仮面舞踏会もそろそろ終盤を迎えていた。  
誰もが酒に酔い、会場中に陽気な雰囲気に満ちている。その奥の酔客のために  
用意された控えの間の一画では、一人の男が王様のようにソファの山にもたれていた。  
黒い仮面をつけた彼は顔の半分をもそれで隠されながらも、なお零れ落ちる美貌を  
堂々とひけらかしていた。そのせいなのか、彼の周りには酔って上気した肌をした  
女たちが群がっている。その様はちょっとしたハーレムのようだ。  
しなだれかかってくる女を遠ざけながら、男は艶やかな黒髪を払った。  
その様子に、女たちはうっとりとした視線を送るが、彼は眉間にしわを寄せている。  
その時、広間との出入り口の辺りで、小柄な娘が身を翻した。  
銀色の髪をした彼女は、なぜだかとても目立った。男は彼女に気付いたらしく、  
軽く手を上げた。しかし、娘は彼を無視して人ごみにまぎれてしまった。  
男が怪訝そうに口元を歪めたその時、彼のハーレムに闖入者が現れた。  
女たちがざわめく。男は、ふっと視線を上げてそのまま固まった。  
「わたしもあなたとお話したいわ。構わないかしら?」  
赤茶色の髪を緩く結い上げた闖入者は、そう言って赤い唇を綻ばせた。  
年のころは二十歳前後、金色の縁取りのある赤い仮面をつけている。  
女らしい体つきをした、文句のない美女だった。  
「あなた方も、仲間に入れてくださる?」  
もちろん自分が追い出されるはずがない、とどこか強気な響きを持つ声に  
男は小さく笑った。彼は体をずらすと、ひと一人が座れるスペースを作った。  
「こちらへどうぞ、レディ」  
「ありがとう」  
女はそういうと、堂々とした歩みで男の隣へ腰掛けた。間近で微笑まれて、  
男はうろたえた。自分は、どうしてこの見知らぬ女を招きいれたのだろう、と  
不思議に思う。  
男―――ハウエル・ジェンキンスは困惑した顔のまま、横に座っている女を眺めた。  
 
「きゃっ」  
「失礼」  
ぶつかってきた人を無意識に抱きとめると、それは随分と軽かった。  
ふと見やると、白いような銀色のような、不思議な色合いの髪が目に入った。  
「ごめんなさい、ぼうっとしてて」  
弁解を口にしながら、その人は照れたように首を振った。白い仮面をつけ、  
薄い桃色のドレスを着た彼女には、見覚えがあった。  
「あなたは……」  
名前を呼ぼうとしたら、彼女が小さな唇に人差し指を当てて笑った。  
彼女の言わんとすることを察し、男も微笑む。  
「失礼。お嬢さん、お一人ですか?」  
「ええ。人とはぐれてしまったの」  
彼女はそう答え、肩をすくめて見せた。男は笑うと、すっと腕を差し出した。  
「それでは、ご一緒いたしませんか?」  
「ええ、喜んで」  
彼の腕を取って、娘が唇を吊り上げた。豊かな金の巻き毛を持つ男―――この国の  
王子で通称・カブは、今宵の幸運を喜んだ。  
 
「どうなさったの?浮かない顔ね」  
笑い混じりに、女が囁いた。その甘い声音に束の間酔いしれ、ハウルは慌てて  
笑顔を取り繕った。  
「いや、人を待っていて―――」  
「あら」  
女が目を見開いた。仮面の奥の目は茶色。髪の色にも近いが、光の加減で  
琥珀色のようにも見える。彼女は赤く塗られた唇を突き出すと、拗ねたように  
ハウルの腕を叩いた。  
「恋人かしら?妬けちゃう」  
女の言葉に、ハウルはソフィーのことを思い出して一人幸福な気分に浸った。  
彼の奥方たる可愛いソフィーは、初めての舞踏会に興奮気味の幼い弟子を  
寝かし付けに行ったきり戻ってこない。  
先ほど広間で見かけたのは、別人だったのだろうか。けれど、まさか自分が  
彼女を見間違えるとも思えない。  
悶々としているハウルの頬を、女はきゅっとつまんだ。慌てて視線を戻すと、  
彼女は呆れたような顔をしていた。  
「やっぱり恋人なの?」  
「いいえ、妻です」  
何の臆面もなく言われた言葉に、周りを取り巻いていた女たちがため息をついた。  
一人、また一人と彼の元から女たちが去っていく。  
そうでなくても、彼は先ほどからこの美女としか喋らないのだ。  
周りはさぞつまらないはずだろう。  
「でも、その奥様だって今は他の誰かとご一緒かもしれないわ」  
「そんな、」  
即座に否定しようとしたハウルの頤を、女が掴んだ。  
彼女はゆったりと笑うと、首をかしげた。  
「あなたが、わたしと一緒にいるようにね」  
そう言われ、ハウルは息を呑んだ。そういえば、彼女は随分と近いところにまで  
やってきている。振り払わねば、そう思うのに手放せない。  
「レディ、あなたは一体……」  
「そんなことどうでもいいわ。わたしをあなたの言うレディでしかないし、  
わたしにとってあなたはあなたでしかないわ。恋に身分証は必要ないでしょう」  
それに、と言って女はハウルの顎から手を離した。今度は、彼のタイに触れる。  
「今日は仮面舞踏会。わたしが誰であろうと、あなたがどんな人であろうと、  
そんなの取るに足らないことだわ」  
 
差し出されたグラスを受け取ると、娘は一気にそれをあおった。  
細い喉を鳴らしてシャンパンを飲む彼女に、人々の視線が集まる。  
「お酒が好きなんですか?」  
少しばかりたじろいだ風のカブの言葉に、娘は事も無げに頷いてみせる。  
「ええ。好きよ」  
そう答えた娘の頬に、すっと赤みが差す。その様に見とれながら、カブが尋ねた。  
「もっと、飲まれますか?」  
娘は思案顔で唇に指をあててから、軽やかに笑う。  
「そうね、もう少しいただける?」  
言葉が終わった途端、片手の指では数えられないくらいのグラスが突き出された。  
面食らうカブを取り残し、娘はグラスを差し出した男たちに、色っぽい流し目を  
送ってやった。  
「ありがとう」  
でれつく男たちを尻目に、娘はカブからグラスを受け取る。今度はそれを  
半分飲むと、もてあました風にグラスを放した。  
「どうかしました?」  
「いらなくなっちゃった。あなたが飲んで」  
そういうと、娘は気楽な様子でカブにグラスを押し付けた。彼は困惑したように  
彼女を見やったが、意を決したようにそれを煽った。  
「いい飲みっぷり」  
娘は嬉しそうに笑い、カブの唇を自分の指先でぬぐった。指に付いたシャンパンを、  
桃色の舌でなめ取る。彼の喉が、ごくりとなった。  
「……ねぇ、私酔ってしまったみたい」  
数分後、真っ赤な頬をした娘がカブにしなだれかかりながら呟いた。  
彼は慌てて彼女を抱きとめる。その柔らかい感触に、ふいに欲望が頭をもたげた。  
「でしたら……外で風に当たりますか?」  
娘はぼうっとした目で、カブを見上げた。彼はそれとも、といって不意に  
真面目な顔になる。  
「部屋に行きますか?」  
「そうね。そうしたいわ」  
なんてね、といって冗談にしようとしたその時に娘に返されて、カブはさすがに  
ためらった。しかし、魅惑的なお願いに勝てるわけもなく、彼は力なく微笑んだ。  
「仰せのままに」  
 
導かれるがままに、ハウルは女と一緒に部屋に引き上げた。  
休憩用にいくつも空いている部屋に体を滑り込ませると、彼女は艶っぽく笑った。  
「嬉しいわ、あなたとお近づきになれて」  
女はそういうと、ゆったりとした歩みでベッドに近づいた。すとん、と腰掛ける。  
彼女は自ら靴を脱いだ。艶やかな黒いハイヒールが、そろえられて置き去りにされる。  
「ね、あなたも」  
ベッドに乗りあがり、上目遣いに誘ってくる女から目をそらし、ハウルは唇を  
噛み締めた。自分は何をしているんだ、ソフィーがいるだろうと叱責の声がする。  
しかし、その一方でこの不思議な女に信じられないくらいに惹かれている自分もいる。  
奔放で大胆な彼女は、貞淑でつつましいソフィーとは大違いだ。  
だけれども、なぜだか強烈な魅力がある。  
「すみませんがレディ、やはり私は……」  
「あら」  
その声に顔を上げ、ハウルは絶句した。女は、もうすでにドレスを脱ぎ捨てて  
下着姿になっていたのだったのだ。  
「ここまできて、女に恥をかかせるの?」  
女は、皮肉っぽく唇を歪めた。ハウルがうろたえたように視線をさまよわせる。  
女の心臓を食べてしまうという“あの”ハウルが情けない、と彼は自分の行動に  
自嘲した。  
「もう、待たせないでよ」  
女はそういうと、つかつかとハウルの横にやってきて、彼をひっぱって  
ベッドに押し倒した。倒れた彼に乗りあがって、動きを封じる。  
「あぁ……嬉しいわ」  
女がうっとりとした声を上げた。しかし、その唇は心なしか震えているようだった。  
その突然覗いたか弱さに、ハウルは彼女をぎゅっと抱いた。  
「レディ……」  
熱っぽい囁きに、女は目を閉じた。赤い仮面に彩られた美貌に、目が眩みそうになる。  
「抱いて、くださるわね?」  
ハウルは、答えなかった。女は唇を吊り上げると、その微笑んだ形のままに  
彼の唇に重ねた。ゆるく唇を動かしてむさぼる。  
ハウルは目を見開き、彼女を引き剥がそうとした。しかし、そうするには  
その唇はあまりに甘くて心地よい。  
「………」  
顔を上げた女は、ぽかんとした表情から一点、眦を吊り上げた。  
怒っているんだろうな、と察しがついたのでハウルは彼女を伺った。  
「レディ……?」  
「気に入った?ほしいと思った?」  
彼女は矢継ぎ早にそう訊ねた。顔は笑っているのに、目がひどく悲しげだった。  
なぜだか解らないが、その表情はハウルの心をひどくかき乱した。  
 
「話を、聞いてください」  
「聞きたくないわ。ねぇ、わたしはあなたがほしいのよ?」  
女の語尾が高く跳ね上がる。彼女は片手でコルセットをずり下げると、  
豊かな乳房をさらした。ハウルの心臓が強く動く。  
「それとも」  
女はそういうと、まとめていた髪を解いた。ゆらり、と赤茶色の長い髪が  
ハウルの体の上に降り注ぐ。  
「あなたは、わたしがほしくないの?」  
ハウルは勢いよく飛び起きると、彼女を組み敷いた。女は、驚いたように目を  
見開いている。  
「……レディ。あなたはとても美しく、魅力的だ。あなたの様な美しい方を  
 欲しがらない男などいません―――」  
「なら」  
女が非難するような声を上げた。ハウルは彼女の頬に触れると、ふっと微笑んだ。  
「でも………僕には、かけがえのない、大事な人がいます。失いたくない人がいます。  
 レディ、僕はあなたに本当に惹かれている。だけど、彼女を悲しませる事はできない……」  
真摯な言葉に、女はほうと息を吐いた。それから、彼の手に自分のそれを添えた。  
「その人のことを、とてもとても愛しているのね」  
女の唇は震えていた。ハウルが頷く。  
「幸せね」  
女の言葉には、計り知れない深さがあった。ハウルはそっと、彼女の仮面に手を掛けた。  
「レディ、最後に本当のあなたを見せて欲しい……」  
あ、と女が制止の声を上げるまもなく、赤い仮面が剥がれた。  
現れた素顔はやはり美しく整っていた。大きな茶色の瞳が見開かれる。  
髪の色に似ているだろうか、けれども光の加減では琥珀色にも見える。  
暖かで優しく、清らかな瞳だ。言いようのない既視感を覚える。  
不思議な輝きを持つ瞳をみつめながら、ハウルは思わず呟いた。  
 
 
「……ソフィー?」  
 
 
ぽん、と軽い爆発音がたって、女の周りに薄紫色の煙がかかった。  
その煙を、半眼になったハウルが振り払う。  
「……へぇ」  
ベッドに上体を起こしているのは、あの謎の美女ではなく、銀色の髪に華奢な  
体つきをした、彼の妻だった。ソフィーは裸の胸を片腕で隠すと、乾いた笑いを浮かべた。  
「……あはっ」  
ハウルもにっこりと微笑んだ―――もちろん、目は笑っていないのだが。  
「やぁ、ソフィー。ところで君、一体何してるの?」  
「あのぅ……おばあちゃんに変身のおまじないを教えてもらって……」  
「そうだね。ごく初歩的なまじないだ」  
そういいながら、ハウルはソフィーを押し倒した。彼女の体の上に乗りあがる。  
「それで……その、おもしろくなっちゃって」  
「そりゃあ楽しかっただろうね、君は」  
とげとげしい言葉に、ソフィーは首をすくめた。その額には、いやな脂汗が浮いている。  
ハウルの手を逃れようと、彼女はしきりにじたばたもがくのだが、無駄な抵抗だった。  
「悪気はなかったの!その、ちょっとだけふざけたかっただけで……」  
「悪気がないならなおたちが悪いね」  
ハウルはタイを外してシャツのボタンを外すと、それを脱ぎ捨てた。  
そして仮面を外し、入り口のほうに放り投げる。びしっ、と派手な音がして  
仮面が床に叩きつけられた。  
「本当にごめんなさい!許して」  
す、とハウルが目を眇めた。凍て付くような美貌に、ソフィーは見とれるよりも  
先に悪寒を感じてしまった。  
「…許さないよ?」  
にっこり微笑むと、ハウルはソフィーに覆いかぶさった。驚くべき早業で、  
下穿きが剥ぎ取られる。  
「……い、いやーーーーーっ!!!」  
 
肩で息をしながらも、娘は艶然と笑った。その美しさと艶っぽさには、  
思わずめまいを覚えたほどだ。  
彼女の体は、どこもかしこも甘かった。絡みつく腕は熱く、肌は吸い付くようだった。  
にやにやと思い出し笑いをしながら、カブは上機嫌で廊下を歩いていた。  
仮面舞踏会から一夜が明け、彼はようやく触れることの許された少女に会いに行く  
ために歩いていた。  
二度ほど体を交じえた後、娘はそそくさと身支度を整えて出て行ってしまった。  
結局、最後まで名前を呼ぶことも素顔を見ることも許されなかったが、まぁそれでもいい。  
なにせ、彼女は間違いなくカブの大好きなソフィーであり、彼女に体を許されたと  
いうことが大事なのだから。  
(しかし……)  
病み付きになるくらいに気持ちのいい体験だった。あんなに激しく求め合ったのに、  
もう彼女を抱きたくてうずうずしている。ソフィーは人妻であるが、  
思いが通じ合ったわけだからカブにも希望がある。  
いずれは、あの男とも別れてくれるかもしれない。  
「おはようございます!」  
少しばかりの不安と気恥ずかしさを吹き飛ばすように、カブは爽やかに  
ドアを開けて挨拶した。彼の私的な食堂には、ゲストであるハウル、ソフィー、  
マルクル、そして荒地の魔女が席についている。  
「おはよう、カブ」  
ソフィーが穏やかに挨拶を返した。冴えない顔色が痛々しく、でも妙に  
色っぽかったので、カブはだらしなく笑み崩れた。  
「……脳に虫が沸いたのか?」  
冷ややかにそう言ってのけたのはハウル。彼はさりげなくソフィーの肩に手を回し、  
眉毛を持ち上げて見せた。  
「薄気味悪いくらいにご機嫌だな」  
ふふふそんな風に余裕でいられるのも今のうちですよと内心思いつつも、  
カブはあくまで爽やかにすっとぼけた。  
「そうですか?いつもどおりじゃないですか。ねぇ、ソフィー」  
そう言って、カブはソフィーに熱っぽい視線を注いだ。彼女は意味がわからない、と  
言うようにぎこちなく微笑んだ。  
 
「舞踏会は楽しめましたか?」  
「楽しかった!」  
間髪いれずに答えたのはマルクルだった。しかし、ソフィーは赤くなって俯き、  
ハウルはその様子を見てにやにやしている。不思議なことに、荒地の魔女は  
妙に色っぽい流し目をカブに注いでくれた。  
「それはよかった―――ソフィー、どうしました?」  
「あの、なんでもないの!」  
「ソフィーは楽しめたよね。それこそ泣いちゃうくらいに」  
意地悪い響きの言葉に、ソフィーがまた顔を赤らめた。何を言っているのだろう、と  
思ってカブは発言者たるハウルを見やる。  
「泣いちゃうくらいに気に入ったの?」  
「そうだよ、マルクル。ソフィーはとっても楽しかったって」  
不思議そうなマルクルに、ハウルがにっこり笑って言った。ソフィーは  
がちがちに縮こまっている。尋常でない様子に、カブは眉をひそめた。  
不意に、魔女が首をそらした。彼女の首筋には、ぽつぽつと赤い斑点ができていた。  
それを見つけたマルクルが、声を上げる。  
「おばあちゃん、それ、ケガしてるの?」  
「ほっほっほ、これは大人にしかできないアザなんだよ」  
「えー、いいなぁ。大人ならできるの?ハウルさんにもある?」  
「僕にはないけれど、ソフィーにはあるよ。ねぇ?」  
「ちょ!ばか!」  
ソフィーが慌ててハウルの髪をひっぱった。その様子を見て、カブはいやな汗が  
吹き出ているのを感じた。魔女のアザは、首の右側に集中している。  
昨晩、カブは白い仮面の娘の首の右側に集中的に唇をつけた。  
彼女は、そのいちいちにかわいらしく反応したのだけれど―――。  
 
ほら、と言ってハウルはソフィーの左側の髪をかき上げた。  
マルクルが感嘆の声を上げる。ソフィーは思わずハウルをひっぱたいた。  
が、手のひらは寸でのところで捕えられてしまう。二人はそのまま、  
ぎゃあぎゃあと怒鳴りあい―――といっても他者にはじゃれているようにしか  
見えないのだが―――を始めた。  
(うそだ………)  
きゃんきゃんとわめくソフィーを尻目に、カブは一人で固まっていた。  
彼の傍らで食事をしていた魔女が、にやりと笑う。  
「若いっていいねぇ」  
その陰のある笑いが、昨晩の銀の髪の乙女に重なる。真っ青になった王子に、  
魔女は止めを刺すようにあるものを握らせた。  
「昨日はよかったよ。生き返ったような心地だ」  
王子の手には、白い仮面が握らされていた。金色の縁取りのあるその仮面は、  
間違いなく彼が抱いた娘の身につけていた――――。  
引きつった顔のまま、カブは綺麗に気を失った。ばたーん、という大きな音に  
ハウル、ソフィー、それからマルクルが声を上げる。  
「カブ!?」  
見ると、彼は真っ青になった顔で倒れていた。気絶しているらしい。  
「おばあちゃん、何があったの?」  
ソフィーが魔女を問い詰めた。しかし、彼女は猫めいた微笑を浮かべるのみで  
一向に答えない。  
「ねぇ、何か持ってるよ」  
しゃがみこんでいたマルクルが、カブの手にあった仮面を引き抜いた。  
見覚えのあるそれに、ハウルとソフィーは目を見張った。  
「………ソフィーの仮面?」  
マルクルが不思議そうに呟いた。ハウルは決まり悪げに咳払いをし、ソフィーも  
呆然とした顔のまま固まっていた。荒地の魔女だけが涼しい顔で、  
一人口元をナプキンでぬぐった。  
 
 
「ご馳走様。大変美味しゅうございました」  
 
 

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