ある晴れたのどかな日の事です。
夜咲花とお茶をした後、窓辺でゆったりと日向ぼっこをしながら
暖炉のある居間で、ソフィーはモーガンにお乳をあげていました。
そこにいるのは、ソフィーとモーガン、そしてカルシファーだけです。
とても、のどかで静かな時間がゆったりと流れていきました。
モーガンが満足してゲップをして、ソフィーはベッドに愛する息子を寝かせます。
ふと視線を感じて振り返ると、ジーっとカルシファーが見つめていました。
「カルシファー、どうしたの?」
「いや、ちょっと・・・やっぱいいや、何でもなーいっ」
モゴモゴと口を動かしながら薪の間に隠れる火の悪魔。
「カ ル シ フ ァ ー」
気になると、夜咲花の影響でしょうか、最近は特にトコトン気が済むまで追求するソフィーの声が薪の隙間からカルシファーに届きます。
こういう声になると、彼女は何をしてくるかわかりません。そう、水をかけて強制的に言わせる事もあるでしょう。
仕方なく顔を覗かせると、カルシファーはため息をつきました。
「何だよー、オイラ別に何でもないって言ったじゃんか」
「何か言いかけておいてソレはないわよカルシファー?ちゃんと最後までおっしゃい」
「いや・・・・なんて言うか・・・ソレ、どんな味なんだろうな、って思って・・・」
「ソレ?味?」
首をかしげるソフィーに、いつもより炎に赤みが増したカルシファーがどもりながら言い返します。
「だから、モーガンがごくごく旨そうに飲んでるソレだってば!」
「あ、あぁ母乳の事ね・・・・・・・・・・って・・・えぇぇぇっ!?」
さすがにソフィーもビックリです。
でも、どうせハウルが今いないんだし、と服の前を開けていきました。
「ソソソソソソフィー、いいいいいいのかよっ」
「カルシファーどもりすぎ」
オロオロし過ぎて炎が揺ら揺らとゆらぐカルシファーを一言で止めると、炎の上にかがみました。
と、そこへ大きな音を立てて扉が開きます。
「ただいま、ソフィー!」
手を上げてご機嫌なハウルが帰ってきてしまいました。
帰って来た彼が最初に目にしたのは、服の前をはだけて炎の上にかがみこむ愛しい妻と、その真下でそれを見る炎の悪魔。
しばらく手を上げた、そのままの姿勢で固まった彼が次に取った行動は。
とりあえず手近にあったバケツの中身ごと、水をカルシファーにかける事でした。
「カルシファー!ソフィーを誘惑するなんてひどいよ!ソフィーもソフィーだ!ウワァァァァ、2人ともひどいよ!僕を裏切ったんだ!」
水をぶちまけた後は、自室へ行ってしばらくワンワン泣いていたそうです。
その後ソフィーから事情を聞いた彼がまた他の意味で泣き喚いたのはまた別の話。