最近、妙な青年が現れるようになった。
妙な、というのは1つ目が外観。
二十歳前後だろうに、真っ白な頭髪がまず人の目を引く。
だが私にとって髪よりも目をひきつけるものがあった。
シャープな輪郭と鼻筋……それは戦争で亡くなった夫を思わせるものだった。
「婆さん、ハイライトふたつ」
想いを馳せていた私の元へ、当の本人がやって来た。
商品を用意しながら、ついつい青年を盗み見てしまう。
日本人の平均身長を遥かに越えていて、すらりとした体躯。
しかし頼りないという感じは無く、力強く引き締まって見える。
ああ……あの腕に抱き締められたら、なんと幸せなことだろう。
馬鹿な。有り得ない。
私と彼は、孫と祖母ほど歳が離れているというのに……。
「はい はい」
馬鹿げた想像を振り払い、彼にハイライトを2つ手渡した。
その時、指と指が触れ合う。
「あ」
「………」
意識した声を出してしまう私に、青年は一瞬驚いたような表情を浮かべたが
すぐにいつもの涼しい顔に戻り、私の元から去って行った。
嗚呼……危ないとこだった。
彼に感づかれたりしたら、なんと色狂いな婆と軽蔑されることだろう。
その夜、妙な夢を見た。
夢の中の私は16歳の少女で、目の前にはあの青年がいたのだ。
一瞬、夫の若い姿かと思ったが、夫の髪は白くは無かったし、
ましてやあのやうな何処か人間離れをした様は持ち合わせてはいなかった。
青年は私を抱き締め、髪を撫でている。
いつもいつも願っていた状況に、私の心は見た目に釣り合った心を取り戻していた。
胸がどきどきと高鳴り、顔が紅潮していく。
夢だというのに、彼の体温を現実のやうに感じるではないか。
「……アンタの想いが俺を呼び寄せたんだ、さゆりさん」
これだから人の心は面白い。
唇を吊り上げて笑う彼は私の首筋に口付け、着込んだ着物を肩からずり落とす。
する……する……と着物が肩から滑り落ちると、現実の皺だらけの乳房とは違い、
ハリのある瑞々しい乳房があらわになった。
「ああ……」
確かに夢ではあるが、それでも羞恥心が芽生えてくるのだから不思議だ。
乳房を彼の掌が優しく揉みしだく。
現実と同じ、長くて細い彼の手は、巧みに私から性感を引き出していた。
こんな素敵な指を持つ彼は、きっとピアノ弾きだとかの、ハイカラな仕事をしているに違いない。