ちょっぴりいただいた夕食の時のワインのせい?
部屋まで運んでくれたハウルを思い切って引き止めた。
自分からベッドへ招き入れたのなんて初めてだから、彼の方も鼓動がいつもより大きい…
今更ながら少し緊張した顔をお互い向け合って、熱い息を交わす。
ふぅーっと、長く息を吐きながら首筋に顔をうずめてきた。
視線をまわすと、艶やかな黒髪がさらりと流れて碧い宝石が覗く。
魅惑的な光に吸い込まれるように、唇を寄せた。
ちゅっ…、ちゅっ…
彼がしてくれるように、耳元へ口づけを繰り返す。
「…っ、…はァ…」
感じてくれるのが嬉しくて、首筋にもうなじにも舌を滑らせる。
耳たぶを弄んでいると彼の指が延びてきて、片手で器用に耳飾りを外した。
その指先ごと宝石を口に含み、光る石を軽く前歯で噛んだ。
くわえた宝石を見せ付けるように、彼の鼻先へ顔を寄せる。
彼の両手が頭を包み、のばされた舌で石がくすぐられる。
やがて石は舌でからめとられ、唇は唇でふさがれた。
互いの口を行き来する内に石はぬくもりを持ちはじめ、そんなはずはないのに、くちゅりくちゅりと転がされる宝石にほの甘ささえ感じるようになった。
――まるで飴玉みたい…
気持ち微笑んでそう考えた瞬間、小さな塊はしゅっ、と溶け去った。
口づけたままでびっくりして目を見開くと、やはり唇を交わらせたまま双眼がにやりと微笑った。
細長い指で、顔に掛かる髪を耳に掛けられ、耳たぶがひっぱられる重みを感じた。
揺れる感触。
魔法使いは悪戯っぽく片目を一度しばたたかせ、長い睫毛を伏せて再び深く口腔をまさぐり始めた。
あるはずのない飴が残していった甘さを求めて、彼の舌をいつまでも味わった。
ワインの酔いが、さらに回り始めた。