その日、ソフィーへと届いたサリマンからの手紙にはただ一言だけ書いてありました。  
 
『いい物を手に入れましたので、貴女に差し上げたいと思います。くれぐれも、ハウルには知られないようにおいでなさい』  
 
ハウルが他の場所へ用事が出来て出かけた日、ソフィーは城へ向かいます。  
すぐに前に会ったのと同じ顔の小姓が対応しに出てきて、サリマンの所へ連れて行ってくれました。  
「あら、随分早く来れたのね、ソフィーさん」  
クスクスと笑いながら、その女性は椅子から立ち上がる事もなく、目の前にある優雅なデザインの椅子を指し示します。  
軽く会釈をして、ソフィーはそこになるべく粗相の無いように座ると、緊張した顔でサリマンを見ました。  
「ふふ、そんなに緊張なさらなくても大丈夫ですよ。そうね、早く見せてさしあげた方がよろしいかしら。あなた、アレを持ってきて頂戴」  
目線だけで後ろにいた小姓に言うと、軽く一礼をしてしばらく彼が離れます。  
「持って来るまでに、最近貴女達がどう暮らしているのか教えて下さいません?」  
にっこりと、サリマンは微笑みます。  
ソフィーは緊張しながらも、最近の事を話していますと、小姓が何やら畳まれた布を捧げ持つように戻ってきました。  
「ありがとう、えぇ、しばらく出入りは禁止しておいて頂戴ね。」  
何やら小姓に指示を与え、彼も含めて人払いをすると、サリマンはそれを持ったままソフィーの方へ向き直りました。  
「ソフィーさん、差し上げたい物というのはコレなんですよ」  
言いながらそれを広げます。  
「まぁ、何て綺麗な布・・・、地色はとても地味なのに花模様が散っていて、それに不思議な形のガウン・・・ですか?」  
「ふふ、ガウンと言えばガウンなのかもしれませんわね。これは、東の方の国の服で『キモノ』と呼ばれる物ですよ」  
ささ、どうぞお取りなさい、と言うように着物をソフィーに差し出します。  
 
「コレを、貴女に着て欲しいんです。珍しいものを着て、あのハウルを驚かせておやりなさい」  
差し出されるまま受け取ったソフィーは少し迷いました。  
だって、初めて見るコレをちゃんと着る事が出来るかどうか、わからなかったからです。  
ですが、サリマンは優しく微笑むとこう言いました。  
「大丈夫ですよ、おつきの者が貴女に着方を教えますから。帰るまでにちゃんと覚えて頂かないと、帰しませんからね?」  
その一言は、ソフィーにはまるで死刑宣告のように聞こえたそうです。  
そして、気付くと背後に小姓が2人。  
え?と思った途端、ソフィーの服は脱がされ、幼い顔とはいえまるで金髪のハウルが小さくなったかのような少年に脱がされたソフィーは  
ただただ硬直するばかりで、最初は着方の説明も全く聞こえなかったようです。  
「覚えないと、どんどん帰りが遅くなってハウルに追求されますよ?」  
笑いを含むサリマンの声に我に返ったソフィーは、素直に着方を習い始めました。  
サリマンは、小姓の手が体に触れる度に顔を赤らめる初々しいソフィーの様子を見ながら、更に増えた小姓相手に談笑をしていました。  
「ねぇ見て頂戴、あの様子。まだまだハウルは開発の途中と見ていいんじゃなくて?あの子とした事が、今回はオクテなのねぇ」  
などと、好き勝手に言い放題です。  
それが耳にまた入るものですから、ソフィーは余計頭に血が上って着方を間違えるのでした。  
 
夕方遅くにやっと帰って来たソフィーは、ハウルがまだ戻っていないのを確認してホッとため息をつきました。  
手には、サリマンがくれた『キモノ』が2着。着方は一応覚えました。『オビ』もちゃんとありますし、『タビ』も『ゲタ』もあります。  
「なんであたしがいじられなきゃいけないのよっ!」  
イライラしながら置いたフライパンは、ボーっとしていたカルシファーの頭をドン、と強く抑えつけました。  
「イテテ、何するんだよソフィ〜、痛いじゃないか〜」  
「ボーッとしてるのが悪い!」  
普段なら謝るソフィーが、えらくご機嫌斜めなのでカルシファーはそれ以上言わず、薪の間から煙をポッポッと噴き出すだけでやめました。  
その後、マルクルは食べ方が汚い!と怒られ、元・荒地の魔女はこぼし過ぎ!と怒鳴られ、ヒンはうるさい!と怒られ。  
ハウルが戻ってきた時、2人+2匹がすがるような目になったのは言うまでもありません。  
そして、ソフィーと言えば、ハウルに対してまるで刺すような目で見ると、フン、と鼻を鳴らして1人でお風呂へ行ってしまいました。  
 
みんなに懇願されて、ソフィーの癇癪をなだめたハウルが、その日あった事を聞いて、どうにか着物に着替えさせたソフィーの、  
はだけた裾から見える脚に発情してしまって押し倒したせいで、次の日またソフィーの機嫌を取るのに必死だったと言うのはまた別の話。  
 
 
 
お風呂から出ても、みんなと夜のデザートを食べず、部屋に篭ったソフィーを追って部屋に行ったハウル。  
相変わらず機嫌が悪いソフィーを、どうにかなだめすかして問い詰めます。  
そして、サリマン先生がソフィーに地味な嫌がらせをした事と、その代わり?に『キモノ』をくれた事を知りました。  
 
目の前にいる、自分の好きな人は、とっても綺麗な目をしています。  
その、綺麗な目をもう、キラキラさせながら自分を見つめているんです。  
ソフィーは、何を言われるか既に予想がついてため息が出てしまいました。  
そんな妻の心中を察する事が出来ない、不器用男なハウルは心配して星色の髪を漉きます。  
「どうしたんだい、ソフィー。サリマン先生の事で、まだ何かあったの?」  
「そうじゃないわ、ハウル、ただ・・・何となくよ、平気」  
にこ、と微笑んでみせると、ハウルの顔があからさまにパァッと明るくなります。  
こういう、単純な所は心を取り戻す前と全く変わらないんですが。  
そのハウルが、とっても嬉しそうに手をギュッと握ってきました。  
「じゃあさ、僕に『キモノ』着たソフィーを見せてよ!」  
「ハァ・・・・・・・・」  
思わず、大きくため息が出てしまいました。  
「ぁ・・・・ソ・・・ソフィー?」  
機嫌をまた悪くしたのかな、という顔でハウルが恐々小声でソフィーの顔を覗き込みます。  
「ううん、大丈夫。言われるかな、って思ってたら本当に言ってきたから」  
言いながら立ち上がり、ハウルの手を取ってドアまで誘導します。  
「着替える間、あなたは外よ」  
「えぇっ!僕、着替える所も見た・・痛い、痛い!外出る、出るから叩かないでソフィー!」  
情けない声を上げながら、ハウルは渋々外で待ちました。  
 
ソフィーの部屋の前で立ち尽くすハウルの前を、マルクルが走って行きます。  
「おやすみなさい、ハウルさん!」  
ヒンも一緒に足元をトテトテと走って少年に着いて行きます。ハウルの前を通り過ぎる時  
「ヒン!ヒヒヒン!」  
笑っているかのように鳴いたのはきっと、気のせいでしょう。  
しばらくすると、ゆっくりとした足取りで元・荒地の魔女がやってきました。  
「おや、待ちぼうけ喰らってるのかい?さすがだねぇ〜」  
「待つというのもいいものですよ、マダム。おやすみなさい」  
「待たされるのが嫌になったらアタシんトコへいらっしゃいよ?ヒヒ、おやすみぃ〜」  
やらしく笑うと、おばあちゃんは部屋に入って行きました。  
後に残されたハウルは、ため息をつきます。  
「待たされてばっかりなのは、僕の気のせいじゃないって事なのかな。いや、ソフィーだったらいくらでも待つさ!」  
わけの分からない自信だけ持って、両手を握り締めます。  
見た事がない『キモノ』と言う服。それを着たソフィーを思い描いて、背後のドアが開くのを待つ事にしました。  
 
それからまた10数分程して。  
ハウルが、色々なドレスを着たソフィーの妄想で顔がだらけきっている所へ、急に寄りかかっていたドアが開きました。  
「ハウル〜ごめんなさい、待たせちゃったわね。もういいわ、入って?あら?」  
急に開いたドアのせいでバランスを崩し、その場に転んだハウルを見てソフィーは目を丸くしました。  
「何やってるの、ハウル?」  
「い、いや何でもないよ!せっかく着たのに何でガウンなんか着てるんだい、ソフィー」  
「いいから中に入ってよハウル、寒いわ」  
ぱたん、とドアが閉まります。  
 
ドアには施錠の術を。壁には盗聴防止の術を。天井には外の夜景が映るように透ける術を。  
手際良くかけて、振り向いたハウルが見たのは、鴇羽色の花びらが裾に散っている、美しい着物姿のソフィーでした。  
もっとも、『着物』を知らないハウルには艶やかな花柄が裾に入ったガウンに見えたのですが。  
「ソフィー、随分綺麗なガウンだね。しかもベルトも変わってるね、太いし柄が入ってる」  
「コレが『キモノ』なのよ!もう、見たいって言うから頑張ってオビもちゃんとしたのに!」  
ぷー、っと膨れてそっぽを向いたソフィーを見て、ハウルは驚きました。  
ガウンの前を無理やり合わせたようにしか見えなかったのコレがサリマン先生からの贈り物だと知って。  
「へぇ、そうなんだ・・・ゴメンね、ソフィー。僕、知らなかったから」  
「あたしもそうだったもの、仕方無いわよ。でも、これってすごく綺麗な模様入ってると思わない?」  
くるり、と足袋を履いた足で一回転回ります。  
一瞬、着物の裾から見えた白い足袋と、それに勝るとも劣らない白いふくらはぎにハウルの目が釘付けになりました。  
ソフィーは、そんな彼の視線に気付かずに下から覗き込みます。  
「ねぇハウル、この『キモノ』どうかしら?ちょっと胸とか苦しいけど、慣れたらダイエットにききそうかなって思えるのよね」  
ふふ、と笑うソフィー。いつもと違って、伸びた髪を軽く結っているのがまた可愛らしい感じです。  
でも、ハウルの頭の中には、先ほど一瞬見えた白いふくらはぎしか残っていません。  
「しかもね、この『オビ』ってのがまた大変でね!すごい長〜い、細長い布を腰に巻きつけるのよ!もう、大変なの!」  
『腰』という単語に、ハウルの別世界に飛んでいた意識が戻ります。  
「え?あ、あぁ、巻きつけるの?どうやって?」  
「もうっ!ちゃんと聞いてなかったんでしょ!」  
腰に手を当てて、ちょっと怒るソフィー。そんな彼女の着物の袖から、白くて細い腕がチラチラと見え隠れします。  
 
袖をまくって洗い物をしているので見慣れているはずの腕も、こうして普段見ない『キモノ』から見えると何と艶っぽく見える事でしょうか。  
「キモノ・・・いいね・・・」  
脳内から言葉が素に漏れてしまって、ハウルは焦りました。ここで、キモノじゃなくってソフィーを褒めるべきでは?と焦りました。  
ですが、ソフィーは嬉しそうに笑ってうなずきます。  
「うん、コレの着方聞いてる時はホンットに最ッ低な気分だったけど、こうやってハウルが見とれてくれると我慢した甲斐あったわ!」  
とは言われるものの、見とれているのはキモノじゃなくってそこからチラチラ見え隠れするソフィーの素肌なんですが。  
「でも苦しいわ、コレ。もう着替えちゃおうかしら?」  
ベッドにストンと腰かけ、パタパタと手で顔を仰ぐソフィー。  
足は床にちょうどギリギリ届かないので、パタパタと手と同じように不安定に揺れ動きます。  
合わせがまだゆるいのでしょう、裾が少しだけはだけて白い脛や足袋や、角度によってふくらはぎが見えます。  
「ねぇ、ハウル、さっきからどうしたの?」  
上目遣いでソフィーが聞いてきた瞬間。  
ハウルの頭の中で、何かが『ぷつん』と切れました。  
 
どさり、とする音にハッと我に返ります。  
気付くと、ソフィーを押し倒していました。  
腕の下の少女は驚いた顔で、声をあげる事すら忘れ、自分をただひたすら見つめています。  
ほどけた髪が顔に一筋・二筋絡みついているのがとても、何とも言えない雰囲気を醸し出します。  
荒々しく口付けようとすると、ソフィーが厭々をするように首を振りました。  
「ハウル、ダメ・・・このままじゃ、あたし苦しくって酸欠になっちゃう」  
だったら脱がせばいいや、と思って脱がそうとしますが、生憎とベルト・・・もとい『オビ』が解けず苦戦します。  
 
「ソフィー、君固く結び過ぎだよ!」  
「違うわハウル・・・その・・・長いから、簡単には解けないのよ」  
上半身を起こして、ソフィーが手を後ろに回します。  
端っこに気付いた途端、ハウルはまた手荒にそれを引っ張りました。  
「きゃぁぁぁっ!」  
軽く悲鳴をあげて、ソフィーがベッドの上で回転。帯が解ける勢いで、体も回ってしまったのです。  
「ハウルの馬鹿!」  
彼がこういう時に単純になるのは、もう百も承知ですが、言いたくもなります。  
帯が解け、キモノの前がはだけると中に着ている襦袢が露わになりました。  
キモノとはまた違って真っ白、純白のそれはまるでソフィーの純粋さをあらわしているかのようです。  
それを見た途端、ハウルはソフィーに覆い被さりました。  
 
荒く口付けると、素早く舌を潜り込ませて、並びのいい歯列をなぞります。  
耐え切れなくなって逃げ場を探す舌を捕らえると、そのまま絡め取り、ソフィーの吐息を翻弄します。  
「んふ・・・・んっ・・・・」  
唇の間から、こもった息が漏れ出すと、ハウルは空いた手で布の上から控えめな膨らみを揉みしだきます。  
「んんー、・・・・ふぁ・・・」  
キスを止めて、顔を離しても両手は布の上からソフィーの弱い所をなぞって行きます。  
じれったく足が動くたびに、裾がどんどん肌蹴て淫らな姿になっていくソフィー。  
「ソフィー、今君ってすっごいステキな姿してるよ、ソフィー。僕の大好きな子ネズミちゃん」  
 
クスクス、と小さく笑いながら耳元で囁くと、その吐息のせいでしょうか。ソフィーが甘い息を漏らしました。  
隙間の開いている脚の間に、手を滑らせると肌の感覚が、汗ばんだだけではない湿り気を帯びていました。  
「もうこんなになって、何て淫らなお嬢さんなんだろ?」  
耳元で囁くたびに、ソフィーは恥ずかしそうに身をよじらせます。  
ですが、脚の間にはハウルの手があるので逃げるに逃げられません。  
つん、とソフィーの大事な処をハウルの手がつつきます。  
「んっ!」  
手で口を抑え、声が漏れるのを抑えるソフィー  
そんな彼女の反応を面白がるように、ハウルはわざとその周辺だけなぞります。  
体を覆う襦袢を、無理やり肌蹴させ、乱暴に胸をさわり、でもソフィーの大事な部分の周辺"だけ"優しく触ります。  
「んぁ・・・ふ・・ハウ・・んっ・・・も・・ダメ・・・・」  
涙目で訴えるソフィーの声も、耳に届いているのか、わからない位にハウルはただただソフィーの体を貪ります。  
ハウルの与える刺激に耐えられず、ソフィーが体をよじらせる度、脚の間からは淫水が零れ、部屋にその音を響かせます。  
 
「ソフィー、君ってば本当に素敵だよ、僕にしかその顔を見せないって所が特にさ!」  
触れられたくて、触って欲しくて、もうじれったくて堪らない処にハウルの熱が添えられました。  
ビク、とソフィーの体が一瞬だけ強張りました。  
待ち望んでいた瞬間ですが、いつになってもこの瞬間は体が緊張してしまいます。  
「んっ」  
そんなソフィーにもお構いなく、ハウルは体を突き進めます。  
入れると同時に、ただただそのまま腰を動かし始めました。  
「あっ、あっ、だっ・・・んっ」  
ダメ、早くしないで、やめて、そう言いたいのに、いえ、いつもなら言えるのに、それを告げる事さえ叶わずソフィーの体はハウルの為すがまま。  
声を上げる事すら辛くなった頃、ハウルがやっと体の奥に自分の精を放ちました。  
「ソフィー、大好きだよ・・・」  
満足そうなハウルの声。  
ですが、ただ貪り食うようにされたソフィーの心は満足感など全くコレっぽちも今日は残りませんでした。  
 
 
夜が明けて。  
ハウルがソフィーのベッドで目を覚ました時、横に彼女は寝ていませんでした。  
その代わり、階下からは中々荒い物音が聞こえてきます。カルシファーらしき悲鳴も聞こえます。  
「どうしたんだろう、ソフィー?」  
首を傾げながら降りて行き、みんなに朝の挨拶をしました。  
そして、ソフィーに聞いてみます。  
「ねぇソフィー、僕のお皿は?ご飯にしようよ!」  
ハウルのその一言を聞いた瞬間、ソフィーが振り向きます。何てすごい顔なんでしょう!  
ウッ、と思わず声を喉に詰まらせるハウルにお構いなしでソフィーは叫びました。  
「自分の事しか考えないハウルは、自分の朝食位自分で作って頂戴ッ!」  
 
ソフィーとハウル、2人はこれからも一杯喧嘩をしていきましたが、初めてヒドイ、とカルシファーに言わせたのは  
この喧嘩が初めてだったそうです。  
まぁ、こればっかりはハウルの自業自得と言えますが・・・。  
 
この時は、ソフィーの好きな花をたくさん咲かせる事で機嫌を直したハウルでしたとさ。  
 
 

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