冬のある日、空飛ぶ城の一家はいつも通りの夕食を囲んでいました。しかし、いつもと一つだけ  
違っているのは、そのテーブル上にある数本の瓶。  
それはハウルが仕事の依頼主から貰い受けて来たお酒でした。彼はまず一本を開け、皆に振舞います。  
「どうぞ、マダム。ほら、ソフィーもどうぞ。さすがにマルクルにはまだ早いな」  
「ハウル!オイラにもくれよっ!」  
「なんだカルシファーお前もか?液体注いだら消えちゃうぞ」  
「オイラは悪魔だぞ!その程度で消えやしないよ!」  
「本当かなぁ?まぁいいか」  
カルシファーの分も金属のコップに注いでやります。  
「それでは諸君、頂こう。うまし糧を」  
食事と共にお酒も進みます。荒地の魔女のおばあちゃんやカルシファーは酔っ払って大騒ぎ。  
マルクルは慌てた様子でその二人(?)の世話をしています。ハウルはそれを面白そうに眺めていましたが、  
ガタン!  
という突然の音の方に目を向けました。その音は酒瓶が倒れた音で、瓶の向こうには星色の髪が見えます。  
そこにはソフィーが突っ伏していました。何事かと慌てたハウルは彼女に近づき、  
「ソフィー!?大丈夫かい!?」  
肩を揺すって声をかけました。やがてゆっくりとソフィーが起き上がります。  
「ん…ハウルぅ?」  
起き上がって来た彼女の顔を見れば一目瞭然でした。とろんとした目、紅く染まった顔、  
ろれつが回っていない口調。彼女の周りには何本か空の瓶が転がっています。  
 
「飲みすぎだよソフィー。気持ち悪いとかはない?大丈夫?」  
「んー…ハウルー…」  
ソフィーは心配するハウルをよそに、彼にぎゅうっと抱きついて頬をすり寄せて離れようとしません。  
それどころか  
「ちょっ…ソフっ…」  
ちゅっ。  
ソフィーは自分からハウルの唇にキスをしました。それだけでなく、彼の頬や首などにも  
キスの雨を降らせます。  
いつもは、人前でキスをしようものなら真っ赤になって文句を言うのに、今日は自分からしてくるのです。  
アルコールのせいとはいえ、初めて見るソフィーの酔い具合に、ハウルは驚きつつも楽しそうに  
相手をしていました。  
 
そんな時、同じく酔っ払った火の悪魔がソフィーに向かって言います。  
「ソフィ〜、こっちでもっと飲もうぜぇ〜」  
ハウルに抱きついてキス魔と化していたソフィーは、その誘いに答えてカルシファーとおばあちゃんの元へ。  
「ちょっとソフィー!それ以上飲んだらダメだって…」  
足元がおぼつかなくなっているソフィーを見てハウルが注意しますが、  
「だぁいじょうぶよ〜」  
と、まるで大丈夫そうには見えない様子で歩いて行きます。  
 
ハウルはこの時、仕方ないなぁ程度に思っていましたが、次の瞬間、彼の目の前でそれは起こりました。  
「かるしふぁ〜、んー…」  
「そふぃー」  
ちゅっ。  
あろう事かハウルの目の前で、ソフィーはカルシファーにキスをしたのです。  
「!!!」  
次にソフィーのキス攻撃はマルクルに向けられましたが、  
「ま〜るくる〜」  
「ソフィー!?あのっ、僕はいいよ!」  
一人正常なマルクルは、この先に起こる事を予測してソフィーのキスから逃れます。  
さすがはマルクル、よく分かっています。カルシファーも普段ならすぐに分かりそうなものですが、  
酔った状態では不幸にもすっかり忘れているのでした。  
そう、彼の妬きもちを…。  
 
ぞくぞくっ!  
部屋に何とも言えない寒気が広がります。逃げ回っていたマルクルはいち早くそれに気付き、青ざめました。  
「ハ、ハウルさん!?」  
冷たーい笑顔を顔に貼り付けた彼の師匠は、ゆっくりとソフィーに近づいて彼女を捕まえます。  
「うん?はうるぅ?」  
幸か不幸か何も分かっていないソフィーは、またハウルに抱きついてキスを繰り返します。  
そんな彼女を抱き上げながら  
「……ソフィー…君にはちょっとお仕置きが必要だね…」  
と、ハウルは意味ありげに囁きました。  
 
ハウルはソフィーを抱えたまま2階に上がろうとしますが、ふと振り返って言います。  
「…マルクル」  
「は、はい!おばあちゃんの寝る準備は僕がしますっ!」  
とばっちりは避けたいマルクルは、自分から残りの世話を引き受けました。  
「カルシファーは…」  
などと恐る恐るマルクルが暖炉の方を見ると、酔っ払った火の悪魔は既に薪の上で眠りこけています。  
「あとは頼んだ…」  
そう言い残してハウルとソフィーは2階に消えて行きました。後に残ったのは哀れな弟子一人。  
子供なのに気苦労が絶えない彼は、椅子の上で半分寝ている荒地の魔女を揺り起こして、  
寝る仕度を手伝うのでした。  
 
一方、酔いの回ったソフィーを寝室へと連れ込んだハウルは、彼女の上…ではなく下にいました。  
ソフィーをベッドに下ろして組み伏せようとした所、かわされて逆に上に乗っかられてしまったのです。  
(酔っ払って足元がふらついてるのに、何でそこだけ素早いんだ…)  
彼は唖然としながらソフィーを見上げていました。  
 
「ハウル〜」  
するとソフィーはその紅い顔にとろけそうな笑顔を浮かべて、ハウルにキスの雨を降らせます。  
ちゅっ…ちゅっ…  
唇にもキスをして、段々と深くなり舌が絡んでいきました。  
思いがけず積極的なソフィーを前に、ハウルは考えます。  
(これじゃお仕置きにならないな)  
それならお仕置きの趣旨を変えてみようと思いつき、彼は少々強引にソフィーと体勢を入れ替えて  
組み敷きました。そしてひょいと指を振ると、部屋の中から現れたロープがソフィーの腕を縛り上げました。  
 
「ん…ハウル〜これイヤぁ…」  
さすがに自由を奪われたソフィーは嫌がります。しかし当のハウルは全く気にとめずに言いました。  
「君は僕だけのものなのに他のやつらとキスなんかして…。さっき僕の目の前でカルシファーなんかと…。  
 しかもマルクルにまでしそうな勢いだったじゃないか。今まで言わないで我慢してたけど、君はカブとも  
 キスしたんだって?マダムに聞いたよ…」  
そう話す彼の表情は少し冷たくて、しかしその瞳は嫉妬による激情を宿し、熱っぽくソフィーを見つめます。  
 
「僕の事しか考えられないようにしてあげる…」  
そう言った彼の微笑みはぞっとするほど綺麗で、正常な思考が働いていないソフィーにも、ハウルが何時もとは  
違う何かをしようとしているのが分かりました。  
腕を縛られていて普通には服を脱ぐ事が出来ないソフィーですが、ハウルがボタンを外して彼女の服を  
脱がせようとすれば、魔法の力ですっと脱がされていきます。  
ソフィーの全ての衣服が取り払われると、彼の手が白い肌を滑り始めました。酔いも手伝ってか、  
彼女は素直に声を上げます。しかし、いつまでたっても彼の指先は肝心な所に触れてくれません。  
ゆっくりと、いいトコロを掠めるように愛撫され、ソフィーの内圧は徐々に高まってきます。  
ちゃんとそこに触れて欲しくて、もっと激しく求めて欲しくて、ソフィーは身を捩じらせました。  
 
いくらソフィーが潤んだ目で見つめても、彼は微妙なトコロしか触れてくれません。  
抱きつこうとしても、腕が縛られていて叶いません。とうとうソフィーは耐え切れずに言いました。  
「…ハウルっ…もうだめ…ちゃんと触って…」  
「んー?」  
ソフィーが懇願してもハウルは敏感な部分を避けて愛撫を続けます。時々ほんの少しだけ胸の紅い頂点に  
指を掠めてみたり、白い内腿の秘部のギリギリを撫でたりしていました。  
核心には触れないもどかしい愛撫を長く続けられ、ソフィーは体の熱い疼きと物足りなさに涙が零れます。  
「やっ…もう…おかしくなっちゃう…」  
「おかしくなっちゃいなよ。僕の事しか考えられないくらいに…」  
どれくらいそれが続いたでしょうか。ようやくハウルが体を起こしました。それにつられたようにソフィーも  
よろよろと体を起こしたかと思うと、彼のズボンに手を掛けてボタンを外しました。  
「ソ、ソフィー!?」  
恋人の突然の行動にうろたえていると、次の瞬間  
ぺろん…  
ソフィーの可愛らしい舌が、硬くなったハウルのそれを舐めあげました。  
「うっ…ソフィー!」  
ぱくり…  
何回か舐められたそれは、やがてソフィーの小さな口に咥えられました。  
 
彼女からしてくれるのは初めてな上、舌が触れる感覚にハウルの興奮も快感も一気に高まります。  
「ソフィーっ…僕を急かしてるの…?」  
彼がそんな事を言っている間も、ソフィーの口は休みません。ハウルもとうとう我慢できなくなったのか、  
彼女の顔をそれから引き離し、茂みの奥に指を滑らせると、そこは滴り落ちるほどに濡れていました。  
「んんっ!…あっ…」  
「我慢…できなくなった?」  
「ハウルぅ…もうだめ……きて」  
酔っている上にここまで焦らされてはソフィーも耐えられません。  
彼の思惑通り、今の彼女にはハウルしか見えていないのです。  
「いい子だ。君の欲しいものをあげるよ…」  
ハウルはソフィーの脚を抱え上げて、彼女の奥まで自身を突き入れました。  
「ああっ!んっ…!」  
焦らされ続けてようやく与えられた感覚に、ソフィーは身を捩って悶え、  
二人が繋がった部分からは淫らな水音が響き渡って、さらに興奮を煽ります。  
暖かくきつく絡み付いてくるソフィーの中に、ハウルはどんどん追い詰められ、  
ソフィーはそんな彼の唇に深いキスをして舌を絡めました。二人が唇と下半身と両方で  
繋がっているような感覚にとろけそうなほどの快感を感じます。  
やがて高みへの階段を登りきった二人は絶頂に辿り着き、  
「うっくっ!ソフィーっ!!」  
「あっあっ!はぁんっ…ハウルっんっ!ああっ!!」  
彼の熱い精がソフィーの胎内を満たしました。  
 
しばらくぐったりとしていた二人ですが、先にソフィーが動きました。  
そして次に彼女から出た言葉に、ハウルは仰天してしまいました。  
「…もういっかいしよ…」  
「えっ!?」  
アルコールのパワー恐るべし。  
 
 
翌日。  
昨夜の事はさっぱりと忘れているソフィーは、頭痛と腰痛に襲われていて、  
実はハウルのほうもフラフラで、朝なかなか起きられませんでした。  
とりあえず重症なソフィーを部屋に残し、ハウルが居間に下りて行くと、  
「あっ、ハウルさん…お、おはようございます」  
「おはようマルクル、マダム」  
昨日の事様子を覚えているのか、マルクルが恐る恐る挨拶をします。  
おばあちゃんはお酒の影響など全く感じさせずにいつも通りに座っていました。  
そして暖炉には、  
「うー、頭痛いよハウル。オイラどうしたのかなあ!?」  
「カルシファー覚えてないの!?」  
マルクルがそう言ってしまってから、しまった!という顔をします。  
この火の悪魔も昨夜の記憶が無いようです。  
 
「……カルシファー、二日酔いにはこれが一番効くんだ」  
バシャッ!  
そう言ってハウルはコップの水をカルシファーにかけました。  
「ぶわぁぁっ!!何するんだよハウル!?オイラ消えちゃうじゃないか!!」  
しかし彼は一言、  
「コップ一杯の水で消えるようなお前じゃないだろう?それともいっぺん消えてみるか?」  
ニッコリと笑顔でとんでもない発言をしました。  
(オ、オイラ昨日何かしたか!?)  
その恐ろしい笑顔を見た、紅い火の悪魔が青ざめたのは言うまでもありません。  
 
のちに荒地の魔女が一言  
「酒は飲んでも飲まれるな、だよ。マルクル?」  
「え?そ、そうだね…」  
 
 
 
END  
 

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