午後の日差しはいまだに強く、窓の隙間からこぼれて階段の手すりの金色をきらきらと光らせています。  
部屋はいつになくしん、としていました。  
ハウルとマルクルはなんだか訳のわからない名前の植物を取りに行く、と朝からどこかにでかけたっきりだし、  
おばあちゃんはぽかぽかした裏庭で、時折いびきをかきながら昼寝をしています。その足元ではヒンもすっかり眠りこけていました。  
ソフィーは暖炉にちらり、と目をやりましたが、カルシファーの姿すら見当たりません。  
「こんなに天気のいい日ですもの。ね。」  
カルシファーは晴れて自由の身になったばかり。大方、うれしくてどこかへ飛び回ってでもいるのでしょう。  
いつもは誰かの話し声やら笑い声(時には悲鳴であることも…)でいっぱいの城のなかですが、  
いまはひとりぽっちのソフィーがけだるげに窓の外を眺めているだけでした。  
 
話し相手もいないし、仕事もすっかり片付いてしまい、ソフィーはすっかり退屈になってしまいました。  
ぽかぽか陽気にあてられて、まぶたもどんどん重くなっていきます。  
「…ふわあぁぁ……」  
ソフィーの口からはとうとうこらえきれずにおおきなあくびが漏れました。  
カタン!  
持っていたほうきを取り落としたのをゆっくり拾い上げ、椅子をテーブルに寄せて腰掛けます。  
そのとき思わず、どっこいしょ…と言いかけた口をあわててふさぎました。  
なんだかおかしくなってクスクス少し笑ったあと、はた、と何かに気づいたように足が自然と洗面所へ向かって行きました。  
 
ソフィーはどきどきしながらそーっと鏡に姿を映してみましたが、そこにいたのはやっぱりいつもの自分でした。  
内心ほっと胸をなでおろしながら、ごちゃごちゃした洗面台をぼんやり眺めていると、ハウルの使ういろんな化粧瓶にまじって、  
ちらちら輝く小さなものがあるのに気づきました。  
見覚えのあるそれは、ハウルがいつも身に着けているピアスのうちの一つでした。  
とくん…  
静かな湖面に小石が投げ込まれたときのように、ソフィーの胸に小さなさざなみが立ちます。  
 
吸い寄せられるように美しい緑色の石を拾い上げると、てのひらに乗せてしげしげと眺めました。  
なんて不思議な石でしょう。普通の宝石のような冷たさがまったく無く、ほんのりと温かみすら感じます。  
「きっと、あなたにも魔法がかかってるんでしょう?」とソフィーはピアスに話しかけてみました。  
その声に反応したかのように、石の中に星が瞬くようなきらめきが生まれました。…まるで生きているかのよう!  
もう魔法には慣れっこになっていましたので、驚いて取り落としたりはしませんでしたが、  
そのかわりに、ソフィーはこれを着けてみたいという非常に強い誘惑にかられました。  
少し後ろめたさを感じてあたりを見回しましたが、もちろん城の中にいるのはソフィー一人です。  
ふいに誰かの視線を感じて振り向くと、そこにあったのは鏡に映る自分の姿でした。  
 
「…ハウル、早く帰ってこないかしらね。」  
ソフィーが鏡に話しかけると、(当たり前の事ですが)鏡の中のソフィーもそっくり同じ形に口を動かしました。  
ソフィーが微笑んでみると、鏡のソフィーもにっこりと見つめ返します。  
なんてバカらしい事やってるのかしら、私ったら。  
ソフィーが立ち去ろうと浴室の扉に手を掛けたとき、鏡のソフィーが手にしたピアスをそっとうなじに持っていくのが見えました。  
「えっ!?」  
鏡に向き直ると、鏡のソフィーの耳には見慣れたハウルのピアスが光っていました。  
おそるおそる自分の耳に手をやると、やっぱり!自分の耳にもピアスが留まっています。  
急いで外そうとしましたが、手が滑ってピアスがするすると逃げていきます。  
うらめしそうに鏡をもう一度見てみると、鏡のソフィーがぱちんとウィンクをしました。  
これはハウルのいたずらに違いありません。  
 
「ん、もう!」  
ソフィーは鼻を鳴らして乱暴に扉を閉めると、不機嫌そうな足音を響かせて浴室を出て行きます。  
そのまま居間のソファにもたれ込み、肌掛けをひっつかむと、つま先まですっぽりくるまりました。  
ふて寝をしようと決め込んだものの、胸のどきどきはしばらく収まってくれませんでした。  
 
日の光もずいぶん傾いてきましたが、ハウルの帰って来る気配はまだありません。  
ピアスを指で撫で回したり爪で弾いてもてあそんでいるうちに、とろとろと眠りがやってきて、  
いつしかソフィーからは静かな寝息が聞こえてきました。  
 
ヒアシンスの花の匂いがソフィーの鼻をそっとくすぐりました。  
ハウルが、帰ってきた!  
跳ね起きようとしましたが、ソフィーが乗っかっていたのは何かふわふわしたものの上で、  
バランスを崩してその場につっぷしてしまいました。  
「…ハウル?」発した言葉は雲に吸われてしまったのでしょうか、思っていたよりか細く聞こえました。  
返事はありません。  
ふと見上げた視線の先には満天の星空が広がっていました。ソフィーは空に浮かぶ雲の一つに乗っていたのでした。  
「きれい…。夢みたい」  
本当に夢としか思えない光景でした。これが夢じゃなくて現実だとしたら、一体どうしてこんなところにいるのでしょう。  
 
心細さと肌寒さに袖をかき合せようとして、気づきました。なんと、ソフィーは身に着けるものを一枚も纏っていません!  
なんてひどいいたずらでしょう!  
「ハウルー…!」  
叫ぼうと開いた口を、あわてて抑えつけます。ハウルにこの場に駆けつけられても、それはそれで困ったことになりそうです。  
こんな姿を見られてしまったら、一体どんな目に合わされてしまう事か!  
「呼んだ、ソフィー?」  
「きゃあああぁぁっ!!」  
あたたかい吐息が耳元に触れて、ソフィーの心臓は跳ね上がりました。  
思わず逃げ出そうとするソフィーの腕を、いつからいたのでしょう、ハウルが涼しい顔で捕らえました。  
ソフィーは反射的に振り払おうともがきましたが、不安定な足場で足がもつれ、二人とも雲の中に音も無く倒れこみました。  
なおもじたばたするソフィーを必死でなだめようと、ハウルの掛ける猫なで声もまったく届いていない様子です。  
ハウルは「ふぅ」と小さくため息を漏らすと、わめき散らすソフィーの唇を自分の唇で乱暴にふさぎました。  
ゆるゆるとソフィーの身体から力が抜けていき、あたりにはまた静寂が訪れました。  
ヒアシンスの香りはこの雲全体からたちこめている様子です。  
 
…クスン、クスン  
ソフィーは動揺のあまり耳まで真っ赤にして涙目になっていましたが、驚いたことに、すすり泣きをはじめたのはハウルの方でした。  
「…ひどいよ、ソフィーっ…。もう、あんまりだ!…これはソフィーの夢の中だってのに…」  
「わ、わたしの…、…夢、ですって?」  
「…そうさ!ぼくはソフィーともっともっと気持ち良いことがしたいだけのに…!」  
スン、とハウルが鼻をすするたびにきれいな黒髪が揺れます。  
「だって…。城にはみんなもいるし、恥ずかしいもん…」  
「…だから、せめて夢の中だけでも…って、そう思ったのに…ううっ!!」  
あまりにあわれっぽく懇願するハウルの口調に、ソフィーはなんだか自分がひどく悪いことをしているような気分になっていました。  
 
「ほら、見てハウル、とっても星が綺麗。」とりあえず、ソフィーは優しくなだめるように言ってみました。  
ハウルはソフィーの裸の胸でうなだれたまま、こくんとうなずきました。  
 
「……でもぼくは…」  
そうつぶやくとハウルは今度はさっきと違う優しいキスをしました。  
「……。…やっぱりきみの方が素敵さ、ソフィー!」  
そのときハウルの目がいたずらっぽく光ったのを、目をつむっていたソフィーは見ていません。  
と、あっという間にハウルの唇がソフィーの身体のあちこちを探りはじめました。首筋、おへそ、くるぶし。  
ソフィーが一番気持ちがいいところをハウルは知り尽くしていました。  
「やぁ…、……だ、駄目よ、ハウルっ…!」  
「…ん、どうして……?」  
ソフィーが慌てたのは、女の子のだいじなところから粘り気のある液がすでにこぼれそうになっていたからです。  
固く閉じられたひざを割って入ろうとしていたハウルの顔を、必死で押しのけます。  
「ね、ハウルも脱いで」  
ハウルは今朝着ていた、初めてソフィーに会ったときと同じ、銀と赤の派手な格好をしていました。  
 
「…これは私の夢の中なんだもの。ね?」  
「じゃあ、脱がせて?」  
ソフィーは思いもかけず大胆になっている自分に少々驚きましたが、気にせずハウルの上着にゆっくりと手をのばしました。  
だって、これは私が見ている夢なんですもの。  
 
自筆画 
 
ソフィーは仰向けになったハウルに四つんばいで覆いかぶさりました。  
二人ともお互いに夢中になるあまり、脱がせた上着が雲をするりと突き抜けて落ちて行くのには気がつきません。  
ソフィーの太腿にとろとろと粘液がしたたり落ちてきて、ハウルの細身のズボンにこぼれます。  
「早く、脱がせてよ…ソフィー…。」  
見ると、ハウルのズボンはもうはちきれんばかりで、ソフィーの下で苦しそうに暴れていました。  
ソフィーはわざとゆっくりとズボンに手をかけます。  
ズボンの留め具を外すと、中からハウルの男の部分が勢いよく飛び出し、先走りがソフィーの頬に飛び散りました。  
ハウルはもう荒く息をついています。身体を起こそうとするハウルをソフィーは手で押しとどめ、顔を寄せていきました。  
 
「ソ、ソフィーっ…!?」  
柔らかそうなソフィーの唇が開いて、そこからピンクの舌が覗きます。  
もうかちかちになったハウルの竿に、ねっとりと温かいソフィーの舌が絡み付いてきました。  
「くうぅ…!」食いしばったハウルの口から熱っぽい息が漏れます。  
こんなことをソフィーの方からしてくれるなんてはじめての事でした。  
竿の先端から出てくる透明なねばねばがぷっくりと玉をつくりだします。  
ソフィーの手が袋を持ち上げるように撫で回し、舌は裏筋のあたりを行ったり来たりを繰り返します。  
その度にハウルの身体が反応するのに、ソフィーはすっかり気を良くしていました。  
 
こらえきれずにハウルはソフィーの首筋に右手をまわし、左手でつかんだ竿をまだ誰も汚したことのない唇にねじこみました。  
「んん…う」ソフィーの喉からもくぐもった音がこぼれます。  
ソフィーにとっては初めて味わう男の味にすこし顔をしかめましたが、どうしたらいいのかは知っていました。  
「…歯を当てちゃ駄目だよ、ソフィー。…いい子だから。」  
 
小さな口の中いっぱいに広がっているので返事のかわりに、ゆっくりと唇をすぼめて竿をしごき上げました。  
口の中のものはみるみるうちにさらに硬さを増して、先程より大きくなったみたいです。  
舌でなぞると、血管が浮き出ているのがわかります。  
喉に当たって全部入りきらないので、ソフィーの口からは唾液とまじった粘液が幾筋もこぼれています。  
くちゃ…くちゃ…といやらしい音を立てながら、ソフィーは拙いながらも懸命に舌を這わせました。  
上あごと舌で竿全体を優しく押しつぶすと、雁首が柔らかい舌にこすりあげられ、口の中で暴れます。  
ハウルの頬は真っ赤に上気して、こみ上げる快感を少しでも長く味わおうとこらえます。  
ソフィーの一番はずかしいところは、触られてもいないのに充血しきってとめどなく蜜がしたたり落ちていました。  
 
すっかり行為に熱中しているソフィーは、唇を前後させる速さをどんどんあげていきました。  
「…ぁ…っ…、ソ、ソフィー…っ、これ以上は……」  
ハウルの声は快感でかすれ、もう息も絶え絶えです。  
ソフィーは聞こえなかったふりをしましたが、脈打つ硬い肉はもう絶頂が間近であることを伝えてきます。  
いじわるにもソフィーは、達する寸前でようやく、ちゅるんと音をたててて口から竿を開放しました。  
「はっ…あぁ……!…上手だよ、ソフィー…。出しちゃうところだったよ…もう…」  
なにしろ、はじめてのことです。  
ソフィーもはぁはぁと肩で息をついていましたが、いつも余裕たっぷりのハウルと形勢が逆転したことに少なからず満足していました。  
本当のことを言えば、ソフィーも今すぐにでも自分の火照った部分を鎮めて欲しかったのですが…。  
 
「うっ…ん!」ハウルの身体がびくんと跳ねたのは、ソフィーのぬるぬるとした手がまた竿を撫で上げたからでした。  
先端の穴を舌でいじりながら、「いいよ…口に出しても……?」とソフィーが甘くささやきます。  
まったく、普段の少女からは想像すらできない強力な誘惑にハウルは喜んで押し流されました。  
再び口の中にハウルの熱いものが侵入してきます。  
ソフィーは喉に当たってむせそうなのを我慢しながら、けなげに口いっぱいに頬張りました。  
ハウルの手がソフィーの汗で濡れてひたいに貼りついた前髪を優しくかきわけます。  
ソフィーの耳にはハウルの緑色のピアスが揺れています。  
「…はぁっ…ぁ…!っつ…、ソフィー、…あああぁあっ」  
思わず、ハウルはソフィーの頭を掴んで揺すぶりました。  
「!」ソフィーは苦しくて息もろくにできません。歯を立てないようにしているのがやっとです。  
しかし苦しい時間はそう長くは続きませんでした。  
 
「……く…あぁ…いく…よ、ソフィー…っ…!」  
びゅるるるるっ…  
ソフィーの喉の一番奥に、いがらっぽい味のべとべとがもの凄い勢いで注ぎ込まれました。  
激しく咳き込むソフィーの口から抜け出したあとも、ハウルはびくびくと脈打ちながら精を放ち続けたので、  
ソフィーのあかく染まった頬や髪の毛を溶けたロウソク状の粘液が汚しました。  
 
「あぁ…ご、ゴメンっ…ソフィー…。 …もしかして怒ってる?」  
しきりに謝りつつ、けほけほと咳き込むソフィーの頬をハウルがちぎった雲でふいてやりました。  
「じゃあ、今度はぼくの番…といきたいところだけど、もう戻らなきゃ。続きはあとで…ね。」とハウル。  
ソフィーに何か喋らせる隙を与えないようにか、軽くキスをします。  
「…そうそう、ぼくのピアス、返してもらうね?」  
ハウルがソフィーの耳に手を触れると、ピアスはころりと外れました。  
 
その瞬間、ソフィーの目がぱちりと覚め、やっぱり自分が居間のソファーの上で眠りこけていたことがわかりました。  
 
あたりはすっかり暗くなっていました。  
暖炉にはカルシファーが戻っていました。おばあちゃんとヒンは…いつの間にか自分のベッドの中でまた寝息をたてています。  
…本当にあれはただの夢だったのでしょうか?  
身体はまだうずいて火照っているし、なにしろ、下着の中がびっしょりと濡れています。  
あまりにも生々しすぎるやりとりのあれやこれやを思い出すだけで、ソフィーの顔からは火が出てしまいそうです。  
ややあって、開いた扉からマルクルが飛び込んできました。  
「ソフィー、ただいま!もう、聞いてくださいよ、ハウルさんたらお気に入りの上着をどこかでなくしちゃったみたいなんで…す…?」  
そういいかけたマルクルの顔が不思議そうにソフィーを見つめています。それもそのはずです。  
今朝ハウルが着ていった、夢の中で脱がせたはずのハウルの上着はなぜかソフィーにかかっていました。  
もちろんソフィー自身も飛び上がりそうに驚きました。胸がどきどきしてきます。  
 
「…やあ、遅くなってごめん。」  
マルクルのあとから続いて入ってきたのは、当然、ハウルです。なんだかとびきりご機嫌そうに見えます。  
「そうだ、お師匠ったらひどいんですよ!急に姿が見えなくなっちゃって、ぼくずっと探してたんです!」  
と、マルクルがソフィーに駆け寄ってまくしたてます。  
「あれ…ひょっとしてソフィー、熱があるんじゃない!?」  
ソフィーの顔が赤いのに、とうとうマルクルも気づきました。  
「ほら、息も荒いし…、早くこっちに来て、ハウルさん!…ああ、どうしよう、ソフィーが風邪ひいちゃった!!」  
ハウルはわざとらしくしかめっ面を作りながら「ああ、これはいけない、すぐにベッドに入らなきゃ!」とソフィーの身体をすばやく持ち上げました。  
夢の中で自分がしたことを思い出していたせいか、ソフィーは思わず咳き込みました。  
くすくす笑いをこらえていたハウルはその拍子に吹きだしてしまいました。  
 
「ソフィーが辛そうにしてるのに、なんで笑ってるんですか!それに、ぼくが一生懸命探してるとき、一体どこに行ってたんです!?」  
マルクルはぷりぷり怒っています。  
「ごめんごめん、いや、ちょっと面白いことがあってさ…」とハウルはとっても嬉しそうに小さな弟子に笑いかけました。  
「さあマルクル、これからソフィーの風邪を治すまじないをかけるから、今夜は絶・対・に・ぼくの部屋に近づいちゃいけないよ。」  
「近づいただけでも駄目なんですか?」  
「そりゃそうさ!ものすごーく、難しくてデリケートな魔法なんだ。…そうだな、一晩中つきっきりで頑張んなきゃ治らないだろうね。」  
ハウルは真面目くさって答えました。  
ソフィーは真っ赤になった顔をハウルの上着にうずめてただ黙っているしかできませんでした。  
誰にも聞かれないように、ハウルがそっとささやきます。  
「…ピアスを見つけてくれてありがと、ソフィー。…おかげで死ぬかと思うほど気持ち良かった!」  
ソフィーの耳にあった緑色のピアスが無くなっていたかわりに、まったく同じものがハウルの耳元で揺れていました。  
「さて、ソフィー、待たせたね。さっそく夢の続きにとりかかろう!いたずらなソフィーにとびきり特別なお礼をしてあげなきゃ!」  
 
夜明けまではまだまだたっぷり時間がありそうです…  
 
 

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