(あ、アカギ君だ…)
美心はすぐに気がついた。
彼がいつも寝ている公園のベンチに今、彼が寝ているからだ。
薄い上着を額にまでかけて寝ているが、アカギに間違いないだろう。
20歳くらいなのに白髪。そしてなにより、彼の鼻と顎のラインを、美心が間違える筈もない。
(あれ? なんで作業着じゃないんだろう…)
それは不思議だったが…沼田玩具工場の女子工員として、美心は同僚のアカギに声をかける。
「アカギ君。もう休憩終わるよ。仕事、仕事」
「う…」
ベンチに寝る男は、女の声に少し呻いた。
「アカギ君」
「なんだよ、うるせぇな」
ベンチの男は鬱陶しそうに起き上がる。そして
(うわ、なんて顔していやがる)
女の顔を見詰めたまま、表情を止めた。
ベンチの男、かなりの美男である。彼自身、その自分の美貌に得心していない、
心からは気付いていないところがあるものの…
自分の端正な顔を見慣れているせいで、あまり美人を求める本能を持ち合わせていない。
それでも美心の顔にはびっくりした。
「アカギ君…?」
美心と言う女が求めているそのアカギより、この男は透明感のある美しい容貌だった。アカギより瞳が幼いところも特徴的。
だがアカギに良く似ている。
「アカギだと?…俺は」
「ごめんなさい。よく顔見せて…」
(う…)
美心の声と、迫って来た乳房に、男はドギマギした。
男の名は平山幸雄。しかしまだ美心に名乗れずにいる。
この女、香りも良いな…と、平山は思う。
(なんとか、やれないものか…)
美心に見詰められて(彼はその彼女の顔を見ていないが)平山はそう考えるようにもなっていた。
「凄く似てる。びっくりしちゃった。ごめんなさい、ジロジロ見ちゃって…」
「なんだお前…」
「あ、私、坂崎と言います」
「名前なんかどうでも良いんだよ」
そう苛々と、冷たく言う平山だったが、何か考え事をしているのは美心にも伝わる。
「あんた…そのアカギって男の事が好きなのか?」
「え?…ぅ…なによぉ。言わなきゃダメ?」
「答えろよ。寝てる人間を勝手に起こしやがって」
「好きです……もう。…私が悪かったから、ごめんなさい」
「待て」
平山の美しい手が彼女に伸びる。美心をちゃんと掴めていないのは寝起きだからか、彼が凡夫だからか。
「やりたいか、アカギと」
「えぇ?」
「代わりにやってやろうか」
「ちょっと、やだ、離してっ」
美心の腕を、今度はしっかりと掴んで平山は彼女を値踏みする。
(そうだ、体を見れば、ポルノ映画の女優…その外国人の中でもなかなか
お目にかかれない様な体付きじゃねぇか。
そうさ。顔さえ見なきゃ 震い付きたくなる様な良い女なんだこいつは。人柄も温厚)
「俺がアカギで結構だ。そいつに似てると思ってるんだろ?」
「違うもん、あなたはニセアカギ君!」
美心は横抱きで平山に抱えられ、両足をバタバタと動かして抗った。
「離して…離して…(美心の初めては、アカギ君にって思ってたのに…)」
公園の垣根で自分達を隠すように、その垣根を越えて美心を林に押し込む平山は…
土に倒した彼女の胸を、作業着越しに揉んだ。
「や、……あっ…やめて…」
美心の声と吐息で、平山の全身が熱くなる。
平山は美心の作業着を捲くり、その捲くった部分で彼女の顔を隠してしまった。
男がきつく巻き付け、解けない状態。布に遮られて美心の声が小さくなる。
平山は素肌の美心の乳房に触れる。触る平山の方も、声を漏らしてしまうほどの触り心地。
自分のそれ≠ナこそ、美心の乳房に触れたいと思った。
(両方の、それで、挿むっ……あっ!)
平山…自分の下着やら何やらでそれ≠艶かしく擦ってしまい…
(やめろっ、まだイキたくないっ)
こんな早さで昂ぶるのは初めてで困惑する。絶頂を防ぐ為に、それを自分の手で掴んだ。それでまた、少し擦られてしまう。
(イキたくない! イキたくなーーい!!)
美心の乳房に…平山の熱い精、精と言う白濁が、ぼたぼたと零れ落ちた。
平山はその恥かしさと、一応は目的を達成している体の爽快感にも助けられ、その場を全速力で走って逃げた。
(勘違いするなよ。手錠や縛が怖いんじゃない。無意味な後撫は御免だと言ってるんだ!)
「うーっ うーっ」
顔を隠され、胸に出されてしまった散々な姿で蠢く、ふら付く美心だったが、
「もう、なによ、えっち!」
乳房を隠し、顔を大気に開放し、元気に復活した。
平山のナイス漏れ、素晴らしい漏れが、美心を守ったのだった。