都内某所にある、庭付き一戸建ての日本家屋。
「元」代打ちである、市川の住まい・・・。
市川には妻と息子がいたが、妻は、先の戦争であっけなく逝った。
息子はどうにか戦地から帰ってきた。
だが、市川のいる裏社会に入ることを拒んで家を飛び出し、表の世界でごく普通の会社員として生きている。
息子に家族ができてからは、ますます疎遠になった。
義理の娘も、孫も、市川の本業は知らない。
盲目であることから、按摩屋としてひっそり暮らしていることになっている。
ただ・・・家を飛び出したといえど、そう距離が離れているわけではない。
盆や正月にはそろって市川宅に挨拶にくる・・・それぐらいの付き合いはある。
そして盆も正月も関係なく、孫娘だけはしょっちゅう市川の家に来た。
「おじいちゃんと遊びたい」というよりは「お母さんに怒られた」「もうあの家には居たくない、家出する」などという理由で・・・。
ひっそりと言うにはあまりにも広すぎる自宅で一人、今夜も杯を傾ける市川。
肴は煮干しを胡麻と共に炒ったものや、きんぴらなど・・・全て自分で作ったもの・・・。
縁側に腰掛け、緑の匂い、それを運ぶ風の音を愛でる・・・。
「あァ、良い風だ・・・。」
そういえば、と、市川は思い出す。
「・・・そろそろか。・・・今日は・・・うまいこと出来るかわかんねぇなァ・・・。」
勝手口の方から、緑の匂いに混じって運ばれてくる『女』の匂い。
気配が近づく。女の気配とミルクの匂い。まだ幼さを残した、少女の匂い。
市川は、わざと気づかぬフリをする。
布が擦れる音。髪の音に混じって細い布の音。
(今日は・・・シャツとズボンで来たか。髪はずいぶん伸びた・・・三つ編みだ。)
「・・・じいちゃん・・・」
「おう、よく来たよく来た。ま、座れ。」
気配との距離が1メートル程度になったあたりで、市川は気配に向かって手招きをし、肴を寄せて縁側をすこし空けた。
「今日はがんばって忍び足で来たのに、すぐわかっちゃうんだね、じいちゃん。」
言いながら、とすん、と、市川の隣に座る。
「そりゃそうさ。目が無え上に耳も聞こえなくなっちまったら、俺の商売あがったりだ。
まして自分の孫がわからねえようになっちゃ、いよいよおしまいだろうよ。」
ぽん、ぽん、と、大きな手で頭を撫でると、心拍数が少し遅くなる。安心している証拠・・・。
だが、しばらくすると・・・早鐘のように鳴りだす・・・。
「・・・じいちゃん。」
「ん?どうした。また例のアレかい?」
トボけた顔で聞く。
「・・・うん・・・」
市川の孫娘は実に運動神経がよく、各種のスポーツ大会では学校どころか、地方大会でトップを取るほどだそうだ。
健康的な娘だがすこしやんちゃなところがあり、それが原因で親と揉めるたびに、市川の家に来た。
大概、拗ねたり泣いたりした後は眠ってしまうので、市川が抱きかかえて家まで送っていった。
たまたま「なんとなく遊びに来た」時に市川が一人で牌をいじっていたら興味を示した。
せっかくだからと、打ち方を教えてやった。
だが、中学生になった頃から、別の事も教えるようになった。
きっかけは、市川による按摩。
『肩を揉んであげる』という孫に対し『俺はそんなに老けちゃいねェよ。』と、逆に按摩をしてやった。
常日頃のハードな鍛錬による反動が見事に消えたのに感動し、それ以来市川にちょくちょく按摩を頼むようになった。
・・・それだけで済んでいればよかったのかもしれない。
しかし、少女はいつか、女になる。
月のものが訪れ、性衝動が訪れるようになった自分に戸惑いを隠せない・・・が、誰にも相談はできない・・・
それで・・・衝動に襲われるたびに、市川の所に来るようになった。
『そういう時』は、いつもと同じマッサージをされているのに、腰のあたりを揉まれた時の感覚が違うからだ。
≪気持ちいい≫
そしてそれは当然のごとく、市川に伝わった・・・。
(おいおい、参ったな・・・。)
そろそろ潮時か、そう思ってわざと按摩の途中で途中で手を離した。
「じいちゃん、なんでやめるの・・・?」
返ってきたのは、自分の心を見透かされているかもしれないという羞恥心と、快楽を突然奪われたことに対する戸惑いを含んだ声。
うっかり漏れそうになる吐息を必死に押し殺しても、下半身の僅かなひくつきと、体温の上昇は隠せない・・・。
(ああ・・・ダメだ、おさまらねぇな、こりゃあ。)
「・・・ちょいと待ってな。手ぬぐいと水持ってくらあ。」
そして、今に至る。
障子を閉め、布団を敷いて準備する。
何枚かの手ぬぐいと、滑りをよくするための油、そして水を張ったタライ。
客用の布団など用意していないから、市川が普段から使っているものを敷く。
まだ服も脱がないうちに布団にうつ伏せになり、枕に顔をうずめて嬉しそうな顔をする孫。
「えへへ、じいちゃんの匂い。」
幼い頃からよくこの言葉を聞いていたが、最近は別の意味も含んでいるので市川としては非常に複雑である。
「・・・今日は自分で脱ぐか?」
「えーやだ、じいちゃん、脱がして。」
バッと起き上がり、市川のほうに向き直る。
こうやって駄々をこねるところは昔と変わっちゃいねェのにな、と思いながらブラウスのボタンに手をかける。
途端に、娘の全身に緊張が走るのがわかる。
唾を飲み込む音もハッキリと聞こえる。
恥ずかしいからと瞼を閉じる・・・そのかすかなまばたきの音まで、市川の耳には届く。
「先に髪の方ほどくか。どうせ乱れっちまうし・・・じいちゃんが後で結いなおしてやるから。」
「い・・・いいよ。私、三つ編みの練習中だから、自分で結う・・・。」
「そうかそうか、じゃあ、ほどくだけな。」
シュルッ・・・
(いい布だな・・・そうか、こんなモノつけるトシになったか。)
そう思いながら、取ったばかりのリボンを慎重に布団の脇に置いた。
慣れた手つきで髪をすきながら、心の距離を測る。
自分はあくまで孫に甘い、世話焼きの爺でなければならない。
どこかで線引きをしておかないと、何も知らぬ孫を市川のいる裏社会に引きずり込んでしまう。
そんな事をしたら、実の息子であり孫の父である男にとんでもない借りを作ることになる・・・。
何より・・・『一度家を出て行ったならば、父でも息子でもなく、男同士』という思いが市川の中にあった。
一人の男の、下手をすると己の命よりも大事かもしれない娘・・・それを奪うことなど道義に反する。
裏社会に生きる者にもそれなりの道理というものがある。
そこから外れてしまえば、人でなしですらない、ただの屑。
そんな市川の思いを知らぬ娘は、両手をだらん、と下げてうつむいている。
緊張で喉が渇くのか、時折生唾を飲みこむ音が聞こえる。
うなじに市川の指が触れるたびに・・・体がピクン、と震える・・・。
「ほれ、次はシャツな。あー、なんだっけっか、女物は『ぶらうす』とか言うんだったか?」
まだ『女』になられては困る。ボケたフリで陽気に冗談を言う。
くす・・・くす・・・あははっ・・・
「えー、そんなのどっちでもいいよー。」
緊張が取れた時の笑い声を聞いて、市川自身も少しほっとする・・・。
「どっちでもいいか、そうか。じゃあじいちゃんが外すからよ、もうちょっと頭を上げてくれぃ。」
「うん。」
とても無邪気な笑顔・・・頬が吊りあがり目は細くなって、大きく開けた口から漏れる嬉しそうな声。
市川はこの顔も『聞きなれている』『嗅ぎ慣れている』はずだが、どうにも胸のあたりがむずがゆい。
またすぐに緊張するのがわかっていながら、やはり一呼吸置かざるを得ない。
案の定、ブラウスの釦に手をかけた途端に脈は速くなり、市川のむずがゆさは、さらに増した。
いつも、いきなり全裸にはしない。下着を着けたままで、さらに手ぬぐいを布団に敷いて、胴体にもかける。
両手で胸や局部を隠されたり内股になられると、最初に揉みたいところが塞がれてしまうからだ。
まず、足のツボと背中全体を押してやり、その後両手足の指から順に中心へと遡る。
足裏から足の指・脛の按摩及び背中をほぐすところまではリラックスしているのだが、
腿をとばして手の五指にとりかかったあたりで腰が反応しだす。
「んぅ・・・」
手の平を丁寧に揉み解し、指の根元から弾くように爪の先へ抜く。
「・・・じいちゃんの手・・・あったかい・・・大きい・・・」
「ああ、じいちゃんの商売道具だからな、この手は。」
「うん・・・もっと、して・・・ぎゅっ・・・て・・・して・・・。」
「手の平をか?」
また、一呼吸置いて距離をとる。
「・・・ぜんぶ・・・」
すでに、祖父におねだりをする孫ではない。
男にねだる女の声。市川はやれやれ、と思いながらも、それほど悪い気はしない。
女房が死んでからというもの、女を傍に置くことは無かった。
貧乏生活の頃も、代打ちとして裏社会に生きる術を見出したあとも、息子の気持ちを重んじた。
(雀牌だったら、触ってくれってェのにいくらでも答えられるんだがなァ。)
「あ・・・んっ・・・。」
腕、肩と来て、うなじの辺りを触る段になると、手ぬぐいの下の肌がじっとりと汗ばむのがわかる。
手ぬぐいの湿り具合が指を通して伝ってくる。
「相変わらず首だの肩だのこってんなァ。ほら、もうちょい力抜け。」
「んー・・・。」
生返事。本人は力を抜こうとしているらしいが、すでに意識が朦朧としているから、うまくできない。
仕方がないのでうなじを少し力強く押して一瞬覚醒させ、頭のツボを押した後再度背中へ。
「・・・ん・・・んー・・・あぅぅっ・・・」
ゆっくり背中全体を押してゆくと、腰のあたりで必ず反応がある。
(・・・さて、本腰入れるか・・・)
臀部・・・骨盤・・・恥骨の穴の周辺を、丁寧に内側に押していく・・・。
「あっ・・・あ、あ・・・ち、力抜ける・・・」
その言葉と裏腹に、ぎゅう、と、膣と菊座が締まる。
「言ったろ?こういう時は、ちょいとばかり力抜かねえと、うまくいかねえんだって。お前は親父に似て、マジメだな。」
「ご、ごめ・・んね・・・?じいちゃん・・・?」
「・・・そういう所がマジメなんだよ。ちったあ、この不良ジジイを見習え。ほれ。」
「ひゃっ・・・!!」
パァニッ・・・!
不意打ちで軽く尻を叩かれて目を丸くしている間に、素早く抱き上げて仰向け状態にしてやった。
手ぬぐいをかけなおし、へその中心から脇にかけて・・・触れ・・・なぞる・・・。
「ああんっ・・・あ、はぅ・・・」
(・・・今日は・・・意外に派手に和了れそうだな・・・いい鳴きだ。)
女、しかも血の繋がった孫娘の体と、麻雀を重ね合わせる自分はつくづく狂っていると、市川は思う。
ポン。カン。チー。リーチ。ツモ。ロン。
(・・・引いちまったよ、ハハハ・・・。)
最初に手を出した時点で、もう先は見えていた。自明の理・・・そんな言葉も浮かんだ。
快感に耐え切れず、時折、無意識に孫娘・・・女の手は、市川のそれに重なる。
さまざまな鍛錬で程よく筋肉のついた・・・だが、やはり柔らかな少女の手。
重ねたまま、ぎゅう、と握って、離さない。
「おいおい、その綺麗な手ェどけてくれねえと、じいちゃん動けねえぞ。」
「でも・・・私、じいちゃんの手・・・好き・・・」
「じゃあ、じいちゃんが体中いっぱい撫でてやるから、離しな。」
汗ばんだ手が震えながら離れたのを確認して、また愛撫する。
ざわ・・・ざわ・・・
女の体の奥からざわめきが聞こえる。
市川の手がもうすぐ己の乳に触れるのだと、期待している。
たまにそれを裏切って、顔などを撫でて反応をみるのも市川にとっては面白い・・・が、今日はやめておく事にした。
「・・・ぁ・・・」
乳房のふくらみの外から、円を描くように。
呼吸はさきほどから早く短くなり、手ぬぐいの下は全身じっとりと濡れている。
・・・乳輪を、わざと布越しに擦る・・・
ざわっ・・・
全身の痙攣と、ざわめき・・・。
内側から外に押し寄せる快感の波を、声を、必死に押し殺す。
「・・・声、出していいんだよ。じいちゃん以外には誰も聞いてやしねえ。あと、もう、動いていいからな。」
左手で片方の乳房を揉みながら、右手で頬を撫で、耳元でささやく。
「い、いい・・・?いい・・・?」
「・・・好きなだけ鳴いちまえ。」
嬌声が溢れた。
「あ・・・ハァ・・・ハァ・・・ハッ・・・あああ・・・あんっ・・・!!」
あくまでも丁寧に、しかし少しずつ速度を上げる。
手の動きを呼吸と合わせ、胸と腿を揉み、同時に手ぬぐいを外していく。
足を閉じようとしたら、無理に開かせない。手を止め、市川を求めて体が開くのを待つ。
「続き・・・続き、して・・・!」
そう言いながら胸から手を離し、閉じた腿を開く。布と手によって、秘所だけが隠されている状態・・・。
やがて最後の一枚を残して、全ての布が外れた。
吸い付きたくなるような肌の匂い。感触。ざわめき。
それでも、舐めることは決してしない。蛸の吸盤のように、指を吸い付かせる。
市川の商売道具に、口八丁はあっても舌技はない。
「じいちゃん・・・私、いやらしい・・・?いやらしい・・・?」
涙声。羞恥と快感の混じった声。
「そんなこたァねえよ。女に生まれりゃあ、みんなそういう体になっちまうんだよ。
男に生まれりゃあ、俺みたいなエロジジイになるさ。成長するって事ァ、そういう事だ。」
「じいちゃ・・・は・・・やらしくらい・・・よ・・・。わら・・・あんっ!」
あえぎの中からようやく紡ぎだした言葉を、肌をつついてあえて遮る。
(エロジジイでなけりゃあ、いくら按摩の延長ったって孫を素っ裸にひんむいてイジったりしねえよ。)
「ん・・・んんーっ・・・!はう、あっ・・・はっ・・・」
愛液がつぅ、と秘所から菊を伝い、下に敷いていた手ぬぐいにこぼれ落ちる。
伝う途中のところを指でひとすくいして、ペロリと舐める。
「ああぁ・・・」
自分で自分の肩を抱き、息を荒くしながらもじっと待っている様子を見ながら、
「待たせちまったかい。そいつぁ・・・悪かった。」
最後の手ぬぐいをゆっくりと外し、零れた愛液を秘所全体に塗る。
「あうっ・・・」
たっぷりと塗りつけたあと、ひとさし指を膣に挿入し・・・親指でクリトリスに触れた。
「ひいぁっ・・・!あっ・・・!」
触れた瞬間、娘の腰が大きく跳ねた。
そのせいで、挿入した指が外れる。
「あ・・・あっ・・・ごめんあさい・・・ごめ・・・」
「気にすんな気にすんな。豆は後にするか・・・挿れるほうは二本なら抜けねえだろ。」
くちゅっ・・・
「ん・・・」
人差し指と中指を、ゆっくりと挿れなおし、その状態で動かせるかどうかを確認する。
(十分だ。俺の指を・・・根元まで咥えてら。)
抜き差しを何度か行い、今度は根元を固定したまま内部で円を描く。
「ハッ・・・ハッ・・・ハッ・・・あうぅ・・・ああ・・・いっ・・・」
突起も直に触るのではなく、周りをゆっくり撫でていく。
しばらく円を描いた後、奥まで入っていたのを少しだけ戻し、入り口近くのふくらみを指の腹で押した。
プシャッ・・・
「やぁ・・・これ、何っ・・・!?」
「お。」
シャァァ・・・
勢いよく出つづける大量の液体には愛液の粘つきが無い。
「・・・・・・やだっ・・・おしっこ・・・!?」
手ぬぐいに沁みた匂いを確認しながら、
「こりゃ、小便じゃねえよ。」
「・・・?」
「『潮吹き』だぁな。女が感じると出るモンなんだよ。そうか、お前も潮吹きできるぐらいのいい女になったか・・・。
俺がもっと若けりゃあなー・・・恋文の一つや二つ送って、交際申し込みするんだがなあ。」
「え・・・じ、じいちゃん!?」
「半分は嘘、だが半分は本気だぜ。お前は・・・俺の自慢の孫娘だ・・・。
ま、老い先短ェジジイの身なんでな、この先何年相手してやれるかはわかんねえが・・・」
「じいちゃん!冗談でもそんなこと・・・言わないでよ・・・。」
孫に戻った娘の頭を撫でながら笑う。
「ハハ・・・悪かった悪かった。でもな・・・お前ももう、男を知っていい頃だ。誰かに惚れたら・・・迷うなよ。
親のいう事なんざ聞くな。その時だきゃあ、この不良ジジイを見習って悪い事しちまえ、ハハハハッ・・・!」
事後は風呂にいれ、自分の浴衣を着せて髪を結わせ、精神的に十分落ち着いたのを確認して帰らせた。
さすがに家まで抱き上げて連れて行くわけにはいかない。
市川が背負っただけで心拍数が上がる・・・それほどに成長したのだから。
自分以外誰もいなくなった家で、再び縁側に腰掛け、酒を飲む。
卓を囲む面子が欲しい、強くそう思った。
結局のところ・・・アカギに己の理論を壊されたとしても・・・牌の魔力には勝てない。
裏の世界ではもう・・・生きていけない。
だが・・・
「逃げられそうにねえな・・・ククク・・・。アイツラが呼んでる・・・。
・・・やっちまったなァ。あんないい女どもに手ェ出すんじゃなかったぜ・・・!」
市原の自宅から雀荘までは決して遠くない。
ただ、その道のりの間に・・・何が待っているかはわからない・・・。
くしくもその日は、満月・・・人の心を狂わせる夜。
市川の目には決して届かない光・・・・・・だが
「狂気の沙汰ほど、面白い。」
狂気の光の中で・・・狂気だけを纏い闇を進む者、一人。