「…こっち、おいで。」  
魔法使いが片手で持ち上げた毛布に、少女が滑り込む。  
 
…ふふっ。  
…くすくす…  
すっぽり頭からかぶっていれば真っ暗で何も見えないはずなのに、恋人達は暗闇の中でも視線をからめて笑い合う。  
 
ちゅっ、ちゅっ、と小鳥のようなくちづけを落としながら魔法使いがぼやく。  
…ソフィーの顔が見えないよ。  
囁かれた少女はくすぐったさに身をよじらせ笑いながら応える。  
―見えないのに、百発百中ね。  
―そりゃあね。魔法使いだからね。  
きゃっきゃっと戯れ合えば、狭い空間の中はすぐに熱い吐息で満ちて。  
 
―ね、取っても良い?  
少女の夜着をほどくのに手こずりながら、肘できもち毛布を持ち上げて魔法使いは乞う。  
―だぁーめ。はずかしいわ、…。  
―ちぇー…。  
声だけでも確かに口を尖らせたのがわかると、また少女はきゃっきゃっと笑う。  
 
ごちた割りには掛布の下でも難なく上半身はあらわにされて。  
自分の上に空間を取って覆い被さる恋人の首に両腕を回し、ぐいっと寄せてしがみつく。  
―だい、すき。  
耳たぶをくわえて言葉を流し込む。  
―大好きだよ。  
仕返しとばかり、囁きと共に舌先を耳に滑り込ませる。  
またも少女がきゃっきゃっと声をあげながら首を回して逃げる。  
魔法使いの舌が追い掛ける。  
 
――ある夜の睦事。  
密やかに、秘めやかに、紡がれるふたりだけの――。  
 

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