ハウルは何故か家族会議にかけられていました。  
「・・…で、事の発端は、ハウルさんの浮気が原因だったんですね、」  
「い…いや、浮気ってほどじゃないよ。店にちょっと綺麗な奥さんが来たから、仲良くお喋りしただけで…」  
「でも、それをソフィーが目撃してものすごい不機嫌になちゃったんでしょ?」  
「ま…まあね。」  
「で、ソフィーがずっと機嫌を直さないものだから、ハウルさんが逆ギレして…」  
「ソフィーを猫に変えちゃったんだよな〜。」  
珍しく額に青筋浮かべてまくしたてるマルクルの横から、カルシファーが口を挟みます。  
「だ、だって…ソフィーがあんまりねちねち嫌味を言うもんだから…」  
「そもそもあなたが原因じゃないですか!!」  
だんっと勢い良くテーブルを叩くマルクル。  
「だからってソフィーを猫に変えちゃう事はないでしょうが!!」  
「だから、すぐに戻したってば…・」  
「でも、それから、ソフィー具合悪くなっちゃって寝込んじゃったんでしょ!?いいですか、今までお師匠様だと思って我慢して来ましたが、そもそもハウルさんは…」  
「まあまあ、マルクルや。気持ちはわかるけど、今はそんな事言ってても仕方ないさ。それより、色男…・」  
今まで黙って事の成り行きを見ていた荒地の魔女は、白熱するマルクルを軽くたしなめると、じろりと視線をハウルに向けます。  
「ソフィーを見てやってきなさい。原因作ったのはあんたなんだから。」  
「は、はい!マダム!」  
すっかり縮こまってしまっていたハウルは、逃げ道得たとばかりに慌てて台所を飛び出しました。  
「あ、ハウルさん!話はまだ…」  
「いいじゃないか。とりあえずはソフィーが元気になる事が先決。わかったかい?」  
「…はあい。」  
マルクルはぶすっとむくれると、大人しく魔女の言う事に従いました。  
 
「ソ〜フィ〜さ〜ん?」  
「あ…ハウルゥ…・・」  
ばつが悪そうにそっと部屋に入って来るハウルの姿を見ると、ソフィーはぜいぜいと肩で息をしながら、起き上がりました。  
「…本当に大丈夫?」  
「う…ん…。」  
顔は真っ赤、目は虚ろ…さすがにハウルも不安になって来ます。  
「なんだろうね。何も問題が無いように元の姿に戻したつもりだったんだけどなあ…。」  
しばらくソフィーの熱を測ってみたり、脈を見てみたりしたのですが、原因はわかりません。  
「(でも、何だろう…なんかソフィー、妙に色っぽいような…・)」  
こんな時にそう思うのも不謹慎かもしれませんが、確かに今日のソフィーは変です。  
目が虚ろ・・というよりは、目元が妙にとろんとしてるし、ほんのり赤らんだ顔も、気だるげな息遣いもどこか艶かしいのです。  
「(うーん…・なんか変な気分になりそう…・)」  
しばらくぼうっと見とれていたハウルですが、ふとある事に思い当たりました。  
外はスミレやチューリップが満開。そう、季節は春です。  
春、そして猫と言えば…・  
「(まさか、ソフィー…発情してる!?)」  
有り得ない話ではありません。  
異種族の変身をやった直後、魚の変身から戻ったら、うまく肺呼吸が出来なくなっていて苦しくなったり、馬から戻ったらうまく2本足歩行が出来なくなっていたり…と、変身時の特性が抜けきれずにやっかいな事になるのは魔法使いの間ではよくある事です。  
「(なんだ…猫の性質が抜けきれていないだけか。)」  
とりあえずはほっと一安心のハウルでしたが…・  
「いや、これはチャンスかも…」  
「ん、何があ…?」  
「あ、いや、何でもないよ。あ、いいや、ソフィー」  
「?」  
ハウルはわざと難しい顔をしてソフィーの両頬をそっと包みます。  
「君は大変な病気になってしまったんだ。」  
「え!?」  
「でも大丈夫だからね。僕がきっと何とかするから。」  
力強くそう言って、ハウルはがばっと立ち上がります。  
「まずは君を治すのには準備が必要なんだ。すぐに用意するから待っててね。」  
ハウルはニッコリ優しげな笑みを浮かべました。  
 
「…何ですか?それは?」  
何やら大きな紙袋を抱え、上機嫌で帰宅したハウルをマルクルは面白くなさそうな顔で見つめます。  
「ん?これかい?」  
ハウルが自慢気に袋から取り出したものは…・何故か医者の制服と、飾り程度の数種類の医療道具。  
「…・どっからそんなもの手に入れてくるんですか?」  
「まあね〜内緒〜♪」  
「そうですか。」  
もう付き合ってられんとマルクルはそれ以上追求するのは止めました。  
「♪♪♪(待っててね〜今楽にしてあげるからね〜僕のソフィ〜)」  
「…(何でうちの師匠はこんなに馬鹿なんだろう…)」  
 
「何…?その格好…?」  
部屋に入って来たハウルの姿を見た、ソフィーの第一声がこれでした。  
「どう?似合う?」  
「似合うって…・何であなた、お医者様の格好なんかしてるのよ?」  
「いや、気分だよ気分。だってこれから君を治療してあげるんだからさ。」  
「…・・。(全く…形から入るのが好きなんだから。って言うか、なんであたしが苦しんでいる時にこの人はこう馬鹿な真似が出来るのよ?ああなんだか頭も痛くなってきたような気がする・・・)」  
言いたい事は山のようにありますが、今は突っ込む気にもなれません。  
「それにね、僕は魔法で病気の治療もした事あるんだよ。」  
「…・・。」  
「ん?その疑わしい目は何かな?本当だって〜。」  
「まあいいわ…。早く何とかしてもらえないかしら?本当に…なんか苦しくって。」  
「はいはい、喜んで♪」  
嬉しそうに言いながら、ハウルは手早くソフィーの寝巻きを矧ぎとっていきます。  
「ちょっ…・」  
「いいかい?これは深刻な病気なんだ。だから全身治療しなくちゃいけないんだよ。」  
「そんな事言って…」  
覆い被さってこようとするハウルを押し戻し、ソフィーは軽く彼のおでこを指で弾きます。  
「変な真似はやめてよ!?」  
「え?や、やだなあ〜これは純粋な治療であって…」  
必死に弁解するハウル。しかし、額びっしりの冷や汗を見れば火を見るより明らかです。  
ひっぱたいてやりたいのはやまやまですが、何しろ体がぐったりして動きません。  
「ちょ・・やだ!本当にやめなさいってば!」  
 
「ん…・やだあ…ハウルぅ…」  
ハウルの舌が肌を這う事に、ソフィーは顔を背けて身をよじります。  
「こらこら、消毒してるんだから大人しくしなさい。」  
「消毒って…どういう風によお…」  
やだ…なんか、本当に変な気分・・・。  
ハウルの下手な嘘にはいささか呆れるものがありますが、自分もこの状態を楽しんでいる  
のは認めざるを得ない真実な訳で。  
(・・・って・・・楽しんでる・・?)  
生真面目なソフィー、背徳の気持ちと恥ずかしさと混乱で頭がいっぱいになってしまいました。  
「ねえ!本当に・・やだやだ!やめてよお!」  
思わず涙声で必死にハウルに呼びかけますが、ハウルは笑うだけで行為を止めてくれません。  
「だってさー、君はやだやだ言うけど、君の体の方は嫌がってないんだよ?大丈夫、何度も言うようだけど、これは本当に魔法の医療行為だからね。」  
言って、今度はソフィーの胸を優しくまさぐり始めます。  
「ん・・・あん・・・」  
「うん。乳房は異常無し。相変わらず柔らかくて触り心地がいいね。」  
ハウルは満足そうに目を細めました。  
 
ハウルがソフィーと結ばれた事は、過去に一度だけありました。  
勿論、生真面目で道徳家のソフィーは、がんとして婚前交渉には応じてくれなかったのですが・・・・  
まあ、多少お酒も入ってたし、魔が差したというか。ついソフィーを押し倒し、無理矢理抱いてしまったのです。  
生理的な体の快感はあったもの、精神的には勿論快楽を得られる訳ではありません。  
泣きじゃくるソフィーを見て随分と後悔したものですが・・・・。  
「ハウルゥ・・・・あんっ・・・やあんっ・・」  
愛撫にもだえるソフィーを見て、ハウルは少なからず感動していました。  
自分がソフィーに快楽を与えている、自分の行っている行為で愛する彼女が歓んでいる。  
「可愛い・・・本当に可愛いよ、ソフィー。」  
そうです、これこそが自分が見たかった姿。待ち望んでいた愛情行為。  
「ねえ・・・何であたしこんなに変なの・・・?」  
「え?」  
ソフィーの一言で、ハウルは自分が医者である事を思い出しました。  
「えーと、それはね・・・」  
もっともらしく咳払いをし、服の襟を正します。  
「君が発情してるからだよ。」  
「発情・・?」  
「そ。春だし、君ももう年頃の女の子だしね。おまけにこんな美青年が1つ屋根の下に住んでるからね。  
エッチな気分になってもおかしくないんだよ。」  
猫に変身した後遺症だとは、口が裂けても言えません。  
とたんに首筋まで顔を真っ赤に染め、そっぽを向いたソフィーを見て、ハウルはますます気を良くします。  
「大丈夫。僕が体を張って『大手術』をしてあげるから。うん、麻酔も効いてきたかな?  
いや・・・逆に感じちゃうかもね?」  
充分潤っている事を確認すると、ハウルは一気に貫きました。  
「いやあっ!あたしっ・・こういうのはっ・・嫌だって・・・」  
「もう遅いよ・・・僕も獣になるよっ・・・・・」  
言ってハウルも一気に上りつめ・・・・・・そして果てました。  
 
「ハウル・・・何したのよ・・・」  
「ん?薬投入。」  
「ばかあ!」  
ソフィーは枕でハウルの頭を引っぱたきます。  
「でも、嬉しいなあ。」  
「何がよ?」  
「ソフィーも喜んで僕を受け入れられるようになった事。これで、僕達心だけじゃなくて体でも愛し合えるね。」  
「あれは違うの!病気だったからなの!あたし別に歓んでない!」  
子供のようにむきになって否定するソフィー。しかし、ハウルにはまるで聞こえていません。  
「でも、僕の医者姿そんなに良かった?次は何がいいかな〜?軍服、サリマン先生に返すべきじゃなかったかなあ?」  
「だーから!違うって言ってるでしょ!人の話を聞きなさーい!」  
ソフィーに頭をポカポカ叩かれながらも、ハウルはいつまでも悦に浸っていました。  
(END)  
 
 

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