ベルサイユ宮殿を思わせる大豪邸・神戸家。  
その屋敷に赤いキャデラックに乗った神戸大助が帰ってきた。  
連日のある事件が大助の提案によって解決されたらしく、ほっとしていた表情  
を見せていた。  
「今帰りました、お父さん、鈴江さん。」  
大助は神戸家当主・神戸喜久衛右門と秘書・浜田鈴江に言った。  
「わしの金をたっぷり使ってくれたそうじゃな」  
食堂の席で、喜久衛右門がいかにも嬉しい、と言った表情であった。  
「今回使った金額は、総額、一千万です」  
大助は父に事件で使った金額を報告した。  
 
「ほう。一千万」  
喜久右衛門は好々爺、と言った感じで機嫌がいい。  
「事件解決、おめでとうございます」  
鈴江がにっこりとした表情で言った。  
「ありがとう。鈴江さん」  
大助も笑い返す。  
「大助。わしの金をつかってくれたのじゃな。わしが昔悪いことをして  
稼いだあぶく銭をたっぷりと」  
喜久右衛門は声と肩を震わせはじめた。  
また始めるのか、と思い大助と鈴江はあきれてしまう。  
「天使じゃ。わしの金をどんどん使ってくれる。お前は天使じゃあ」  
わあわあと声を上げて泣きはじめる。  
「う。ぐ、ぐ、ぐ」  
のどに痰を絡め苦しみ始めた。  
鈴江があわてて喜久右衛門を介抱する。  
 

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