「あら?ハウルってばどこに行っちゃったのかしら」  
朝から全く姿を見せない恋人の姿に、ソフィーは首をかしげた。  
朝食の時にも出てこなかったし、さっき彼の部屋を覗いてもベッドはもぬけのからだった。  
「さあ。おいらはしらないよ」  
暖炉の中でくすぶった火の粉を吐きながら、カルシファーが言う。  
同じ様にマイケルにも聞いてみたが彼も知らないらしい。  
もともと急な仕事が入ったりして、誰にも告げずに家を空ける事今まで何度かあったので、  
ソフィーは少々心配しながらも気にしない事にした。  
しかし数時間後、彼女の心配は見事に裏切られる羽目になる。  
 
買い物のためにソフィーは街に下りた。  
目当てのものも買った後、城に戻ろうと人々で賑う界隈を通り抜けると、一軒の仕立て屋の前で彼女の足は止まった。  
普通ならそのまま通り過ぎてしまう場所であるが、今回はそういうわけにもいかないようだ。  
遠目からでもはっきり判るほど派手な服を纏い、金の髪をゆるく風になびかせて立っている男。  
店先の前にいたのは何しろ朝からいなくなっていたハウルその人だったのだから。  
 
(どうしてハウルがこんなところに…?)  
てっきり仕事にでもいったのだと思っていたのに。  
ともかく声を掛けようとソフィーが足を踏み出した時、彼の側に一人の女性が並んでいたのに気が付いた。  
恐らくこの店の店員なのだろう。  
しかし彼女もまた一目見るだけで美しかった。  
結局踏み出した足はその場で留まるように硬直するほかなく。  
「…ハウル」  
ずきりと胸の奥が針で刺されたように痛い。  
あの女性は誰なんだろう。  
どうしてハウルはあの女性と仲よさそうに話しているのだろう。  
そんな事がどこからか思い浮かんできては頭の中で消えてゆく。  
彼が自分を心から愛してくれて、大事にしてくれているのはわかっている。  
他の女性など決して見たりしないと信じている。  
それでも。  
あの二人は絵に描いたような眩しさに満ち溢れている気がした。  
「………」  
ふと自分の服を見下ろせば、地味な灰色の服。  
家事がしやすいし、汚れも目立たないからと思ってきているのだが、そんな自分が急に惨めに思えてきた。  
(あたし…本当に彼に見合う立場なのかしら)  
そんなことをつい考えると、その場にいるのがいたたまれなくなった。  
ハウルと女性がまだ話している光景を背に、ソフィーは一人駆け出した。  
 
 
30分ほどしてからようやくドアの軋んだ音が響き、この城の主である魔法使いが帰ってきたことを告げる。  
「ハウルさん!お帰りなさい」  
「やあマイケル。留守を頼んで悪かったね」  
笑顔で迎えるマイケルの肩を叩くと、ぶすくれた様子で暖炉の中にいる悪魔の姿が目に入った。  
カルシファーは呆れたような苦いような複雑な表情をしていて、ハウル不思議そうに近付いた。  
「どうしたのさ。冴えない顔だね」  
「当たり前だよ。さっきから居心地悪くて仕方がないんだ」  
「え?」  
「ソフィーだよ。すっげえ機嫌悪そうでさ」  
「どうして?」  
「そんなのおいらが知るもんかい!  
とにかく逆鱗に触れないように気をつけなってコト」  
「ええ〜?」  
その時ソフィーが台所のから出てきた。  
彼女はハウルを一目見ると、一瞬だけ顔を引きつらせる。  
「あ、ソフィー。ごめんね、黙って出て行って」  
「あら。帰ってたのね。もっとゆっくりしてくるんじゃないかと思ってたわ」  
そう言う彼女の顔は笑っているが、目が笑っていない。  
ぴりぴりと怒気を含んだ空気があたりを瞬時に包んだ。  
よからぬものを感じたのかマイケルはそそくさと二階に退散し、  
カルシファーも急いで暖炉の奥深くに潜ってしまった。  
残されたハウルは困ったように眉根を寄せて、怒った様子の妻の機嫌を伺うほかない。  
 
「…あ、あの…」  
「ねえ、ハウル。教えてちょうだい。  
あなたが街で楽しそうに話していたのは、どこの、何ていう、どういったお嬢さんなのかしら?」  
「な、見てたの!?」  
驚いて言う夫を尻目に、ソフィーは大きく頷いた。  
「ええ、この目ではっきりとね」  
「あのさ、何を勘違いしてるかしらないけどそれは…」  
「あたし、もう訳がわからないわ」  
ぼろりとソフィーの瞳から大粒の涙が零れ落ちる。  
悲しくて苦しくて、言いたいことはもっとたくさんあるのに言葉は浮かばない。  
そんな彼女を抱きしめようとハウルは手を伸ばしたが、それをソフィーは振り払ってしまった。  
「ソフィー…」  
「言い訳なんて聞きたくない!」  
一言そう吐き捨ててソフィーは自室に閉じこもってしまった。  
 
 
本当は信じている。  
彼はそんなことを絶対にしないと信じている。  
それでも今あるこの生活が本当に幸せで楽しいから、不安にならずにはいられない。  
もしささいなきっかけで壊れてしまったら?  
それが一番恐れていることだ。  
しばらくベッドに突っ伏して泣いていると、控えめに扉がたたかれた。  
 
「ソフィー、入るよ」  
勿論入ってきたのはハウルだった。  
すっかり腫れて真っ赤になってしまった目をこすりながら、ソフィーは黙ってベッド際に腰掛ける。  
ハウルもまたその隣に座ると、ひざの上に固く握っておかれた彼女の手をとった。  
そして真摯な声でつぶやいた。  
「ごめん…。そんなつもりじゃなかったんだ」  
「ええ、わかってる…。あたしも少し感情的になりすぎたわ」  
「僕は別にあの人を口説いてたとか、そういうんじゃないから!  
それは本当だから!ね?信じてソフィー」  
一生懸命な上、今にも泣きそうな顔で必死に言う彼に、ソフィーは頷いて答える。  
「ええ、信じるわ。きっとあなたなりに何かあったからなんでしょ?」  
「ソフィー!やっぱり君は僕の最高の奥さんだよ!」  
ぎゅうっと抱きしめてくるハウルの首に腕を回して、ソフィーも小さくわらった。  
ひとしきりそうしていた後、ハウルは後ろに隠していた白い箱をソフィーに差し出した。  
「なあに?」  
「実はこれを買いに行ってただけなんだ。  
あの子は前に僕に仕事を頼みに来た子だったから、それで喋ってただけで…」  
そんなシーンを運悪く目撃して、自分は勝手に誤解したわけだ。  
単純というか、夫にも負けないバカというか。  
「そうだったの…。ごめんなさい、私ったら…」  
申し訳なさそうに言うソフィーに、ハウルはいいから開けてみて、と急かすように箱を渡した。  
 
言われるがままに開けてみると、そこに入っていたのは一着のワンピースと靴だった。  
ワンピースは淡い桃色で、いたるところに小さなビーズが散りばめられている。  
靴もあまりヒールの高いものに履きなれていないソフィーに合わせられたのか、  
シンプルではきやすそうなものだ。  
「きれい…」  
思わず簡単の溜息を漏らしていると、横でハウルが頷いた。  
「ねえ、覚えてる?明日が何の日か」  
「…なんだったかしら」  
「もう!ソフィーってば忘れちゃったの!?  
明日は僕らが初めて出会った五月祭の日じゃないか!」  
「あっ…」  
最近何かと忙しくてつい忘れていた。  
彼の言うように、一年前の明日は二人が初めて出会ったあの日。  
「せっかくの日にさ、おめかししないなんて勿体ないと思ったんだ。  
だから君に内緒でプレゼントを…」  
ハウルは照れくさそうにそう話した。  
そんな彼の気持ちを知って、ソフィーは自分自身を更に呪いたくなった。  
「ごめんなさい。あたし何も知らなかった…」  
「そうだよね。記念日は忘れるし、僕に浮気の疑いまでかけちゃうんだから」  
「ごめんなさいっ!ほんとに、ほんとに、ごめんなさい!」  
ソフィーが真っ赤な顔でしきりに謝るので、頬を膨らませていたハウルも観念したように笑った。  
「ううん、いいんだ。それよりもソフィーがすっごく嫉妬深くて、  
それだけ僕の事思ってくれてるのがわかったからね」  
「もう!言わないでよ!恥ずかしいじゃない」  
「かわいい。大好きだよ、僕のソフィー」  
自然に唇が重なるまで、そう時間はかからなかった。  
 
幾度か角度を変えて口付けていると、  
自分の身体が何かふんわりと柔らかいものの上に横たわっているのに気が付いた。  
(も、もしや…)  
空いた手で探ると、間違いなくシーツの感触。  
キスをしていた間、知らないうちに押し倒されていたらしい。  
「ちょっと!何して…!」  
慌てて身体を離すと、上に覆いかぶさっていたハウルが上目遣いで悲しそうに問いかけた。  
「僕、疑われてとてもショックだったんだ…。  
ソフィーに嫌われるようなことしちゃったんだ、って。  
僕は君に捨てられたら生きていけないのに…!」  
「うう…っ」  
反則技な言葉だとわかっていながらも、  
こんな甘えた仕草と伺うような瞳で見られたらソフィーには逆らう術はない。  
それを知った上でわざとそんな手を使うのだ、彼は。  
ずるいと思う反面、結局どこまでいっても自分は彼を愛しているし、  
決して嫌いになどなれないのだから。  
 
 
「…ハウル」  
名前を呼んで軽くキスをすると、それだけですぐ目の前にある彼の顔はとろけるように甘くなる。  
宝石のような緑の瞳がすっと細められたかと思うと、すぐに唇に次いで額に、頬に優しい口付けが何度となく落とされた。  
繰り返されるキスの合間に服は暴かれ、肌が外気に晒されたかと思うとすぐさまハウルの手が伸びてくる。  
「ソフィー、大好きだよ」  
うらやましいくらいさらさらの金の髪が顎先にかかる。  
「あ…っ」  
ひた、と濡れた感触が、胸を彷徨う。  
ハウルの舌が、唇が、自分の胸の上を蠢き渡る。  
「…っ…!」  
不意に尖った先端を軽く含まれて背筋を駆け上がってくる、ぞくぞくした甘い痺れ。  
身がしなり、下肢が、じわじわと疼いてくる。  
次いで自分の奥まった箇所が今以上の刺激を求め始めるのに気づき、ソフィーは堪らず顔を背けた。  
きっと無意識に快感を求めて恥ずかしい顔になっている。  
こんな顔、見られたくない。  
ただでさえ子どもっぽい勘違いを起こしてかんしゃくを起こしたばかりだというのに。  
「どうして向こうむくの?可愛い顔を僕に見せてくれないの?」  
「嫌よ!絶対に嫌」  
「…仕方ないなあ」  
唇が、舌が、胸の突起を舐ったかと思うと、口全体で覆い尽くすようにむしゃぶりついてくる。  
いつしか自分の手首を押さえつけていたハウルの手が、もう一方の胸に伸びて来て揉みしだき始めた。  
「ひゃっ、…ん、…っふぅ」  
甘い吐息と、嬌声が我慢できずに漏れ出でる。  
唇を噛み締めて、堪えようとするのだが間断なく繰り返される愛撫に溺れそうになる。堪えきれない。  
 
「本当に可愛いよ。ほら、ちょっとこうしただけで…」  
「ふっ、あぁあ…!」  
指の腹で突起を押しつけては、摘まむ。しゃぶる。  
何度となく繰り返されるその愛撫のせいで、柔らかだったそこは既に硬く尖り、  
ピンク色から紅く熟れた色に変化してきている。  
痛みすら訴え始めているのにそこを刺激される度、  
自分の奥底が更なる刺激を求めて下肢がもじもじしてくる。  
生理的に流れ落ちるソフィーの涙を唇で拭って、ハウルは婉然と微笑った。  
そんな彼を本当に綺麗だと思う。  
そしてその彼が自分を心から愛してくれる事が本当に嬉しいと思う。  
もう力が抜けて抵抗のなくなったソフィーに軽くキスを落としながら、  
ハウルの手がするすると下肢の奥へと伸ばされた。  
「ん!」  
差し入れられる指の感触に、途端、仰け反って逃げを打つ躯をそうはさせじと捉えてハウルは指を更なる奥へと侵入させた。  
彼女自身の蜜が溢れかえったそこはぬるり、とした感覚とともに、熱く畝っている。  
奥に差し入れている指を一気に3本に増やしてくちゅくちゅと淫猥な音を立てながら掻き混ぜ続けると、  
ソフィーがとうとう堪らなくなったのかハウルの肩口に噛み付いてきた。  
 
「欲しい?」  
「な…っ!」  
耳元で囁かれる、普段より一段低くて甘い声にぞくりと背筋を電流が走る。  
今更ながら、感じて震えてしまった自分の躯の反応が恥ずかしくてソフィーは、顔を真っ赤にして俯く。  
本当にずるいひとだ。  
さっきまで半泣き状態でおろおろしてたくせに、こんな時だけ立派な『男』の顔になるなんて。  
「ソフィー」  
余すことなくキスの嵐を降らせながら、また胸を愛撫しつつ、  
彼女の柔らかな内壁を蹂躙して、掻き回す。  
胸を嬲るように、愛しむように、ハウルは撫で付ける。  
彼女の陥落を、促して。  
それでもまだ愛しいひとは恥ずかしそうに唇を噛んで耐えている。  
「ほんと、強情な奥さんだね。ま、そこがカワイイんだけど」  
 
ふっと笑って、埋め込んでいた指を引き抜いた。  
どのみち押さえなど利きそうにない。  
ソフィーの下肢を自分の肩に抱えて、今度は焦らさず限界まで反り返っていた自身を一気に挿入した。  
「あっ、んぅ…!!」  
満足気な吐息がソフィーから漏れた。  
その艶やかな声から、彼女も欲しがってくれたのだと知るとやっぱり嬉しくて、  
仰け反る華奢な身体を自分の方に引き寄せ更に奥へと自身を突き入れる。  
脈打つ楔に絡んでくる、熱い襞。  
衝動に突き動かされるまま、何度も激しく腰を打ちつける。  
「ソフィー…ソフィー…大好きだよ」  
「んっ、は、…ハウル…!」  
名前を呼べばうっすらと潤んだ目で見つめながら応えてくれる。  
そんな彼女が心から愛しい。  
ぐい、とソフィーの腰を一際強く引き寄せて、強く自身を最奥へと打ち付けると、  
びくびくと収縮する襞が解放を促す。  
それに誘われるままにハウルは欲望の証を思い切り叩き付けた。  
 
 
翌日、五月祭当日。  
プレゼントした服を着てくれた妻の姿に、ハウルはまたも半泣きで喜んでいた。  
「わー!やっぱり僕の見立て通り、よく似合ってる!  
可愛い!綺麗!最高だよソフィー!!」  
「そ、そんなに誉めなくてもいいのよ…」  
呆れ半分照れ半分、の表情でソフィーが笑う。  
渡されたワンピースは本当にぴったりなもので、ふわふわと広がる裾が可愛かった。  
「じゃ、デートに行こうか。僕の奥さん」  
「ええ、行きましょう」  
差し出された手の上にソフィーが手を重ねるとまるであわせられたかのように、街の方から音楽が聞こえてきた。  
しばらくそれに耳を傾けていたハウルだったが、すぐに何かを思いついたようにソフィーを抱き寄せた。  
「そうだ!ソフィー踊ろうよ」  
「えっ、ここで!?」  
「いいじゃない。今日はお祭なんだよ!」  
「で、でも私踊れないわ」  
「僕がリードするよ」  
「う…」  
「ねえ、一生のお願いだからさ」  
またも上目遣いで見られては、やっぱり逆らう事なんて出来なかった。  
「…足を踏んでも文句はなしよ!」  
 
 
目の前の大好きな人の肩に手を置いて、願い事をひとつ。  
どうか、いつまでもあなたといられますように。  
 
 

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