「好きです」  
神戸のその言葉は、まるでドラマか映画のワンシーンのように思えた。  
つまり、真実味がないってことだ。  
「布引さんのことが、好きなんです」  
言われたってどこか空滑りしているように聞こえる。  
ただ単に、この状況に浸ってるだけなんだろう?  
恋に恋してるだけだろう?お嬢ちゃん。  
「じゃあ、よ」  
「何でしょう?」  
「その気にさせてみろよ。俺を」  
一つ大きく瞬きをした神戸をじっと見たまま、俺は語気を強めて言う。  
「俺はな、好きだ嫌いだなんてことでガタガタ騒ぐつもりはねーんだよ。小学生じゃあるまいし。  
それでもいいっていうんなら…それ相応の付き合いがしたいっていうんなら、俺をその気にさせてみろって言ってんの。分かるか?」  
分かんねーだろうな。  
もちろんそのつもりで俺は言ったんだ。  
神戸の言ってる次元の「好き」とは違うんだろうから。  
「わかりました。私なりに、やってみます。それでは、必ず、近いうちに…」  
意を決したように神戸はそう言うと深々と俺に頭を下げ、運転手が迎えに来るのも待たずにそそくさと帰っていってしまった。  
 
それから数日後。  
大きな事件もここのところないので、焼畑署内は落ち着いたムードで推移していた。  
捜査報告書をまとめる者もいれば警部の目を盗んでサボることに命をかけるものもいる。  
神戸はといえば、自主的に資料室の整理に励んでいた。  
「あの…布引さん、ちょっとよろしいでしょうか?」  
資料室から戻ってきた神戸が、調書をまとめていた俺を呼ぶ。  
「何だ?」  
「ちょっと、お聞きしたいことがありまして…」  
手には捜査資料の挟まったファイルが握られていたので、何か捜査上の相談だろうか…  
そう思い、俺は調書を机の引き出しに放り込み立ち上がると神戸の後に続いて資料室へと向かった。  
 
「で、何だよ?聞きたいことって」  
薄暗い資料室のドアを後ろ手に閉め、3歩ほど前を進んでいた神戸に声をかける。  
手にしていたファイルを資料整理用の机の上に置いて立ち止まると、振り返って神戸はこう切り出した。  
「…わかりませんでしたか?」  
「何がだ?」  
突然の言葉に俺は戸惑った。  
「ですから……その気には、なって頂けませんでしたか?」  
そう言われて、初めて俺は数日前に神戸に言った言葉のことを思い出していた。  
それ位、俺の頭の中ではすっかり忘れ去られていたことだった。  
『俺をその気にさせてみろ』と言ったことは。  
何故か頬をほのかに赤らめながら、神戸は再び俺に言う。  
「その気に、なりませんか?今の私を見て…」  
「今の私っつったって、別にフツーじゃねーかよ」  
ジャケットの下に白いブラウス、膝丈のスカートという珍しくシンプルなスーツ姿ではあるが、今のこの神戸の姿を見てそそられるとかそういうことは全くない。  
どこからどう見ても、ごくごく普通な様子だからだ。  
「あの…わかりませんか?今日、私、布引さんにその気になって頂きたかったから、ずっと…」  
更に顔を紅くして神戸は俯く。  
「ずっと?」  
「ずっと……下着を着けずにいたんですけど…」  
自分で言った言葉に恥ずかしくなったのか、神戸は顔を覆って左右に大きく振りかぶる。  
 
「…分かるわけねーだろ」  
半ば呆れつつ俺は言った。  
身体のラインがあらわになるような服装をしているというのならまだしも、今神戸が着ているスーツからはどう見たってそんな素振りは感じ取れない。  
「大体、そんなことで俺がその気になると思ったのか?」  
「色々と勉強したのですけれど、私に出来そうなことと言ったらこれ位のことしかなかったので…」  
「勉強?どんな勉強したんだよ。男をその気にさせる勉強って…」  
ちょっと興味が湧いたので、意地悪ついでに聞いてみる。  
「いえあのですから…書物を紐解いてみたのですが…触わってみたりですとか、その…あの…」  
「そっちの、その気にさせる方法は実行しないのか?」  
わざと顔を真正面に近づけて俺が言うと、神戸は身体をびくりと震わせた。  
「私にはとてもそのようなことは出来ません…」  
一歩後ずさりながら神戸は頭を振る。  
「でも、服の下に何も着けないで出勤は出来るんだ」  
思わず苦笑いしながら言うと、神戸は俺の方に強い視線を向けた。  
しかし俺と目が合うと途端に気恥ずかしくなったのか下を向いてしまった。  
「それはっ…」  
 
「本当に下に何にも着てきてねーのか?」  
ジャケットの隙間から右手を滑り込ませてブラウスの上から胸元に触れた。  
「あっ…」  
シルク越しに柔らかな膨らみを直に感じる。  
そして、その中心部が俺の手のひらが触れると同時に先端部の存在を主張し始めた。  
「ふ…ん…じゃあ、こっちも、か?」  
左の指先でスカートの上からその部分をつついてみる。  
「ひゃっ…」  
「見せて…みろよ」  
「………はい」  
耳まで真っ赤にしながら神戸は俺の言葉に素直に応じた。  
 
スカートの裾を掴むとそろそろと上に持ち上げる。  
裾を持ち上げた中にはガーターベルトとそれに繋がったガーターストッキング。  
しかし、神戸の言葉どおり、茂みの部分を包み隠す布は存在していなかった。  
両膝をぴったりとくっつけたまま立っている神戸の茂みの奥に左手を滑り込ませる。  
もうすでに充分すぎるほどの潤いを湛えているその部分は、容易に俺の指先の侵入を許した。  
「そこは…あっ…んっ」  
胸への刺激に加えて下半身へのダイレクトな刺激を受けて、神戸は大きく身をよじろうとする。  
その動きを封じようと、俺は神戸の身体を資料棚に押し付けた。  
急に体重がかかったために、スチール製の棚が金属的な音を上げる。  
「やっ…あのっ…そんなとこ…だ…め…」  
ジャケットを脱がせ、それ一枚になったブラウスの上から先端部を口に含む。  
乳首を転がすと神戸は大きく頭を振って甘い声をあげる。  
「は…んんっ…くっ…ふ……」  
俺の唾液で濡れたシルクの表面に、すっかり固くなった神戸の乳首が薄く透けて見える。  
左手で捉えていた一番敏感な部分から流れ出た愛液は太腿に止まっているストッキングまでもを濡らしている。  
 
「まだ…その気には…なって…頂けていないのでしょうか?」  
息も絶え絶えになりながら上目遣いで俺に聞く。  
ある程度の経験や知識のある女だったら、ある部分を一目見れば俺が既にそういう状態になっていることがわかるだろう。  
それを分からずに言っているのか、分かっているのにわざとそう言っているのか…  
神戸の場合は、間違いなく前者だろう。  
「ならねえわけ…ねえだろ…もう、こんなになってんだから…」  
ベルトを外してズボンのファスナーを下ろしかけると、神戸は小さく声を挙げて身体ごとくるりと後ろに向いてしまった。  
俺のその行動が、予想外だったらしい。  
「なっ、何なさってるんですか?!布引さんっ!」  
「何ってお前…こうするためだよ…」  
振り向いた際にふわりと元通りの位置に戻っていたスカートの裾をたくし上げ、ウエストを両手で掴むと俺は後ろから神戸に押し入った。  
 
「ああっ!」  
腰を引かれた格好になった神戸は咄嗟に資料用のスチール棚の3段目に手を付いた。  
小さく突き上げる度に、皮膚が叩き付けられる乾いた音が室内に響く。  
「あっあっあ…あ…んっ」  
頭を振りながら神戸がスチール棚を掴んでいた手が段々と下に下がってくる。  
ウエストのくびれをしっかりと掴んで腰を打ち付けているが、神戸は膝に力が入らなくなってきたのか俺の腕にかかる比重が大きくなってきた。  
「ぬのびきさ…わたし… もう… 立って…いられませ…」  
神戸が声を震わせながらそう訴えたので、一度砲身を引き抜いて身を離してから棚のすぐ横にある資料整理用の机の上に仰向けに寝かせた。  
 
ガーターストッキングが絡みつく太腿を大きく開かせ、両膝を抱え込むと神戸の中心部に再び挿入する。  
「んんっ」  
眉間にしわを寄せ、顎を仰け反らせる神戸の表情が目に入る。  
一見辛そうだが、どこか嬉しそうなその顔…  
「…神戸」  
その表情にたまらなくなり、思わず唇を重ねた。  
最初はただ柔らかいその感触を確かめるだけ。  
徐々に、舌を唇に這わせ、口内に滑り込ませ、舌を絡めて唾液を交換する激しいキスになっていく。  
ブラウスのボタンを外し、今度は直にその肌に触れた。  
柔らかなバストに俺の両手のひらが沈み込む。  
俺の腰の動きに合わせてゆらゆらと揺れ動く豊満な乳房を鷲掴みにして、その動きを封じた。  
「ああっ…布引さ…」  
キスと胸への愛撫とそして身体の奥を突き上げられる感覚に支配されているのか、神戸はただたたうわ言のように幾度となく俺の名を呼ぶ。  
「布引さん…ぬのびきさっ…ん… わたし…もう…ああっ…」  
内腿がぴくぴくと痙攣して、かろうじて爪先に引っかかっていた神戸のパンプスは床に脱げ落ちた。  
限界が間近に迫っていた俺は、神戸の最深部を大きく突き上げた。  
「ああっ!あ…あっ…んっ……」  
「神戸…かん…… …美和子っ…」  
絶頂に達した神戸は、その長い爪を思い切り俺の背中に付き立てた。  
その刺激と俺自身を受け入れようと神戸の奥底の部分からの刺激とで、俺は誘われるがままに神戸の体内へと放出してしまいそうになった。  
何とか思いとどまりその寸前で引き抜くと、真っ白な神戸のバストにその欲望を解き放った。  
 
 
「いいか。もう二度と、仕事に来るのにこんなことしてくんなよ」  
いつの間にか胸元に広がった白い粘液をレースのハンカチで拭き取り他もきちんと身なりを整えていた神戸に向かって、ズボンのファスナーを上げながら俺は言った。  
「…はい。すみませんでした」  
まだ少し脱力感の残る俺とは対照的に、ほんの数分前までのことがまるで嘘のように神戸はすっかり普段通りの表情でそこに立っていた。  
「でもまた次に布引さんにその気になって頂く為には何か特別なことをしないと…」  
「いらねえよ」  
ズボンのポケットから取り出した煙草に火をつけながら俺は神戸の頬に触れる。  
「何もしなくても、いつでもその気になれるからよ…お前になら」  
俺のその言葉に神戸の頬が赤く染まる。  
…ん?俺今、何言った?  
ハタと気付いて、俺も頬が熱くなったのを感じた。  
「はい。わかりました。布引さん…」  
にっこり笑った神戸が俺の唇に軽く触れた。  
「もうそろそろ戻らないと、警部に怒られてしまいますね。それでは、私はお先に…」  
一つお辞儀をして神戸はファイルを手に資料室を出て行った。  
 
一人、資料室に残された俺は一本の煙草をゆっくりと吸った。  
「…何言ってんだよ。俺は…」  
立ち上っていく煙を見やりながら、俺は大きく息を吐いた。  
「何、やってんだよ…」  
 

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