状態になったカイジは、一人タバコをふかしていた。  
(幸せそうじゃんか…! どいつもこいつも…)  
 
そのとき、遠くから声が聞えた。  
「カイジく〜〜〜ん…!」  
(うっ…!)  
(もう帰ってきた…あいつ…)  
 
(西尾が…!)  
「おまたせ…ジュース買ってきたよ…!」  
「………」  
カイジは黙って西尾から缶を受け取る。  
「おま…………」  
「………?」  
 
西尾が何か言いかけたので、カイジは黙って先を促す。  
「い、いや何でもない…!何でもないの…!」  
「はあ……?」  
「いいのいいの!気にしないで…!」  
西尾は焦りながら照れ笑いで答えた。何故か顔を赤らめている。  
 
「そうそう、私大福作ってきたんだ…!ぞっ…! 食べませ〜ん?」  
「あ、ああ…」  
カイジは自分が番をしていたバスケットを西尾に渡す。  
 
「はい、あ〜ん」  
「………」  
カイジはされるがままに西尾が差し出してきた大福を食べる。  
「美味しい…?」  
「ああ……まあ……」  
「嬉しい…!」  
 
西尾は上機嫌だ。  
カイジは口をモゴモゴと動かしながら思った。  
(しかし…なんで大福…?)  
 
(あ…発見…!ほっぺたにアンコのカス…!)  
「ついてるよ…!ここに…!」  
西尾は自分の頬を指差しながら言う。  
 
「へ…?」  
カイジはアンコがついているほうと反対の頬をさする。  
「こっち…!」  
西尾は指でカイジの頬についているアンコを掬い、指を自分の口に持っていき、ぺろりと舐める。  
「……………」  
見ていて何故か気恥ずかしくなって、カイジは目を逸らした。  
 
「ねえ、お願いがあるんだけど…」  
モジモジしながら西尾が切り出す。  
「……何?」  
大福を食べ過ぎて少々胃がもたれ気味のカイジがぼんやりと返事をする。  
 
「カイジ君…膝枕してくれない?」  
「……え?」  
「なんかそういうの、憧れてたんだよねぇ…」  
上目使いで、妙にポワーンとした表情で西尾が言う。  
 
「…いや、そういうのはちょっと…」  
「………」  
「ひ、人目とかあるし…」  
「人目がなかったらいいの?」  
「え?」  
「あ、じゃあ私がカイジ君に膝枕してあげる!これだったらどう?」  
「はあ?…いや、待て、これだったらって」  
「じゃあ、ジャンケンで私が負けたら膝枕してあげる…!その代わり勝ったら膝枕してね…!」  
「え」  
「はいっ、じゃーんけーん…」  
「え、ああ」  
「ぽんっ…!」  
 
西尾の勢いにつられ、思わず手を出す。  
カイジ、グー。西尾、パー。  
西尾の勝ちっ…!  
 
「やったあ!」  
「………………」  
カイジは渋い顔をする。  
勝っても負けても膝枕するんだったら、どっちに転んでも西尾の圧勝っ…!自明の理…!  
 
「………やっぱり駄目…?」  
西尾が申し訳なさそうにカイジのほうを見る。  
「……いや…負けは負けだから…。」  
 
「…はあ〜〜〜」  
西尾はカイジの膝を枕に横になりながら、満足そうなため息をついた。  
「………楽しいか?これ……」  
「うん、なかなかいいよ、これ。優越感」  
「はあ……」  
「フフ、いい眺め」  
下から見上げる西尾と目が合い、思わず視線を泳がせる。  
ふと周囲を見ると、ニコ…ニコ…とカイジたちに降り注ぐ生暖かい視線。  
 
(よせっ…!やめろよっ…!  
その…なんか… 微笑ましいものを見るような目…! やめろっ…!)  
 
「頭撫でてくれるともっといいんだけど…」  
「勘弁してくれっ…!」  
「じゃあ今度は私が頭撫でてあげようか…」  
「…それも勘弁してください…」  
 

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