正しい時もあれば、もちろん間違いを犯す時もある  
それでも、君は子犬みたいについてくる  
わがままを聞いてくれる心の優しさは超一級  
それが僕の可愛いお馬鹿さん  
 
「王宮付き魔法使いへの就任、おめでとう」  
ハウルの部屋にあるベッドの上で、ソフィーがにっこりと微笑んだ。ハウルも柔和な  
笑顔を浮かべて、彼女を抱き寄せる。  
「ありがとう、ソフィー」  
「プレゼントをね、用意したの」  
そう言うと、ソフィーが悪戯っぽく目くばせした。その晩はハウルが王宮付きの  
魔法使いに就任したことをお祝いする為に、家族がささやかなパーティを開いた。  
家族はそれぞれプレゼントを選び、彼に渡していったが彼女はあとでね、と言っただけだった。  
その後が、今だというのだろうか。いささか子供じみた仕草だったが、愛らしさが  
にじみ出ていてハウルの口元が緩んだ。  
 
「へぇ。どんなの?」  
くすくすくす、と小さな笑い声を立ててハウルがクッションにもたれた。  
サイドボードから取り上げたグラスを傾けて、彼は余裕のある大人のような顔で尋ねる。  
「ぜひ欲しいな」  
頂戴?と上目遣いに囁いたハウルに胸をときめかせながらも、ソフィーはそそくさと  
退出した。  
ハウルがプレゼントに思いを馳せていた数分の後、彼女が扉の外からひょこっと顔を覗かせる。  
「プレゼントは何?」  
ソフィーが少しだけ恥ずかしそうに目を伏せた。それから覚悟を決めたように  
部屋の中に飛び込む。  
「プレゼントはね、これなの」  
ドアを背に立っているソフィーの薄い夜着の上に、青いリボンが巻かれていた。  
彼女の全身を包むように青い線が走り回り、胸の前でふわりと結われている。  
「………あぁ!ソフィー!」  
ハウルが感極まったような叫び声を上げてソフィーに飛びついた。ちゅ、ちゅ、ちゅと  
頬やら首筋やらを唇で辿り、掌がせわしなく全身を愛撫していく。  
「ちょっと待って!何してるの!」  
「何って、プレゼントを貰っているのさ!」  
訳がわからない、というような顔をしているソフィーに、ハウルは思い切り意外そうな  
顔をしてみせる。それから、にやりと笑うと彼女をひょいと抱き上げた。  
そのままベッドまで連れて行きシーツに沈め込む。  
 
「綺麗なリボンだね。よく似合うよ」  
リボンの端に口付けながら、ハウルが吐息と共に囁いた。そのまま唇が首筋に押し当てられ、  
赤い印が付けられる。彼の手が夜着の裾から侵入し始めて、ソフィーの下肢をめちゃくちゃに  
撫で回す。彼女は目をまん丸に見開いてハウルを凝視し、やがて飛び起きた。  
「待ってよ……それはプレゼントじゃないわ!」  
「え?ソフィーがプレゼントじゃないの?」  
「違うわよ!プレゼントはリボンを解いていいわよ、ってそれだけよ」  
「だったら」  
ハウルがまたにやりと笑った。悪戯を思いついた子供みたいな笑い方に、ソフィーの  
背筋に悪寒が走る。彼女はぎこちない笑いを浮かべると、そろそろと後退した。  
「私……私、今日はちょっと、自分の部屋で……」  
「何言ってるの?ソフィーの部屋はここじゃないか」  
がば、とハウルがソフィーを再び押し倒した。ソフィーが真っ青になりながら  
上目遣いに彼を見やる。  
「あ、あのぅ……」  
「もう何しても無駄。大人しく頂かれなさい」  
ハウルの猫めいた微笑に、ソフィーが天を仰いだ。  
あぁ、レティー!そういう意味だったのね!  
 
すべすべした光沢のあるリボンは、海のように深い青色で品がいい。ソフィーの白い肌に  
良く映えて綺麗だし、なかなかいい選択だ、とハウルは一人で感心していた。  
等間隔に付いている白いロゴもアクセントになっていて、小洒落たデザインだとも思う。  
「ちぇ、ざー」  
ハウルがリボンにかかれたロゴを読もうとした時、ソフィーがいきなり彼を引き寄せて  
口付けた。びっくりしている彼に、彼女は唇を離さずに笑ってみせる。  
ハウルはそのまま彼女の頭を抱え込み、口付けを深めていった。  
「ちょっ……んぅ、ふ……ん」  
歯列をなぞられ、歯の付け根に吸い付かれる頃には、ソフィーの腰は砕け、全身から  
力が抜けていた。ハウルはリボンをもったいつけるようにゆるゆると解き、  
それから彼女の細い首に廻す。きゅ、と結ばれたそれは猫か犬かにつけるもののようで、  
ソフィーが少し恥ずかしがった。  
「やだ、そんなの……外して」  
「どうして?可愛いよ。子猫ちゃんみたいで」  
にっこりと笑って言われた言葉に、ソフィーが真っ赤になって視線を落とした。  
ハウルは綺麗な笑顔を崩さないまま、軽く首を傾げる。  
「可愛い可愛い子猫ちゃん、もっと素敵なサービスをお願いできないかい?」  
どんなサービスよ、と茹蛸のようになったソフィーは怒鳴りかけたが、とっさに言葉を  
隠した。残念ながら、今晩の自分は彼のものだ。言う事を聞かないことには  
このプレゼントは成り立たない。  
「……何がお望み?」  
弱々しく発された言葉に、ハウルがそれこそとろけるそうな笑顔を浮かべたのは  
言うまでもない。彼女は口の中で今日だけだからね、と呟くと彼の耳打ちを受けるべく  
その頬を寄せた。  
 
「あ……いい。そう、上手だよ、ソフィー……」  
恍惚とした表情で、枕とクッションで出来た小山にもたれているハウルが囁いた。  
長い指はせわしなくソフィーの銀髪を梳き、時々彼女の首筋や耳朶を愛撫したり  
リボンをもてあそんだりする。足の間に跪き、むぐむぐと口を動かしている彼女の身体が、  
その愛撫にぴくりと跳ねる。小さな口いっぱいに彼のモノを咥え、懸命にしゃぶったり  
舐め回したりしているソフィーの姿は、妙に色っぽくて欲望を抑える事が出来ない。  
ふっくらとした唇が竿をしごき、柔らかい舌が筋を通って袋に届く頃には  
もうハウルには彼女を気遣ったり指示を出したりする余裕がなくなっていた。  
「……っ、ソフィー……もう…我慢できない……」  
眉間に皺を寄せ、本当に苦しそうにハウルが言った。しかし、喉の奥にまで届きそうな  
それを口にどうしたら上手く呼吸が出来るだろうかを考えていたソフィーは、  
その言葉の意味を図るのにほんの僅かの遅れをとってしまった。その間に彼は彼女の  
頭を抱え込み、ぐいと腰を押し付ける。急に奥まで入ってきたそれに、猛烈な吐き気と  
息苦しさを覚えソフィーが目を白黒させた。歯を立てないことだけを必死に考えながら、  
唇をすぼめて痙攣し始めたそれを締め付ける。ハウルの顔が、くしゃりと歪んだ。  
「……くっ……うっ!!!」  
「!!」  
 
びゅっびゅっと溢れてきた液体の苦味と酸味に、ソフィーの目に涙が浮かんだ。  
肩を大きく上下させながらも、少しばかり余裕を取り戻したハウルが、その涙を  
そっと拭ってやる。彼女は必死になって喉を鳴らし、それをどうにか嚥下しようとしている。  
「無理しないでいいよ………気持ちよかった。ありがとう、ソフィー」  
ちゅ、と音を立ててソフィーがハウルのそれから口を離した。飲み干せなかった  
白濁が口から零れ、シーツに零れていく。  
「本当に、上手になったね。教えた甲斐があった」  
嬉しそうに笑って言うハウルに、ソフィーが何ともいえない表情を浮かべた。  
褒めてもらえるのは嬉しいが、内容が内容なので気恥ずかしい。ただ押し黙っている  
彼女に、彼は楽しそうに肩をすくめてみせた。  
「……褒めてるんだよ?」  
「ごめんなさい、上手く喜べないわ」  
固い表情のままでソフィーが言った。もっと喜べばいいのに、とハウルがまったく  
邪気を感じさせない言い方でいい、ソフィーを抱き起こした。  
「じゃ、今度はソフィーが気持ちよくなる番かな」  
ソフィーの首筋に顔を埋め、ハウルが唇を滑らす。きゃ、という可愛らしい悲鳴が  
上がるのと同時に、ソフィーの身体から夜着が剥ぎ取られた。素肌をさらされた事に  
驚き、彼女が身体をひねる。  
「あ、や、ねえ待っ……ひゃ、ぁ、あん!」  
乱雑に下着がむしりとられ、現れた双丘にハウルがむしゃぶりついた。思わず上がった  
艶かしい声に、出したソフィー自身が赤面してしまう。  
「いや……恥ずかし……い、ぅ、んんっ…」  
 
じたばたと抵抗したにも関わらず、ハウルの舌先はかすかに色付いた突起に難なく  
触れた。その途端に手足がだらりと伸び、熱い液体がつぅと腿に伝う。  
しばらくの間、ハウルはソフィーの柔らかい胸の感触と彼女の反応を楽しんでいたが、  
ふと思いついたようにサイドテーブルからグラスを引っ掴むと、中の液体を口に含んだ。  
そしてそれをソフィーに口移しに飲ませる。華奢な喉がこく、こく、と動き、彼女の  
目がとろりと潤んだ。  
「っぁ……はぁっ…」  
興奮に浅かった息が、アルコールのせいで余計にあがる。ソフィーが首をめぐらせ、  
もぞもぞと膝をすり合わせた。ハウルがそれを目ざとく見つけ、にっと笑ってみせる。  
「もう感じた?随分早いね………それとも」  
ずるりと下履きが下ろされ、ほんのり赤くなった下肢が露になる。薄い茂みの奥の  
大切な部分は、もうすでに濡れそぼり男を待つようにひくついている。ハウルはそこに  
指をあてがい、その形をなぞった。  
「舐めてる時から感じてた………?」  
大きな秘密を口にするような神妙さで、ハウルが訊ねた。ソフィーは内腿を  
震わせながらも歯を食いしばり、首を振る。  
「嘘」  
「ちがっ……そんなんじゃ、な……あぁぁ…ん、ふ……」  
秘所に触れるか触れないかぎりぎりの所を、ハウルの指が掠めていく。その度に  
与えられるささやかな刺激に、ソフィーが押し殺したような喘ぎ声を上げた。  
酔いが廻って来たのか、だんだんと彼女の目つきが危うくなってくる。  
「感じてるじゃないか、ほら、もうこんなにも……」  
ハウルがソフィーの耳を甘噛みしながら言った。ソフィーが羞恥に顔を歪め、  
浅い呼吸を繰り返す。焦らされ続けた部分はそろそろ限界に達しかけているらしく、  
しきりにひくついている。彼は妙に押しつき払った仕草で、彼女の中に指を突き入れた。  
 
「あああぁっ!!」  
いきなり身体を押し広げられた事に、ソフィーの喉がのけぞった。身体の奥に感じる  
違和感に、彼女の瞳から生理的な涙が流れる。ハウルはそれを舌で舐め取ると、  
収縮を繰り返す彼女の内部を指でまさぐった。  
「はぁっ!!いやっ、あっ、んぅ!ふ、ぇ……ひゃあ!」  
ハウルの指が、ソフィーの一番感じる部分を捉えた。そこを強く押され、彼女の身体が  
飛び跳ねる。浮つく腰をどうにか抑え、彼はそこばかりを重点的に攻め立てた。  
もどかしい快感に身を焦がしていたソフィーが果てるまでには、そう時間はかからなかった。  
「あ、も、だめ………っ……ひぁぁぁぁぁ!!」  
訪れた限界に、ソフィーの身体がベッドに沈んだ。ぐったりと目を閉じ、声一つ上げない  
彼女の顔をハウルが心配そうに覗き込む。しかし彼がその小さい唇を掠め取ると、  
彼女はかすかにうめいた。それを確認すると、彼は舌でソフィーの唇を割り開き、彼女の  
それを絡め取った。くちゅ、くちゅ、と水音が漏れ、彼女がぼんやりと目をあける。  
「ん……ふ…」  
ハウルに口内を犯されながら、ソフィーが散漫な仕草で首を振った。二人の舌が絡み合い、  
唾液が混ざり合って喉を滑り降りていく。それを嚥下しながら、彼女は彼の首に腕を廻した。  
「ソフィー?」  
「もう…待てないの………」  
 
何度も快楽を教え込まれた身体は正直で、先ほど達したにも拘らず、もう彼を求めている。  
ソフィーは泣きそうになりながらも、どうにかそれだけを告げた。ハウルはかすかに  
微笑むと、蜜に塗れた彼女の蕾に手を伸ばした。  
「ひっ……!!」  
「まだだよ。今日のソフィーは僕の物なんだから、もう少し我慢してね」  
真っ赤に充血したそこは、軽く触れられるだけで限界を迎えてしまいそうなほどに  
感じている。ハウルは指先でそれを転がしながら、ソフィーの耳に舌を差し入れた。  
ぴちゃ、ぴちゃと直に聞こえる水音に、彼女の声が一層高くなる。  
「どんな感じ?気持ちよくて死んじゃいそう?」  
悪戯っぽく囁かれた言葉に、ソフィーが唇をかみ締める。しかし、きゅうっときつく  
摘まれてしまうとかすかに震えながら全身を強張らせた。  
「あ……そんな……ダメ、また、イっちゃっ……」  
「イッちゃいそう?」  
「も……うぁ、やだっ……あ、あ……しんじゃう…………っ!!」  
「死なないよ、多分ね」  
ソフィーの焦点はもう定まらず、瞳がぐるぐると動き回っていた。ハウルが蕾を  
こねる度に、彼女の全身が飛び跳ねる。彼女がどれだけ苦しそうに喘ぎ、赦しを乞う様に  
すがり付いても、彼はなかなか決定打を出そうとはしない。ただ悪戯に時間が過ぎ、  
溢れ出る愛液は内腿を伝って遂に膝の裏にまで到達した。  
 
「おねが……も、ゆるしてぇ……」  
「そろそろ、かな」  
息も絶え絶えに懇願するソフィーとは対照的に、ハウルは涼しい顔で彼女のそこを  
弄んでいる指の動きを早めた。彼女が目を見開き、近づいてくる絶頂の気配に  
打ち震える。  
「あぁ……あ、は、はぁ、ああぅ……あっ……!!!」  
全身をぎゅっと強張らせ、ソフィーが叫んだ。極度の緊張状態から一気に力が抜け、  
呼吸さえままならない。苦しそうに悶える彼女の様子を覗っていたハウルは、素早く  
服を脱いで彼女の脚の間に身体をすべり込ませた。ソフィーの顔色が青ざめ、  
口元が手で覆われる。  
「……ソフィー、僕が欲しい?」  
甘く囁きながら、ハウルがソフィーに口付けた。それから、ぐいと脚を開かせると  
そそり立った自分のそれを蜜でべとべとになった花弁に擦りつける。  
「ぁっ!!や、あっつ……い…」  
「言ってよ、欲しい?」  
身体の奥深くに篭った熱が、発散されないままソフィーを追い詰めていく。彼女は  
無我夢中で頷きながら、腰を振った。  
「ほしいのっ!ハウルが…ほしい……おねがい、はやく!!」  
 
ぐい、とハウルの腰が押し付けられ、ソフィーの奥深くまでが抉られた。  
どうしようもなく疼いていた部分を貫かれ、ソフィーが泣きながら体を反らす。  
「くっ……すごい、締まる……!」  
「あぁぁぁっ!はっ、ぁ、ふっ!ひゃああ、んっぁあ!!」  
狂ったように喘ぎながら、ソフィーがハウルに縋りついた。二人の身体はぴたりと  
密着し、腰の動きが早められていく。  
「あぁあ!!あ、は、ああ……んんっ!!」  
ソフィーの立ててあった脚がずるずるとシーツに沈む。しかし、ハウルは崩れた脚を  
抱え上げると、さらに彼女の中を突き続ける。深く、浅くとそれに蹂躙されるうちに、  
彼をくわえこんでいる部分がびくりと痙攣した。  
「ねぇ……顔見せて、そらさないで……」  
顔を背け、ただ一心に喘いでいるソフィーの顎をつかみ、ハウルが自分に引き合わせた。  
先ほど指で探っておいた敏感な部分を突くと、彼女の腰が面白いくらいに跳ねる。  
「あぁぁっ!もう、ほんと……に、ダメッ……!!」  
思考を全て奪うほどに熱い身体を持て余しながら、ソフィーが限界を口にした。  
二人の繋がっている部分からは、ぐち、ぐちと絶えず淫靡な音が聞こえる。  
「……そう、じゃあ……いいよ、イッて!」  
ぐっと奥まで突かれた時に、ソフィーの身体が大きく痙攣して、ハウルが抱えていた  
脚もぴんと伸ばされた。肩で息をしながら、彼女はひたすらに遠くを見つめている。  
しかし、彼女に比べて限界を感じさせない彼はもう一度彼女の脚を抱え直すと、  
速い動きで彼女の中を突いた。  
 
絶頂の最中にも攻められ続けて、ソフィーの意識が何度も白みかけた。  
彼女はそれをどうにかなだめながら、ハウルの昂ぶりを必死で受けとめる。  
「あぁ!!ハウル……激しっ……なんで、も、だって、わたし……!!」  
意味をなさない言葉を口走りながら、ソフィーが身をよじった。ハウルもハウルで  
切羽詰ったように眉根を寄せ、荒い息を吐きながら彼女を突き続ける。  
「もう……む、り……ア……やだ、イッちゃ……ぁあ!」  
「僕も……もう…」  
もう、保たない。  
二人が同じことを考え、同じように声を上げ、そして口付けを交し合った。  
舌が絡み、混ざり合った唾液が一筋、ソフィーの頬を伝う。その刺激が引き金となり、  
彼女の内部がざわざわと蠢いた。ハウルが思い切り腰を引いてから、限界まで突き入れる。  
「ひっ!んんっ、あっ、や、あああああああああああっ!!!」  
「……うっ………あ…」  
どくん、とハウルのそれが大きく脈打ち、熱い熱い液体がソフィーの身体に注ぎ込まれた。  
身体を侵食するその熱に、ソフィーは意識を手放した。  
 
瞼の裏に明るさを感じ、ソフィーがそっと目をあけた。窓から差し込む日の光に  
もう昼が近い事を知り飛び起きる。  
「あぁ、丁度良かった。今、起こそうと思ってたんだ」  
カーテンを開けながら、ハウルが振り返った。既に身支度を終えている彼は、清潔な  
笑顔を湛えながらベッドサイドに歩いてくる。  
「おはよう。気分は?」  
「……悪くは、ないけど」  
心配そうなハウルの顔を見、なぜそんな事を聞くのかしら、とソフィーが思いをめぐらせた。  
肩に感じる空気の柔らかさに、自分が何も着ていない事に気付く。  
「あっ!」  
真っ赤になって布団を引き寄せたソフィーに、ハウルは笑いながらガウンを渡した。  
慌ててそれを着、彼女が彼の服を引っ掴んでゆさぶる。  
「ちょっと!なんで起こしてくれなかったの?もうお昼じゃない!」  
「ソフィーが疲れてたみたいだったから。知ってる?君、昨日の晩に気を失ったんだよ」  
いきなり怒鳴りつけられ、ハウルが途惑ったように眉を上げた。急にありありと  
蘇った記憶に、ソフィーの顔がさらに赤く染まる。  
「どうでもいいわそんなこと!とにかく、早くいかないと…」  
ベッドを降りようとした時に、ふと気付く。脚に力が入らない。なんだか恨めしいような  
気分になって、ソフィーがハウルを睨みつけた。  
「……何?」  
「ばかハウル!立てなくなっちゃったでしょう!」  
ハウルが合点したというように苦笑すると、ソフィーを軽々と抱き上げた。そのまま  
彼女を椅子に降ろし、用意してあったティーカップを差し出す。  
 
「今日は家事はお休み。食事なら僕が用意したし、掃除はマルクルがやってくれたよ。  
どうせ立てないんだし、無理しないでゆっくりしようよ」  
そんな事言われても、となおも反論しようとするソフィーの唇を塞ぎ、ハウルは  
軽やかに笑った。春風みたいな笑顔に釣られ、彼女も仕方ないわね、というように笑みを零す。  
「……じゃあ、そうしようかしら。お言葉に甘えて、今日は二人でのんびりすごしましょ」  
そう言ってソフィーが受け取ったお茶をすすった。ハウルも満足そうに笑うと  
彼女の向かいに腰を下ろす。  
「そうだ、チョコレートがあるんだ。食べない?」  
「チョコレート?」  
ハウルが小さな小箱を取り出し、テーブルの上で開いた。解かれた青いリボンを見、  
ソフィーがはっとする。  
「は、ハウル、これって……」  
かさかさに乾いた声でソフィーが訊ねた。それを聞き、ハウルが悪戯っぽく片目を閉じる。  
「なんだい?僕の可愛い奥さん」  
「あなた、これをなんで……」  
愕然としているソフィーをよそに、ハウルは小箱からチョコレートを一つを摘むと、  
それを無造作に口に放り投げた。それからにっこり笑う。  
「レティーのお薦めだよ。店員だけあって、目利きは確かみたい」  
真っ赤になってしきりに口をパクパクさせているソフィーに、ハウルが食べないの?  
と聞いた。彼女は大きく息を吸い込み、声の限りに叫ぶ。  
「ばかーーーーーーーー!!!」  
城を揺るがすほどの怒声に、悪戯好きの魔法使いは目を白黒させ、暖炉で燃えていた  
火の悪魔はぽっと煙を吐き、幼い魔法使いの弟子は飛び上がり、老婆は居眠りを続け、  
老犬がしゃがれた声でヒン、と鳴いた。  
 
正しい事もすれば、間違いを犯す時もあるわ  
それでも、あなたは私に夢中  
尻尾を振って付いてくるわ  
それが、私の可愛いお馬鹿さん  
 

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