その日はハウルの誕生日でした。
みんな、それぞれプレゼントを渡して行きます。
「ありがとうみんな!僕は久々に誕生日を嬉しく思うよ!」
嬉しそうなハウルを見ながら、カルシファーはため息をつきます。
(オイラ・・・ハウルから自由になったけどオイラは何もハウルにあげてやれないな)
カルシファー自身が働いてお金を得ているワケではないので、プレゼントを買う事が出来ないから、彼はあげられなかったのです。
「でもさ、ソフィー、僕としては君自身がプレゼンt・・・痛い、痛いってばマダム!ヒンまでひどいよ!みんな冗談だってば!」
余計みんなが楽しそうにはしゃぐ中、カルシファーはコレだ!と閃きました。
「ハウル、ソフィー、後で2人で部屋で待っててくれないかい?オイラ、飛んでくから」
少し落ち着いた時、コッソリ2人だけに声をかけます。
「あぁ、構わないさ。いいよね?ソフィー」
「えぇ、あたしは構わないけれど。カルシファー何企んでるの?」
「えへへー、オイラちょっとした事思いついちゃってさー、えへへ」
楽しそうに、嬉しそうにカルシファーは炎を揺らして笑うだけです。
それからしばらくして、元・荒地の魔女もマルクルもヒンも眠った後、約束通り2人は部屋で待っていました。
しばらくすると、カルシファーが嬉しそうにドアの隙間から入ってきます。
「ソフィー、そこに立って、動かないでくれよ!」
「え、えぇ」
少し真剣な声のカルシファーに気圧され、ソフィーも緊張した顔で固まります。
それを確認すると、カルシファーはハウルの方に向かって声をかけました。
「ハウル、これがオイラからハウルへのプレゼントだよっ!」
言うと同時に、ソフィーの体に燃え移りました!
「きゃあっ!・・・・あら?熱くない」
カルシファーの魔法の炎は、慎重にソフィーの『服だけ』燃やしていくので、ソフィー自身は熱くないのです。
『服だけ』燃やされている事にソフィーが気付いた時には、カルシファーはもう離れていて、嬉しそうなハウルがそこにいました。
「カルシファー、さすが君だね。僕が一番喜ぶ誕生日プレゼントだよ!」
「そりゃそうさ、オイラは一流の悪魔様だからなっ!」
言うだけ言って、カルシファーは逃げて行きました。
後に残ったソフィーは、怒るに怒れず、そのままハウルへの誕生日プレゼントになったそうです。
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朝になり、いつものようにソフィーが誰よりも早く朝食の準備に降りてきました。
昨夜はプレゼントになったせいで、濃い夜を過ごしたせいでしょうか、多少腰がつらそうです。
暖炉にやってきて、小さくなって背中を向けるカルシファーを見つめます。
「おはようカルシファー」
「お、おはようソフィー」
オドオドとした顔で振り向いたカルシファーは、手を後ろに組んだままのソフィーの笑顔に一瞬ホッとしました。
が、次の瞬間。
どぼどぼどぼどぼどぼどぼ
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!オイラを殺す気かよ、ソフィー!」
「あら、大丈夫よカルシファー。あなた、千年は生きるはずですから」
ニッコリと、悪魔も震える最高の笑顔で言い切ったソフィーはそのまま朝食を作ったそうです。
そして、真横に水を思い切りかけられたカルシファーは、その日一日中震えていたとか。